TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う 作:第616特別情報大隊
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──救出作戦//脱出
牢獄の中に囚われていたソフィア。
「他の魔法使いもいる。生きてるか確認しろ」
「了解」
ミュロンの命令ですぐに牢獄のカギが破壊されて、西部連合の魔法使いたちが仲間たちの生存を確認する。
私もソフィアの囚われている牢獄のカギを破壊して、彼女に駆け寄る。
ソフィアは拷問されたりした様子はなかったが、痛々しい有様だった。
服には薄っすらと血が滲み、黒く酸化している。
その白いローブも灰色になるまで汚れていた。
「師匠、師匠。助けに来たよ!」
私はソフィアを拘束している鎖と猿轡を解き、彼女を解放した。
ソフィアは猿轡を外されると荒く息をし、私の方を濃緑色の瞳で見つめる。
「リンクス。助けに来てくれたのだな……」
「当然だよ。ずっと心配していたんだから……!」
私はソフィアを抱きしめてそう言った。
ソフィアも弱弱しく抱擁を返してくれる。
「全員生きています、ミュロン隊長!」
それから囚われていた西部連合の魔法使いたち全員の生存が確認された。
全員が疲弊しているが、命に別状はなかった。
「あとはここから脱出するだけだな……」
私たちはこれから負傷者たちを連れてこの要塞から脱出しなければならないのだ。
疲弊しきった捕虜たちを連れて脱出するのは大変だろうが……。
『ミュロン隊長。上層の掃討、完了しました。こちらに捕虜はいません』
「分かった。ネストル、外で合流するぞ」
私たちはソフィアたち囚われていた捕虜たちに手を貸して外へと向かい、要塞の外に出る。
要塞の外ではコルネリアたち帝国の魔法使いたちが警戒に当たっていた。
「リンクス、ソフィアさんは無事ですか……?」
「疲れているみたいだけど、大丈夫だよ」
コルネリアが寄ってきて尋ねるのに私はそう返し、ソフィアもコルネリアを見た。
「コルネリア……? どうしてここに……?」
「帝国軍として従軍しているんです。今回の救出作戦にも参加を」
「そうか……」
ソフィアはコルネリアに驚いたものの、疲れているのかそれ以上の反応はなかった。
彼女は本当に疲弊しきっており、私はこのままソフィアが倒れてしまうのではないかと心配になってきた。
「ミュロン隊長。交戦した敵の中に魔法使いがいました。もしかすると、襲撃を報告されたかもしれません」
「そうか。分かった。ならば、急いで離脱するぞ。それぞれ負傷者を抱えろ」
飛行魔法で捕虜になっていた仲間たちを抱えて、私たちは空を飛ぶ。
「リンクス。ソフィアは俺が抱えてやる。貸せ」
ミュロンは私の代わりにソフィアを抱きかかえ、空に浮かんだ。
「さあ、送り狼どもが来る前に離脱だ」
それから私たちは帝国軍の反乱鎮圧の拠点である港湾都市タラシアに向けて飛んだ。
方角は来た時と同じように夜が明けるまでは星座で確認し、私たちは飛行する。
しかし、行きと違って私たちは捕虜を抱えている。
その移動速度は決して早くはない。
次第に朝日が昇り、日の光が砂漠に満ちていく。
「隊長! 後方から追っ手です! 敵の魔法使いが6名!」
「クソ。やむを得ん。手の空いている人間で排除しろ!」
ここで三月教徒の魔法使いたちが後方から迫るのが分かった。
三月教徒の赤いローブの魔法使いが、僅かに昇りつつある朝日に照らされて見えた。
「私たちが応戦します! 西部連合の魔法使いは離脱を!」
コルネリアたち帝国軍の魔法使いが後方に移動して、追っ手を迎え撃とうとする。
「私も戦うよ」
私もコルネリアたちと戦列を並べて、敵魔法使いの迎撃に移った。
敵の魔法使いはかなりの速度で加速してきており、接敵までは残り数十秒だ。
「コルネリア。防御を担当してくれる? 私が攻撃で敵を排除するから」
「了解です。やりましょう!」
私はコルネリアに防御を任せ、狙いを三月教徒たちに定めた。
そして爆轟魔法を追っ手である三月教徒の魔法使いたちに向けて叩き込む。
「えい!」
三月教徒の魔法使いたちは魔力装甲を展開しながら私たちの方に迫っていたが、私が放った爆轟魔法によって魔力装甲は粉砕されて、3名が爆発に巻き込まれた。
残る3名も姿勢を崩して墜落しかかる。
しかし、それでも三月教徒の魔法使いたちは私たちに迫った。
『唯一なる我らの神よ! 我らが敵を討つ力を──!』
それから敵も魔力の矢を形成しながら私たちに迫る。
コルネリアの魔力装甲は抜けないが、長期戦にはしたくなかった。
「敵が肉薄してくる……!」
というのも、敵の動きがおかしかったからだ。
敵は魔力の矢を叩き込みながらも、こちらにずっと接近し続けてきていた。
射撃戦を続けるつもりがなく、白兵戦を挑もうというのか……?
しかし、私のその考えは外れた。
『唯一なる我らの神よ! あなたを讃えます! 我々に力を──』
敵の魔法使いはその黒目が見える位置まで私たちに迫ると、爆発したのだ。
そう自爆である。
爆風が吹き荒れて、私たちは爆風に揺さぶられ、コルネリアが展開していた魔力装甲にも揺らぎが生じる。
「じ、自爆した!? 一体何を考えて──!?」
「コルネリア! 動揺しないで! 次が来るよ!」
コルネリアが慌てふためくのに私がそう言う。
すでに次の三月教徒の魔法使いが迫っており、その瞳には狂信の色が見えた。
間違いなく私たちを道連れに自爆するつもりだ……!
『唯一なる我らの神よ! あなたを──』
「させない!」
私は敵の魔法使いが自爆する前に魔力の矢を叩き込んで撃墜。
しかし、最後の魔法使いが懐に飛び込んでくるのは阻止できなかった。
自爆。
複雑な魔法陣が一瞬輝くのが見え、それから爆発が生じる。
爆風と衝撃波が私たちを直撃し、コルネリアの魔力装甲がきしむ音を立てた。
私たちは空中で滅茶苦茶に揺さぶられる。
「……まさか魔法で自爆するなんて……」
ようやく安定して飛行できるようになると、コルネリアがそう呟く。
「狂ってる」
私もそう吐き捨てるように言った。
どう考えても普通じゃない。
確かに私たちの死の危険を冒して戦っていたけれど、死ぬことで勝利しようとはしなかった。
それなのに三月教徒たちは自爆という手段を使ってまで、勝利を得ようとした。
それが強制されたものなのか、それとも自発的な意志によるものなのか。
それは分からないけれど、いずれにせよグロテスクだ。
「……けど、もう追っ手はいませんね。ミュロン隊長に合流しましょう」
「うん」
私たちはそれからミュロンに追いつくために飛行魔法で加速した。
ミュロンたちは合流地点で私たちを待ってくれていた。
「敵は?」
ミュロンが私たちが無事なのを見て、まずそう尋ねる。
「倒した。けど……」
「何があった?」
「敵は自爆戦法を使ってきた」
私は三月教徒の魔法使いたちが自爆することで私たちの道連れを狙ったことを話す。
「それは厄介だな……」
ミュロンは険しい表情で私の報告を受けた。
「しかし、今回の作戦は成功だ。自爆対策についてはこれから考えていく。タラシアに戻り、捕虜に治療を受けさせなければならん」
「分かった」
それから私たちはタラシアに向けて馬車で戻っていく。
「師匠。大丈夫?」
私は疲れ切った様子のソフィアを見てそう尋ねる。
「ああ。心配はいらない。大丈夫だ」
ソフィアはそう微笑み、私の頭をそっと撫でてくれた。
彼女自身、長く拘束されて疲れているだろうに私を安心させようとしてくれている。
ソフィアはやはり優しい。
「お前こそ何もなかったか? 私のいない間に……」
「私は大丈夫。もうひとりで行動できるから、そんなに心配しないで」
「……そうか。もうお前も大人だな……」
私がそう言うのにソフィアは嬉しそうに笑ってくれた。
ソフィアが笑顔でいてくれるのが、私にとっては一番嬉しいことだ。
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