TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う 作:第616特別情報大隊
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──情報任務//野戦軍
「敵の魔法使いは事前に自分の身体に魔法陣を刻んでいます。それは爆発を起こす魔法陣であり、それに詠唱で魔力を注ぎ込めば──ドカンです」
そう説明するガイウス将軍。
「彼らはどうしてそこまで命を投げ打てるのかは分かりませんが、三月教徒たちは基本的に死を恐れていません。それゆえに彼らは危険で厄介なのです」
三月教徒たちは死を恐れないとガイウス将軍は言ったが、私はどうして彼らがそこまで戦えるのかが謎だった。
私のように死んだあとに転生するとしても、その転生先が今より恵まれているとは限らないのに。
「ただし、です。上級指揮官クラスに限って言えば自爆するようなことは確認されていません。彼らはそれなりに死が恐ろしいのでしょう」
「部下に死を強要するのに自分たちは死を避けるのか。卑劣な連中め」
ガイウス将軍の言葉にミュロンが僅かに嫌悪を滲ませる。
「そのおかげで指揮官を捕虜にするという作戦が可能になるのですからよしとしようではないですか」
ミュロンの言葉にガイウス将軍はそう軽薄に笑い、机の上に地図を広げる。
「さて、集結中の敵野戦軍の位置はこの場所です。ウァルガストという都市の付近にて野戦軍は編成されつつあります。こちらもそれに呼応して、アウルス将軍が野戦軍を前進させつつあります」
「お前の部隊ではないのか?」
「私は魔法使いを使った戦術及び戦略を評価されています。野戦軍で誇り高く、そして泥臭く戦うのは、アウルス将軍にお任せしますよ」
「要は前線に出たくないだけだろう」
「はてさて?」
ソフィアの指摘にガイウス将軍は肩をすくめてとぼける。
「あなた方はアウルス将軍の野戦軍に合流してください。ただし、彼からの指示を受ける必要はありません。あなた方はあくまで私の指揮下にあります。アウルス将軍があれこれと指図してくるかと思いますが、無視して結構」
「……そう簡単に無視させてくれればいいのだが……」
これまでの帝国軍の将軍たちは誰もが強引だった。
そうであるがゆえにアウルス将軍も私たちにいろいろと無理強いをするのではと恐れるのは当然だった。
「不安になるのは当然ですね。帝国軍の将軍たちはどいつこいつもろくでなしですから。もし、彼が強引に迫った場合は自分たちは西部連合の魔法使いであると主張してください。彼も今になって西部連合との関係悪化は招きたくないはずです」
私たちの懸念にガイウス将軍はそう言うだけ。
「さあ、では善は急げです。野戦軍へ合流してください。これが命令書です」
それからガイウス将軍はそう言い、私たちに命令書を渡すと出撃させた。
* * * *
それから私たちは馬車で移動し、アウルス将軍の野戦軍への合流を目指した。
移動中に襲撃されるようなことはなく、私たちは無事に帝国軍の野戦軍が集結しつつある都市に到着した。
帝国軍は都市の周辺に陣営を設置し、無数の天幕が張られていた。
その陣営内に入り、まずはアウルス将軍とやらに私たちは挨拶することに。
「お前たちがガイウスの飼い犬どもか」
アウルス将軍はまだ若い将軍で、30代後半ほど。
黒髪を短く切りそろえ、髭も蓄えていない。
そんな男性が私たちの方を値踏みするように見ている。
「訂正してもらおう。我々はガイウス将軍の飼い犬などではない。歴とした西部連合の義勇軍だ」
「ふん。その割にはガイウスの言いなりになっているようだが」
ミュロンがそう言うのにアウルス将軍は不満そうに鼻を鳴らした。
「で? 我々の野戦を援護するつもりはないと聞いているぞ。お前たちは何をしにここまで来たのだ?」
「我々の任務はこれに書いてある」
そう言ってミュロンはガイウスの命令書をアウルス将軍に手渡す。
「敵指揮官の捕縛、か。ガイウスらしい作戦だな」
命令書を読んだアウルス将軍は吐き捨てるようにそう言う。
「しかし、敵指揮官を捕縛したとしても、野戦に勝利しなければ連れ去るのは難しいと言うことは分かるだろう。その点において我々第4軍に協力するつもりはないのか?」
今回の戦争ではアウルス将軍が第4軍、ガイウス将軍が第5軍を指揮している。
アウルス将軍は自分たちの軍への支援を求めてそう言った。
「最低限の支援は行うが、我々の目的は野戦での勝利ではなく、あくまで敵指揮官の捕縛だ。西部連合としても雨後の筍のように湧いてくる三月教徒をいちいち相手にするよりも、指導者の首を刎ねた方が早いと見ている」
「商人どもらしい考えだな」
アウルス将軍はまた不満そうに鼻を鳴らす。
「なら、好きにしろ。こちらにも魔法使いはいる。お前たちを当てにして、ガイウスに借りを作りたくない。あの男は帝国中央で権力を得ようとあれこれ画策して回っているようだからな」
アウルス将軍は最後にそう言い、私たちを司令部の天幕から追い出した。
「では、予定通り、野戦が始まったら我々は敵指揮官を捕捉し、捕縛する」
ミュロンが私たちにそう言って作戦を確認する。
「その後はまたタラシアに戻り、捕虜を尋問する。以上だ。捕虜を殺すなよ。特にリンクス。無茶な攻撃はするな。いいな?」
「了解、ミュロン隊長」
私も今回の作戦の目標は理解している。
重要なのは敵野戦軍指揮官の拘束だ。
彼を殺してしまったら、ここまできた意味がない。
「では、野戦が始まるまで待機だ」
私たちはそれから帝国軍の野戦軍と三月教徒の野戦軍が衝突するのを待った。
それは意外なほど早く訪れた。
* * * *
私たちがアウルス将軍の第4軍に合流してから、7日後。
ついに両軍の野戦軍が動いた。
三月教徒たちは帝国軍の拠点とする都市を目指して前進を始め、帝国軍はそれを迎え撃つべく野戦軍を前進させた。
決戦の場は無名の平原だ。
そこに帝国軍第4軍隷下の1万の軍勢と、三月教徒の野戦軍1万2000が展開した。
「帝国軍は今回は数でそこまで負けていないようだな」
ソフィアが使い魔で布陣する帝国軍と三月教徒を見てそう言う。
西部連合との戦いでは2倍や3倍の戦力差を付けられていたが、今回はそこまで深刻な戦力差はない。
確かに数では劣っているが、情報によれば相手は反乱を起した奴隷であり、練度は低いという話だった。
「恐らくアウルス将軍が軍部派閥の所属だからだろうが……」
続けてソフィアはそう言う。
アウルス将軍は軍部派閥所属の軍人であり、彼は軍部から支持を得ている。
その点で彼はティベリウス将軍などとは違うそうだ。
「お前たち、作戦の最終確認だ」
ミュロンが私たち西部連合の魔法使いと、コルネリアたちガイウス将軍指揮下の魔法使いを集めて作戦を確認する。
場所は帝国軍の野戦軍後方であり、まだ安全な場所であった。
「我々は最優先で敵指揮官を拘束することを目指す。しかし、それには敵の護衛が抵抗するだろう。護衛の排除も重要だ。特に敵の魔法使いが抵抗する場合は、我々は先にこいつを排除しなければならん」
ミュロンはそう言い、私たちを見渡す。
「ソフィア、リンクス、そして帝国の魔法使い。お前たちは敵の魔法使い排除を最優先に行え。他はその他の護衛の排除と指揮官の確保だ」
「了解」
「いいか。くれぐれも敵の指揮官を殺すな。それから──」
ミュロンが続ける。
「何があっても生き延びろ。死んでまで任務を達成する必要はない。無理だと思えば引け。各位、無茶はするなよ」
「了解です、ミュロン隊長」
三月教徒たちは自爆してまでその任務を果たそうとするけれど、私たちはそこまでする必要はない。
そうミュロンは示してくれた。
「それでは作戦開始だ。そろそろ野戦軍同士がぶつかるぞ」
ミュロンがそう告げる中で、帝国軍と三月教徒の両野戦軍はまさに激突しようとしていた。
万を超える軍勢が激突する瞬間が、訪れようとしている。
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