TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う 作:第616特別情報大隊
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──預言者の尻尾//ブリーフィング
私たちはエウドキア急襲を成功させて、タラシアへと戻った。
「ご苦労様でした、皆さん」
タラシアでもガイウス将軍が私たちを出迎えた。
フルメン号が埠頭に停泊するとすぐに彼がやってきたのだ。
「エウドキアの港湾機能は奪えたようで何より。あとはパラティウム付近の敵海上戦力が確実に減少していることを確認してから作戦決行です」
「パラティウムのどこにシャーリアールがいるかの情報はあるのか?」
「ヴァフラムの情報では、シャーリアールはパラティウム市内にある城に籠っているようです。元は市庁舎を兼ねた城だったのですが、今では三月教徒の礼拝堂になっているそうでして」
ここでミュロンが尋ね、ガイウス将軍がそう語る。
「城ということは警備は固いだろうな」
「ええ、ええ。ですが、連中は襲撃されるとは思っていないはずです。今のところ、依然としてアウルス将軍が派手な攻城戦をしており、三月教徒たちの目はそちらを向いていますからね」
「だといいのだが……」
ガイウス将軍の言葉にソフィアはあまり納得がいった様子ではなかった。
私たちはエウドキアを襲撃している。
そのことから次にパラティウムが襲撃されるのではないかと、三月教徒たちが警戒する可能性はあるのだ。
この作戦は奇襲を前提にしている。
奇襲に失敗すれば、作戦は崩壊するだろう。
「我々としてももっと情報がほしいのですが、前にも言ったように三月教徒たちの内部に密偵を潜り込ませるのは苦労しています。よって、これ以上の情報はありません」
お手上げというように両手を上げてそう言うガイウス将軍。
「事前に収集できる限りの情報は集めますし、入手しておいた城の図面もお渡ししておきますが、あまりこれ以上の情報は期待しないでください。我々は敵海軍の活動が低下したのが確認された時点でパラティウム襲撃とシャーリアール拉致作戦を決行します」
「……分かった」
ガイウス将軍はそう言い切り、ソフィアを含めて私たちは頷いた。
この戦争を終わらせるには、いずれにせよシャーリアールとそこから繋がるアルダシールを確保することが必要なのだ。
そうでなければ南方にいる奴隷を全て殺さなければいけなくなるだろう。
奴隷の数だけ三月教徒の軍勢は強化されるのだから。
「では、作戦開始まで宿舎で待機されていてください。私は情報収集に努めます」
「ああ」
それから私たちが宿舎に戻った。
帝国軍が確保していた宿の部屋に私とソフィアは戻る。
「師匠。パラティウム襲撃は上手く行くと思う……?」
「……分からない。ガイウス将軍の言うように奇襲に成功すれば可能性があるだろうが、不確定要素が多すぎる」
情報の不足が私たちを不安にさせていた。
パラティウムの警備は本当に無警戒なのか。
敵の規模は本当に小さいのか。
それにそもそもシャーリアールは本当にパラティウムにいるのか。
私たちの情報はガイウス将軍の憶測とヴァフラムの証言しかないのだ。
「……何かあれば生き残ることだけを考えろ、リンクス。私たちは西部連合の利益のためにここにいる。帝国軍の戦争を終わらせるために命を賭す必要はない……」
ソフィアはそんな懸念にそう言う。
確かに私たちは西部連合の魔法使いだ。
決して帝国中央の魔法使いではない。
帝国の勝利のために命を賭す必要はないのだ。
そう、三月教徒たちのように狂った忠誠を示す必要はない。
いざとなったらシャーリアールの確保は断念して逃げよう。
きっとミュロンもそう判断するだろう。
彼は無茶をする人ではないから。
* * * *
それから数日後、私たちはガイウス将軍に呼び出しを受けた。
場所は司令部になっている市庁舎だ。
「皆さん。我々の偵察の結果、パラティウム付近の敵海上戦力の低下が確認できました。明らかに敵はパラティウムまでちゃんとした海上戦力を展開できていません」
パラティウムは海に面しているが、港を設置するには向かず、そこに海軍基地はないとガイウス将軍は説明する。
エウドキアの海軍基地壊滅の効果もあり、パラティウム付近の三月教徒の海軍戦力は減少したのは確実らしい。
「そういうわけですので、いよいよ作戦決行です。我々はパラティウムを襲撃し、シャーリアールを拉致します。そして、シャーリアールからアルダシールの居場所を聞き出すのです」
ガイウス将軍は実にシンプルな作戦のようにそう語る。
「本当にシャーリアールは城にいるのだろうな?」
ここでガイウス将軍を疑るようにミュロンが尋ねる。
そうなのだ。
この作戦はシンプルなようで、不確定要素が多い。
その点をちゃんと解決できているのだろうか……?
「残念ながらそれに関しまして追加の情報はありません。ヴァフラムの吐いた情報だけが頼りです。情報が少ないということは認めますが、我々にはそもそも情報源が少ないのですから諦めてください」
ガイウス将軍ははっきりとそう宣言した。
情報はない。
彼にしては珍しくはぐらかしたり、嘘を吐いたりはしなかった。
我々は情報がなく、パラティウムを襲撃してもシャーリアールを確保できるは分からないと言うことだ。
「それでも作戦決行か?」
「ええ。今の段階だと我々は5割から6割の確率でシャーリアールを確保できると見ています。決して低い可能性ではありませんよ」
「コイントスと同じ確率とはな……」
5割ではコインを投げて表が出るか、裏が出るかという確率だ。
そんな運任せの作戦で、果たして上手くいくものなのだろうか……。
「文句があるのは分かります。ですが、我々は贅沢が言えない身です。三月教徒に密偵を忍び込ませるのは不可能である以上、我々は今ある情報で行動するしかないのです。そうしなければアルダシールには永遠に辿り着けない」
表が出るか、裏が出るか分からないコイントスでもやらないよりマシとガイウス将軍は言った。
やらなければ永遠に結果は出ないのだからと彼は言う。
「というわけで作戦は実行します。帝国海軍艦船でパラティウムに近づき、奇襲する。当初の作戦通りです」
ガイウス将軍はそう宣言し、地図を広げる。
「パラティウムの小規模な港に向けて我々は飛行し、そこからパラティウム市内へ突入。敵の兵舎などを制圧しながら都市中心部にある城を目指します。城の見取り図はここにある通りですが、侵入が容易なのは屋上です」
大抵の城は魔法使いが上空から侵入してくるということを想定していないために、とガイウス将軍。
「詳細な作戦についてはそちらにお任せします。我々は把握しているパラティウムの情報を全て提供しますので、それを活用されてください」
「ああ。そうさせてもらう」
ガイウス将軍はパラティウムの地図から城の見取り図まであらゆる情報をミュロンに提供した。
ミュロンはそれを受け取り、ネストルなどとともに作戦を練る。
「屋上からの侵入は確かに容易だが、どうせ兵舎などを制圧するとなると奇襲後に静かに動き続けることは難しい。ここは城の壁を破って一気に内部に突入したいな」
「屋上を一応制圧する必要もあると思うが。高所は確保しておいて損はない」
「ああ。屋上にも少数の部隊を配置し、城に近づく敵を狙撃させる」
ソフィアの指摘にミュロンはそう言って頷く。
「だが、パラティウム全体を制圧するのは無理だ。短時間でシャーリアールを拉致し、連れ去る必要がある。奇襲効果がなくなれば、我々は敵地の真ん中で孤立している少人数の部隊に過ぎない」
ミュロンはそう結論して、私たちに忠告する。
そうなのだ。私たちは一種の空挺部隊であり、少数の軽歩兵だ。
もし、敵が奇襲から立ち直り、反撃に出れば……私たちは殲滅されるだろう。
「よって、何よりもスピードを重んじてかかる。以上だ」
ミュロンはそう命じ、私たちはいよいよパラティウム奇襲に向けて動くことに。
再び私たちは帝国海軍の軍艦フルメン号に乗り込み、海に出る。
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