【完結】ゴブリンエルフ始祖女王   作:照喜名 是空

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生の特権

 

 そういうわけで街道建設が始まった。

 それと共にルストヴァルド領からどんどん行商人が入ってきて商売をしているらしい。

 空前の好景気というのはこういうものか……どんどん現金収入が城の国庫に入ってくる!

 

「どうも、ゼグラス侯爵からの依頼で来た料理人でレイエスです。ああ、これは公爵からの書状です」

「ふむ、伺おう」

 

 その日現れた料理人は少し毛色が違った。

 ゼグラス侯爵……あの方言の強い竜人の侯爵だ。

 書状を読んでみる。

 

「グレイス女男爵へ

ヴィクトル辺境伯んとこの宴でわかったやろ?

今のラウレミルに足りへんのは食文化や。

『食えればええ』っちゅう段階は、領としては早めに抜けるべきやね。

せやからまずはうちの飯を一回ちゃんと食うてみ。

料理人と一緒に食材も送っといたで。

 

ほんで君さえよければラウレマートにも食材やら酒やら送っとくわ。

ええねんええねん。これは僕のおごりや。良かったら仕入れてな。

要は試供品やね。

 

ラウレマートあれな、安物は安物でええねん。

ほんでも安物なりのおいしさを追求せんとあかんわ。

それには美味い飯食うてみてセンス磨くしかないんよ。

 

食は知識であり文化や。ほんで文化は武器や。

ちゃんと磨いてや。

 

――ゼグラス・ヴィルガ・ドラン」

 

 セールスのおたよりってこんな感じか~!

 お、お節介だ……だがぐうの音も出ないほどの正論だ。

 食育は何とかしたいとおもっていたしな……

 

「……わかった。ドラン侯爵にはぜひやっていただきたいと感謝の言葉を伝えておいてくれ」

「わかりました!伝書魔法でやっておきますから、今週内くらいに返事が来ると思います」

 

 そういえばそんな魔法があったな。伝書鳩を魔力で練って作る魔法だ。

 一応覚えてはいたが……ついでにゼグラス伯の所の位置も私の魔力に覚えさせるか。

 伝書魔法で作った鳩は集団で同じ届け先に届けさせることが可能だからだ。

 

「そうだな、ならば私からも謝状を書いておくのでレイエス殿の伝書を追わせてほしい」

「いいですよ!あっ、それじゃあ俺はその間さっそく料理を作っておきますね!」

「我が城の厨房は人の身体だと狭いだろう。それでもよければぜひ使ってくれ」

「大丈夫です!いざとなれば外で焼くんで!」

 

 屈託のない顔で笑うこの男はマジでやるんだろうな……と思った。

 あれだ、たぶんこの男もネブラ伯に近い狂人の類だろう。

 あまりにも目線がフラットすぎる……!

 

「どんな料理ができるか楽しみねえ」

「うむ、うちの食材でどこまでできるものか見せてもらう」

 

 アリアとそんなことを話しながら書状を書いているとさっそくレイエスは皿をもってきた。

 

「どうぞ!ベーコンポテトグラタンです!」

「以外に普通な料理だな」

「でもいい匂いよ。いただくわ~」

「どうぞ!今ある食材でもできるのを伝えるように侯爵からいわれてますからね」

「なるほどな……むっ、これは!」

 

 めちゃくちゃ美味いじゃないか!?なんで同じ材料からこうなるんだ!?

 

「うっ、美味い!チーズがまるで搾りたてのような新鮮さと、表面はパリパリとした歯ごたえと香ばしさ!ジャガイモすら味がついている!まるで同じ野菜とは思えん!それにこの香草がここまでグラタンと合うとは……」

「お姉さまがいまだかつて見たことない驚き方するじゃない……?そんなにおいしいのかしらね……お、美味しいわ……!」

 

 そこに冷たい水がコップに入れて差し出される。

 これもうまい!水までうまい!

 

「どうぞ、グラタン食べ続けてたら熱いでしょ」

「う、うむ……この水にも工夫が?」

「えーっと水を生み出す魔法に一手間加えてます。お見せするとこうしてこうして……こんな感じで」

 

 ええ~!?こんな簡単な一手間であんなに水がおいしく……?

 これは簡単な一手間だからこそ奥義と言える物だろう。

 奥義とは誰にもできない高難度な技ではない、誰にでもできる一工夫を思いつく発想力の事だからだ。

 

「それは単純だからこそ奥義と言われるものでは?」

「まあ王都の料理人はだいたい使えますからね。それにゼグラス侯にはお世話になりましたし」

 

 私は居住まいを正して余所行きの声で言った。

 

「ありがたく勉強させていただく。つまりゼグラス侯の意向は今ある材料でおいしいものをまず作れ、ということで合っているか?」

「そうですね、まあもうすぐ食材も来ますのでできればほかの料理人の皆さんや街の人にも振舞いたいです」

 

 は~、また輸入が増えるな……

 とはいえ、ここまで誠意を示されては断れん。

 それに、ラウレミルの食文化が向上するのは歓迎すべきことだ。

 食は幸福に直結する。娘たちには美味い物を食べてほしいからな……

 

「許可する。ぜひよろしくたのむ。我が娘たちに料理のおいしさというものを教えて欲しい」

「もちろんです。食とは生命の特権ですからね!みなさんに振舞いますよ!」

「あっ、でも食中毒には気を付けるって『約束』できるかしら?」

 

 そうだ、万が一ということもあるしな……

 間者として毒を入れられては事だ。まずないとは思うが一応な。

 ナイスフォローだアリア!

 

「俺の料理人の名誉にかけて」

「決まりね。じゃあ頼んだわ~」

 

 そうして、レイエスによって城下で屋台や料理教室が営まれ。

 私もそこにしれっと参加したりした。

 まあ、おかげで我が家の食卓が向上したよ……

 ロゴスやリンのなどの城にいる直系の娘たちに食事を作っているのは私とアリアだからな。

 娘に食事を作るのは母の特権だからだ。

 

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