ここからは不定期更新になる可能性もあります。
すいません……完走はするので。
そしていつも感想とここすき、ありがとうございます…!
この場を借りてお礼申し上げます。
本当にたすかっています…!
そういうわけで、しばらく政務も宴もリンに任せてのんびりした。
どうせネブラ伯待ちだし、しばらくは試行錯誤するだろうしな。
いや~!よく寝た!
半年ほどそうやって夏がまた来たらもう試作品の浮島できてたよ。
だから早いって!ネブラ伯があまりにも本気すぎる……!
「押忍ッ!女王陛下にぃ!敬礼ッ!」
そういうわけでムジカの海領に来たら孫がこんな感じなんだ。
「国歌斉唱ーッ!」
ムジカが謝罪演奏で歌ったあの歌の歌詞をラウレミルの森の豊穣さとか我が母上エリシアの偉大さを称える歌に変えたものなんだけどな。
「ご清聴ありがとうございましたァッ!」
それを歌う孫のマリナとその部下の服装がな……独特なんだ。
なんだあの文字の書かれたコートは。『羅雨麗魅流』ってなんて読むんだ。
しかもその下にほぼ水着を着てて、歯がサメで肌が藍色で体型がほぼ私と同じなチビ。
そういうサメ魚人とゴブリンとエルフを混ぜたような……まあそんな孫が歌うわけだ。
「お久しぶりです、お婆様!あなたの孫、マリナ・インガイエル・ラウレミルっす!本日はお世話んなりますッ!」
「お、おう。それが海の礼儀作法なのだな」
もうそういうしかないだろう!たぶんこれが漁師やってる魚人とかの作法なんだよ!たぶん!
「押忍ッ!」
「う、うむ。出迎えご苦労。よろしく頼む、マリナ」
「うすっ!」
だいぶ……ファンキーな仕上がりになった孫だな……
ムジカお前どういう育て方したんだ?
こーんなに小さかった頃はばーちゃんばーちゃんと可愛かったんだが……
いや、これはこれで独自の礼儀を守っているから礼儀正しい子ではあるんだろうが。
「まずは迎賓館を作らせていただきましたッ!いつまでもあたしの実家でお出迎えするのは失礼なんでッ!」
「うむ、毎回すまんな」
そういうわけで宿に通されたが、なかなかすごい。
白い壁材が塗られてまさに白亜の城だ。
ヤシの木とかトロピカルな花やフルーツが鮮やかに飾り付けられている。
「あ~、ママ久しぶりじゃん」
「うむ、毎回すまんな……お前、正直毎回自分の家で出迎えるのが嫌になっただけだろう」
「は~!当たり前じゃん!だからわざわざ作ったんだよこの宿!も~!あっ、マリナもいつもの感じでいいからな」
迎賓館でムジカが出迎えてくれた。うーむ内装もきれいだ。ちゃんとやってるなあ。
「はいよー、母ちゃん。婆ちゃんめっちゃ久しぶりっすね」
よかった……!あれは余所行きの顔だったのか。
孫が素であれだとちょっときつい……!
「おう、前に会ったのは戦前か。こんなに小さかったのにな。覚えているか?」
「いや~、この魔力のデカさは忘れらんないすよ」
「そうか、調子はどうだ?何か欲しいものとかないか?」
「ママさあ……」
「お前にもあるぞ。土産と小遣い」
ドラン領土産の超うまいクッキーとか干物とかをカバンから出して渡しておく。
ムジカはむすっとしてたがまあ受け取ってくれた。
「ん~、まあお礼は言っとくよ、ありがとうママ」
「感謝ッス!いや~でも正直お小遣いより聞いてほしいことがあるって言うか……」
うーむ、これはたぶん私は何かやらかしてるな……
いやでもだな、孫がな、かわいくってな。
「正~直に言うと海上進出って簡単に言ってくれるな~!とか、婆ちゃん大丈夫?ご乱心してない?とかちょっと思っちゃったっすね」
あ~そっちか~!それは……全くの正論だ……
我ながら無茶を言った自覚はある。
「すまんな……マリナ、お前の言う通りだ。無茶をさせてしまってすまない」
「ん~!まあ、婆ちゃんがそこまで謝るなら、まあ……まあなんとかなったからいいっすけどね~」
「ママの言う事はわかるけどさあ、やっぱけっこう無茶だったよ。ヴェスパシアとクロムガルドの技術力とか、学院の物理学とかでわりとなんとか……なんとかなったけどさあ」
そんな事を言いながらスイートルームの鍵をあけてくれる。
おお……家族全員で泊まれそうなほどデカい部屋!
白と水色の壁も見事だ。部屋が明るい!
「……すまんな、いつもお前たちには負担をかけてしまう」
「ま~わかるよ?人口増え過ぎだからそりゃ海に逃げるしかないなって。わかるけどさあ……」
いや本当に申し訳ないなとは思ってるんだよ。
でもやらんわけにはいかんわけでな。
「まあまあ母ちゃん……結局ヴェスパシアの商品でなんとかなったんで……あの街マジで未来に生きてるっすね」
おお、孫からの助け舟!
「それは私もそう思うよ」
それからもまあブチブチ言われたが、なんとかムジカの愚痴を聞いてガス抜きを図った。
荷物を置いてしばし休み、現場を視察することにした。
■
「これが浮島一号っすね」
小さな船を水魔法で動かしていって目にした海上都市の試作品は美しかった。
「ほう、おもったより美しいな」
「それは遠くから見てるからすね。住むと結構ボロいすよ」
「それでもだ」
中央に大きなヤシの木。
四隅に支柱のように伸びるちょっと小さなヤシの木。
その間をキイチゴやコケモモのような実と花のなるツルが支えている。
海面上には巨大なヤシの実が浮きとして土台を支えていた。
色とりどりの花の楽園。それが海に浮いている。
「出入りは港とハシゴか」
「婆ちゃんなら魔法でひとっとびで行けるっしょ」
「できるが、それでもお前たちと同じ手段で行かねばわからん」
「逆に気ぃ遣うんすよ……」
「すまんな」
ふーむ、ハシゴはロープでできてるな。見たことない縄の素材だ。
横には巨大ヤシの浮きや、あちこちに作られた桟橋。
そのデッキの上にはよくわからない貯水槽のようなものがたくさんある。
「おお、これが……」
「今は十人くらいの大人が運用してるっすけど、子供も住めるようになるのはまだ先っすねえ」
「だろうなあ」
足元の地面はロープによる網と防水布、そこに土とヤシの根が絡み合っている。
かなりボコボコだが、だからこそこの浮島は生きているのだろう。
「じゃあまあ、クルーのいる居住区に案内するっすね」
「うむ、しかしそこら中に木の実が成っているのだな」
「あーそこは魚とヤシばっかだと飽きるって言ったらネブラ伯さんが持ってきてくれたんすよ。一週間くらいで」
相変わらず仕事が早すぎないかあの方。
しかし壮観だ……青空に白っぽい木造建築。それに絡みつく無数の根とツル。
それに生える鮮やかな緑の葉で案外涼しく薄暗い。
極彩色の果実がたくさんなっているのも良いな。
「これが居住区か」
「案外広いっしょ?」
「うむ、安心した」
居住区は木造の船室に近い。
明るくて良いな。壁の木板から青い空と海が見えるが。
隙間風と雨漏りがヤバいんじゃないかこれは。
「あら女王陛下、久しぶり」
「うおっ!ネブラ伯、なぜここにおられるのです?」
アバーッ!奥のドアから平然とサプライズネブラ伯!
「それはあなたが私を技術責任者にしたからよ。こういうのはこまめに点検しないといけないの」
それは……そう!誰かのせいにしたいが私しか思い浮かばない。
「あー、いつもお世話んなってるっす!ネブラ伯!」
「構わないわ。今ベリー酒ができたから飲みながら視察するのはどうかしら?」
孫が……私よりネブラ伯になついている!
それはそうなんだよ。たぶんこの人毎日のように現場に出入りしてるだろうからな。
そうなんだが納得いかない~!
「え、ええ。ぜひともよろしくお願いします」
「じゃあついてきて。ここがスパイス農場。意外と小さくても機能するでしょう?」
はえ~!中央クソデカヤシに絡みついたツルから黄色や赤の唐辛子みたいなものが生えている。
それを収穫するのはタコが原型のダゴン人だ。
あの多椀なら収穫も容易だろうな。
「しかし土はどうしているのですか?」
「下を覗いてごらんなさい。たくさんの汚水槽と大きな貝がいる水槽があるわよね?」
あ~、なるほど。それは、そう!土の材料は確かに肥やしだ。
しかし立ってる地面がすべてそれなのはなあ。
「なるほど汚水からとは」
「むしろ土の原料は生ごみのほうが多いっすよ。あの土生み貝に生ごみ食べさせると土をフンとして出すんすよ」
たしかに生ごみとウンコが土の材料なのは……そう!それは否定できん。
むしろ土が再生産できるだけお得だ。しかしなあ……ちょっと考えてしまうよ。
そういえばあのデカい貝の飼育されている水槽は床に土が敷かれているな。
あんな鉄籠みたいなので飼えるものなんだなあ。
「しかしあの籠自体が食い破られんか?」
「あー、なんで籠自体に苦い味のコーティングするってのをネブラ伯がこないだコーティング剤持ってきてくれました」
「まあいずれそうなるとは思っていたわ。だからあらかじめ準備しておいたのよ」
そんなこともあろうかと、が平然と飛び出してくるんだよこの方は。
ネブラ伯は蜘蛛の下半身を活かしてするするとこのヤシの木ツリーハウスを移動していく。
「で、ここが厨房。採った魚はそこの生け簀で保存しておくわけ」
そのデカいガラス水槽一体いくらするんですか?
まあデカいヤシの実を割った生け簀も多いが。
「下水溝にけっこう魚が群がってくるんすよね。あっ、下水はちゃんと浄化虫で処理してるから安全すよ」
浄化虫って何!?
「それもネブラ伯が?」
「他に誰が作れると思って?」
だいぶ……だいぶ生物都市だなこの浮島!それはまあ元々がヴェスパシアの樹木都市を海に持ってこようという発想から生まれたものだから、それはそうなるんだが、そうなるんだが~!
「ああ!女王陛下!そういえば今日がお越しになる日でしたね!お久しぶりです。覚えてますか?料理人のレイエスです」
お前もかレイエス!お前はゼグラス候の料理人じゃなかったのか?
あっ、これを国家計画にしたのは私だったな。
それは各地から一流の人材が集まるわけでな。
そしてそういうやつらはだいたいどこかタガが外れているわけで……
今まさに狂気的な爽やかな笑顔でエビと小魚を炒めているレイエスがそれを証明している。
「いやあ、海の幸って面白いですね!料理し甲斐がありますよ!もうすぐできますからね!」
「今日は何っすか?」
「海鮮カレーだよマリナさん」
「あ~それは定番でいいっすね」
あのグツグツ煮えてるやたらスパイシーな香りの鍋がそうか。
色がヤバいんだが!?まあ食い物なのだろうが、大丈夫なのか?
うおっ、レイエスがキッチンにあるネジみたいなのを回したら水が出てきた。
魔道具かな?
「そういえば水はどのように?」
「ああ、主に雨水を砂や墨で浄化してそれを魔術刻印で消毒してるわね」
「しかし雨水だけでやっていけるのですか?」
「そこはまあ、最悪の場合を考えて魔術刻印で水生成プラントを併設しているわ。あれは便利ね、魔力を流すだけで定量的な動作をする……よく考えられているわ。そしてあなたたちゴブリンエルフはエルフの魔力を継いでるでしょう?なら水不足は致命的にはならないはずよ」
もう刻印魔術の解析して使いこなしてるよこの方。
あらためてムチャクチャだよ。
「なるほど、懸念が解消されました」
「ならよかったわ。あら、できたみたいね」
「はい!海鮮カレーとふかし芋です!芋はパンやライスの代わりに使ってください」
「お、おう」
なんか……見た目があまりにもヤバいな。泥というかアレだ!
だが匂いはちゃんとしている……まあ見た目が悪いが食ってみるか。
魚とスパイスの煮込みスープ的な物だろ?
「おお、うまい!予想以上にうまいな!」
スパイスってこんな味になるの!?これはゼグラス侯がハマるわけだ……
「でしょ~?見た目はまあ……アレっすけど、煮込み料理みたいなもんすから!」
おっ、やはり我が孫だな。発想が私と同じだ。
「うむ……お前たちがちゃんと美味い物を食べててよかった。安心したよ」
そこが心配だからな。
そもそも子孫にちゃんとしたものを食べて欲しいから開拓するわけでな。
「果実酒もどうぞ。これはこの浮島に生えてる果物を集めて潰して作ったんですよ」
「うむ、いただこう。うまい!」
見た目はまあワインだな。真っ赤だ。
ベリーやスモモみたいな果物が生えていたからなあ。
ふむ、この瓶にも冷却の魔術刻印があるな。冷たくてうまい。
ラウレミルの炭鉱で飲んだ水分補給ジュースを思い出す。
「ククク……ただ美味しいだけではないわ。海の上では果実性の栄養が不足しがちなのよ。だからここまで果実を生やしたのよ。人は主食だけでは生きれないから」
は~、そういうものなのか。今までなんとなく食ってたものの理解が進むな。
「生きる糧というわけですか……それに私は子孫に甘味も食べられない暮らしはさせたくありません。そうした見地からもいい仕事だと思います。ありがとうございます、ネブラ伯」
「クックック……当然の仕事をやったまでよ。これからも楽しませてもらうわ」
あまりあなたに全面的に楽しんでもらうのは心配なんだよな……
「それとマリナ……よくやったな。私はお前が誇らしいよ」
「あざっす!でもそれは現場のクルーにも言ってやって欲しいっすね」
「うむ、もちろんだ」
それからヤシの実ジュースを飲んだり、タピオカなるデザートをいただいたりした。
ふーむ、うまく回っているものだな。トラブルはありつつだろうが。
潮騒の音が優しいよ……