王城に帰り、執務をしつつ冬を越す。
あの掲示板とやらはリンの監修もあったせいか、思ったよりまともだった。
とりあえず国家間の取引は機密性の高い専用の板でやっているらしいからな。
まあもうすでにネブラ伯とノブはやり取りしていたが……
手紙も渡したが、来年にでも火の国に行く気らしい。困ったもんだな~!
「もうすぐ冬至祭か……」
「今年もルストヴァルドでやるそうですよ。この城も増築してはいるんですけどねえ」
「ここは私たち基準の広さだからな。仕方あるまい」
リンが書類を片付けながらぼやく。
この王城も増築はしているが今年は間に合わなかった。
なので例年通りルストヴァルドで冬至祭りをする。
こ冬至祭りはほぼ新年の祭りのようなもので、まあ盛大なんだ。
あのへんは雪も降るし、なかなか見栄えもいい。
「そうだ、今年は代替わりだそうですしリネットを連れて行ってやってください」
「お前はいかんのか?」
「あの子の正式なお披露目にもちょうどいいでしょう。まあだいたい顔見知りですけどね」
世代交代、か……リネットにも仕事を任せられるようになるという事だな。
「そうか……早いものだな」
「ええ、本当に……今回の冬至は私もゆっくり休ませてもらいますよ」
「それがよかろう。リンはいつも励んでくれているからな」
「褒めても何も出ませんよ」
「ふふ、お前らしいな」
王城の執務室には静かに暖炉の音が響いていた。
今年も終わっていくなあ……
■
「いつも通りちょっと早く着いたしルストヴァルド観光していこうよ!見せたいものがあるんだ!」
リネットは相変わらず元気がいいな。いい事だ。
この子が何かを見せたがる時は付き合ったほうがいい。
だいたいヤバいことになっているからな。
「うむ、少し散策していくか」
「ここもにぎやかになったよね!」
「だいぶな……」
ルストヴァルドの中心部は古い街だ。
大通りにはレンガ造りの高い建物が立ち並び、おしゃれで風情がある。
だが来るたびに賑やかで清潔になっていくな。
街灯までいつのまにか立ち並んでいる。ここももう完全な都会だ……
「ん?あの店のマークはお前の印章じゃないかリネット」
「そうだよ!ちょっと前まで私が作った店だったんだ。遊技場っていってね、ゲームやスポーツができる遊び場だよ!」
「有料の遊び場?ギャンブルではないのか?」
「ちがうよー。純粋にゲームを楽しんでもらって帰る場所に作ってあるよ!これを見せたかったんだ!」
ずいぶん派手な店だな~!しかも相当でかいぞ。
賑やかで景気のいい音がピコピコジャラジャラと聞こえる。
店構えも色鮮やかで派手だ。
それでいて下品ではない。むしろまるで店自体が大きなオモチャのようだ。
「お前が作った店か……うむ、行こう」
「やったー!」
ふーむ、すさまじく賑やかだ。
だがうるさいというより好奇心を掻き立てる感じだな。
店内は明るく、何やらたくさんの箱のような机のような物。
鮮やかなよくわからん機械が目立つ。
ピコピコチリンチリンよく鳴るな。
「まずはお菓子ランド!コインを入れると傀儡人形を動かして飴玉や砂糖菓子を取れるんだー」
「ふむ……少しだけ取れるようになっているようだな。子供にはちょうどよかろう」
ピンクの台の上にドーム状のガラスのはまった機械だ。
中にはお菓子が山盛りで入っていた。
何やら楽しげな動きで傀儡人形が踊っている。
なるほど子供向けのからくりや魔法のおもちゃを有料で動かして遊ぶ感じなのだな。
「あっちはねえ、ぬいぐるみとかの景品を取るゲームで……あーでもこっちの方がわかりやすいかな!ピンボールゲーム!これは私が最初につくったやつだよ!」
「そういえばお前が昔作った玩具に似ているな」
「あれをもっとちゃんと作るとこうなるんだー」
なるほど、手前のちょっとしたバーだけ動かせてあとは愉快に玉が遊戯版の上を跳ねまわる感じか。なかなかワクワクする音を立てるなあ。
「あっちはミニゴーレムでやる格闘ゲームだよ!ゴーレムを動かして戦わせるんだー。友達いなくても自動で対戦もしてくれるよ!これはパーツ組み換え要素が楽しくてね!」
「……そういえば私も子供の頃はアリアとコマやゴーレムで遊んだな」
「おばーちゃんもなの!?そうそう、それを本格的にしたら楽しいかなって!」
小さな闘技場で手のひらサイズの騎士ゴーレムが魔法や格闘で戦っている。
デザインがいい……
ところで横にあるパーツショップとやらの部品の値段エグくないか?
「アリアは傀儡の扱いがうまいぞ。普通に戦う手段として使えるくらいにはな」
「そうだったの!?アリアおばあちゃんはいつもニコニコしてるイメージしかないや」
「……もう昔の事だ」
そういえば、狩りをしなくなってどれほどたったのか。
「あっちはバスケットゲームで、こっちはエアホッケー!向こうは無重力ゾーン!」
リネットは楽しそうに案内をする。どれもよくできている。
スポーツや作業の一番楽しい所をゲーム化してるのだな。
どの機械も操作するだけで楽しい音が鳴ったり動作自体が愉快に作ってある。
デザインセンスからしておそらくほとんどリネットが作ったものだ。
うちの孫は天才だ。もうどう少なく見積もっても天才だよ。
「ちょっとした軽食や飲み物も売るようにしたから大人も子供もみーんながワンコインで楽しめる遊び場なんだよ!」
満面の笑みで手を広げるリネット。
そうか、これがお前の成した事か。誰もが楽しめる遊び場を……か。
もうこの国は娯楽にこれだけの金をかけられるほど豊かになったのだな……
「リネット」
「なに?ど、どうかな?」
「良くやったな」
「えへへっ!」
思わず頭を撫でてしまうよ。
その場でくるくる回るお前の姿は最高にかがやいてるよ。
フォトロケットで撮ってしまったものな。
「せっかくだから少し遊んでいこーよ!」
「うむ、まあほどほどにな」
少し遊んでみたが危なかった。面白すぎる……!
まったくこの街には誘惑が多い。引き込まれてしまうよ。
とくに落ち物パズルとやらは。
遅くなったお詫びにアリアにはケーキを買って帰る。
「しかしなぜあの店を手放した?あれは誇るべきものだ」
「んー、なんていうかねえ……私、作った時は良いんだけどさ。維持管理になると余計なことしちゃうんだよ」
雪のちらつく街でリネットは昔を懐かしむようにぽつりぽつりと語りだした。
その笑顔には哀愁がどこかあった。
そうか、お前もそんな顔をする年になったのだな……
「で、気づいたら最初に私が好きだったものじゃなくなってた……だから売った方がいいんだ。ちゃんとその場所を好きでいてくれる人に。その方が、私も長く遊べるしね!」
そういえば、そんなこともあったとリンから聞いている。
もうちょっと幼い頃おもちゃを作って流行らせては欲を出して大失敗をしたとか。
作ったはいいものの手入れを怠ったり、量産すると安物になったり。
すぐ飽きて次の玩具を作り出したり。
だが、この子はそこからちゃんと学んだのだな。自分の向き不向きを。
「……成長したな」
「私ももう大人だからね!」
「そうか、そうだな」
この子が孫世代でもう第六世代まで行ってるからなあ……
それはまあ、落ち着くか。
だが世の中には年をとっても学ばぬ者もいる。ゼグラス侯の言う通りだ。
だがこの子はそこからちゃんと学んだ。褒めてやるべきだ。
「だがそれでも私はお前がちゃんと育ってうれしいよ」
「そんなもんかなあ?」
「そんなものだ」
遊戯のための店ができ、その辺の店でケーキを買える。
……この国も豊かになったものだ。
しかし私も学ばされたよ。
自分の作ったものを守るために、上手く扱える者へ渡す……手放す責任、か。