機動戦士ガンダムUC ― ヤクト・ドーガの残影 ― 作:tell M.G.
ゼクストのヤクト・ドーガは、なおも戦場の最前線にあった。
ファンネルとライフルを駆使し、無理やりに道をこじ開けていく。
その動きは鋭い――
だが。
「……違う」
後方のモニター越しに、リュウ・バーンは呟いた。
先ほどまで、立っていることすらままならなかったはずの人間の動きではない。
それでもなお戦い続ける姿。
(あれが……あの人の戦い方か)
圧倒される。
だが同時に、はっきりと分かることがあった。
「……鈍い」
本来の動きではない。
明らかに、反応が遅れている。
⸻
警告が走る。
「ヤクト・ドーガ、左肩被弾!
ファンネル、喪失!」
「……っ!」
リュウは反射的に駆け出した。
格納庫へ。
ギラ・ドーガの元へと。
「出ます!」
メカニックに向かって叫ぶ。
「出撃命令は――」
「それより、その身体で大丈夫なのか!?」
制止の声。
だが――
「もう十分休みました!」
食い気味に返す。
「それより……ゼクスト中尉が危ないんです!」
一歩、踏み込む。
「早く行かなきゃ!」
止める声を振り切り、コックピットへ滑り込む。
ハッチ閉鎖。
起動。
「リュウ・バーン、ギラ・ドーガ――出ます!」
⸻
宇宙へ。
機体は一直線に加速する。
ヤクト・ドーガの位置を捕捉。
(間に合ってくれ……!)
スラスターを全開にする。
視界に捉えた。
ヤクト・ドーガ。
その周囲を取り囲む、敵影。
リゼルとジェガン。
回避に徹している。
押されている。
「くそ……!」
ライフルを構える。
牽制射撃。
ビームが敵の軌道を遮る。
二機の注意が、こちらへ向く。
「ゼクスト中尉!無事ですか!」
通信を開く。
「何で来た……!」
即座に返る怒声。
「休んでいろと言った!」
「それは――お互いさまですよね!」
言い返す。
「早く離脱してください!」
間髪入れず続ける。
「敵は俺が引きつけます!」
一瞬の間。
「早く行ってください!」
ビームが走る。
回避。
機体を捻りながら、ジェガンへ照準を合わせる。
「そこだ!」
トリガー。
命中。
装甲が弾け、動きが鈍る。
間髪入れず接近。
サーベルを抜く。
「落ちろ!」
一閃。
ジェガンは両断され、爆散した。
そのまま、次の敵へ。
リゼル。
ライフルを撃ちながら、突撃する。
「さあ――!」
叫ぶ。
「今のうちに!」
さらに加速。
「早く行ってください!」
被弾したヤクト・ドーガが、ゆっくりと後退を始める。
「すぐに増援を呼ぶ!」
ゼクストの声。
「それまで持ち堪えろ!絶対だ!」
「了解!」
短く答える。
ギラ・ドーガがリゼルへと突っ込む。
サーベルを振りかざし、交差。
火花が散る。
その光景を背に。
ゼクストのヤクト・ドーガは後退していく。
「……待っていろ」
小さく、だが確かに呟く。
「必ず助けに戻る」
戦場に残されたのは――
リュウ・バーン。
ただ一人。