機動戦士ガンダムUC ― ヤクト・ドーガの残影 ―   作:tell M.G.

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第12話 帰還

ゼクストのヤクト・ドーガは、損傷した機体を庇うように後退していた。

 

呼吸は荒い。

だが、意識はまだ戦場にあった。

 

(リュウ……)

 

その名が、頭から離れない。

 

警告音。

鋭く、連続する。

 

正面宙域――強烈な光。

 

「――っ」

 

視界の先に、巨大な艦影が浮かぶ。

 

ネェル・アーガマ。

 

その主砲が、こちらを捉えていた。

 

エンドラ級母艦、ブリッジ。

 

「正面、ネェル・アーガマ、本艦をロックオン!」

 

オペレーターの声が張り上がる。

 

「ハイパー・メガ粒子砲――来ます!」

 

一瞬の静止。

 

そして――

 

閃光。

 

直撃。

 

艦体が激しく震動する。

 

「ぐああっ――!」

 

各所で火花が散り、警報が鳴り響く。

 

「機関部損傷!艦体中破!」

 

「後退します!これ以上は持ちません!」

 

それでも、艦は沈まない。

軋みながらも、ゆっくりと後退を始める。

次の瞬間。

 

母艦から、発光信号が放たれた。

 

「全機に通達!」

 

「モビルスーツ隊は直ちに後退、帰投せよ!」

 

「間に合わない者は――合流ポイントDに集結!」

 

戦場が、崩れる。

 

秩序だった隊列が解け、それぞれが離脱へと動く。

 

「……まだだ!」

 

ゼクストは叫んだ。

 

「まだ、あいつが戦っている!」

 

通信を開く。

 

「誰か――動ける機体はないのか!」

 

返答はない。

 

「頼む……!」

 

声が荒れる。

 

「リュウが――まだ!」

 

だが、その声は――

混乱と撤退の喧騒の中に、飲み込まれていった。

 

やがて

ゼクストは、帰投する。

 

ハッチが開く。

重い身体を引きずるように降り立つ。

視線が、自然と周囲を探す。

 

「……」

 

だが――

どこにもいない。

 

リュウ・バーンの姿は、なかった。

 

 

時間が、過ぎる。

 

合流ポイントD。

静かな宙域に、帰還した機体が集まる。

 

損傷した機体。

沈黙した機体。

 

その中で、ただ“待つ”。

 

やがて。

通信が入る。

 

「……現時刻をもって」

 

わずかな間。

 

「回収作業を終了とする」

 

誰も、何も言わない。

 

リュウ・バーン。

 

その名を呼ぶ者はいない。

 

その姿は――

 

どこにもなかった。

 

 

 

【エピローグ】

 

■ 付録記録:戦闘報告抜粋

 

分類:機密指定解除済み資料(抜粋)

出典:ネオ・ジオン残存戦力 行動記録

時期:宇宙世紀0096年/最終局面

 

 

■ 交戦宙域

メガラニカ周辺宙域

 

 

■ 交戦概要

敵連邦軍艦隊(旗艦ラー・カイラム級、及びネェル・アーガマ)との交戦を確認。

当該宙域において、複数回の局地戦闘および大規模戦闘が発生。

 

本交戦において、ネオ・ジオン残存艦隊は損害多数。

母艦級1隻中破、モビルスーツ部隊においても損耗率高し。

 

 

■ 特記事項

 

・親衛隊所属パイロット、ゼクスト・アーデ中尉

 ヤクト・ドーガを駆り前線にて戦闘を継続。

 戦闘中の体調不良が報告されるも、生存を確認。

 

 

・同隊所属、リュウ・バーン少尉

 ギラ・ドーガにて出撃後、別途ヤクト・ドーガへの一時搭乗記録あり。

 当該機体において複数の戦果を確認。

 

 最終局面においては、味方機の離脱支援を目的とした戦闘行動を確認。

 

 その後――

 

■ 状態

行方不明(MIA)

 

 

■ 備考

 

・最終交戦宙域において、該当機体の残骸は未確認。

・交戦記録の一部において、通常の機動パターンと異なる挙動が複数報告されているが、詳細は不明。

・同パイロットに関する追加調査は、戦後の混乱により中断。

 

 

■ 総括

 

当該戦闘における同少尉の行動は、部隊離脱成功に寄与した可能性が高い。

一方で、その最終状況については確認されておらず――

 

記録上は「未帰還」として処理される。

 

 

以上。

 

 

 

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