機動戦士ガンダムUC ― ヤクト・ドーガの残影 ― 作:tell M.G.
ネオ・ジオン残党拠点。
格納庫の一角で、
ヤクト・ドーガの適合試験が繰り返されていた。
候補となるパイロットは複数。
だが――
「……ダメだ」
モニターを見つめる整備員が、首を振る。
サイコミュは反応する。
だが、それだけだ。
機体は“応じていない”。
その中で、ただ一人――
反応が違う者がいた。
リュウ・バーン。
かつてニュータイプ研究所に在籍していた男。
「……ファンネル、起動」
低い声と共に、肩部ユニットが展開する。
三基のファンネルが、静かに浮かび上がった。
「行け」
次の瞬間。
ファンネルは、迷いなく軌道を描いた。
「……使えている?」
周囲がざわつく。
完全ではない。
動きは粗く、制御も不安定。
だが――
「他の連中とは違う」
それだけは、誰の目にも明らかだった。
⸻
試験終了後。
クバル・ジャンブは結論を下す。
「……現状では、こいつが一番だな」
視線は、リュウへ。
「暫定だが――」
一拍置く。
「ヤクト・ドーガのパイロットは、リュウ・バーンとする」
⸻
数日後。
その機体は、初めて実戦へと投入される。
けたたましい警報が、艦内に響き渡る。
「敵影接近!」
オペレーターの声が飛ぶ。
「連邦軍モビルスーツ――三!」
映し出される機影。
ジェガン。
哨戒部隊だ。
「迎撃しろ!」
クバルの号令が響く。
「ヤクト・ドーガ、ギラ・ドーガ、緊急発進!」
格納庫。
リュウは、コクピットへと滑り込む。
深く息を吐く。
「……行ける」
自分に言い聞かせるように呟く。
「リュウ・バーン――ヤクト・ドーガ、出ます!」
ヤクト・ドーガが、闇の宇宙へと飛び出した。
「敵ジェガン部隊、捕捉」
照準が展開される。
リュウは、迷わなかった。
「ファンネル――行け!」
三基のファンネルが、一斉に射出される。
高速で散開。
右側へ展開した敵機へと向かう。
ジェガンが旋回する。
回避機動。
だが――
リュウは目を閉じた。
「……そこだ」
頭の中に、敵の位置を描く。
見えた――気がした。
その瞬間。
「撃て!」
ファンネルが、同時にビームを放つ。
交差する光。
逃げ場はない。
ジェガンは反応すら間に合わず――
爆散した。
「……1機撃破」
「次!」
リュウは即座に切り替える。
別のジェガンが、
ギラ・ドーガと交戦している。
再び、意識を集中する。
敵の位置を“感じる”。
「……見えた!」
ファンネルが再び攻撃態勢に入る。
だが――
「なに!?」
一基のファンネルの反応が、突然消えた。
映像が割り込む。
別のジェガンが、ライフルで迎撃していた。
「ファンネルが……!」
「くそっ!」
リュウは即座に判断を切り替える。
ヤクト・ドーガのライフルを構える。
照準、固定。
発射。
一射――外れる。
二射――回避される。
三射――
「……堕ちろ!」
次の瞬間。
ビームが直撃する。
ジェガンは爆散した。
残る一機。
ギラ・ドーガと連携しながら、追い詰める。
二基のファンネルが、軌道を描く。
挟み込むように――
同時攻撃。
最後のジェガンも、爆発に包まれた。
戦闘終了。
静寂が戻る。
リュウは、ゆっくりとファンネルを回収する。
残るのは――二基。
「……一つ、やられたか」
小さく呟く。
その声に、悔しさが滲む。
ヤクト・ドーガと、ギラ・ドーガは帰投する。
初陣は、勝利。
だが――
それは“完全な勝利”ではなかった。
ヤクト・ドーガ。
その力は、まだ引き出されていない。
そしてリュウもまた――
“選ばれた者”には、届いていなかった。