機動戦士ガンダムUC ― ヤクト・ドーガの残影 ― 作:tell M.G.
数日後――
前回の戦闘データは、ニュータイプ研究所へと送られていた。
研究所内。
モニターに映し出されるのは、
ヤクト・ドーガの戦闘記録。
ファンネルの挙動。
回避パターン。
射撃精度。
一通り目を通した後――
責任者、ダッジ・ドルビーは小さく呟いた。
「……こんなものか」
データを停止する。
確かに、戦果は出ている。
ファンネルによる撃墜。
戦術判断も悪くはない。
だが――
「違うな」
静かに首を振る。
「これは……ニュータイプの戦い方ではない」
言葉は、冷たかった。
「この程度なら、通常のパイロットでも到達できる」
期待していたものではない。
求めているのは――もっと先。
ダッジは目を細める。
そして、決断した。
「……例のところへ連絡を取れ」
部下が顔を上げる。
「至急だ」
⸻
数日後。
ネオ・ジオン残党の拠点艦。
警報が鳴り響く。
「敵影接近!」
艦内が一気に緊張に包まれる。
リュウ・バーンは、すぐさま整備デッキへと走った。
だが――
『待機せよ』
艦内放送が割り込む。
『敵ではない。友軍と思われる』
ざわめきが広がる。
『だが、念のため各機搭乗。即応体制を維持せよ』
リュウは足を止めることなく、コクピットへと乗り込む。
ヤクト・ドーガ。
シートに身体を預ける。
「……何だ?」
小さく呟く。
やがて、格納庫のハッチが開く。
侵入してきたのは――
三機の
ギラ・ズール。
「……袖付きか」
誰かが呟く。
ネオ・ジオン残党――通称「袖付き」。
格納庫に降り立った一機から、パイロットが降りる。
ブラウンヘアーの男性。
その佇まいは少し女性のように見えた。
クバル・ジャンブが前に出る。
「……なぜここが分かった?」
短く問う。
パイロットは、淡々と答えた。
「ニュータイプ研究所からの連絡だ」
一歩、歩み寄る。
「この宙域に残党がいると聞いた」
視線は揺れない。
「今は、少しでも戦力が必要だ」
その声には、迷いがなかった。
「我々は親衛隊だ」
「共に戦える者を探している」
一拍置く。
「――協力できないか?」
クバルは黙る。
その提案の意味を、測るように。
その時だった。
パイロットの視線が、ふと逸れる。
斜め右前方――
格納庫の奥。
そこにあったのは――
ヤクト・ドーガ。
パイロットは、足を止めた。
そのまま、動かない。
ただ――見つめている。
コクピット内。
リュウは異変に気づいた。
「……なんだ?」
計器が、微かに光る。
サイコミュが反応している。
だが――
「俺は……何もしてないぞ……」
操作はしていない。
それでも、機体が“応じている”。
一瞬だけ。
そして――
何事もなかったかのように、沈黙した。
パイロットは、ゆっくりと瞬きをする。
まるで、何かから“戻ってきた”ように。
「……あのモビルスーツは?」
クバルへ問いかける。
「あれは――」
クバルは答える。
「ヤクト・ドーガだ」
一拍置く。
「ニュータイプ専用機だ」
パイロットは、もう一度その機体を見る。
今度は、はっきりと。
「……ヤクト・ドーガ」
小さく、その名をなぞる。
その視線の意味を、理解できる者はいない。
だが――
確かに、何かが“繋がった”。
そのパイロットの名は――
ゼクスト・アーデ。