機動戦士ガンダムUC ― ヤクト・ドーガの残影 ― 作:tell M.G.
ネオ・ジオン残党は、袖付き部隊と合流した。
新たな拠点艦。
統合された戦力。
名目上は協力関係――
だが、その実態は選別でもあった。
⸻
格納庫。
袖付きの兵士たちが集まり、各機体を見て回っている。
戦力の確認。
そして――値踏み。
その中に、彼もいた。
ゼクスト・アーデ。
彼の足は、自然と止まる。
視線の先。
そこにあるのは――
ヤクト・ドーガ。
「……やっぱり」
小さく呟く。
理由は分からない。
だが、惹かれる。
コクピットでは、リュウ・バーンが調整作業をしていた。
その時。
「少し、見せてもらえないか?」
声に振り向く。
そこにいたのは、ゼクストだった。
ブラウンヘアー。
どこかあどけなさの残る顔立ち。
「……あ」
一瞬、言葉に詰まる。
(女性みたいだな……)
思わず、そんな感想が浮かぶ。
「あ、あぁ……どうぞ」
ゼクストは軽やかにコクピットへと入り込む。
「君が、この機体のパイロット?」
「あっ……そうです」
ゼクストは、興味深そうに周囲を見回す。
「じゃあ――ニュータイプなんだ」
その一言に、リュウの胸がわずかにざわつく。
「戦闘ログ、見せてもらえないかな」
悪気のない声。
「ニュータイプって、どんなふうに戦うのか……見てみたい」
リュウは一瞬、躊躇した。
(……やめてくれ)
心の奥で、何かが引っかかる。
自分が、この機体を扱いきれていないこと。
それを――見透かされるような気がした。
だが。
「……どうぞ」
断れなかった。
ゼクストは、データを確認する。
無言。
ただ、静かに。
やがて。
「……ありがとう」
ふっと微笑む。
そのまま、コクピットから降りた。
去り際。
ほんの一瞬だけ。
ゼクストは振り返る。
ヤクト・ドーガを、見つめる。
何も言わずに――離れていった。
⸻
数日後。
リュウは呼び出される。
「ヤクト・ドーガの件だ」
クバル・ジャンブが切り出す。
「袖付きの連中が、興味を示している」
リュウは黙って聞く。
「サイコミュを扱える者がいるとは思えんが……」
一拍置く。
「テストを行いたいそうだ」
「これは部隊再編の一環でもある」
言葉は冷静だった。
「パイロットの技量を、示す必要がある」
そして。
決定的な一言。
「――ヤクト・ドーガを、真に扱える者がいるならば」
「その者が搭乗すべきだ」
リュウの心が、わずかに揺れる。
「これはチャンスでもある」
クバルは続ける。
「貴様が最適であると証明すればいい」
「……命令だ」
最後に付け加える。
「みすみすとこのまま機体を渡すような事にならぬようにしてこい」
「……了解しました」
リュウは、頷いた。
だが――
胸の奥に、不安が残る。
⸻
試験当日。
ゼクスト・アーデが、
ヤクト・ドーガに搭乗する。
初搭乗。
それにもかかわらず――
「……嘘だろ」
誰かが、呟く。
機体が、応えていた。
まるで、最初から知っていたかのように。
ファンネル未使用の模擬戦。
ゼクストは機動力を最大限に引き出し、圧倒する。
無駄がない
迷いがない。
そして――
ファンネル。
展開。
制御。
攻撃。
すべてが、正確だった。
まるで、自分の手足のように。
「……これが」
誰かが息を呑む。
「ニュータイプ……」
結果は、明白だった。
誰が見ても――
ゼクスト・アーデ以上に、
ヤクト・ドーガを扱える者はいない。
それは同時に――
一つの事実を意味していた。
リュウ・バーンは、
この機体を降りることになる。
部屋。
「くそっ……!」
拳が、壁を叩く。
鈍い音が響く。
「なんだよ……」
荒い息。
感情が抑えきれない。
「いきなり現れて……」
視線が揺れる。
「オレの居場所……」
声が震える。
「奪っていくなよ……!」
視界が、滲む。
数日後。
決定が下される
ヤクト・ドーガは――
袖付き部隊へ編入された。