機動戦士ガンダムUC ― ヤクト・ドーガの残影 ― 作:tell M.G.
艦内に、鋭い警報が響き渡った。
「敵部隊接近!数、六!
通常より高速で接近中!」
ブリッジの声が重なる。
「識別――ゲタ付きジェガン四機、及びリゼル二機!ウェイブライダー形態!」
空気が一気に張り詰める。
「全機、迎撃!緊急発進!」
カタパルトが次々と火を吹いた。
先頭を切るのは、ゼクスト・アーデのヤクト・ドーガ。
それに続き、親衛隊の機体群が迷いなく宇宙へと躍り出る。
遅れて、リュウたちも発進した。
⸻
展開直後、通信が開く。
「君たちは後方支援に回れ」
ゼクストの声。
「前衛は我々が引き受ける。――まあ、全て食い止めてみせるがね」
余裕すら滲む声音。
リュウは短く答えた。
「……了解」
⸻
後方宙域。
リュウたちは簡易的な防衛ラインを展開する。
だが――
「……支援、ね」
思わず呟く。
長距離砲もなければ、特別な装備もない。
あるのは、標準的な火器だけ。
要するに――
(邪魔をするな、ってことか)
前方で、光が交差する。
ビームの閃光が幾重にも重なり、戦闘の激しさを物語っていた。
リュウは、それを睨みつけるように見ていた。
⸻
前衛宙域。
ゼクストのヤクト・ドーガが滑るように機動する。
「遅いな」
放たれたファンネルが、正確にゲタを捉える。
次の瞬間、爆光。
推進ユニットを失ったジェガンが体勢を崩す。
そこへ、親衛隊のドライセンが割り込んだ。
「逃がすか!」
バズーカが火を吹き、ジェガンを追い込む。
だが――
「来るか」
二機のリゼルが、モビルスーツ形態で戦線に割り込んだ。
鋭い機動。
連携された動き。
親衛隊の隊列に、一瞬の“乱れ”が走る。
「……やるな」
ゼクストは低く呟く。
予想以上に手強い。
その隙だった。
一機のリゼルが、戦線の外縁へと滑り出る。
「抜けるつもりか」
ゼクストは即座にファンネルを向けた。
「行かせるか――」
放たれるビーム。
しかし――
「何……!?」
もう一機のリゼルが、瞬時にウェイブライダーへと変形する。
その上に、ジェガンが滑り込むように乗った。
高速侵入。
「しまった……!」
防衛ラインを、抜ける。
⸻
後方宙域。
「……来る」
リュウが呟いた。
まだセンサーには明確に映っていない。
だが――分かる。
(ここだ)
スロットルを一気に開く。
「おい、どこへ行く!?」
僚機の声を無視し、ギラ・ドーガを加速させた。
先回りする。
直感ではない。
“動き”が見えた。
次の瞬間。
突破してきたリゼルとジェガンが、視界に飛び込む。
「やっぱりな……!」
ライフルのトリガーを引く。
先手。
待ち伏せされた形になったジェガンは、回避が遅れる。
ビームが直撃し、爆散した。
だが、終わらない。
リゼルが変形を解き、ビームサーベルを抜く。
「来るか……!」
リュウもサーベルを抜き、迎え撃つ。
激突。
火花が散る。
「速い……!」
翻弄される。
機動力が違う。
押し込まれる――
その瞬間。
リゼルの背部が、弾け飛んだ。
「!?」
何が起きたのか、一瞬理解できない。
次の瞬間。
後方からのビームと、ファンネルの軌跡。
ヤクト・ドーガ。
ゼクストの援護だった。
追撃。
リゼルは回避しきれず、そのまま爆散した。
静寂。
リュウは浅く息を吐く。
「……助かった、か」
少し離れた宙域。
ゼクストは、リュウのギラ・ドーガを見ていた。
「……」
あの動き。
防衛ラインを抜ける軌道を――読んでいた。
「先回り、だと……?」
偶然ではない。
あのタイミング。
あの位置取り。
「……違う」
小さく呟く。
「偶然ではない」
わずかな沈黙。
そして――
「……面白い」
その声は、ほんの僅かに変わっていた。