機動戦士ガンダムUC ― ヤクト・ドーガの残影 ―   作:tell M.G.

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第8話 兆し

艦内に、鋭い警報が響き渡った。

 

「敵部隊接近!数、六!

 通常より高速で接近中!」

 

ブリッジの声が重なる。

 

「識別――ゲタ付きジェガン四機、及びリゼル二機!ウェイブライダー形態!」

 

空気が一気に張り詰める。

 

「全機、迎撃!緊急発進!」

 

カタパルトが次々と火を吹いた。

 

先頭を切るのは、ゼクスト・アーデのヤクト・ドーガ。

それに続き、親衛隊の機体群が迷いなく宇宙へと躍り出る。

 

遅れて、リュウたちも発進した。

 

 

展開直後、通信が開く。

 

「君たちは後方支援に回れ」

 

ゼクストの声。

 

「前衛は我々が引き受ける。――まあ、全て食い止めてみせるがね」

 

余裕すら滲む声音。

リュウは短く答えた。

 

「……了解」

 

 

後方宙域。

 

リュウたちは簡易的な防衛ラインを展開する。

 

だが――

 

「……支援、ね」

 

思わず呟く。

 

長距離砲もなければ、特別な装備もない。

あるのは、標準的な火器だけ。

 

要するに――

 

(邪魔をするな、ってことか)

 

前方で、光が交差する。

 

ビームの閃光が幾重にも重なり、戦闘の激しさを物語っていた。

 

リュウは、それを睨みつけるように見ていた。

 

 

前衛宙域。

 

ゼクストのヤクト・ドーガが滑るように機動する。

 

「遅いな」

 

放たれたファンネルが、正確にゲタを捉える。

 

次の瞬間、爆光。

 

推進ユニットを失ったジェガンが体勢を崩す。

そこへ、親衛隊のドライセンが割り込んだ。

 

「逃がすか!」

 

バズーカが火を吹き、ジェガンを追い込む。

だが――

 

「来るか」

 

二機のリゼルが、モビルスーツ形態で戦線に割り込んだ。

 

鋭い機動。

連携された動き。

 

親衛隊の隊列に、一瞬の“乱れ”が走る。

 

「……やるな」

 

ゼクストは低く呟く。

予想以上に手強い。

 

その隙だった。

 

一機のリゼルが、戦線の外縁へと滑り出る。

 

「抜けるつもりか」

 

ゼクストは即座にファンネルを向けた。

 

「行かせるか――」

 

放たれるビーム。

しかし――

 

「何……!?」

 

もう一機のリゼルが、瞬時にウェイブライダーへと変形する。

 

その上に、ジェガンが滑り込むように乗った。

 

高速侵入。

 

「しまった……!」

 

防衛ラインを、抜ける。

 

 

後方宙域。

 

「……来る」

 

リュウが呟いた。

まだセンサーには明確に映っていない。

 

だが――分かる。

 

(ここだ)

 

スロットルを一気に開く。

 

「おい、どこへ行く!?」

 

僚機の声を無視し、ギラ・ドーガを加速させた。

先回りする。

直感ではない。

 

“動き”が見えた。

 

次の瞬間。

 

突破してきたリゼルとジェガンが、視界に飛び込む。

 

「やっぱりな……!」

 

ライフルのトリガーを引く。

先手。

 

待ち伏せされた形になったジェガンは、回避が遅れる。

 

ビームが直撃し、爆散した。

だが、終わらない。

 

リゼルが変形を解き、ビームサーベルを抜く。

 

「来るか……!」

 

リュウもサーベルを抜き、迎え撃つ。

激突。

 

火花が散る。

 

「速い……!」

 

翻弄される。

機動力が違う。

押し込まれる――

 

その瞬間。

リゼルの背部が、弾け飛んだ。

 

「!?」

 

何が起きたのか、一瞬理解できない。

次の瞬間。

後方からのビームと、ファンネルの軌跡。

 

ヤクト・ドーガ。

 

ゼクストの援護だった。

追撃。

 

リゼルは回避しきれず、そのまま爆散した。

 

静寂。

 

リュウは浅く息を吐く。

 

「……助かった、か」

 

少し離れた宙域。

ゼクストは、リュウのギラ・ドーガを見ていた。

 

「……」

 

あの動き。

防衛ラインを抜ける軌道を――読んでいた。

 

「先回り、だと……?」

 

偶然ではない。

あのタイミング。

あの位置取り。

 

「……違う」

 

小さく呟く。

 

「偶然ではない」

 

わずかな沈黙。

そして――

 

「……面白い」

 

その声は、ほんの僅かに変わっていた。

 

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