機動戦士ガンダム 試験運用Zタイプザクー 選ばれなかった者たち ー」   作:tell M.G.

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宇宙世紀――ネオ・ジオンの新たな力を求める研究所。

そこでは、ニュータイプ候補生たちによる過酷な訓練が行われていた。

訓練生リュウ・バーンは、仲間たちと共に切磋琢磨する日々を送っていたが、ある日、シャア・アズナブルの来訪をきっかけに、その日常は大きく揺らぐ。

選ばれたのは、ギュネイ・ガスとライン・ジェノーヴァ。

しかし、誰よりも実力を誇っていたディーン・グレイは、その選考から外される。

「何が違う――?」

答えを得られぬまま、ディーンはやがて己の正しさを証明するため、研究所に眠る試作機――ジオングへと乗り込む。

暴走する圧倒的な力。

迎撃に出るザク部隊は、次々と撃墜されていく。

混乱の中、リュウは自ら志願する。

友を止めるために――。

Zタイプザクに乗り込み、戦場へ向かうリュウ。

それは敵を倒す戦いではない。

“選ばれなかった者”の心に、届くための戦いだった。

これは、選ばれなかった者たちが紡ぐ、もう一つの戦場の記録。


第1話 選ばれる者、選ばれぬ者

警報音が、訓練宙域に鋭く響いていた。

 

ペイント弾だらけのケイト・リードの機体は、すでに撃墜判定を受けていた。

 

「はぁ……やっぱり強すぎるよ、あの機体」

 

コクピットから降りて来るなり、ため息混じりの声が漏れる。

 

「私だって、あれに乗れたら勝てるかもしれないのに」

 

軽口のように笑うその言葉に、

 

「ばーか。機体性能が全てじゃないさ」

 

ギュネイ・ガスが言った。

自信に満ちた、軽快な口調。

 

「交代だ。まあ見てろって。それを俺が証明してやる」

 

一拍置いて、続ける。

 

「な、リュウ。行くぞ!」

 

「あ、あぁ……」

 

リュウ・バーンは、小さく応じた。

その声には、わずかな不安が滲んでいる。

 

二機のZタイプザクが、発進準備に入る。

装甲の隙間からスラスターの光が漏れ、機体がゆっくりと浮き上がった。

 

「模擬戦とはいえ、負けるなんて性に合わないんでね」

 

ギュネイが笑う。

 

「勝ちに行くぞ」

 

推進剤を吹き上げ、二機は戦闘宙域へと飛び出した。

 

その先に、ただ一機。

 

静かに浮かぶ異形の機体――

ジオング

 

「……来たか」

 

低く、落ち着いた声が通信に乗る。

教官、ブラッド・ザイン。

 

「始めるぞ」

 

その一言と同時に、空気が張り詰めた。

 

――戦闘開始。

 

ギュネイの機体が先行する。

迷いのない加速。照準。発射。

 

ビームが一直線に走る。

だが――

 

ジオングは、それを“当然のように”回避した。

 

まるで、最初から分かっていたかのように。

 

➖➖➖➖➖➖

 

「くそっ!何なんだよ、あの軌道はよ!そもそも機動力に差がありすぎるだろ!」

 

格納庫脇のモニタールーム。

先ほどの戦闘を終えたばかりのギュネイ・ガスが、不満をぶちまけていた。

 

「さっき“機体の性能じゃない”って言ってたのは誰だったかしら?」

 

ケイト・リードが、腕を組みながら呆れたように言う。

 

「うるせえよ。あれはいくら何でもズルいだろ」

 

ふてくされた返答に、ケイトは小さく笑った。

 

「はいはい。あんたの実力はちゃんと知ってるわよ。結構いいところまで行ってたしね」

 

そのやり取りの横で、リュウ・バーンはモニターを見つめたまま呟いた。

 

「……ごめん。オレが、うまく立ち回れなかったから……」

 

画面の中では、次の模擬戦がすでに始まっている。

 

「もう少し上手く扱えたら、勝てたかもしれないのに」

 

「本当だぜ。リュウがもう少しなあ――」

 

ギュネイは言いかけて、ふっと笑う。

 

「……なんてな、冗談だよ。あれは仕方ねえ。次は勝とうぜ!」

 

リュウは小さく頷いたが、その視線は画面から離れなかった。

 

 

モニターの中。

 

Zタイプザクを駆るのは、

ライン・ジェノーヴァとディーン・グレイ。

 

相対するのは、教官機――

ジオング

 

「……来るぞ」

 

誰かが小さく呟く。

 

ラインは冷静に敵を捕捉していた。

軌道を読み、無駄のない動きで位置を取る。

 

一方でディーンは、前に出る。

 

鋭く、速く、迷いなく。

その操縦技術は、誰の目にも明らかだった。

 

「速え……」

 

ギュネイが思わず漏らす。

二機の動きが噛み合う。

 

ディーンが牽制し、圧をかける。

ジオングの意識を前方へ引きつけ――誘い込む。

 

その瞬間、ラインが動いた。

死角から滑り込み、包囲を完成させる。

 

「今だ」

 

短い声。

 

次の瞬間、ジオングのオールレンジ攻撃が展開される。

分離した腕部から、無数のペイント弾が放たれた。

 

弾幕が宙域を埋め尽くす。

だが――

 

二機は、それを回避する。

まるで軌道を“読んでいる”かのように。

 

「……マジかよ」

 

誰かが息を呑む。

挟撃。

 

背後にライン。

正面にディーン。

 

同時に引き金が引かれた。

ペイント弾が命中する。

 

ジオングの胸部と頭部に、鮮やかな色が弾けた。

 

「……そこまでだ」

 

低い声が、室内にも響いた。

ブラッド・ザインの通信だった。

 

「ライン、ディーン。お前たちの勝ちだ」

 

モニター越しでも分かる静寂。

そして――

 

「まあ、オレたちが組めば当然だな」

 

ディーンの声が、わずかに誇らしげに響く。

 

「オレが先行でラインがフォロー。連携は完璧――無敵のコンビってやつだな」

 

「……お前は操作が粗いことが多い」

 

ラインの返答は冷たい。

 

「技量が高いのは認めるが、あれでは長くはもたない。今回は運が良かっただけだ」

 

一瞬の沈黙。

 

「そんなことねえさ」

 

ディーンの声が低くなる。

 

「機体にハンデがなけりゃ――オレは一人でも勝てた」

 

モニタールームの空気が、わずかに変わる。

 

ラインは何も言わない。

ただ静かに、前を見ていた。

 

研究所の一室。

薄暗い空間に、モニターの光だけが浮かび上がっていた。

 

再生されているのは、先ほどの模擬戦記録。

 

Zタイプザクと

ジオングの交戦ログ。

 

男は無言でそれを見つめている。

 

まず映し出されるのは――ギュネイ・ガス。

 

積極的に前へ出る機動。

リスクを恐れない判断。

その中に、確かな適応力が見える。

 

「……いいな」

 

短く、しかし確かな評価。

 

次に切り替わる。

 

リュウ・バーン。

 

慎重な動き。

そして迷いが多く、決定打に欠ける。

男は何も言わない。

ただ、わずかに視線を動かしただけだった。

 

そして――ライン・ジェノーヴァ。

 

「……」

 

一瞬の沈黙。

回避。位置取り。先読み。

 

「こちらは……反応ではないな」

 

低く呟く。

 

「先読みか」

 

最後に、ディーン・グレイ。

 

荒々しい軌道。

だが、その中にある圧倒的な操作精度。

 

「……粗いが、速い」

 

評価はする。だが――

 

それ以上は、続かない。

わずかに思考する間。

やがて、男は静かに端末を操作した。

 

選別リストが表示される。

迷いはない。

名前が入力されていく。

 

――ギュネイ・ガス

――ライン・ジェノーヴァ

 

そこで、手が止まる。

 

ディーン・グレイのデータが、画面に残っている。

 

「……」

 

ほんの一瞬。

だが確かに、“考えた”。

しかし――

 

「まだだな」

 

その一言で、切り捨てる。

リストが確定される。

男はゆっくりと立ち上がった。

その赤い軍服が、わずかに揺れる。

そして、扉へと向かう。

 

「直接、見ておくか」

 

静かに開く扉。

光が差し込む。

その姿が、はっきりと現れる。

 

――シャア・アズナブル

 

 

 

 

 

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