機動戦士ガンダム 試験運用Zタイプザクー 選ばれなかった者たち ー」   作:tell M.G.

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第2話 否定

訓練が、いつものように続いていた。

 

機体シミュレーション。

戦術講義。

単調で、だが確実に実力を削り出していく時間。

 

その最中――

 

館内放送が、不意に割り込んだ。

 

『ギュネイ・ガス、ライン・ジェノーヴァ。両名は直ちに第一ミーティングルームへ来るように』

 

一瞬、空気が止まる。

 

訓練生たちが顔を上げ、ざわめきが広がった。

 

「……呼び出し?」

 

誰かが小さく呟く。

ギュネイは軽く肩をすくめ、立ち上がる。

 

「なんだよ、急に」

 

一方、ラインは無言のまま席を立った。

二人はそのまま、教室を後にする。

扉が閉まる音だけが、やけに響いた。

 

「……2人だけ呼び出されるなんて、アイツら何したんだ?」

 

ディーン・グレイが、訝しげに言う。

 

「さあ……?」

 

リュウ・バーンは曖昧に首を傾げた。

 

「でも、あの2人なら……何か特別な話をされるのかも」

 

「特別な話って、例えばどんな?」

 

ケイト・リードが興味深そうに身を乗り出す。

 

「わからないよ。でも……この前、シャア・アズナブルが来てた時、あの2人と話してたし」

 

その言葉に、空気がわずかに変わる。

ディーンの眉が、ぴくりと動いた。

 

「……あの2人が選ばれるなら、オレが呼ばれないわけないだろ?」

 

吐き捨てるように言う。

 

「オレは模擬戦で教官に勝った。ギュネイは負けただろ?そんな話じゃない」

 

一瞬の間。

 

「何かやらかして、忠告でもされてるんだろうよ」

 

ケイトがすぐに返す。

 

「ギュネイはともかく、ラインがそんな風に言われるなんて考えられないよ」

 

その言葉に、ディーンは何も返さない。

ただ――

 

二人が出ていった扉を、じっと見つめていた。

 

その視線は、わずかに鋭い。

何かを押し殺すように。

あるいは――

 

まだ形にならない感情を、確かめるように。

 

 

二人が抜けた後も、訓練は何事もなかったかのように続いた。

 

だが――

誰もが、どこか落ち着かなかった。

 

そしてその日の終わり。

 

ギュネイ・ガスとライン・ジェノーヴァが戻ってきた。

 

「ねえ、何の話だったの?」

 

ケイト・リードが、すぐに駆け寄る。

 

「あ、ああ……まあ、何だ。大した話じゃなかったよ」

 

ギュネイはわずかに視線を逸らす。

 

「……いずれ分かる」

 

隣のラインは、何も言わない。

ただ静かに立っていた。

 

「余計気になるよー。教えてよー」

 

ケイトが食い下がるが、ギュネイは苦笑するだけだった。

その様子を――

ディーン・グレイは、横目で黙って見ていた。

 

一言も発さずに。

ただ、じっと。

 

リュウ・バーンもまた、二人を見ていた。

 

「……やっぱり」

 

小さく呟く。

 

「大事な話、されたんだ」

 

確証はない。だが――直感だった。

 

 

翌日。

 

研究所内に、緊急放送が流れる。

 

『通達。ギュネイ・ガス、ライン・ジェノーヴァ両名は、明日付けでネオ・ジオン艦隊へ編入。本日をもって本研究所での訓練を終了とする』

 

一瞬、静寂。

 

そして――ざわめきが爆発する。

 

「はあ!?なによそれ!」

 

ケイトが声を上げる。

 

「昨日の呼び出しってそれ!?なんで黙ってたのよ!」

 

「……悪い」

 

ギュネイが頭をかく。

 

「口外するなって命令でさ」

 

「すまない」

 

ラインが短く続ける。

リュウは、二人に歩み寄った。

 

「……おめでとう」

 

少し寂しそうに笑う。

 

「すごいよ。本当に」

「でも……いなくなるのは、正直きついな」

 

「で、いつ行くの?」

 

ケイトが問う。

 

「明日だ」

 

ラインの返答は、あまりにもあっさりしていた。

 

「えぇ!?」

 

ケイトが声を裏返す。

 

「送別会もできないじゃん!早すぎるって!」

 

その空気を――

 

乱暴に切り裂く声があった。

 

「――何でだよ」

 

低く、押し殺した声。

ディーンだった。

 

「何でお前ら二人なんだよ!」

 

一歩、前に出る。

 

「オレは勝ったんだぞ!」

「模擬戦で教官に勝ったのはオレだ!」

 

「オレはお前らに引けを取らない……いや、それ以上のはずだ!」

 

拳を握りしめる。

 

「なのに――」

「何でオレじゃない!!」

 

空気が凍りつく。

誰も、言葉を発せない。

その時――

 

「理由が知りたいか?」

 

静かな声が、背後から響いた。

全員が振り返る。

 

そこに立っていたのは――

シャア・アズナブル

 

赤い軍服。

揺るがない視線。

 

ディーンを、まっすぐに見据えている。

 

「貴様は優秀だ」

 

淡々と告げる。

 

「技量も高い」

 

一瞬の沈黙。

 

「だが、“先が見えていない”」

 

その一言が、突き刺さる。

 

「貴様の動きは速い。だがそれだけだ」 

 

「戦場で必要なのは、“先を読む力”だ」

 

「それが無ければ――いずれ死ぬ」

 

冷酷なまでの断定。

ディーンの表情が歪む。

 

シャアは続ける。

 

「今回、選ばれたのは」

 

一拍。

 

「ギュネイ・ガスとライン・ジェノーヴァだ」

 

視線は逸らさない。

 

「これが結果だ」

 

そして

わずかに、言葉を落とす。

 

「……今回は、な」

 

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