機動戦士ガンダム 試験運用Zタイプザクー 選ばれなかった者たち ー」 作:tell M.G.
「終わりだ!!」
ディーン・グレイの叫びが、戦場に響く。
その視線の先――
ジオングは、なおもブラッドの機体を狙っていた。
照準固定。
ビーム発射――
その瞬間。
ジオングの左肩装甲が、背後から弾け飛んだ。
「やめろ!!ディーン!!」
リュウの声。
同時に放たれた、有線誘導式ビーム攻撃。
死角からの一撃が、確かにジオングを捉えていた。
ゆっくりと――
ジオングが振り返る。
「……貴様ァ!!」
ディーンの怒声。
次の瞬間、ターゲットが切り替わる。
リュウへ。
無数のビームが放たれる。
「くっ……!」
ギリギリで回避するリュウ。
だが、その軌道は異常だった。
完全に“読まれている”。
そこへ――
「リュウ!!」
ケイトの機体が滑り込む。
放たれたビームが、ジオングの右腕を捉えた。
直撃。
右腕、爆散。
「なに……!?」
ディーンの声が揺れる。
初めての“被弾”。
視線が、ケイトの機体を捉える。
「お前ごときに……!」
怒りが膨れ上がる。
「傷つけられるなんて……そんなのは許されないんだよ!!」
左腕が上がる。
ビーム発射。
直撃。
ケイト機の右脚付け根に命中。
機体が悲鳴を上げる。
「きゃあああっ!!」
爆発寸前。
ケイトは即座に脱出した。
直後、機体が爆散する。
「ケイト!!」
リュウが叫ぶ。
だが、すぐ近くにいたザクが彼女を回収する。
そのまま離脱。
命は、繋がった。
それを見届けたリュウの目が、変わる。
「……もう許さない」
低く。
押し殺した声。
「ディーン……いい加減にしろよ」
ゆっくりと、機体を前へ出す。
「……もう、怒ったからな!!」
ジオング。
左腕のみの状態。
残った腕でビームを発射しようとしたが思い通りに動かない。
「⁈、さっきの攻撃のせいか!」
「くそっ!」
だが――
腰部からビームが放たれる。
「ぐっ……!」
リュウ機、左脚に被弾。
機体バランスが崩れる。
それでも――止まらない。
前へ出る。
「終わらせる!!」
有線誘導式ビーム攻撃、展開。
ビームが収束する。
そして――
ジオングの左腕を、破壊。
「なっ……!!」
ディーンの動揺。
「やりやがったな……!!」
怒りと焦りが混じる。
「お前なんかに……オレがやられるなんて――ありえない!!」
腰部ビーム、連射。
至近距離。
回避不能。
直撃。
リュウ機、右腕破壊。
各部、機能低下。
警告音が鳴り響く。
だが――
「まだだ……!」
左腕が残っている。
視線は、逸らさない。
「ディーン!!」
最後の呼びかけ。
返答はない。
ならば――
「これで終わりだ!!」
有線誘導式ビーム攻撃。
死角へ回り込む。
背後。
一点集中。
放たれたビームが――
ジオングの胴体を、貫いた。
その瞬間。
異変。
ジオングの頭部が――分離する。
「なに……!?」
リュウの目が見開かれる。
ヘッドユニットが単独で飛翔。
後退しながら――
口部からビーム発射。
回避――間に合わない。
直撃。
リュウ機、頭部破壊。
センサー沈黙。
機体、完全停止。
静寂。
遠ざかっていく、ジオングの頭部。
その先には――
残存するザク部隊。
包囲。
一斉射撃。
光が、収束する。
そして――
爆発。
ジオングは、光となって散った。
【エピローグ】
爆発の光が、ゆっくりと消えていく。
残光だけが、戦場に漂っていた。
その中心にあったはずの機体は――もう、どこにもない。
「……ディーン」
リュウ・バーンは、震える声で呟く。
「ディーン!!」
叫びが、虚空に吸い込まれていく。
返事は、ない。
「……バカやろう」
視界が滲む。
涙で、何も見えない。
それでも――目を逸らすことができなかった。
その時。
ふと――
何かが“触れた”。
声とも、感覚ともつかないもの。
頭の奥に、直接響く。
「……すまなかったな」
「……っ!?」
リュウが顔を上げる。
「ディーンか……!?」
思わず叫ぶ。
「どこだ!?生きてるのか!?おい!!」
返事は――確かにあった。
だが、声ではない。
“直接、届く”感覚。
「もう……自分でも止められなかった」
静かな声。
どこか、穏やかで――
あの戦場にいたディーンとは、まるで違う。
「何をしてるのか……わからなくなってた」
リュウは、言葉を失う。
ただ、聞くことしかできない。
「止めてくれて……ありがとな」
その一言だけが、強く残る。
そして――
ふっと、気配が消えた。
「……ディーン?」
呼びかける。
だが、もう何も返ってこない。
静寂。
リュウは、しばらく動けなかった。
(今のは……)
理解が追いつかない。
だが――
確かに、“そこにいた”。
ディーンが、自分に話しかけてきた。
そうとしか思えなかった。
「リュウ!!」
通信が入る。
ケイトの声。
「大丈夫なの!?生きてる!?ケガは無い!?」
息を切らした、必死の声。
「返事してよ!!」
リュウは、ゆっくりと息を吐く。
震える手で、通信を返す。
「……大丈夫だよ」
声は、かすれていた。
「ちゃんと……生きてる」
少しだけ、空を見上げる。
もう、何もない場所を。
「ケイトこそ……大丈夫か?」
「私は平気!でも……ほんとによかった……」
安堵の混じった声。
それを聞いた瞬間――
張り詰めていたものが、ほどけた。
涙が、溢れる。
止まらなかった。
戦いは終わった。
守れたものもある。
失ったものもある。
その重さが、胸に残る。
それでも――
リュウは前を向く。
(ディーン……)
心の中で、静かに呟く。
その名だけが、いつまでも消えなかった。