(第二話は再編集中です
尚宇品女子の初戦相手をマジノ女学院に変更しました)
埼玉スーパーアリーナ、それはさいたま新都心にある国内最大級の多目的アリーナで、コンサートやスポーツイベント、展示会など、会場規模を可変できることが大きな特徴だ。
もちろん公共交通機関からのアクセス良く、JRさいたま新都心駅・北与野駅から気軽に行ける距離ということもあって、様々な大規模イベントの会場として利用されているとか…
そんな埼玉スーパーアリーナからアクセス可能な駅の一つでありJR埼京線が通る路線としても知られる北与野駅から、休日という割には多種多様な制服に身を包んだ女子高生達がぞろぞろと出てくる。
というのも今日は「第63回戦車道全国高校生大会」のトーナメント抽選会がここさいたまスーパーアリーナで行われる日であり、それに参加するために全国にある戦車道高校から代表する生徒が、ここ埼玉県に集まっているのだ。
ちなみに戦車道全国高校生大会、その中で出てきた戦車道というのは、この世界における華道や茶道と並ぶ「乙女のたしなみ」として確立されたものであり、戦車を使った武道のことを指しているらしい。
礼儀作法(礼節)を重んじ、凛々しい女性を育てることを目的としており、学校対抗の大会が開かれるほどポピュラーな存在として日本では注目を集めている。
尚それを競技として成立させたのが戦車道、もとい戦車道全国高校生大会。甲子園などと同じで毎年開催され、各県を代表戦車道チームが優勝を目指して激しい試合を繰り広げるのが特徴だ。
そんなことを話している間にも開始時刻が迫っているのもあってか、トーナメントの抽選会に向かうための生徒の数もそれなりに増えている中、その人混みに紛れる形で歩みを進める少女の姿があった。
レモンイエローと呼ばれる広島特産のレモンをイメージしたリボンに明るいネイビーブルーのセーラーブレザー、グレーを基調とした細かなチェック柄のスカートが特徴的な彼女の名前は、雨宮椎名(あまみや しいな)。
濃い茶髪ショートヘヤの髪型が特徴的な彼女は、広島県広島市広島港を母港とする学園艦、広島市立宇品女子高等学校の生徒であり、同時に宇品女子戦車道チームの隊長を務める高校2年生だ。
だがその表情は何処か芳しく無く、落ち着きがないようにも感じられ、時折うーん…と唸る声も聞こえてくる。
「うーん……」
そんな彼女を見兼ねてか、隣に並ぶ形で歩いていた同じ生徒で濃い赤みがかったピンクのサイドテール(カントリースタイル)が特徴の同級生、牧本朱音(まきもと あかね)が表情が硬いと突っ込みを入れていく。
「椎名ちゃーん?表情硬いよ」
クラスメイトでもあり、戦車道では自身の指揮する四号戦車H型の砲手を務める彼女に指摘されたことで我に返ったのか、ハッとした表情を見せながら椎名は顔を上げる。
そんな隊長を挟む形で朱音とは反対側に並ぶように歩いていたやや鋭い目付きに銀髪翠眼が印象的な四号の操縦手、日野美志歩(ひのみ しほ)がやれやれとという表情を見せながらため息を零す。
「……」
「おーい?」
「はっ!?…あーごめんごめん(汗)色々と考えてたら自分の世界に入ってた…」
「…やれやれ、そんなんで大丈夫なんですかね。うちの隊長は」
すると同戦車の装填手を務める早瀬南海(はやせ なるみ)が、そうなるのも無理はないと隊長をフォローするような一言を口にしていく。
というのも雨宮は今年から青葉女子戦車道チームの隊長になったばかりであり、そもそもその前には副隊長すら経験したことがないのだ。
一応前隊長のアシスタントとして色々とフォローや相手校の戦術などの分析をしたことはあるものの、やはり始めてみんなの指揮をするとなれば、嫌でも緊張してしまう。
「まあ無理はないと思いますよー、だって雨宮さんは隊長どころか副隊長の経験ないんですし。一応前隊長のアシスタントしてたとは言えど」
そんなやり取りをしているとふと四号の通信手である薄紫のポニーテールの髪型をした宇都宮玲奈(うつのみや れな)が、そう言えば何故前の隊長は椎名を新しい隊長に任命したのだろうか…と何気なく呟く。
「でもなんで前の隊長は雨宮さんに託したのでしょうか?経験なら副隊長兼生徒会長の青山さんのほうが…」
すると生徒会長の噂をした瞬間、待ってましたと言わんばかり何処からともなく現れた宇品女子高等学校生徒会長兼戦車道副隊長の青山瑞希(あおやま みずき)がぬっと現れて突然説明し始める。
まあ戦車道全国大会の抽選会なのと、生徒会長の上いてもおかしくはないため反射的にびっくりした隊長を除き気にする素振りもなく各々突っ込み返す。
「それは私から前隊長に伝えたのよ、生徒会長の仕事が忙しいからできても副隊長って。それより隊長のアシスタントしてた雨宮さんがいいんじゃないかって」
「うわっ!?せっ…生徒会長!?」
「いやそれ面倒くさいから丸投げしたようなもんですよね…」
「志歩ちゃん〜、あんまり指摘しすぎると生徒会の仕事に巻き込まれるよー」
「あー…だから志歩ちゃん少し前に生徒会長にこきつかれてたんだ…(汗)」
「朱音、玲奈。それ以上言うな()」
とは言えもう後の祭りと言っていいもので隊長に任命された以上頑張るしかないため、前隊長の期待に応えられるように頑張りなさいよ?と生徒会長兼副隊長はプレッシャーをかけるような言葉を投げかける。
だが腐っても副隊長である以上経験を生かしてサポートはしてくれるようで、丸投げのようなことはしないから安心しなさいとフォローしていく。
「まあでもなっちゃった(ならした)以上はやるしかないでしょ、前隊長の期待に答えられるように頑張りなさいよー?」
「う……プレッシャーが…」
「ちょっと生徒会長ー?うちの車長にプレッシャーかけないでもらえますー?」
「じょーだんよじょーだん、副隊長である以上しっかしサポートはするから安心しなさい。少なくとも丸投げはするつもりはないわ」
まあさっきのプレッシャーをかけた後にそれを言われても志歩の指摘通り意味がないようにも思えるが、気にしていても何か変わるわけもないため、ひとまずは抽選会を乗り切ることにした椎名は、思わず躓きそうになりながらもメンバーと共に埼玉スーパーアリーナへと足を踏み入れていくのであった。
「いやそれを言った後に言われても説得力……」
「…まあ確かにその通りですね、よしっ!前隊長の期待に応えられるように頑張ら…うおぅと…?!」
「……前言撤回、なんか不安になってきた(汗)」
「生徒会長…、それは思っても言っちゃ駄目です」
その後埼玉スーパーアリーナで行われた「第63回戦車道全国高校生大会」のトーナメント抽選会をなんとか無事?終えた青葉女子一向は近くのファストフード店でお昼を取っていた。
ちなみに抽選会の結果は青葉女子高等学校では定番とも言える海軍カレーライスを食べながら真剣な目つきで見つめていた椎名が握っていたトーナメント表の紙に書かれているようで…
尚各ブロックおよび第1話試合の内訳としては下記の通り
Aブロック
マジノ女学院対宇品女子高等学校
ヴァキング水産高校対コアラの森学園
プラウダ高校
B ブロック
ポンプル高校対アンツィオ高校
サンダース大付属高校対大洗女子学園
C ブロック
BC自由学園対聖グロリアーナ女学院
ヨーグルト学園対ワッフル学院
Dブロック
黒森峰女学院対知波単学園
青師団高校対継続高校
昨年度優勝校てあるプラウダ高校は試合参加校の関係上他の高校戦車道チームより試合が少ないが、宇品女子が勝ち進んでいけばプラウダといずれは対戦することになるのは明白。
過去に何度もぶつかっては負けるの繰り返しを経験した彼女にとって、嫌でも気にしてしまうというもので、まだ初戦すら始まっていないのに椎名の意識は無意識にプラウダのほうへと向けられていた。
だがそれはあくまで第1試合を突破した後の話であり、隣に座りながら同じく海軍カレーライスを食べていた生徒会長の指摘通り、まずは目先のことに注力することに。
ープラウダと同じブロック…このまま勝ち進めば嫌でも当たるってことか…、あそこには何度も初戦でやられてる…今度こそは…ー
「雨宮さん、気持ちは分かるけど冷静にね。今から焦っても成果はでないわ、目先のことに注力しましょう」
「…あっそっそうですね…!すみません…」
ちなみに初戦の相手となっているマジノ女学院は山梨県にある学院であり、フランスでワイン醸造を学んだ学院の創立者がワイン醸造のために作った農学校が元となっているフランス風の学校となっている。
分校に宇品女子がある広島の隣県、岡山に学園艦を構えるBC自由学園があるが、その話はひとまず置いておくことにしよう。
マナーと礼儀を非常に重んじる校風ではあるが生徒の創造性は芸術以外に関してはあまり求められておらず、豊富な知識と見識を十分に披露するような会話が重視されているため、以外にも柔軟性に欠けるらしい。
そんなマジノ女学院はフランス風ということもあって保有戦車も当然第二次世界大戦で活躍したフランス戦車を中心としており、朱音がざっと調べた範囲ではソミュアS35中戦車、ルノーR35軽戦車を主軸としつつ、フラッグ車にルノーB1重戦車を置く陣容になっている。
戦術としては生徒会長曰く堅牢な陣地で敵の攻撃を待ち構える「陣地防御戦法」が伝統となっており、待ち伏せによる迎撃を得意とする一方。陣地外での柔軟な対応力や機動力に欠けるという弱点があるのだとか…
「それより初戦の相手はマジノ女学院ですか…、調べた限りフランス風の学校みたいですね。山梨県にある…戦車もソミュアとかルノーR35が主力みたいです」
「マジノ女学院…確かあそこは堅牢な陣地で敵の攻撃を待ち構える「陣地防御戦法」が伝統になってたはず、待ち伏せには強いけど柔軟性とか機動戦は微妙な評価だったわね」
とはいえ「陣地防御戦法」が型にハマれば強い学校というのは椎名も分かっていることであり、戦力面では優位とはいえど高台などを取られると戦車の弱点でもある天板などを狙われるため、そうなる前に蹴りをつけなければならない。
まあそれは帰ってからのお話であるため、ひとまずのこっていたカレーライスを頬張ろうとした矢先。
何処からともなく声が聞こえると共に金色のショートボブで、両サイドが若干広がっている女子高生とは思えないほど低い少女と、対象的に背の高い黒髪ロングの女性が青葉女子のメンバーが座ってるテーブル席の前に立っていた。
ー…でも確か「陣地防御戦法」が上手くハマれば強いチームのはず…、高台を取られると重戦車でもかなりしんどい…帰ったら早速作戦を考えないと…
「あら、もしかしてそこにいる貴方達。常連の敗退校さんじゃないの」
「へ?」
戦車道チームでは強豪校とされ昨年度の優勝校でもあるプラウダ高校、その隊長ので小さな暴君と呼ばれるカチューシャとブリザードのノンナこと副隊長のノンナであり、話し方的に青葉女子とは面識があるらしい。
当然椎名たちも2人には見覚えがあるようで、相変わらずトゲのある話しかけ方ですね…と朱音が苦笑いで指摘していく。
ー…プ…プラウダ高校隊長のカチューシャさんと副隊長のノンナさん…!?……なっなんでこの2人がここに…ー
「…相変わらずトゲのある話し方、…ですね。もうちょい普通に話しかけられないんですか…」汗
ちなみにプラウダ高校と青葉女子は公式試合ではかなりの確率で初戦相手としてかち合うことが多く、それもあってかお互いに面識を気づいたら持ってしまったと言ったところらしい。
…まあカチューシャが言った通りほぼボロ負けと言っていいほどその度に全敗しており、こうして茶々を入れられることも時たまあるようだ。
とはいえどれだけ馬鹿にされても身長が女子高生とは思えないほど引くお陰や毎回過ぎて慣れてしまったこともあってか、青葉女子のメンバーにはそこまでダメージはなく、現に朱音以外にスルーされてしまったためにカチューシャから怒涛の突っ込みが炸裂する。
「ふんっ!わざわざのカチューシャ様が話しかけてるだけ感謝しなさいよね!本当なら貴方達みたいな弱小校にこっちから話しかけることなんt…」
「そういえばマジノ女学院って最近隊長が変わったって話ありませんでしたっけ」
「ええっ、確かそんな噂を聞いた気が…私も詳しくは知らないのでとりあえず帰ったら調べてみますね」
「流石生徒会長、人脈の広さは伊達じゃありませんね」
「って聞きなさいよ!??」
とまあそんなやり取りを挟みながらもなんとか落ち着きを取り戻したカチューシャだったが、ふと椎名に気づいて目をやっていく。
前隊長時によく隣にいたこともあってか嫌でも覚えてしまったらしく、そんな彼女が他のメンバーに囲まれる形で資料に目を通していたこともあってか、聞く間もなく椎名が新しい隊長かと当てた。
「全く…相変わらずそんなんだからいつまでも初戦敗退……ってあり?」
「…?」
ーあの子…確か前の隊長の時よく隣にいた子よね…?それにあの位置取り…もしかして……ー
「もしかして、貴方が今の隊長かしら?」
まあ当然その通りでありそれを聞いた志歩が、それを当てるとはストーカーですか…と若干引き気味な口調で正解だと当てていき、昨年から副隊長をやりながらも候補すらに上がらなかった瑞希はおよよ…と嘘泣きで肩を落としていく。
もちろん瑞希のこともカチューシャは知ってはいたものの、隊長らしい雰囲気というかどちらかというと副隊長っぽい雰囲気が強かったこともあったのだとか…
「あっえっ…そっそうです…」
「えっそれ当てるか…、ストーカー?」
「およよ…去年から副隊長やってるのに候補すらに上がらないとは…」
「うっうるさいわね!!その反応やめなさいよ!?ってかそっちに関しては副隊長の雰囲気が強いんだから仕方ないでしょ!!」
馬鹿にしにきたはずなのに相手のペースに相変わらず飲まれる状況に少し疲れたカチューシャは、新しい隊長である椎名に対してまあせいぜいチームの足を引っ張らないように頑張りなさいよと言葉をかけていく。
「はぁ…馬鹿にしにきたはずなのにこっちが疲れる…、まあいいわ。まっせいぜいチームの足を引っ張らないようにしなさいよ、それじゃピロシキ〜」
「お食事中お邪魔しました」
その後立ち去ろうとした2人だったが、ふとノンナが足を止めたと思った矢先、先にそそくさと立ち去るカチューシャに聞こえない程度。だが椎名にははっきり聞こえる声でまた戦車道の試合で会いましょう…と口にしていきその場を後にしていく。
「それと…新しい宇品女子戦車道の隊長さん」
「あっはい…!なんで…」
「今度は戦車道の試合で会いましょう、待っていますので」
確かに予選を勝てばその次の試合でプラウダ高校と当たることにはなっている…しかしそれはあくまで宇品女子が初戦を突破したらの話。
戦車道を創設して以降初戦敗退が続く高校にいくら礼儀正しくても強豪校の戦車道チーム副隊長の彼女が、勝ち上がるかも不明なチームにそんなことをいうはずがない。
そもそも今までそんなことを言われたことがないため、椎名は何故今更そんなことを…とスプーン片手にその意味を手探りで探っていくのであった。
ー待ってる……戦車道の試合で……、なんで今までそんなこと一切言われたこと……一体どういう意味で…ー