貧乏音ゲーマー陰キャ京大生だけど、中世から転移してきた国王に求愛されてるし、金持ちリア充のもう一人の俺が邪魔をしてくるんだが   作:雀ヶ森 惠

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 1483年11月2日

 ソールズベリー――

 

 この世に生まれてあんたに会えた。もう思い残すことは無い。

 

 

「地獄で先に待っていろ」

「必ず、また会える」

 

 リチャードの声を最後に、俺の意識は赤く溶けていった。

 

 

――その時、俺はなにか言おうとしたのか。

 

 

 

 

 

 

 

……

…………

………………

 

 54X年後、202X年。京都市。春。

 

「う〜! 遅刻や、遅刻!!」

 

 今、京大吉田キャンパスへ向けて、全力疾走している俺は京都大学総合人間学部に通う、ごく一般的な男子学生。

 強いて違うところを挙げるとすれば、この関西弁はエセで東京出身ってことやね。

 名前はヘンリー・スタフォード。

 

 

「あ〜、昨晩ラウワンのゲームコーナー閉まるまで、弐寺してて金も時間もあらへん! 八枚切りの食パン三枚しか食わんで持つかい! あと1時間半で腹減るわ!!」

 

 

 うわ、ラブコメの書き出しみたいな満開の桜めっちゃ散ってる。まあ俺もなんかの、ラブコメの一部かもしれへんけど。

 

 その時、俺の視界に校門と共に見たこともないタテカンが目に入る。

 

 足元は散った薄ピンクの桜の花びらで、アスファルトがまだらになっている。タテカンにも少し花びらが付着しとった。

 

 

「なんやねん、このタテカン……

 

 "貧乏音ゲーマー陰キャ京大生だけど、中世から転移してきた国王に求愛されてるし、金持ちリア充のもう一人の俺が邪魔をしてくるんだが"

 

 ってなんなん? 新しいラノベの宣伝か? 知らんけど。あっ二次元バーコード付いてるんやん。せや、撮影しとこ」

 

 

カシャッ

 

 てか撮影してたら、遅刻すんねんで!

 

 

 俺はギリギリ間に合ったのか、履修を検討している経済系一般教養の講義の教室に滑り込んだ。やっぱ二回生になったし、単位貯めときたいやん。

 

 あかん、あかん。人多すぎて部屋からはみ出とるやん、みんな考えることは同じやね。

 

 メガネ拭いてないから曇ってて、講師どころか黒板もよく見えへんな。まあええわ……と、思っていたら俺の事チラチラ見て、笑ってる奴おるやないかい。なんやい。

 

 

 俺が耳を澄ますと――

 

 

『あの講師の顔面、すんげえどこかで既視感ね?』

 

『知ってるwwwあいつだろ総人の』

 

『めちゃくちゃ評判悪い、熊野寮のメガネじゃん』

 

『あ、やべ。本人後ろにいるわ。デカいから目立ち過ぎ』

 

 

「聞こえてんねんで、はっきり言えや」

 

 俺がブチ切れて噂しとる奴らに凄むと……

 

 

「……おい、そこの学生」

 

 講師こっち来た!

 なんか、どこかで聞き覚えある声やけど。

 

ずんずん

 

 この講師デカッ、言いたかないけど俺と同じくらいあるやん。

 

ずんずん

 

 どんどんこちらにやって来る講師の顔が、今は鮮やかに見えた。

 

 

「「は?」」

 

 そこにいたのは――

 

 おそらく十年前後加齢した俺っぽいメガネだった。

 

 

※※※

 

 in京都大学熊野寮。

 

 

 帰ってきたけど、あ〜腹立つ!

 

 ろくなことあらへん。なんやねん、あの講師。お前は履修登録しても、認めないように学生課に言っておくやと? そんなことが一講師の権限でできるかい! クソメガネ!

 

 

 しかし相変わらず寮の入り口に、家賃滞納者が張り出されてんねんな。俺の名前もあるけど。

 むしろここに名前載るのステイタスやねん。崇めろ。

 

 滞納ランキングも割と最近更新されとるんやね。俺もついに一桁入りや。ドゥフフフ……

 

 てか一位の奴ずっと同じなんやけど、リアルで一度も見たことあらへん。家賃未収期間百ヶ月超えとるとか、普通にもう留年期間フルに使っても、アカンくない?

 京大ローカルのBBSでは名前見聞きしとるんやけど、このケイツビーって男ほんまヤバそうや。レアキャラだとか、見たら九字切らないと留年するとか、都市伝説やん。

 

 そもそもこいつ実在しとるん?

 

 

「あ、バッキンガムじゃん。なんかお前の部屋めちゃくちゃ人だかりできてるぞ?」

 

「えっ、どういうことや?」

 

 自室に戻ろうとして、俺は不意にほかの寮生に声を掛けられてビビる。

 ついに家賃未納で強制執行なんか!?

 

 てかバッキンガムってのは俺のあだ名やねん。

 寮に入った時に先輩が勝手に付けて、以来ずっとバッキンガムなんよな。なんでこの名前なんやろね? まあええわ。

 

 

……

…………

………………

 

 たしかに……

 

 めっちゃ人おる。なんで俺の部屋の前にこんなおんねん? 同室の奴の持ち物から違法薬物でも検出されたんか?

 

「あの、ちょっと通してや。部屋に入られへん」

 

 俺は黒山の人だかりを押しのけようとした。

 

「なんかものすごい美人が、お前のこと探してるってさ」

 

 

 隅に置けないだとか、童貞じゃなかったのかだとか、三次元に興味ないはず……との声が上がる。

 うるさい、うるさい!

 

 

 ようやく自分の部屋に入った。人がゴミのようや。

 

 同室の奴らは授業出てるのか、バ先行ってるのか全員不在。だがそこには――

 

 

 言う通りに超絶美人がいた。

 

 なんやねん。

 この人見たことないレベルで美人なんですけど。AIなんか?

 多分やけど中世ヨーロッパの貴族風の、真っ黒なおべべ着とるね。

 サラサラ黒髪ショートボブに、真っ白すべすべのお肌。スタイル抜群……といっても男ウケというか女の子の理想みたいな体型やね。これは。

 エロいというよりも、美しすぎて神々しい。

 てか目の色左右で違うのん!?

 むは〜

 

 ほんまこの人AIなんちゃう?

 

 

「ヘンリー」

 

 えっ、俺!!?

 いま俺の事呼んだ!?

 

 は〜、しかもめちゃくちゃ美声やん。中性的女性声優の声やん。

 

「会いたかった、ヘンリー」

 

 

 そう言って美人は俺の手を握った。

 真っ白すべすべの小さなお手て。右手の薬指に赤い石の嵌った金の指輪を付けている。

 

 そのまま俺の手を両手で握ると、愛おしそうに形の良すぎる薄桃色の唇を、俺の手の甲に押し付けた。

 

 美人からは、めちゃくちゃいい匂いがする。

 

 

 あかん……あ、あかん……

 ちょ、ま……

 

 

「お待ちください」

 

 その時知らない男の声が響いた。

 誰やねん。

 俺の部屋の前の人垣を割って、見たこともない褐色イケメンが入ってきた。

 

 なんやこいつ。

 言いたかないけど、初対面なのに本能的にムカつく。なんでや?

 てかパジャマ着とるんやけど? え、ジャージですらないやん、それも縦縞の綿ジャージのパジャマ。今どきそんなの残ってたんかい。

 

 

「バッキンガム。その方は、過去からやってきたリチャード様です」

 

 

 えっ、リチャード様誰? 過去って?

 いや、その時俺はもっと驚くことになる。

 

「なぜ、リチャードがこんなところにいるんだ」

 

「! お前……さっきの講師!!! お前こそなんでここにおるねん!  だいたい"こんなところ"ってなんやねんな! 失礼にも程があるわ!」

 

 褐色イケメンの後ろには、つい二時間ほど前に俺に対して履修できないようにしてやる云々、を宣ったメガネ講師がいるやんけ。

 しかしまあ、このクソメガネと俺では"こんなところ"という語に対する、解像度が違うかもしれへんけど。

 

 

「お静まりを、バッキンガム公。リチャード様が困惑しているではありませんか」

 

 えっ、バッキンガム公? こいつもバッキンガムなん? なんで俺のあだ名となんで同じ名前なんや。しかも公爵とかどんだけ厨二なん。ウケるわ。

 

 

「ケイツビー、お前までなぜ……しかしバッキンガムが二人とはどういうことだ?」

 

 

 えっ、ケイツビー? 有名な家賃滞納のぶっちぎり、圧倒的一位の奴やん。え、ほんまコイツなん? うわ、予測通り結構歳いっとるし。パジャマやし。しかもこの美人と知り合い? 情報量多すぎやん。

 

 

「リチャード、俺が本物のヘンリーだ。その小汚い偽物の手を離せ」

 

「黙れ! このスカした講師が! 何が公爵や。本物のヘンリーってなんやねん。まさかお前まで、ヘンリー・スタフォードやないやろな!?」

 

 

 あっ、美人……もといリチャード? さんが俺の手を離してもうた。もっと、こう、んんん、近くに、よ、寄ってたかったいうか……あ、鎮まれっ……

 

「リチャード、さあ俺のところへ来い」

 

 あっメガネ講師、なんやな美人にさわるな。

 しかしリチャード? さんは、

 

 

「お前たちは……俺のヘンリーじゃない」

 

 

「どういうことだ、リチャード」

 

 ざまあ!

 お前のことやないで! ヘンリーって……あっ、俺でもないやん……

 

 

「リチャード様、色々お話もございます。ここでは無関係な人も多いかと」

 

 せや、言われてみれば俺の部屋の前の野次馬がめっちゃ興味津々で見とるやん。なんやこの状況。恥っず。

 

「この建物には私の部屋がございます。とりあえずそこに参りましょう、バッキンガムお二人も来て頂きたい」

 

 

 美人は、了承した。みたいな表情で褐色イケメン――家賃滞納第一位のケイツビーについて行く。

 

 

「置いてくな!!」

 

「ああん、俺も行くで!」

 

 

※※※

 

ズズズズ……

 

 めちゃくちゃ重い音がして、金属製の分厚い扉が開く音がした。

 

 おお、これが伝説の熊野寮地下、鉄扉やん。

 なんか扉の前にお菓子供えてあるけど、なんでやねん。

 

 

「地下にあるとか言われたけど、ほんまに存在したんかい」

 

 褐色イケメンケイツビーはうなづいた。

 

「半年に一回程度、公⬛︎がやってきますが、それ以外は平和なものですよ。さあ、お上がりください」

 

「お邪魔するで」

 

「ここが、この世界のケイツビーの自室か……」

 

「信じられん、こんな不潔な場所にリチャードを招き入れるなど」

 

 

 室内は八畳程の空間で、色焼けしたモニターと、ファンの音が死ぬほどうるさい自作らしいパソコンが二台置かれていた。

 天井の蛍光灯が時々バチバチと音を立てており、もう交換せんとヤバいやろみたいになっている。

 

「あ〜、やっと来た? 結構待たせるじゃない」

 

 

???

 

 えっ、なんかセクシーなおねーさんおるんやけど。

 しかもぴっちりかつゴージャスなおべべ。

 

「ジェーン、なぜお前までここに?」

 

 リチャード? さんが、彼女を見て怪訝な表情を見せた。

 

 

「私も別に彼女と会いたい訳ではありませんが、今はそう言ってもいられませんからね。全員集まる必要がありますし。

 そしてバッキンガム公とバッキンガムの両名が、この世界に同時に二人存在していることも、重要です」

 

「待てや! さっきから気になってたんやが、なんであっちは爵位で俺のことは、呼びつけやねん! おかしいやろ!!」

 

 

「あちらは本物の、当代のバッキンガム公爵ですし、貴方は私の後輩に当たるのになぜ同じように呼ばねばならないのですか?」

 

「ギギギ……」

 

 

 あ〜、悔しい悔しい!!

 やっぱ初めにこいつのこと、なんか嫌やと思ったのは、間違えやなかったんや。

 

 その上、背後で講師メガネが笑う気配がした。お前らタヒね!

 

 

 ケイツビーは、背を向けて部屋の隅へ移動した。

 

 

 しかしゴージャスおねえさん――ジェーンを見た途端に、メガネ講師の表情がみるみる苛立ってるんやけど。眉間にシワ寄ってるし、なんでやねん。

 

「あら、閣下は相変わらずお硬いのね。まあ仕方ないけど」

 

 

 しかし、このおねーさん……

 

 

「うお、でっか

 でっか

 おっぱいでっか」

 

 

しーん

 

……えっ、なんでや。

 

 なんか知らへんけど、俺は素直な感想を述べただけなのに、リチャード? さんと、メガネ、ケイツビーの視線が突き刺さる。なんでや。

 

 

「あはは、可愛い〜」

 

 おねーさんが俺のリアクションに微笑む。

 

 せやろ、せやろ。

 素直な感想が一番や。こんなおっぱい大きなおねーさん、FANZA以外で見た事ないで。マジで存在しとったんや。女神様やん。

 

 

「……バッキンガム。お前どうしたんだ?」

 

「えっ、どういうことやねん」

 

「お前、もしかして何も覚えていないのか?」

 

 美人は俺に疑いの目を向ける。

 

 

「全く信じられん。あれほどこの女を嫌っていたのに、記憶どころかプライドも無くすとは。俺にそっくりなのが恥ずかしくなる。

 第一なんで俺がもう一人存在しているんだ、しかもこんな下品で汚らしい若僧とは」

 

「なんやて? ていうか、なんの説明も俺はされてへん。アンタらだけなんか知ってて、俺を置いてけぼりにしとるけど……せや! なんかここで話あるんやちゃうんかい。説明されんとわかるかい」

 

 

 部屋の隅でポットからお湯を注いで、茶を準備していたケイツビーがこちらへやって来る。

 このお茶PBの緑茶ティーパックやんけ。ケチくさ。

 

 湯呑みが五つ、パソコンの乗ってるデスクに置かれた。デスクにはセロハンテープを剥がした跡が複数残っている。めっちゃ汚い。

 

 

 ケイツビー自らが茶を啜ると、美人は不安そうに彼を見つつ、湯呑みを手に取った。それを口を付けると、

 

「熱っ」

 

 なんやねん、このリアクション。

 

「リチャード様、お気を付けください」

 

 

「それで、早う説明してや。なんなんやさっきから」

 

 

 家賃滞納ケイツビーは、室内を見回した。深い緑色の目が穏やかに、だが何かを決意したように静かな光をたたえる。

 

 お前、ちょっとイケメンだと思って調子乗んなや。

 

 

「まずリチャード様、急にこの場所に来たことに困惑されているかと思います」

 

 リチャードさんは滞納ケイツビーの言う通りに、不審そうに部屋を見回す。こないな汚ったない地下室で意味不な説明始められたら、俺かてわけ分からんわ。

 まずはこのアルティメット美人の出どころを、まずは説明してくれや。

 

 

「落ち着いてお聞きください、ここは202X年。しかもイングランドではなく、全く別の島国にある都市なのです」

 

「……どういう、ことだ?」

 

 今まで室内を見回していたリチャードさんの表情が明らかに変わった。そらそうやろ……ってエゲレスってどういうことや!?

 

 

「陛下がご存知なのは――いえ、記憶にあるのは1485年のはずでしょうけど、あれから540年以上経過してますの……ですのでだいぶ事情が変わってます」

 

 おっぱいの女神様の説明に、俺まで混乱してきたんやけど。

 

「おのずとリチャード様ご本人にも、バッキンガムお二人にもそのうち事情は飲み込めるはずです」

 

「ふん、俺には説明不要だぞ、ケイツビー。その若造にだけしてやれ」

 

 

 ムカッ

 

 

「とはいえ、バッキンガム公。貴方も全てご存じというわけではありませんからね。そうですね、亡くなった前後の記憶も曖昧なのでは?」

 

「えっ亡くなった前後ってなんやのん? もしかしてこれ異世界転生なんか!!?」

 

 

 う、嘘や、異世界転生なんてあらへん。あんなのは小説家になろうとカクヨムの中の話や。

……俺その手の読みすぎてなんか幻覚見てるんちゃうか!? 変なキノコ食べた覚えないんやが。

 

 

「ふふっ、君、相変わらず可愛い〜でもそういう事よね。トラックには轢かれてないけど」

 

「異世界転生……とは何だ? 」

 

 ああん、またリチャードさんの綺麗なお顔が怪訝な表情になったやん。

 

「リチャード様、あとでご説明致しますので少しお待ちください」

 

 

「でっ、でも俺の知らへんうちに転生してたとして、なんでこのクソメと俺が同時に存在しとるとか……なんやて?」

 

「俺の方が聞きたいくらいだ。もしリチャードと俺が運命の再会を果たすのならば、なぜ貴様などという俗悪な偽物が居るんだ」

 

 

「ギギギ……」

 

 俗悪やと!? だいたい運命ってなんや! リチャードさん最初俺の手ぇ握って、『会いたかったヘンリー』言うてくれたんやぞ!

 

 

「……それで、なんやの? 540年経過とか。俺はそこまで歴史マニアやあらへん。1485年にエゲレスでいったい何があったんやまさか山城国一揆かいな?」

 

 

……

 

 えっ

 

 やれやれみたいな表情で全員が俺のことを見とるんやけど。ギギギ……解せんわ!

 

 

 真顔で滞納ケイツビーが俺に向き合う。

 

「この方は、第二十二代イングランド国王、リチャード三世王陛下です」

 

「は!!?」

 

 

「えっ、リチャード三世ってなんか、身体がげちょげちょの汚いおっさんちゃうの?」

 

「後世での俺は、そんな風に評価されているのか?」

 

 

 美人は自嘲するかのように吐き捨てた。

 

 せや、こんな神々しい美人と、身体がげちょげちょの汚いおっさんがまるで脳内で結び付かへん。どういうことや。

 

 

「貴様、リチャードに向かって身体がげちょげちょの汚いおっさんとはなんだ? 何を根拠に? どうなっても構わないようだな?」

 

 メガネはポキポキと指を鳴らした。

 暴力反対や!

 

「大人の方のバッキンガム、お前は弱いのに脅すんじゃない」

 

「チッ」

 

 

「もちろんこれは、後の権力者によるプロパガンダに過ぎません。リチャード様が、身体がげちょげちょの汚いおっさんでないことは、私が一番良く存じております。

 そう、この方こそ今のところ最後に戦死したイングランド国王であり、プランタジネット朝最後の王、リチャード三世王その人なのです」

 

 

 なんか俺以外は、そのケイツビーの説明に対して、何を今更みたいな顔で聞いている。

 

 えぇ……

 

 

「え、リチャード三世って、もしかせんでも男やん。いや、なんで? どう見てもめちゃくちゃ神々しい美女やのに。何を根拠に? どこどう見たらこの人男なの? 男性要素皆無やで。認知が明らかに歪んでいるやん」

 

「おい、若い方のバッキンガム」

 

 え、あ、俺か。

 

「はい」

 

 

「本当に、何もかも忘れてしまったんだな……」

 

 悲しそうなリチャード? さんの顔が俺を見上げた。

 

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