貧乏音ゲーマー陰キャ京大生だけど、中世から転移してきた国王に求愛されてるし、金持ちリア充のもう一人の俺が邪魔をしてくるんだが 作:雀ヶ森 惠
――数日後、in京都大学吉田キャンパス某所。
「なんでや……なんでや……履修登録できひん……」
俺は学生用総合アプリに向かって頭を抱えていた。
――――
【履修登録エラー】
この科目の登録はできません。
エラーコード:FR-301
「グローバル経済リテラシーI」
履修条件を満たしていません
詳細はシラバスをご確認ください。
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――――
「エラーっていったいなんやねん!?」
あのクソ講師が言うた通りに何故か登録できひん。俺は"グローバル経済リテラシーI"が履修したいんや!
てかなーにが、『お前が履修登録しようとしても認めない、できないようにしてやる』や!
ホンマふざけんとんのか!
学校の経営母体より、発言力のある生徒会やあるまいし。そないなのフィクションだけや。
「あのメガネにそないなどデカい権限があるかい! せや、教務課に直に行って直に問い合せたるわ!」
……
…………
………………
「たのもー、履修登録にエラー出てまってちょっと見てもらいたいんやけど、大丈夫です?」
俺が声を掛けると、カウンターの中から年齢不詳、ゆるふわな男性事務員が出てきた。
「あ、少々お待ちください」
なんやねんこいつ、悪役令嬢を婚約破棄してくる公爵みたいな声とツラしとるやないか。こないな男実在しとるとか驚きや。
「あの履修登録で、エラー吐いてんやけどこれはどないすればええんや?」
「事務員なんかより、学生の方が余程幸せだ」
!!?
いや、俺の質問てか問い合わせに答えんかい。
しかもほかの事務員誰も不審がっておらへんし、こいつはこういう男なんか??
だいたい企業やなんやないから、試験受かれば誰でも学生になれるで。
「仕事なんかよりも、岩波文庫全巻がKindleで配信されないかな」
それについては俺も賛成やけど、仕事せんかい。お前給料貰っとんのやろ。
「あの履修登録でエラー出たから見てほしいんやけど?」
俺はもう一度このゆるふわに言った。これでダメなら別の事務員呼ぶしかないわ。
「ほら、こっちに来てごらん」
ガッ
「あ痛っ!」
いやカウンターあるから物理的に行かれへん。てか力強っ、腕引っ張んなやおっさん。
「僕の名はヘンリー、僕と友達になってくれないか」
誰もお前の個人情報なんて聞いとらへん。公私混同や! 俺かて可愛い女の子や、セクシーなおねーさんならともかく、こいつみたいなメンタルヤバ気な野郎は御免やで!
言われてみたら首から下げてる、職員のIDに"ランカスターのヘンリー"って書いてあるわ。てかなんやねんこの名前。タイラノキヨモリみたいや。
ってか、こいつもヘンリーなん? え、この小説いくらなんでも、ヘンリーってキャラ多すぎんか?? ヤバ。薔薇戦争でもあるまいし。
「いやだ……私はもう仕事したくない」
おっさん、カウンターの向こうでウンコ座りしとるやん。
……は、話にならへん。
※※※
イヤや。イヤ過ぎる。
てか、もう昼や。飯でも食いに行こ。
桜もほとんど無くなって、葉っぱばっかりやね。タテカン撮影したのも懐かしいわ。
……ん、なんか校門の辺りで揉めとる男女おるやん。
やばっ、触らぬ神や。まあ、犯罪じみてれば誰かしら通報するやろ。俺はそんなん知ったことやないで。
こっそり道の端から、見て見ぬ振りで通り抜けようとすると、イヤでも会話が耳に入る。
「お前には関係ないだろう、なぜ俺についてくる?」
ほあ〜美声やけど、俺女なんかい。ちょっと地雷臭するな。
「関係はある、なぜ俺から逃げるんだ?」
なんか聞き覚えある声や。
しかも、女性に対してえらいでっかい図体のメガネの男が、手首掴んどるやけど。え、これヤバない?
他力本願しとらんで、俺が割って入るべき? でも俺単なる見かけ倒しで超絶弱いんやけど。どないしよ。
「――言ったはずだ、求めるものは
ん? 俺の指紋ベタベタメガネ越しに彼らを見ると、そう、そこにはあのリチャードさんとクソメガネが!
「あ、な、何やっとんかい!!」
やば、声出してしもた。
「「!」」
二人は一斉に俺を見た。
あ、なんかこれ 大丈夫か?
しかし、俺はダメ押しとばかり再び声を上げる。ここで退いたらかっこ悪いだけや。
「嫌がっとるやん、お巡りさんとか学校の警備員呼ぶで!!」
俺が呼ぶまでもなく、人だかりができ始めていた。当然や、これだけ揉めとるんや。
ざわざわ
ひそひそ
「チッ」
クソメガネは高そうなスーツのジャケットを、小脇に抱えたまま、足早にその場を離れて人混みに消えた。
「若い方のバッキンガム……助かった」
ドッキーン!
え、あ、そんな表情で見んといてくれる?
しかも服装が先日買いに行った、フリフリのおべべの中の一着やし。
「あ、そのちょっとここ離れよか」
あまりに見物人が多すぎるんや。注目すんなや。
俺は飯も兼ねてリチャードさんを連れて、立ち去ることにする。
……
…………
………………
「はい、お茶や」
リチャードさんが松屋の無料サービスの、玄米茶を手に取る。前も留年ケイツビーのお茶飲んどったけど、お茶好きなんかいな?
ちなみに俺は冷水や。
「ほいでもって、どないしてあのクソメと揉めてたん?」
「監⬛︎されてた」
「えっ」
⬛︎禁って、にわかには信じ難い単語出てきた。どういうことや? エロ小説やあるまいし……
「いや、だから⬛︎禁されていた」
「監⬛︎っていったいどこに……」
ドン引きや、怖すぎやろ。クソメガネ。
「
……億ションって。あのメガネならやりかねへんが、どれだけ経済力あるんや、あいつ。
しかもまた俺の記憶ないところで、そんな。
だいたいそういうシチュは特に癖やあらへん。嫌いやないけど。
ぴんぽーん
"101番の食券をお持ちの方はカウンターまでお越しください"
「これが牛丼とやらか」
リチャードさんは俺から、牛丼の乗ったトレイを受け取ると物珍しそうに食べ始めた。
「この赤いのはなんだ?」
「それは酢漬けの生姜や、牛丼とめっちゃ合うで」
もぐもぐ
もぐもぐ
「それで、どうやってその⬛︎禁先から逃げられたんや」
「ジェーンが来て、謎の施設に移された時に、一時的に大人の方のバッキンガムの監視が解けたから、それで逃げてきた」
「謎の施設?」
俺の牛丼は特盛なのに、並盛のリチャードさんより倍以上の速さで完食しとる。相変わらず、食欲止まらへん。
「そこで血を抜かれたり、轟音のする釜に入れられたり、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎な⬛︎⬛︎を⬛︎⬛︎⬛︎に入れられたり大変目に……」
「んあっ!」
あかん、それ以上言うと全年齢では掲載不能になるんや。やめといてや。
「お、おそらくそれは病院で検査されてたんやね」
「俺の何を?」
何を?
いや、それは俺の方が聞きたいんやけど。病院で採血したりしたってことは、ジェーンさんがその必要があるって判断したからやん。
うーん、前から気になってたんやけど、言語化したらヤバいと思ってた疑問をついに、リチャードさんにぶつけるのは、今や。
今しかない。
「あの、リチャードさんって女の人なんよね?」
「………………」
え、あ。なんか空気が一瞬で-273.15℃になっとるんやけど。
リチャードさんの左右色違いの綺麗な目が、俺を上目遣いで見とる。松屋の店内で全ての原子が振動止めた。
「………………」
えっ、えっ、やぱヤバいこと聞いてしまったん? 落ち着けヘンリー!
「で、でも悪魔ってどういうことやねん? 前に俺が何もかも忘れたとか言うてたけど、悪魔なんて存在せえへんで。15世紀はどうか知らへん。でもここは令和ジャパンや、悪魔が何を指すか分からへんけど、科学で解明できひんことはほぼあらへん」
そのとき、リチャードさんの目と俺の目が合った。
「……バッキンガム」
「え、あ、はい」
「ありがとう」
!!? なに、なんでありがとうなんや??
あっでも笑った顔めっちゃ可愛すぎひん? こ、こう……あん、でも俺はリアルの女の子に対しては、もう二度と恋しないって決めたやん。ああん、でもその決意がゆらぎそうや……
しかも松屋でいい感じになってるし。場所は関係あらへんけど。
その時大柄な男の影が、ぬっと俺にかかった。
紺色の綿ジャージに白いパイピングのパジャマ、百均で五百円程度で売ってるクロックスもどきから、かかとがはみ出ていた。
「リチャード様ここにいらっしゃいましたか」
!!
そこには予想通り、やっぱりケイツビーがおった。
俺たちがええ感じになってる時にウザ。
邪魔や邪魔!
「あいつは俺の昔馴染みだ、俺を迎えに来たんだ」
「いや、知っとるで」
「リチャード様と松屋で牛丼を食べることなど、バッキンガムのすることとは思えません」
黙れ、それ原作やと敬語やったやろ。
タメ口不快なんや滞納パジャマ。
「ケイツビー、お前。牛丼を食べたことはあるか」
「はいあります」
「……せやろな。いつまで原作のセリフをトレースしながら話を停滞させてるねん。早よ進めんかい」
ケイツビーの深緑色の目が、俺に空気読めって視線を向けたが、読んでやらんで。
「こちらを……」
ケイツビーはリチャードさんに、パジャマのポケットに入ってた封書を差し出した。
"親展 リチャード・プランタジネット様 京都市中京区区役所 マイナンバーカード交付通知書在中"
リチャードさんは封筒を受け取ると、糊で封じられた部分をびりびりと破きながら開く。
「これはどういうことだ?」
「そのハガキを持って、リチャード様自身が役場に直接いらっしゃっていただきたい、というお知らせになります」
「なんだと……?」
えっ、静かにキレとるやないか。
は〜美人から伝わる殺意の波動や。
「王である俺に向かって役場に出向けなどと……いったい何様だ」
「申し訳ございません、しかしながらこればかりは本人確認のために、リチャード様が出向く必要があるためです。とりあえず私がこの中京区区役所までお送り致します。どうかご辛抱ください」
※※※
in中京区区役所マイナンバーカード交付コーナー。
ざわざわ
どやどや
「バッキンガムまでなぜここに着いてくるのですか」
「やかましい、俺が着いてきたら不都合あるんかい! てか予約もせんとなんで、マイナカード取りにいけるんや」
「これ以上、この小説をまどろっこしくしたいですか? リアルとリアリティは別物とバッキンガムともあろう者が知らぬとは――」
「ギギギ……」
あれっ、俺らが揉めてる間にリチャードさんが呼び出されて手続きしとるやん。大丈夫なんかい。
カウンターのお姉さんめちゃくちゃ説明分かりやすっ、さすが役場が契約してる臨時職員。スキル高いプロやね。
おっ、なかなかスムーズに手続き出来とるやん。えっ、あれかいな所謂
でもそういえば、初めて会った時に見た赤い石の指輪とは別っぽいんやけど、あっちはいったいなんなんやろ? てかヘンリー、リアルの女の子のこと気にせえへんことに決めてたんやないの?
あんっ。
あ、リチャードさん戻ってきた。
「とりあえずこの桃色の小さな板切れが発行されたぞ、俺の顔が描いてあるな。どこの絵描きだか知らんがここまで精密に描けるとは、余程の腕らしい」
「ちゃうで、それは写真や」
「リチャード様、四桁の暗証番号をお忘れにならぬようお気をつけ下さい」
「大丈夫だ。自分の誕生日にしておいた」
「ガーン、一番ダメなやつや!」
……
…………
………………
「どうせここまで来たし、リチャードさん二条城でも見てかへん? おもろいでウグイスバリ言うんや、キュッキュッキュッて」
「おい、待てお前たち」
ってなんや! 俺の声っぽい声……あっクソ講師!! まったく高そうなジャケットなんて着やがって。俺かてあれ着たら偉そうに見えるはずやから、チートアイテムに頼るラノベの無双キャラと同じや!
「大人の方のバッキンガム……」
「バッキンガム公爵」
てかなんでこいつEV車の充電用スペースに車停めてるんや。
「お前二台しかない役場の駐車スペース埋めとるとか、最低最悪のドグソが。それが障害者用スペースの方でないだけ、マシやとでも思っとんのか?」
「今、俺の愛車を充電中だ」
こいつ俺と同じ身長やから、頭上げてまで見下ろそうとしとるの丸わかりや。そこまでして偉そうにしたいんかい。
……しかもこの車ジャガーやん、JAGUAR、じゃぐぅわあー(英語発音)
「何の用だ、大人の方のバッキンガム」
「あんたを迎えに来た」
不信感にリチャードさんの神経質そうな眉が、顰められる。
「また俺を
「ではどこに住む気だ、この若造やケイツビーと同じあの汚い寮など、俺が許さない。あんたにはふさわしい城が必要だ」
「………………」
「そしてこれをあんたに渡しに来た」
クソ講師がリチャードさんに角三サイズの封筒を手渡した。
なんやその封筒――
"〒606-8501
京都市左京区吉田本町
京都大学 学長殿"
!
……ど、どういうことや。リチャードさんもしかして学生になるんやあらへんな?
驚きのあまり声が出ないんやけど。
俺の顔が宇宙猫に変わってもうた。メガネかけた身長185センチの宇宙猫や。
「バッキンガム公これはいったい、何の意図ですか?」
そらそやろ、ケイツビーかてこの展開にはついていけへん。
「意図も何も。俺がここで教鞭を執る限りは、この世界でのリチャードを最も安全に近く置ける、最適な方法では?」
「待てい! なんでお前がたとえ本物のバッキンガム公爵やとしても"国立大学法人京都大学"とどういうコネでこんなことできるんや! ありえへんわ! 俺たちが今現在会話しているのが小説内だとしてもさすがにアカンやろ!!」
しかし、講師は余裕綽々でメガネの奥の金色っぽい目を光らせた。
「ふん、文科省どころか俺は外務省、内閣とも更には、⬛︎生⬛︎⬛︎とも個人的にコネクションを持っている」
「バッキンガム公、それはさすがにそうだとしても公言は避けた方がよろしいかと」
いや、全くもって同感や。ドン引きってレベルやない。
なんかケイツビーがこいつを見る目が変わってきたんやが。まるで……そのヤバい人間どころかミ=ゴとかバイアクヘー見てる目や、俺もそう思うけど。さすがにヤバいやろ。
「ふん、若造言っただろ。俺がお前の履修登録云々をコントロールすることなど造作もない」
「は!?」
こ、こいつガチや……く、狂ってる!
「……ところで、大人の方のバッキンガム。俺のコセキトウホンとやらに書いてあった本籍地、東京都沖ノ鳥島とはどこだ?」
「そのことは気にするな、適当にでっち上げる必要があっただけだからな。あんたは嫌がっていたが、不本意ながらジェーンの手を借りて色々検査して書類も作らせて貰った」
……呆れた。
病院で検査したってそれかいな。ん? なんか時期あってへんけど爆速過ぎん?
「まあ俺の権力をもってすれば、リチャードの戸籍程度は半日で作成可能だ。安心しろ。
それからケイツビー」
クソメはパジャマ男に向けて、なにか放った。
ヒュッ
ぱしっ
「……これは?」
「
「大人の方のバッキンガム、俺はまだ了承した訳じゃ……」
しかしメガネは車に刺していた充電用のケーブルを引き抜くと、ドアを開きデカすぎる身体を滑り込ませた。
「俺はこれから北新地で予定がある、残念ながらリチャード。また今度だ」
※※※
in chiscordサーバー"閉店リズム貧民窟"
談☆話☆室 DAN-WA-SHITSU!
#規約(必読)
#テキストオンリー
攻略関連
店舗情報等
▷雑談
えっちな雑談
System:DarkBucky69が入室しました
Richmond_4ever:おや、バッキンガムさん。もういらっしゃらないかと思いましたよ。そろそろ退室しようとしてましたがね。
DarkBucky69:疲れたから銭湯から帰って寝とったわ。酒飲んでこの時間や。
Richmond_4ever:このところお疲れなのでは? 鯖主として以外にも、もちろんプライベートがあるでしょうが。
DarkBucky69:なんか中京区まで行ってまで、しょうもないもの見せられてゲンナリや。
Richmond_4ever:しょうもないもの?
DarkBucky69:EV車やね。
Richmond_4ever:私はエーフィが好きですよ。
DarkBucky69:寒い事言うのよさんかい。あ〜最近あんま回せてないやん! 順位落ちたらイヤや。
Richmond_4ever:皆伝持ってれば、府内二桁は余裕でしょうよ。私から言わせればそうですね、持つ者の檻とも言えますが。
DarkBucky69:なんやっけそれ、
Richmond_4ever:そうです。
Richmond_4ever:――ガッ ガリガリガリガリガリガリ……ッ
DarkBucky69:!!? なんやその異音! 前も聞いた気がするで!
Richmond_4ever:な、なんか最近私のカバンの中から妙な音が。一体……
DarkBucky69:ほな、開けて中見てみればええやん。
Richmond_4ever:ん、
Richmond_4ever:ゴソゴソ……
Richmond_4ever:これは!
DarkBucky69:なんや! 何が出てきたん!?
Richmond_4ever:ガストのダイエット甘味料のスティックが大量に……