僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

1 / 4
 お読みいただき恐縮千万。


エピソード1 オリジン?俺にはまだ無い

 確かに何の気なしに呟いた事はある……。

 

「異世界転生とか良いよなぁ」と。

 

 

 

 しかし……。

 

 

 

「オギャ~!オギャ~!」

 

「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 まさか、本当に起きるなんて夢にも思わなかった――。

 

 

 目を覚ました――というか意識が覚醒した時、俺が産まれて家族幸せムードのやり取りの中だった。

 

 俺の認識では、その前日、普通に自宅で就寝したはずだった。

 目が覚めたら普通に次の日が来る事を疑わなかった。

 

 だが、実際に目が覚めたらそこは病院で、俺は赤ん坊で、抱きかかえられていて~という訳の分からない状況だった。

 

 体も思う様に動かせないし、喋る事も出来なかったので、戸惑いつつも身を任せ、様子を窺った。

 そしてほぼ数日掛けて、俺は自分が『転生』したんだと理解した。

 暫く呆然とした……。

 

 で、俺の新しい名前は『気賀(きが)(たくみ)』――

 

 まあ、名前の事はさて置き、問題なのはこの世界の事だ。

 赤ん坊の内、体は思う様に動かないので、聞こえる範囲内、見える範囲内で情報を集めた。

 

 基本的に現代日本、だが明らかに俺がいた日本というか地球とは違う点がある。

 

 『ヒーロー』『(ヴィラン)』『個性』……聞き覚えがあり過ぎる単語が、度々、日常会話やテレビのニュースで流れていた。

 

 更には……

 

『HAーッHAッHAッHAッ!もう大丈夫ッ!何故って?私が来たッ!』

 

 と、テレビに他と画風が違うメチャメチャ彫が深くて濃い顔の金髪超マッチョマンが出ていた。

 

 その名は『オールマイト』、No.1ヒーローだそうな……。

 

 あれじゃあ間違えようがない……ここは『僕のヒーローアカデミア』の世界だ。

 思い返せば転生する直前、俺はスマホでヒロアカの電子コミックを見ていたが……その所為だろうか?

 

 ある程度状況を把握したら、戸惑いも一周回って冷静になった様な感じだったと思う。

 どうしようもないし、仕方ないから現状を受け入れたが、正直困った……。

 

 俺はどうしたらいいんだろう……?

 ヒーローを目指すべきなのか、それとも何か他の無難な仕事を選ぶべきなのか……。

 

 しかし、ここがヒロアカ世界だとしたら、近い将来、日本ないし世界は大きな危機に見舞われる可能性が高い。

 

 『敵連合』『死柄木弔』『AFO(オールフォーワン)』……ジャンプバトル漫画の王道、主人公に迫り来る敵――

 

 最終的に奴等との超絶バトルが勃発するのは、ほぼ確定路線の筈だ。

 

 しかし、俺はヒロアカの原作知識が俄かだ……。

 というのも、俺がヒロアカにハマったのは連載からかなり時間が経ってからで、キッカケはアニメだったのだ。

 確か、転生前の当時はジャンプ本誌での連載はクライマックスに差し掛かっていたし、アニメもシーズン6か7か、そのぐらいだったと思う。

 俺はその頃になってやっと、アニメ第1話からア◯プラで見始めたし、後追いでコミックも1巻から買い始めて読み始めたのだ。

 覚えているのは、ヒーロー殺し『ステイン』の辺りまで……原作知識を使って戦いを有利に、というのは殆ど期待出来ない。

 俺は元々そんなに頭も良くないしな……。

 

 しかし、転生特典なのか強力な【個性】は持って生まれている。

 

 俺の【個性】は【オーラ】――自分の生命エネルギーを操り、色々なことができる。

 ざっくり言うと『ドラゴンボール』の【気】とか、『HUNTER×HUNTER』の【念】とか、『NARUTO』の【チャクラ】等々、そんな感じだ。

 発現は胎児の頃――後から聞いた話によると、俺は生まれた時、全身を白っぽく揺らめく湯気の様なものに包まれていたという。

 それに母ちゃんは俺の出産の数ヶ月前から体に活力が漲り、お産も安産にも程がある超安産で、産後の回復も異常に早かったと聞いた。

 医者の見立てでは、胎の中で発現していた俺のオーラが母の体を活性化させていたのではないか?との事だ。

 

 強そうな【個性】に両親は喜んでいたが、俺は未来の事とこの【個性】もあって、ヒーローを目指し物語に介入すべきかで悩んでいるのだから、喜んでばかりもいられなかった。

 

 

 

 そうして時は流れ、俺は悩みつつもすくすく成長――ありがたい事に、特に騒動などに巻き込まれる事もなく、平穏な日々を送れた。

 

 環境に恵まれ、人付き合いが消極的な方の俺でも孤立したりイジメられたりという事もなく幼稚園、小学校、中学校と順調に進学していき……やがて高校受験の時期がやってくる――。

 

 

 

「『雄英』ですか!なるほど、気賀くんなら十分合格圏ですね。頑張って下さい!」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 中三の進路相談――個別面談で担任の先生に俺はそう答えた。

 

 悩みに悩んで14年……俺はヒーローを目指し、物語に身を投じる事を決めた。

 何もしないでいて、いざその時が来て、後悔して~では遅い。

 

 そも体を動かせる様になってから、いつ『Xデー』が来ても何とか生き延びられる様に、悩みつつも【個性】と体を鍛え抜いてきた。

 ほぼノウハウ無し――父ちゃん母ちゃんも俺と似た【個性】ではあるものの、2人ともヒーローと無縁の一般人――の手探り状態だったので、効率などほぼ度外視だが、それでも幾つかのレジェンド漫画の修行法を真似して、激強主人公達の必殺技を幾つか再現する事に成功している。

 戦闘力は結構高い方だ……と思いたい。

 

 あと自分で言うのもなんだが、俺は成績は良い方だ。

 前世から持ち越した学力はともかく、前世の会社勤めの経験が役に立った。

 それはひとえに、予習・復習の重要性を思い知った事――仕事のやり方を覚える為にメモを取ったり、1日の仕事内容を思い出して振り返ったり、何度も反復する事で覚える――という至極当たり前の事を、社会人になって漸く理解したという……。

 

 まあ、経緯はさておき、予習・復習を欠かさなかった事と、勉強にも【個性】が応用出来た事が大きい。

 

 HUNTER×HUNTERの【念】、その技の一つに【凝】というのがある。

 オーラを目に集中する事で相手の隠されたオーラを見破る技として最初辺りに出てきたが、実はこれは目に限らずオーラを体の何処かに集中する技なのだ。

 目で行うのは基礎な訳だ。

 目に集中すれば視力が強化されてオーラを見破れる、拳に集中すれば攻撃力が増して巨石も殴り砕ける――ならば“脳”に集中すればどうなるか?

 答えは集中力や記憶力が大幅に上がり、勉強が捗りまくる――俺はこの勉強法でテストで高得点を出しまくったのだ。

 尤もこれは俺の【個性】だから出来た事で、本家【念】では出来ないか違う作用をもたらすのかも知れない……確認のしようはないが。

 

 【個性】不正使用?

 ノン、ノン。

 他人や物に向けて使っていないのでセーフです。

 

 まあ、ちょっと調子に乗ってしまった自覚はある……。

 だって、父ちゃんも母ちゃんも喜んでくれるし、周りも褒めてくれるのが嬉しくて……前世じゃこんな事はなかったから、ついテンションが上がって……。

 

 それに、これも俺の【個性】の修行の一環にもなっている事実がある。

 【個性:オーラ】の源は俺の生命エネルギー、ざっくり言えば体力――体力は使えば使うほど増えるし、慣れれば扱いも上手くなる。

 日常隙あらば【個性】を使い、オーラ量と技を増やし、同時に肉体の鍛錬も加速させるという一石二鳥の修行法なのだ。

 まあ、残念ながら幾ら修行しても身長は180センチに届かなかったが……ちなみに現在176センチだ。

 恐らくこれ以上は伸びまい……。

 

 そうして勉強と修行を両立させて日々を送りつつ、雄英高校入試に思考を巡らせる。

 

 過去問集や参考書を解いた限り、筆記試験は先ず問題ない。

 実技試験……ここも原作の知識がある程度役立つだろう。

 原作通りなら市街地っぽい演習場でのロボ無双のはずだ。

 評価はロボの撃破ポイントと、他人を救ったレスキューポイントの合計だったか。

 

 転生してから【個性】をフル活用し、特訓を重ねてきた俺だが、戦闘の実戦経験は全くない。

 当たり前と言えば当たり前、逆にあったら問題だ。

 

 一応、空手や柔道の道場、ボクシングジム等に通って技術を習い、師範やコーチと組み手やスパーリングをした事はあるが、それは試合であって戦闘ではない。

 

 これでどうにかなるのか、不安が拭いきれない……。

 ロボ無双と言えば、0ポイントの巨大ロボが出るんだったか。

 0ポイントロボを倒せば、周りの人を助けたって事でポイント入るかも?

 

 あ、そうだ……記憶にある限り、確かヒーロー科はA組・B組合わせて40人、その中には推薦入学が2人ずつだったか。

 つまり一般入試での合格者は合計36人……これはやっぱり上位36人になるのか?

 やはり合格を目指すなら、出来る限りポイントを稼いだ方がいいな。

 

 少しトレーニングメニューを組み直して、強度を上げてみるか……。

 

 

 

 

 

 学校、受験勉強、入試対策補講、トレーニング、等々やっている内に月日は流れ……雄英入試当日がやってきた。

 

『今日は俺のライヴへようこそー!!エヴィバディセイヘイ!!!』

 

シーン……。

 

『こいつぁシヴィーー!!!受験者のリスナー!実技試験の要項をサクッとレクチャーするぜ!!アーユーレディ!?――YEAHH!!』

 

シーーン!!

 

 温度差で思った以上にサムイな……ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』……この人のノリ、割と好きなんだが……俺は会場の空気でそこに乗っていけない。

 

『入試要項通り!!リスナーにはこの後!!10分間の「模擬市街地演習」を行ってもらうぜ!!』

 

 ノリノリの説明は続くが、聞き流して内容だけ頭の中でまとめていこう。

 原作記憶の抜けやズレを修正しておかないとな。

 

 コスチュームなどの持ち込みは自由、各自指定の演習場に移動、演習場には『仮想敵』のロボが1ポイント・2ポイント・3ポイントの3種がいて【個性】を活かして行動不能にしてポイントを稼ぐ、他人への攻撃・妨害などアンチヒーロー行為は禁止、発覚次第試験失格と。

 

 うん、俺の原作知識、一先ず合ってるな。

 

「質問よろしいでしょうか?」

 

 と、そこで受験者の4人が手と声を上げた。

 

 あいつは確か――

 

「プリントには4種の敵と記載されています!!誤載だとすれば最高峰たる雄英にとって恥ずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

 どこのだかは知らんがブレザータイプの制服、四角めの眼鏡、優等生っぽく切り揃えられた黒髪、端がくッと上がった眉毛――席は遠いがオーラで強化した俺の視力でくっきりと見える。

 

 間違いない、原作のメインキャラの1人『飯田天哉』だ。

 

 こんな場所でも臆することなく意見を大声で述べるとは、凄いな……政治家みたいだ。

 

「ついでにそこの縮れ毛の君!!」

 

 飯田天哉がビシッと左後方の席を指差す。

 

「先程からボソボソと……気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!」

 

 厳しいお言葉……でも、確かにさっきからボソボソブツブツ言ってて地味にうるさかった。

 

 飯田天哉の指と厳しい視線の先にいるのは、学ランの縮れ毛でソバカスのある地味目男子――原作主人公『緑谷出久』だ。

 

 その隣に『爆豪勝己』もいる。

 ツンツンヘアーで目付きが異様に鋭いが、こうして見ると凄く特徴的という訳でもない様な……いや、性格がかなりアレだったか。

 正直あんまり関わり合いになりたくない……。

 

『オーケーオーケー、受験番号7111くん、ナイスなお便りサンキューな!』

 

 その後に続いたプレゼント・マイクの説明で、プリントに記載されている4種目の仮想敵は、会場に1体だけ配置された0ポイントロボの事――思い出される0ポイントロボの巨大さ……高層ビルを倒壊させるレベルの動くマシンが作れるのに、治安維持や敵捕縛に使えないんだから【個性】ってヤバいと思う。

 

『俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校の“校訓”をプレゼントしよう!!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!』

 

 不幸を乗り越えていく、か……「言うは易く行うは難し」って言うが、だからこそのヒーローって訳か。

 

『更に向こうへ“Plus Ultra”!!それでは皆、良い受難を!!』

 

 説明は終わり――受験者は各々割り振られた演習場に移動、と。

 

 流石に試験直前は緊張するなぁ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。