僕のヒーローアカデミア A Little Extra 作:ジョン堂
『緑谷、開始早々完全停止~!?アホ面でビクともしねえー!心操の【個性】か~!?全ッ然ッ目立ってなかったけど、彼ひょっとして、やべえ奴なのか~!?』
異様な光景に、スタジアムがどよめく。
『普通科・心操人使、ヒーロー科・緑谷出久を攻略ー!こりゃまさかの事態だー!!なんか下克上ー!!』
「……お前は、恵まれてていいよな。緑谷出久……」
今のは、多分、心操の独り言で……本音だな。
「振り向いてそのまま場外まで歩いて行け」
「……」
緑谷は心操の言う通り、振り向いてそのまま歩いて場外へ向かう。
『え?ええー!?あー!緑谷、従順!?』
その緑谷の様子にクラスメイト達、特に仲の良い麗日と飯田が焦りの表情を浮かべる。
ちなみに2人は俺の隣に並んで座っている。
「デクくん……!どうして……!?」
「このまま場外に出たら、試合に負けてしまうぞ!?」
その間にも、緑谷は遅いながらも1歩ずつ場外に近づいていく。
まさか……ここで敗退、なんてことないよな……?
俺がいる事で、何のかんの影響して、緑谷の【OFA】がここで反応を見せない……なんてこと、ないよな……?
いかん、ハラハラしてきた……!
おい、もう、あと数歩で場外だぞ……!?
「……わかんないだろうけど、こんな【個性】でも夢見ちゃうんだよ……。さあ、負けてくれ」
心操の複雑そうな呟き……緑谷はあと1歩、それも足を上げ始めている!
おい……!?
ドンッ!!
寸でのところ、緑谷の足元に衝撃波が起こる。
間に合ったか!
「ハアッ!ハアッ!」
『こ、これは……!緑谷!留まったぁーー!!』
『ワアァァァーーー!!!』
一気に会場が沸く。
「ぃよっしゃーー!!」
「緑谷くーーん!!」
「良かったぁ!」
思わず俺は拳を振り上げ叫んだ。
飯田、麗日も声を上げる。
いや、ホント、焦った……!
まさか、と思っちまった……!
心臓に悪い……!
と、安堵したところでよく見れば、緑谷の指が赤く腫れている。
原作と同じく、指で衝撃波を出したのか……。
ちゃんと制御しての行動じゃないから仕方ないか……でも、よく見ると心なしか、入学直後の体力テストの時よりは腫れが軽い様な……?
「な、なんで……!?体の自由は、効かないはずだ……!」
心操が動揺している。
そこで動揺して固まるんじゃなく、緑谷が持ち直す前に【個性】でなく肉弾攻撃すれば勝てたのに……この辺りは修業と経験が足りないか。
「何したんだ!?」
「っ!」
緑谷が咄嗟に口を手で押さえる。
流石にもう引っ掛からないだろう。
「何をした!?」
「……っ」
緑谷は答えない。
無言のまま体の向きを変え、心操を正面から見据える。
「……っ……何とか言えよ」
喋り口が変わった、というか最初に戻った。
「っ……!」
緑谷が拳を握り、両腕を腰溜めに構えた。
すると、全身に微かに電気の様なものが走る。
出た【フルカウル】!
「っ、指動かすだけでその威力か、羨ましいよ……!」
「ッ」
心操には答えず、緑谷が飛び出す──速いぞ。
「っ!がッ!?」
次の言葉を話す間もなく、心操は緑谷のタックルを胴に食らう。
そして緑谷は、そのままのスピードで心操を抱え上げて反対側の場外へ──!
「ッ……ちっくしょう……っ!?」
「うああぁぁ!!!」
気合一閃──緑谷、ライン際へ滑り込み、その勢いのまま心操を場外にぶん投げた。
『心操くん場外!緑谷くん、二回戦進出!!』
『ワアァァァーーー!!!』
ミッドナイトによる緑谷の勝利宣言──会場がまた沸いた。
ピンチからの逆転劇、盛り上がる定番の一つだ。
『最終種目!真っ先に二回戦に進出したのは、A組緑谷出久──!!』
プレゼントマイクの実況が会場の熱気を煽る。
「はぁ~、冷や冷やしたぁ……!」
麗日が胸を撫で下ろす。
俺もホント冷や冷やした……。
「土壇場での逆転劇……流石だ緑谷くん!」
飯田が緑谷を称える。
そうしている内に心操も起き上がり、リング上で緑谷と2人向かい合う。
『IYAHA!初戦にしちゃ地味な戦いだったが!!とりあえず、両者の健闘を称え、クラップユアハンズ!!』
パチパチパチパチ……!
拍手が巻き起こる中、リング上で向かい合う2人は、どっちも複雑な表情だ。
「……心操くんは、何でヒーローに……?」
「……憧れちまったもんは仕方ないだろ……」
振り返り、顔を反らしながら呟いた心操……。
その声は緑谷に届いていたらしく、複雑な表情がより複雑になった……。
だが──
「カッコよかったぞ!心操ー!」
リングを降り、立ち去ろうとした心操に、そんな声が掛かった。
普通科の生徒、心操のクラスメイト達だ。
「正直ビビったよ!」
「俺ら普通科の星だな!」
「第1・第2と成績上位の奴といい勝負してんじゃねーよ!」
更に──
「あの【個性】、対敵に関しちゃかなり有用だぜ、欲しいな……!」
「雄英も馬鹿だなぁ、あれ普通科か……?」
「まあ受検人数半端ないから、仕方ない部分あるけどな……」
「戦闘経験の差はなー……」
「どうしても出ちまうもんなぁ」
「勿体ねえ……」
観客席のプロヒーロー達が、心操の【個性】の有用性を語り合っている。
「聞こえるか、心操!おまえ、すげえぞ!」
普通科の生徒達はみんな、心操に尊敬と憧れの表情を向けている。
ここからじゃ心操の顔は見えないが、きっといい感じの顔してるんじゃないかと思う。
「……結果に寄っちゃヒーロー科編入も検討してもらえる。覚えとけよ……!今回はダメだったとしても、絶対あきらめない。ヒーロー科入って、資格取得して……絶対お前らより立派にヒーローやってやる……!」
「っ……うん!」
あ、緑谷がアホ面に……。
「……普通、構えるんだけどな、俺と話す人は……」
心操、【個性】使ったな。
「そんなんじゃすぐ足元救われるぞ?」
振り返って緑谷を見る心操の顔は、吹っ切れたシニカル顔だった。
「せめて、みっともない負け方はしないでくれ」
「っ……うん!」
また……緑谷ェ……。
まあ、最後あれこれあったが、一回戦は無事終わった。
次は、轟と瀬呂の対戦……選手の準備タイムを兼ねて小休憩10分を挟む。
その間にリカバリーガールの治療を受けて緑谷が戻って来た。
そして小休憩終了──
『お待たせしました!!続きましては~!こいつらだ!!』
スクリーンに映し出される対戦カード──轟vs瀬呂。
『優秀!優秀なのに拭いきれぬその地味さはなんだ!?ヒーロー科・瀬呂範太!』
「ひでえ」
ホントにひでえ……けど、頷いてしまう。
『バーサス!!予選2種目とも3位と好成績!推薦入学者は伊達じゃないってか!!同じくヒーロー科・轟焦凍!』
轟……俯いているが俺には見える……。
表情がヤバい、鬼のような眉間だ……。
父親、エンデヴァーに会ったんだな……。
これは原作と同じく、瀬呂は気の毒な事になりそうだ……。
『それでは最終種目!第二試合!!レディ……!』
「まぁ、勝てる気はしねえんだけど……」
『スタート!!』
「──つって負ける気もねえ!!」
開始直後、瀬呂の速攻──テープで轟の脚と胴を拘束、両足と両腕を封じ、そのまま振り回して場外へ放り出そうとする。
『場外狙いの不意打ちー!!この選択はコレ最善じゃないか!!正直やっちまえ瀬呂──!!!』
私情丸出しのプレゼントマイクの実況……。
しかし──
「……悪ぃな……!」
轟の呟きの直後──
ドォォンッ!!
ほぼ一瞬の内に、スタジアムの半分を覆うんじゃないかって程の、俺達の目と鼻の先に届くほどの、大氷壁が出現──会場が文字通り、色んな意味で凍り付いた。
『……瀬呂くん……動ける?』
余波で凍えたミッドナイトが、ほぼ完全に氷漬けにされた瀬呂に問いかける。
「ぅ、動けるはずないでしょ……痛ぇ……」
『瀬呂くん、行動不能!!轟くん、二回戦進出!!』
早い決着だった……多分、1分と掛かってない……。
瀬呂、大丈夫かな?
寒いや冷たいを通り越して、痛いと言った……凍傷になってないといいが……。
「……ど、どんまい……!」
「どんまーい……!」
やがて起こる、瀬呂に対するどんまいコール……何だか物悲しい……。
その後、瀬呂は轟の手で解凍され、救護室へ。
轟は会場の氷の除去を行い、控室の方へ去っていった……。