僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード17 勝ち負け?それは時の運だな

『緑谷、開始早々完全停止~!?アホ面でビクともしねえー!心操の【個性】か~!?全ッ然ッ目立ってなかったけど、彼ひょっとして、やべえ奴なのか~!?』

 

 異様な光景に、スタジアムがどよめく。

 

『普通科・心操人使、ヒーロー科・緑谷出久を攻略ー!こりゃまさかの事態だー!!なんか下克上ー!!』

 

「……お前は、恵まれてていいよな。緑谷出久……」

 

 今のは、多分、心操の独り言で……本音だな。

 

「振り向いてそのまま場外まで歩いて行け」

 

「……」

 

 緑谷は心操の言う通り、振り向いてそのまま歩いて場外へ向かう。

 

『え?ええー!?あー!緑谷、従順!?』

 

 その緑谷の様子にクラスメイト達、特に仲の良い麗日と飯田が焦りの表情を浮かべる。

 ちなみに2人は俺の隣に並んで座っている。

 

「デクくん……!どうして……!?」

 

「このまま場外に出たら、試合に負けてしまうぞ!?」

 

 その間にも、緑谷は遅いながらも1歩ずつ場外に近づいていく。

 

 まさか……ここで敗退、なんてことないよな……?

 俺がいる事で、何のかんの影響して、緑谷の【OFA】がここで反応を見せない……なんてこと、ないよな……?

 いかん、ハラハラしてきた……!

 

 おい、もう、あと数歩で場外だぞ……!?

 

「……わかんないだろうけど、こんな【個性】でも夢見ちゃうんだよ……。さあ、負けてくれ」

 

 心操の複雑そうな呟き……緑谷はあと1歩、それも足を上げ始めている!

 

 おい……!?

 

ドンッ!!

 

 寸でのところ、緑谷の足元に衝撃波が起こる。

 間に合ったか!

 

「ハアッ!ハアッ!」

 

『こ、これは……!緑谷!留まったぁーー!!』

 

『ワアァァァーーー!!!』

 

 一気に会場が沸く。

 

「ぃよっしゃーー!!」

 

「緑谷くーーん!!」

 

「良かったぁ!」

 

 思わず俺は拳を振り上げ叫んだ。

 飯田、麗日も声を上げる。

 

 いや、ホント、焦った……!

 まさか、と思っちまった……!

 心臓に悪い……!

 

 と、安堵したところでよく見れば、緑谷の指が赤く腫れている。

 原作と同じく、指で衝撃波を出したのか……。

 ちゃんと制御しての行動じゃないから仕方ないか……でも、よく見ると心なしか、入学直後の体力テストの時よりは腫れが軽い様な……?

 

「な、なんで……!?体の自由は、効かないはずだ……!」

 

 心操が動揺している。

 そこで動揺して固まるんじゃなく、緑谷が持ち直す前に【個性】でなく肉弾攻撃すれば勝てたのに……この辺りは修業と経験が足りないか。

 

「何したんだ!?」

 

「っ!」

 

 緑谷が咄嗟に口を手で押さえる。

 流石にもう引っ掛からないだろう。

 

「何をした!?」

 

「……っ」

 

 緑谷は答えない。

 無言のまま体の向きを変え、心操を正面から見据える。

 

「……っ……何とか言えよ」

 

 喋り口が変わった、というか最初に戻った。

 

「っ……!」

 

 緑谷が拳を握り、両腕を腰溜めに構えた。

 すると、全身に微かに電気の様なものが走る。

 

 出た【フルカウル】!

 

「っ、指動かすだけでその威力か、羨ましいよ……!」

 

「ッ」

 

 心操には答えず、緑谷が飛び出す──速いぞ。

 

「っ!がッ!?」

 

 次の言葉を話す間もなく、心操は緑谷のタックルを胴に食らう。

 そして緑谷は、そのままのスピードで心操を抱え上げて反対側の場外へ──!

 

「ッ……ちっくしょう……っ!?」

 

「うああぁぁ!!!」

 

 気合一閃──緑谷、ライン際へ滑り込み、その勢いのまま心操を場外にぶん投げた。

 

『心操くん場外!緑谷くん、二回戦進出!!』

 

『ワアァァァーーー!!!』

 

 ミッドナイトによる緑谷の勝利宣言──会場がまた沸いた。

 ピンチからの逆転劇、盛り上がる定番の一つだ。

 

『最終種目!真っ先に二回戦に進出したのは、A組緑谷出久──!!』

 

 プレゼントマイクの実況が会場の熱気を煽る。

 

「はぁ~、冷や冷やしたぁ……!」

 

 麗日が胸を撫で下ろす。

 俺もホント冷や冷やした……。

 

「土壇場での逆転劇……流石だ緑谷くん!」

 

 飯田が緑谷を称える。

 

 そうしている内に心操も起き上がり、リング上で緑谷と2人向かい合う。

 

『IYAHA!初戦にしちゃ地味な戦いだったが!!とりあえず、両者の健闘を称え、クラップユアハンズ!!』

 

パチパチパチパチ……!

 

 拍手が巻き起こる中、リング上で向かい合う2人は、どっちも複雑な表情だ。

 

「……心操くんは、何でヒーローに……?」

 

「……憧れちまったもんは仕方ないだろ……」

 

 振り返り、顔を反らしながら呟いた心操……。

 その声は緑谷に届いていたらしく、複雑な表情がより複雑になった……。

 

 だが──

 

「カッコよかったぞ!心操ー!」

 

 リングを降り、立ち去ろうとした心操に、そんな声が掛かった。

 普通科の生徒、心操のクラスメイト達だ。

 

「正直ビビったよ!」

 

「俺ら普通科の星だな!」

 

「第1・第2と成績上位の奴といい勝負してんじゃねーよ!」

 

 更に──

 

「あの【個性】、対敵に関しちゃかなり有用だぜ、欲しいな……!」

 

「雄英も馬鹿だなぁ、あれ普通科か……?」

 

「まあ受検人数半端ないから、仕方ない部分あるけどな……」

 

「戦闘経験の差はなー……」

 

「どうしても出ちまうもんなぁ」

 

「勿体ねえ……」

 

 観客席のプロヒーロー達が、心操の【個性】の有用性を語り合っている。

 

「聞こえるか、心操!おまえ、すげえぞ!」

 

 普通科の生徒達はみんな、心操に尊敬と憧れの表情を向けている。

 ここからじゃ心操の顔は見えないが、きっといい感じの顔してるんじゃないかと思う。

 

「……結果に寄っちゃヒーロー科編入も検討してもらえる。覚えとけよ……!今回はダメだったとしても、絶対あきらめない。ヒーロー科入って、資格取得して……絶対お前らより立派にヒーローやってやる……!」

 

「っ……うん!」

 

 あ、緑谷がアホ面に……。

 

「……普通、構えるんだけどな、俺と話す人は……」

 

 心操、【個性】使ったな。

 

「そんなんじゃすぐ足元救われるぞ?」

 

 振り返って緑谷を見る心操の顔は、吹っ切れたシニカル顔だった。

 

「せめて、みっともない負け方はしないでくれ」

 

「っ……うん!」

 

 また……緑谷ェ……。

 

 

 まあ、最後あれこれあったが、一回戦は無事終わった。

 次は、轟と瀬呂の対戦……選手の準備タイムを兼ねて小休憩10分を挟む。

 

 その間にリカバリーガールの治療を受けて緑谷が戻って来た。

 

 そして小休憩終了──

 

『お待たせしました!!続きましては~!こいつらだ!!』

 

 スクリーンに映し出される対戦カード──轟vs瀬呂。

 

『優秀!優秀なのに拭いきれぬその地味さはなんだ!?ヒーロー科・瀬呂範太!』

 

「ひでえ」

 

 ホントにひでえ……けど、頷いてしまう。

 

『バーサス!!予選2種目とも3位と好成績!推薦入学者は伊達じゃないってか!!同じくヒーロー科・轟焦凍!』

 

 轟……俯いているが俺には見える……。

 表情がヤバい、鬼のような眉間だ……。

 父親、エンデヴァーに会ったんだな……。

 

 これは原作と同じく、瀬呂は気の毒な事になりそうだ……。

 

『それでは最終種目!第二試合!!レディ……!』

 

「まぁ、勝てる気はしねえんだけど……」

 

『スタート!!』

 

「──つって負ける気もねえ!!」

 

 開始直後、瀬呂の速攻──テープで轟の脚と胴を拘束、両足と両腕を封じ、そのまま振り回して場外へ放り出そうとする。

 

『場外狙いの不意打ちー!!この選択はコレ最善じゃないか!!正直やっちまえ瀬呂──!!!』

 

 私情丸出しのプレゼントマイクの実況……。

 

 しかし──

 

「……悪ぃな……!」

 

 轟の呟きの直後──

 

ドォォンッ!!

 

 ほぼ一瞬の内に、スタジアムの半分を覆うんじゃないかって程の、俺達の目と鼻の先に届くほどの、大氷壁が出現──会場が文字通り、色んな意味で凍り付いた。

 

『……瀬呂くん……動ける?』

 

 余波で凍えたミッドナイトが、ほぼ完全に氷漬けにされた瀬呂に問いかける。

 

「ぅ、動けるはずないでしょ……痛ぇ……」

 

『瀬呂くん、行動不能!!轟くん、二回戦進出!!』

 

 早い決着だった……多分、1分と掛かってない……。

 

 瀬呂、大丈夫かな?

 寒いや冷たいを通り越して、痛いと言った……凍傷になってないといいが……。

 

「……ど、どんまい……!」

 

「どんまーい……!」

 

 やがて起こる、瀬呂に対するどんまいコール……何だか物悲しい……。

 

 その後、瀬呂は轟の手で解凍され、救護室へ。

 轟は会場の氷の除去を行い、控室の方へ去っていった……。

 

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