僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード20 轟vs俺?悩みってそう簡単じゃないよな

 二回戦終了後の小休憩終了──決勝戦の時が来た。

 

 

『雄英高体育祭も、いよいよラストバトル!1年の頂点が、この一戦で決まるー!!』

 

 歓声が響くスタジアム──補修されたリングの上で、向かい合うのは俺と轟。

 

『いわゆる、決勝戦!!ヒーロー科・轟焦凍!!バーサス!ヒーロー科・気賀巧!!』

 

 この一戦で、今年の俺達の雄英体育祭が終わりとなる。

 

「轟」

 

「なんだ?」

 

「何だか顔つきが変わったな」

 

「……そうか?」

 

「ああ、少なくとも、体育祭が始まる前のお前とは全然別人だ」

 

 まだ幾らか陰りは見えるが……。

 

「!……そうか、そうかもな」

 

 轟はそう言って、目線を下げた。

 こういう時、気の利いた事とか言えないんだよな、俺……

 

「あ~、まあ、あれだ……何かしら心のつかえ?みたいなもんが取れたなら何よりだ」

 

「……そう、かな?……正直分からねえ。自分がどうしたいのか……どうなりたいのか……」

 

 エンデヴァーの事な……。

 俺に言えることなんてほぼ無い……だが。

 

「その気持ちは、ちょっとだけ、分かる気がする」

 

「え……?」

 

「個人的な事だが、俺もそんな感じの事で悩んだことがある」

 

 自分がどうしたいのか、どうなりたいのか――転生者というイレギュラーな存在である俺は、この世界でどう生きるのがいいのか……贅沢な悩みといえばそうだ。

 

「……そうか」

 

 まあ、轟の悩みは俺より余程根深く闇深いとは思うが……。

 父親との確執について~なんて重い問題、無責任にアドバイスなんかできんし……。

 

「……まあ、お互い悩み事は一時棚上げして、この一戦の決着を付けよう」

 

 今回も体操着の上とスニーカーを脱ぐ。

 凍えるが、着てると確実に破れるからな──そこは【疑似・九尾チャクラモード】でカバーだ。

 流石に今日はもう【擬似・界王拳】は使えない。

 爆豪との一戦とリカバリーガールの治療で体力をごっそり削っていて、大分パワーダウンしているが、それでも轟相手に気は抜けない。

 

「……ああ、そうだな」

 

 轟も、腰を落として構える。

 顔つきも悪くない、と思う。

 

『決勝戦!スタート!!』

 

 プレゼントマイクの合図と同時に俺は全力で立ち幅跳び──!

 轟は氷壁ブッパ──!

 

『轟いきなりかましたぁー!!』

 

 轟の開幕ブッパはもう見慣れている!

 飛び越えさせてもらった!

 

「ふんッ!!」

 

「っ!?」

 

 氷壁を躱して轟の頭上から蹴りを見舞う。

 だが轟は氷を出しながら滑る様に逃げる。

 

 逃がさん!

 地面に足がついた瞬間、すぐさま轟に向かって跳ぶ。

 

「くッ!」

 

 轟から氷が走ってくる──ここは避けるより砕く!

 

「はあぁ!!」

 

ドンッ!!

 

 両手を合わせてのオーラ砲で轟の氷結を粉砕──間髪入れずに突っ込み、勢いを殺さず飛び膝蹴り!!

 

「がッ!?」

 

 仰け反った轟が場外目掛けて吹っ飛ばす。

 

「ぐ……ッ!」

 

『気賀のエゲつねえ膝蹴りでぶっ飛んだが轟!氷壁で場外負けを回避ー!!』

 

 回り込むように壁を出しながら、滑る様に轟が戻ってくる。

 しかし顎に決まった飛び膝蹴りが効いたか、轟はよろけて膝をつく。

 

 チャンス――!

 

「喰らえッ!【疑似・ギャリック砲】!!」

 

ヴォッ!!

 

 両手を重ねるように構えて放つオーラ砲──薄紫のオーラが轟へ向かう。

 

「くッ……!」

 

 ちっ、そう上手く当たらないか――轟は【疑似・ギャリック砲】が当たる直前で氷結で滑って避けた。

 

『左を使え!使えー!焦凍ぉー!!』

 

 太く鋭いオッサンの声──エンデヴァーか!

 

「ッ……!」

 

 轟は一瞬顔を歪め、氷に乗って俺から距離を取った。

 

 緑谷によって多少は意識が変わっていても、まだまだ炎とエンデヴァーへの嫌悪は拭い切れないか……あれはもうトラウマに近いな。

 

「……“左”は、まだモヤっとするみたいだな」

 

「っ……まぁ、な」

 

 轟、抑えてはいるが震えているな。

 もう体に霜が降りて、体温が下がってきている。

 

「……どうする?」

 

「……?」

 

「このまま氷だけで戦い続けるなら、悪いが俺には勝てねえぞ。お前さんの体の限界は近い。悩みも、ぶり返している様に見える」

 

「……悪ぃ」

 

「謝らんでいいさ。腹に抱えてるもんはしょうがない。で、どうする?このまま続けるか……それとも、思い切って左を使うか……轟の自由だ。ただ――俺は全力でやる」

 

 握りこんだ右拳を左手で包むように掴み、腰だめに構える。

 

「最、初は……グー……!!」

 

 残ったオーラの全てを右拳に込める……【疑似・ジャジャン拳・グー】!

 これが俺の最後の攻撃――轟がどうしようと、これで勝負を決める!

 

「…………っ!」

 

 轟は少し考えてから、意を決した表情になる。

 そして右半身の霜が解け始め、蒸発し、左半身から炎が噴き出す。

 

 来るか──!

 

「勝負だ!轟!!」

 

「ッ、気賀……!!」

 

 突っ込む俺──炎の左手を突き出してくる轟──

 

「ジャン!ケン――!」

 

 そして──

 

フッ……

 

 轟は炎を消した──俺も(グー)を当たる寸前で止める。

 

『なんだぁ!?どーしたぁ!?2人とも激突寸前で止まったぞー!?』

 

「……やっぱ、そう簡単には無理か」

 

「……悪ぃ、気賀」

 

「いいさ、仕方ねえ」

 

 俺は拳を引く。

 

「……ミッドナイト」

 

 徐に、轟がミッドナイトに声を掛ける。

 

『……なに?』

 

「降参する」

 

 轟はリタイアを告げた。

 

『え?い、いいの?』

 

「ああ……今の俺じゃあ、気賀には勝てねえ。戦う資格もねえ」

 

『そう……轟くん降参!よって、気賀くんの勝ち!』

 

ざわ……

 

 会場がざわめく。

 

 仕方ないだろうな、ここまで来て、煮え切らない感じの決着だから。

 

『な、何だかイマイチぴしっとしねえが仕方ねえ!以上で全ての競技が終了!今年度、雄英体育祭1年優勝は~……A組気賀巧──!!』

 

 

 最後の最後、俺達の体育祭は、そんななんだか締まらない感じで終わった。

 

 

 ステージの撤収と出場選手の治療および着替えの為、15分ほど間を挟み──

 

 

『今年度雄英体育祭、1年の全日程が終了!それではこれより、表彰式に移ります!』

 

『ワアァァァ~~!!!』

 

 気を取り直したようなスタジアムの歓声。

 

 そして花火の音の後、俺達を乗せた表彰台がせり上がる。

 

 3位、爆豪──暴れてこそいないが不機嫌。

 

「……クソが……!」

 

 2位、轟──やや俯き暗め。

 

「……」

 

 1位、俺こと気賀──自分で硬く引き攣った愛想笑いになっているのが分かる。

 

「……いやぁ、どもども」

 

 表彰台に乗った面子が、俺を含め、誰もスッキリと明るい顔はしていないという有り様……。

 

 爆豪は1位じゃないから喜ぶ訳がないし、轟はエンデヴァー関連のモヤモヤが晴れず、俺は俺で轟との決勝が締まらなかったから達成感がイマイチ……。

 

 それに、気掛かりなことが1つ――

 

『3位には爆豪君ともう1人、飯田君がいるんだけど、ちょっとお家の事情で早退になっちゃったので、ご了承くださいな☆』

 

 撮影中のメディアに向けて、ミッドナイトがやや媚び気味に告げた。

 

 飯田の早退……俺も、さっき飯田本人から、兄貴(インゲニウム)が敵にやられたと聞いた……。

 『ステイン』か……。

 

 俺に出来ることは何かあるか……?

 

『それではメダル授与よ!今年メダルを授与するのは勿論この人!』

 

 思考中断──ミッドナイトの言葉と共に、スタジアムの屋根の上に人影がせり上がる。

 

『HAーHAッHAッHAッHAッ!!』

 

 高らかな笑い声が響く。

 

「オールマイトだぁ!!」

 

 No.1ヒーローの登場に会場が沸き上がる。

 

 あ、そういえば……。

 

『とうッ!』

 

 跳び上がるオールマイト。

 これからあの人外しまくるんだよな……。

 

『我らがオールマイ『私がメダルを持って来た!!』――』

 

 シーン……

 

 ミッドナイトのコールとオールマイトの着地が被ってグチャった……。

 

 まあ、そこはさておき……メダル授与だ。

 

 先ず3位から──オールマイトがミッドナイトから銅メダルを受け取り、爆豪に歩み寄る。

 

「ハッハッハッ、爆豪少年!流石に強いな、君は!」

 

「……強くねえよ……!」

 

「ん?」

 

「俺は、気賀に負けた……!負けたんだよ……!!こんなクソみてぇな結果、何の価値もねえ……!」

 

 おいおい、試合も終わったんだから俺に殺気の籠った視線を向けるな……。

 

「確かにそう捉える事もできる。しかし、君は大勢のライバル達と鎬を削った結果、この位置に上り詰めた!それは誇るべきではないかな?」

 

「関係ねえよ!誰が何と言おうが、世間がどう言おうが、自分が認めてなきゃゴミなんだ……!!」

 

 オールマイトの言葉にも耳を貸さず、頑なに現状の自分を誇ろうとしない爆豪……。

 

「……うむ、相対評価にさらされ続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間は、そう多くない」

 

 オールマイトは爆豪の言葉を肯定的にまとめる。

 

「君としては不本意かも知れないが、メダルは受け取っとけよ。自分の傷として、決して忘れぬよう」

 

「…………チッ、わーったよ」

 

 爆豪はオールマイトの手からメダルをひったくる。

 原作では暴れてメダルすら拒んだ爆豪だが、ここでは比較的大人しい。

 おかげで、とりあえず、すんなりメダル授与が済んだ。

 

 荒れ狂いヤバい顔でガチガチに拘束されていた状態よりは遥かにマシだと思うが、これが奴にとってプラスになるのかマイナスになるのか、それは俺には分からない……。

 

 次は2位──轟の番だ。

 

「轟少年、おめでとう」

 

 少し頭を下げた轟の首に、オールマイトが銀メダルを掛ける。

 

「決勝で左側を収めてしまったのは、訳があるのかな?」

 

「……緑谷戦で切っ掛けを貰って、分からなくなってしまいました。あなたが奴を気に掛けるのも、少しわかった気がします。あなたの様なヒーローになりたかった……でも、俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ、駄目だと思った……。清算しなきゃならないものが、まだある……!」

 

「うむ、顔が以前と全然違う」

 

 オールマイトとは轟をそっと抱き、背中をポンと軽く叩く。

 

「深くは聞くまいよ……今の君ならきっと精算できる!」

 

「はい……!」

 

 そして、いよいよ1位──俺の番。

 

「さて!気賀少年!」

 

 俺の正面にやって来たオールマイト。

 こうして向き合うと、やっぱりデカいなオールマイト……。

 

「予選から常にトップをキープし続け、この本戦でも目を見張る戦いぶり!素晴らしい活躍だったな!」

 

「ありがとうございます」

 

 オールマイトがメダルを掲げたので、頭を下げ、首に金メダルが掛けられた。

 

「君ならば必ず、その活躍で多くの人を救う、素晴らしいヒーローになれるだろう!これからもこの調子で、頑張ってくれよ!」

 

「はい、“Plus Ultra”の精神で精進します!」

 

 オールマイトから差し出された手を握り、握手を交わす。

 

『さあ!今回の勝者は彼らだった!しかし皆さん!この場の誰にも、此処に立つ可能性はあった!ご覧いただいた通りだ!競い、高め合い、更に先へと昇っていくその姿!次代のヒーローは確実に!その芽を伸ばしている!!』

 

 ここまでは良いんだよな、ここまでは格好いいんだよオールマイト……問題はこの次。

 

『てな感じで最後に一言!皆さんご唱和ください!!せーの!』

 

『お疲れ様でしたー!』

『Plus Ultraー!!』

 

 はい、外した……。

 

 BOOOOOOO!!!

 

『そこはPlus Ultraでしょうオールマイトー!!??』

 

 大ブーイングである……。

 

『あぁ、いや……!疲れただろうなと思って……!』

 

 変なところでポンコツなオールマイトだった……。

 

 

 

 そんな最後のご愛敬はあったものの、体育祭は閉幕──会場は撤収、俺達生徒も校舎に戻って着替え、ホームルームとなる。

 

 

 

「お疲れ~……つーことで、明日明後日は休校だ。体育祭を観戦したプロヒーローから指名などもあるだろうが、それはこっちで纏めて、休み明けに発表する。ドキドキしながらしっかり休んでおけ」

 

『はい!』

 

 という訳で、手短に終了──その日は解散となった。

 

 体育祭が終わったところで、やはり気がかりは飯田……。

 尊敬する兄インゲニウムの容態……そこから、あいつが抱く感情、そしてこの先の職場体験でやってしまう事……。

 

 俺に、何かできる事はないか……この休みの間に、何か考えてみよう。

 

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