僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード22 名前をつけてみようの会?あっためてたのがありまっせ

 体育祭休み明け──その日は生憎の雨。

 

 今日から学校も平常運行だ。

 

 しかし、俺を取り巻く環境は結構変化した……。

 

「お!雄英の気賀くんじゃないか!」

 

「テレビ見たよ!凄いなぁ、君!」

 

「優勝おめでとう!」

 

「うわ~本物だ!サインください!」

 

「すっげえ!カッコいい!」

 

「なあ、握手してくれ!」

 

「「「頑張れよ!ヒーロー!」」」

 

 通学中、メチャメチャ人に囲まれた……。

 

 好意的に接してくれる人々を無碍にする訳にはいかず、なるべく対応(サインは流石に断ったが)していたら、いつもの倍以上の時間が掛かってしまった……。

 もしかしたらと思い、いつもより早めに家を出たのは正解だった。

 

 学校でも、その話題で皆、盛り上がっていた。

 中でも面白かったのは瀬呂──小学生からいきなり『ドンマイコール』されたと頭を抱えていた。

 

 

 

「おはよう」

 

『おはようございまーす!』

 

 いつも通り、時間通りに相澤先生が来て、全員速やかに着席──授業モードだ。

 

「さて、体育祭も終わってもう平常通りだ。切り替えてけ。今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ」

 

 相澤先生の口から出た『特別』の言葉に、みんなの空気が固まる。

 すわ“Plus Ultra”で高難度授業かと身構えているのだ。

 

「……コードネーム、ヒーロー名の考案だ」

 

『胸膨らむやつキタぁーー!!』

 

「ッ!!」ギラッ

 

シーン……

 

 相澤先生のひと睨みで静まる皆……よく躾けられているというか……。

 

「というのも、先日話した、プロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2・3年から……つまり、今回1年のお前らにきた指名は、将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある……」

 

 プロの世界は厳しい訳だ……こういうところは現実的だ。

 

「……で、その集計結果がこうだ」

 

 相澤先生がリモコンを操作すると、黒板にその結果とやらが表示される──黒板兼モニターとはハイテクだ。

 

 

『A組指名件数』

 

 気賀──5411

 

 轟──4003

 

 爆豪──3857

 

 飯田──301

 

 常闇──284

 

 上鳴──272

 

 八百万──108

 

 切島──68

 

 麗日──20

 

 瀬呂──14

 

 

「例年はもっとばらけるんだが、上位3人に注目が偏った」

 

 ご、5411……!

 指名ってそんなに来るのか……!?

 

「だ~!白黒ついた~!」

 

「流石に気賀はすげえな……!」

 

「ホントに、ほぼ体育祭の順位そのままだね……」

 

 上鳴、切島、耳郎が順に話していく。

 

「うわ~!指名来てる~!うわぁ~!!」

 

「うむっ」

 

 麗日は指名に感激して、前の席の飯田を揺さぶる。

 

「緑谷~、無いなぁ。あんな無茶な戦い方すっから怖がられたんだ……!」

 

「……」

 

 峰田が緑谷の肩を揺さぶっている。

 ここは……まあ、仕方がない。

 緑谷もここから変わっていくはずだ。

 

「この結果を踏まえ、指名の有無に関係なく、いわゆる、職場体験ってのに行ってもらう」

 

『職場体験……?』

 

「ああ。お前らはUSJの時、一足先に、ほんの僅かとはいえ敵との戦闘を経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようって訳だ」

 

 そこに繋がるヒーロー名の考案に、みんながやる気を燃やしていく。

 

「まあ、そのヒーロー名はまだ仮ではあるが、適当なもんは──」

 

ガラッ!

 

「──付けたら地獄を見ちゃうよー!」

 

 相澤先生の台詞をインターセプトしたのは、18禁ヒーロー『ミッドナイト』先生。

 

「学生時代に付けたヒーロー名が、世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!」

 

 相変わらず、きわどいボンテージ姿……思春期男子には目の毒でございます……。

 

「……まあ、そういう事だ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺ぁそういうの出来ん……」

 

 確か……相澤先生の『イレイザーヘッド』というプロ名は、同級生だったプレゼントマイクの考案だったんだよな。

 

「将来自分がどうなるのか、名を付ける事でイメージが固まり、そこに近づいていく……それが名は体を表すということだ。『オールマイト』とかな……」

 

 そう言うと、相澤先生は愛用の寝袋を取り出し、手早く着込んで教室の端で寝始めてしまう。

 

 そこからはミッドナイト先生が仕切り、みんなにパネルボードとペンが配られる。

 

 俺は今日までにもう決めている──何せ今日にヒーロー名の考案がある事も分かっていたのでね。

 

 そして数分後……。

 

「じゃあそろそろ、出来た人から発表してね」

 

 ミッドナイト先生の言葉でクラスに緊張が走る。

 確かに発表は度胸がいる……が、後になればなるほどハードルも高くなる。

 

 行くなら最初の方が楽だったりするのだ。

 

「はい」

 

「はい、気賀くん!」

 

 1番手である。

 席を立って、教卓に行く。

 

「結構前から考えてたんだ。気功ヒーロー『オーラマスター』!」

 

 シンプルに自分の【個性】から考えた。

 “マスター”ってつけるとなんかカッコよくね?

 

「マスター、熟達や修めた者を意味する言葉ね!【個性】と絡めて響きも良いわね!オッケー!」

 

「どうも」

 

 これで俺のヒーロー名は『オーラマスター』に決まった。

 よしよし、ついつい厨二病が疼いちゃうねぇ。

 

「はい!」

 

 お次はなんと飯田。

 

「俺のヒーロー名は、これです!」

 

 そして発表したのは──『インゲニウム2号』。

 

「2号──ターボヒーロー『インゲニウム』、お兄さんへのリスペクトね?」

 

「はい!」

 

「憧れの名を背負うってからには、相応の重圧がついて回るわよ?」

 

「承知の上です!兄はいずれ回復し、ヒーローとして復帰します。俺は、自分の原点(オリジン)でもある兄と肩を並べ、共に駆けるべく、胸を張ってこのヒーロー名を名乗れよう、ヒーローとしての道を邁進する所存です!」

 

「う~んっ、青・春♡いいわぁ~♡」

 

 恍惚の表情で身悶えするミッドナイト。

 

 そこからは続々とヒーロー名が発表されていった──。

 

 

 青山──輝きヒーロー『can't stop twinkling』

 

 蛙吹──梅雨入りヒーロー『FROPPY』

 

 切島──剛健ヒーロー『烈怒頼雄斗(レッドライオット)

 

 耳郎──ヒアヒーロー『イヤホン=ジャック』

 

 障子──触手ヒーロー『テンタコル』

 

 瀬呂──テーピンヒーロー『セロファン』

 

 尾白──武闘ヒーロー『テイルマン』

 

 砂藤──甘味ヒーロー『シュガーマン』

 

 芦戸──リドリーヒーロー『Pinky』

 

 上鳴──スタンガンヒーロー『チャージズマ』

 

 葉隠──ステルスヒーロー『インビジブルガール』

 

 八百万──万物ヒーロー『クリエティ』

 

 轟──『ショート』

 

 常闇──漆黒ヒーロー『ツクヨミ』

 

 峰田──モギタテヒーロー『GRAPE JUICE』

 

 口田──ふれあいヒーロー『アニマ』

 

 

 途中大喜利になりかけたりしつつも、順調にミッドナイト先生のオッケーが出ていく中、ここで流れにストップを掛ける奴が……。

 

「『爆殺王』」

 

 爆豪ェ……。

 

「そういうのは止めた方がいいわね」

 

「なんでだよッ!!?」

 

 ミッドナイト先生もこれには流石にマジトーンでボツった。

 

 名前に『殺』なんて入れた物騒なヒーローがいてたまるかって話だ……。

 せめてそのまま英語で『ボンバーキング』とかならまだアリだろうに……。

 

 爆豪はブーブー文句を言っていたが、ミッドナイト先生の不許可が覆らないと見て渋々引き下がった。

 

 そこへ行ったのは麗日──

 

「考えてありました。『ウラビティ』」

 

「洒落てる~!」

 

 難なくオッケー。

 

 残るは、爆豪と緑谷の2人──

 

「──緑谷くーん、できたー?」

 

 ここまで一度も発表していない緑谷にミッドナイト先生の声をかける。

 

 

 そして緑谷が出したヒーロー名は──『デク』。

 

 

「緑谷……!?」

 

「いいのか、それで……?」

 

「一生、呼ばれ続けるかも知んねえんだぜ……?」

 

 緑谷と仲のいい峰田、上鳴、切島が問う。

 

 それでも緑谷は、そのままでいくと頷いた。

 

「この呼び名、今まで好きじゃなかった。でも、ある人に意味を変えられて、僕には結構な衝撃で、嬉しかったんだ……!」

 

 雑魚で出来損ないの木偶(でく)から、頑張れって感じのデクへ──だったか。

 

「これが、僕のヒーロー名です!」

 

 もう、何だな……緑谷と麗日は、もう付き合っちゃえよ、と思う。

 将来、絶対くっつくだろう……。

 

 ともあれ、緑谷もヒーロー名は『デク』で決まった。

 

 

 

 で、残った爆豪は──

 

「『爆殺卿』!!」

 

「違う、そうじゃない」

 

 

 

 決まらないまま、考案時間が終わった……。

 

 

 

「さて、全員のヒーロー名が決まったところで、話を職場体験に戻す」

 

 約1名(爆豪)決まってないが……。

 

「期間は一週間、肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡すから、その中から自分で選択しろ。指名の無かった者は、予めこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件、この中から選んでもらう。それぞれ、活動地域や得意なジャンルが異なる」

 

「例えば13号なら、対敵より、事故・災害などの人命救助中心、とかね」

 

「よく考えて選べよ」

 

『はい!』

 

 そこでチャイムが鳴り、授業時間は終了となった。

 

 全員に職場体験の受け入れ先リストが渡される……が、俺のは分厚い!

 一昔前の電話帳か!?

 

「今週末までに提出しろよ……」

 

『あと2日!?』

 

 5000を超えるヒーロー事務所から2日で選べとは……流石は抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』……容赦ない!

 

 

 

 そんなこんなで昼休み──

 

 

 

 みんなそれぞれ職場体験をお題に話している。

 俺は1人、指名リストと睨めっこだ……今から見ていかないと間に合わなそうだ。

 ホント、電話帳かよ……。

 

「う~ん……」

 

 前世から覚えのあるヒーローとしては……

 

シールドヒーロー『クラスト』

具足ヒーロー『ヨロイムシャ』

忍者ヒーロー『エッジショット』

洗濯ヒーロー『ウォッシュ』

 

 と、ヒーロービルボードチャート10位内のヒーローから指名が来ていた。

 

 あとは名前も初めて聞くようなヒーローばかり……武闘派ヒーローが大半を占めているようだが、他にも災害救助を得意とするヒーローも結構多い様だ。

 

 さて、どうするか……戦闘も災害救助も、俺としては【個性】が活きて有りなんだ。

 そうなると大半のヒーロー事務所が当てはまって、結局迷う訳なんだが……。

 

「……む?」

 

 パラパラと紙束を捲っていると、1人意外なヒーローの名前が目についた。

 

フレイムヒーロー『エンデヴァー』

 

 何故、この人から指名が……?

 直接の接点はなかったし、あのオッサン自分の息子以外に興味なんかなさそうだったが……。

 決勝戦で息子の轟と戦った相手だからか……?

 

「…………」

 

 エンデヴァーの名前を見て、ふと考える……。

 

 原作では、確かエンデヴァーはステイン捕縛を目論み、保須に行くはずだ。

 

 ヒーロー殺し『ステイン』が保須近辺に出没しているニュースは全国に流れているし、インゲニウムも保須で遭遇し、負傷した。

 この世界では俺とリカバリーガールが彼の治療に成功して、復帰の目途が立った。

 だから、飯田がステインを追って保須に行く事はないと思う。

 

 だが、まだ緑谷と轟の2人が残っている……。

 

 いや、待て……?

 飯田がステインを追って保須に行った事が起点になって、緑谷が、轟が、と次々ステインと戦うことになったんだったか?

 いかんな、そろそろ原作知識が……ここを越えたら、もう未知の領域か。

 

 ああ、いかんいかん!

 今は未来より現在だ!

 

「気賀くん、大丈夫か?」

 

「ん?」

 

 飯田に声を掛けられた。

 ちょっと思考に入り込み過ぎて、来てるのに気付かなかったか。

 緑谷の事とやかく言えんな……。

 

「何やらリストを見つめて難しい顔をしていたようだが……何か問題でも?」

 

「ああ、いや、問題はないんだ。ただ、意外な人から指名が来ていたから、ちょっと色々考えてた」

 

「意外な人とは?」

 

「コレコレ」

 

 リストのエンデヴァーの名前を指し示す。

 

「む、フレイムヒーロー『エンデヴァー』か!No.2ヒーローから指名が来るとは、流石だ!」

 

「ああ、そこは光栄っちゃ光栄なんだが……ほら、俺、決勝で轟と変な感じに終わって、しかも轟が降参しちゃっただろ?指名貰ったし、最高峰のヒーローの事務所だし、体験に行きたい気もするんだが……ちょい気まずい気もして、迷ってる」

 

「なるほど、確かにそれは少々気まずいな」

 

 咄嗟に言ったが、実際これもある。

 エンデヴァーがどういうつもりで、何か入れ込んでいる息子を妙な形とはいえ負かした相手を指名してきたのか……。

 いや、『雄英体育祭優勝者』だからという単純な理由の可能性も無きにしも非ずだが……あのオッサンの人となりがイマイチ分からなくて、意図が掴めん。

 

 煮詰まったな……少し気分を変えようか。

 

「……ところで、飯田はどこに行くか決めたのか?」

 

「ああ!兄がよくチームアップしているヒーローから指名が来ていたから、そこへ行こうと思っているよ!」

 

「おお、そうなのか」

 

 飯田の表情や声色から、不安を感じさせるものはないように思う。

 少なくとも、ステインへの復讐心というものに突き動かされるような、危なげな気配はない。

 職場体験先も、保須でもないし、保須の近くでもない。

 うん、これなら飯田は大丈夫だろう。

 

「…………よし」

 

 決めた、俺はエンデヴァー事務所に行こう。

 ステインとのエンカウントが有るにしろ無いにしろ、やはり最大手ヒーロー事務所を体験できる機会は貴重、行って損はない筈だ。

 

 

 

 その日の放課後、俺は相澤先生に職場体験希望を提出し、俺は1人学校から走って帰宅した。

 

 

 

 それから時間はあっという間に過ぎ、職場体験の日を迎えた──。

 

 

 

「全員コスチューム持ったな?」

 

 駅まで引率兼見送りの相澤先生。

 

 A組全員で一度集まって、ここから各地へ向かう。

 

「本来なら公共の場じゃ着用禁止の身だ。落としたりするなよ……」

 

「はーい!」

 

「伸ばすな……!『はい』だ、芦戸……!」

 

「はい……」

 

 芦戸らしいっちゃらしい。

 

「くれぐれも、体験先のヒーローに失礼のないように……じゃあ行け」

 

『はい!』

 

 そこで解散――各々の職場体験先へ向かう。

 

 

 俺の行き先はエンデヴァー事務所──道中は轟と一緒だ。

 

「まさか、親父が気賀にも指名を入れてたなんてな……」

 

「俺もまさかNo.2ヒーローのエンデヴァーから指名を貰えるとは思わなかったよ」

 

 電車内で並んで座り、轟と軽く話す。

 轟は体育祭前より格段に話しやすい雰囲気になった。

 多少ぎこちないが、今までの自分を変えようと思える様になったのなら、轟の中で前進しているという事だろう。

 

「オールマイトを除けば、プロヒーロー最高峰。その事務所を見れるだけでも学べる事は山ほどある筈だ。存分に学ばせてもらうさ」

 

「……そうだな」

 

 轟は轟で、嫌悪を拭い切れない父親の元へ、学生の職場体験とはいえ自分から行く辺り、私情を抑えて少しでもヒーローを目指して学ぶべきを学ぼうと意識改善を図っている。

 

「お互い、この一週間が有意義なものになるよう、頑張ろうぜ」

 

「ああ」

 

 

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