僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード23 業火!エンデヴァー対面?思えばこれが初対面か

「待っていたぞ。よくぞ来た、このエンデヴァーの元へ」

 

 電車に揺られ夕方──俺と轟は都心の一等地に聳え立つ高層ビルの中、燃え盛るオッサン、フレイムヒーロー『エンデヴァー』と対面していた。

 

「雄英高校1年A組、気賀巧です。1週間、お世話になります。よろしくお願いします」

 

 俺はエンデヴァーに頭を下げる。

 挨拶、礼儀は社会人の基本。

 

「ふむ、礼儀を弁えているようで感心だ。さて、明日より我がエンデヴァー事務所を体験してもらう訳だが、君にはうちのサイドキックリーダーを務める『バーニン』を付ける」

 

「おい、気賀のこと指名しておいて自分で見ねえつもりか!?」

 

 エンデヴァーに轟が食ってかかる。

 

「轟っ、よせよ!俺はいいからさ」

 

「よくねえ!呼び付けておいて放置なんてあり得ねえだろ!」

 

「人聞きの悪い事を……職場体験、つまり我が事務所を体験するに当たり、世話役としてサイドキックを付ける。サイドキックでも経験豊富なプロヒーローには違いない。どこにおかしな点がある?」

 

「だったら俺もサイドキックの誰かに付けろ!つまらねえ身贔屓で俺だけアンタに連れ回されるなんてごめんだ!友達の目の前でみっともねえ真似するんじゃねえ!」

 

 おいおい、やめてくれよ俺の事で争うのは……!

 てか、轟、俺のこと友達って思ってくれてるのか、照れるじゃねえか。

 

「……ふん、まあよかろう。お前達の職場体験の密度を高める配慮のつもりだったが、そこまで反発されては逆効果か。2人とも俺が見てやる」

 

 エンデヴァーは小さく鼻を鳴らしてそう言った。

 

「本格的な職場体験は明日からとする。今日のところは事務所内と宿舎を見学し、そのまま休め。部屋を用意してある」

 

「分かりました」

「……」

 

 そこで俺と轟はエンデヴァーの所長室から退出し、待機していた薄緑色の燃えているような髪の女性サイドキック『バーニン』に案内され、事務所内施設を見学、最後に宿舎の部屋に案内された。

 

「いやぁ、マジとんでもないなエンデヴァー事務所」

 

 俺は轟の部屋を訪ねていた。

 寝る前に軽く話でもと思ったんだ。

 

「高層ビル丸ごと事務所ってのも驚いたが、中はマシンジムに風呂にサウナ、【個性】対応の模擬戦闘トレーニングルーム、食堂、オマケにそんじょそこらのビジホ(ビジネスホテル)よか遥かに整った宿舎まで……流石No.2ヒーローは伊達じゃねえ」

 

「……そうだな」

 

 微妙に暗いな、轟……。

 

「轟、まださっきのエンデヴァーの事を気にしてるのか?」

 

「っ、まぁ、な……」

 

 轟は目線を下げたまま頷いた。

 

「悪ぃ、気賀……みっともねえトコ見せちまって……」

 

「おいおい、謝るなよ。俺は気にしちゃいないさ」

 

「だけど……」

 

「いいって。それにさ、腹の中はさて置き、エンデヴァーの言う事にも一理あるしな」

 

「え?」

 

「俺の職場体験。サイドキックリーダーのバーニンさんに付けるつもりだったって話さ」

 

 サイドキックだってプロには違いない。

 違いないどころか、最大規模のこのエンデヴァー事務所で大勢いるサイドキックのリーダーを任されている人だ。

 実務能力はかなり高いレベル、経験も豊富に違いない。

 その人に付いての職場体験なら、きっと学ぶ事は多かったはずだ。

 エンデヴァーに付くにせよ、バーニンに付くにせよ、俺に損はなかった。

 

「そうか……言われてみれば、そうだな。悪ぃ、俺、余計なことしちまったな」

 

「謝るなって。どっちでも損はないって言ったろ。何も問題ないし、余計でもない。友達(ダチ)が自分の為に怒ってくれたんだからな」

 

「っ……そ、そうか」

 

 目を逸らし、頬を指で掻く轟。

 イケメン轟焦凍の照れ顔、さぞや女子垂涎の光景であることだろう。

 まあ、俺は男子なのでときめかんが……。

 

「んじゃ、そろそろ俺は部屋戻るわ。明日から頑張ろうぜ」

 

「ああ。──気賀」

 

「うん?」

 

「ありがとな」

 

「ん」

 

 片手を挙げてから、俺は轟部屋を退出、自室に戻った──。

 

 

 

「では行くぞ。ついて来い」

 

 開けて翌朝、職場体験が開始された。

 

 俺と轟はヒーローコスチュームに着替え、エンデヴァーに付いてパトロールに同行する。

 

「道すがら、プロヒーローというものについて簡単に話してやる」

 

 歩きながら、エンデヴァーはそう切り出し、話を始める。

 

 前提として、ヒーローは国から給与が支払われている関係上、扱いは“公務員”となるが、成り立ち故に一般的な公務員とは何もかもが著しく異なる。

 ヒーロー活動の基本は犯罪の取り締まり──【個性】不法使用による犯罪行為に対し、【個性】を行使しての鎮圧が主な仕事になる。

 事件発生時には地区ごとに一括で警察から応援要請が来る。

 

 ちょい気になることがあったので質問──

 

「エンデヴァー、地区ごととなるとヒーローの活動地域が重なる場合があると思うんですが、その場合、事件解決は所謂“早い者勝ち”になるんですか?」

 

「基本的はそうだ」

 

「そうなると、手柄の“取り合い”みたいな事が起こりそうな気がしますが……」

 

「実際に起こる。過去には取り合いどころか、駆け付けたヒーロー同士が足を引っ張り合い、挙句(ヴィラン)を取り逃がすというバカバカしい事例も多数あったと聞く。だからこそ、そうした愚行が繰り返されぬよう法整備が進んだ」

 

 その一つがヒーローの給与体制だとエンデヴァーの話が続く。

 

 ヒーローの給与は基本“歩合”──逮捕協力、人命救助等の貢献度を役所に申告、そして専門機関の調査を経て、適正な額が支給される事になっている。

 

 その調査結果によっては、下手をすると給与どころか罰金すら発生する。

 だからヒーローは常に視られていることを意識して活動するようになった。

 

 しかし、それによって起こる弊害もある。

 

 それは、調査を恐れて一部のヒーロー達が事件解決に消極的になった事──

 

 自分の【個性】はこの事件には不向きだ──

 適任のヒーローが来るまで待った方がいい──

 自分がやらなくても他のヒーローが何とかするだろう──

 

 自分の【個性】を駆使して何としても事件を解決しようという積極性の欠如……。

 ヒーロー飽和時代と呼ばれる事の多い昨今、一部を除き、ヒーローの質は年々緩やかに低下していると、エンデヴァーは顔を顰めながら語った。

 

「そうした事情から、その一部のヒーローに皺寄せがきているのが現実だ……」

 

 一部の──実力派のヒーロー達が他の地域の応援に呼ばれ、出張する事が増えているらしい。

 当然、No.2ヒーローたるエンデヴァーも日本各地に連日出張しており多忙を極めている。

 ヒーローには副業も許可されているが、エンデヴァーにそんな暇など無い。

 

 この世界にも、労働基準法というものは存在する。

 

 コンプライアンスに則り、エンデヴァーを初め事務所所属のサイドキック及び全職員には週2日の休日と、各員の就業年数に応じた有給休暇が付与され、定期的に有休を消化している。

 それでも尚、多忙──休む時間を捻出する為にも大量のサイドキックを雇用し、ローテーションを組む事で何とかバランスを維持しているのが現状なんだそうだ。

 

 この辺りは、前世で曲がりなりにも社会人を経験している俺には分かりやすい話だ。

 というか、エンデヴァー、声色は固いが話し方は丁寧で結構分かりやすい。

 原作知識で、奥さんとの『個性婚』とか轟に対する『幼児虐待』紛いの鍛錬とか、それにこっちでよく聞く『エンデヴァー怖い』系統の噂話とかで、基本的に取っ付きにくい人物かと思っていたが……案外、指導者向き?

 

「……」

 

 ちらっと轟を見れば、凄く意外そうにエンデヴァーを見ていた。

 ヒーローの先達として真っ当に俺達を指導している姿が、今までに見てきた身勝手クソ親父からかけ離れていて、驚いている様だ。

 

 エンデヴァーも焦らずこういう背中を見せていれば、自然と尊敬されたんじゃないのか?

 

 

 

 そうして指導を交えたパトロールは夕方まで続いたが、この日はその地域での出動はなく、俺達は事務所に戻ってきた。

 

「1時間休息を取れ。コスチュームは脱ぐな。この後、出掛ける」

 

「出掛ける?」

「どこへ?」

 

「フッ、お前達にヒーローというものを、見せてやる!」

 

 エンデヴァーはニッと笑ってそう言った。

 

 

 

 

 

 

◇一方その頃、緑谷は――

 

「雄英高から来ました、緑谷出久です……よろしくお願いし――わあぁぁぁ!?死んでるぅぅ!!??」

 

「生きとる」

 

「あぁ~~生きてるぅーー!!ほっ……!」

 

 そんな出会い頭のコントで始まった、老齢のプロヒーロー『グラントリノ』と緑谷の職場体験――の場を借りた【OFA】の修行――。

 

「雄英の体育祭をテレビで見た。あの力の使い方、初めはまあまあ使えているのかと思えば、てんでなっちゃいなかった。正義の象徴、No.1ヒーローなんて言われちゃいるが、あの正義バカ――オールマイトは教育に関しちゃ素人以下だなぁ」

 

 初めまるでボケ老人のような振る舞いのグラントリノに不審を抱いた緑谷だったが、すぐにその認識を改め、彼に教えを乞うた。

 グラントリノの【個性:ジェット】、コスチュームのブーツ底からのジェット噴射による高速移動――緑谷はいきなりの実戦形式に戸惑い先手こそ打たれたが、すぐに【OFA・フルカウル】で対抗。

 

「スマーーッシュッ!!」

 

「おっ!?」

 

 流石に遥か上の機動力と年季を備えたグラントリノを捉えるには至らないものの、驚かせ、一瞬ながら全力の回避を緑谷は引き出した。

 

「フッ、体育祭の時より使えてるじゃねえか小僧(久々に本気で避けたっつーに)」

 

「い、いえっ、まだまだです!」

 

「そりゃ当然だが、下地としては上出来ってとこよ」

 

 それから幾度かの実戦形式訓練を経て、職場体験1日目は終了となる。

 

「ところで小僧、その【OFA】を全身に纏わせるやり方、いつ頃出来るようになった?」

 

「一番最初にこのやり方――【フルカウル】にたどり着いたのは、雄英入学初日でした」

 

「ほう(早えな。俊典も少しは指導者として成長したか)」

 

「雄英で知り合った気賀くんっていう友達から、【フルカウル】の切っ掛けになる【個性】の使い方のイメージを教えてもらって――」

 

「あ?(俊典じゃねえんかい!)」

 

「あと、気賀くんに勧められて格闘技を動画とかで勉強して、取り入れられる動きや技術を練習してます!」

 

「そ、そうか……(その小僧の方がよっぽど師匠してるじゃねえか、俊典……)」

 

 緑谷の何の気ない素直な告白に、グラントリノは内心でオールマイトに呆れていた……。

 

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