僕のヒーローアカデミア A Little Extra 作:ジョン堂
「前例通りなら、保須に再びヒーロー殺しが現れる。暫し保須に主張する!!市に連絡しろぉ!!」
「ッ!」
保須──遂にきたか、いや行くか。
ヒーロー殺し……奴との会敵があるか否か、原作と条件が違うから読めんな。
一応、あるとは考えておくか、いることはいるんだろうし……。
気構え有りと無しじゃ大違いだ……。
そうして俺があれこれ考えている内に、エンデヴァーはテキパキと保須出張の準備を整えていく。
出張中の事務所責任者代理をバーニンに任せ、活動地域内のパトロール網の構築、出張に同行するサイドキックを選出、移動用社用車の用意を指示──。
手慣れているというか、とにかく迅速だ。
「焦凍くん、気賀くん」
「っ、はい」
「はい」
サイドキックの人に呼ばれて、思考から浮上する。
「今のうちに軽く食べておきな。保須行ったら、多分かなり動くことになるだろうから」
「分かりました」
「はい」
促され、俺と轟はその場を離れ、食堂へ向かう。
う〜ん、メシ食えるかなぁ……?
そうして休憩を取り、時間が来て俺達は事務所のワゴン車で移動──日が完全に暮れた頃、保須に到着した。
その直後──
スガァァンッッ!!
街の中心部付近で爆発が起きた。
「フン!着いて早々か!行くぞォッ!!」
エンデヴァー、サイドキック2名が先ず駆け出し、やや遅れて俺と轟が続く。
「焦凍ォ!!気賀!お前達は自衛に限り【個性】使用を許可する!!後ろで俺をよく見ていろッ!!」
エンデヴァーの指示が飛ぶ。
それにしても息子の呼び方の力の入り方があからさまな件……いや止そう。
と、そうだ、一応──
「轟、手出せ」
「?ああ」
パン
疑問符を浮かべつつ差し出してきた轟の手に軽くタッチ──オーラを分け与える。
すると、轟の全身が薄っすら赤寄りのオレンジのオーラで覆われる。
「!これ、お前のオーラか?」
「そう。通称【オーラアーマー】、念の為な」
【オーラアーマー】は『NARUTO』の主人公うずまきナルトが最終決戦で仲間達にやった九尾チャクラの供給を再現した、元の技名が無いか覚えてなかったため簡単に名付けた技だ。
前にオールマイトや相澤先生にやった様に直接オーラを注ぎ込む方法もあるが、あれはブースト率が高い分、持続時間が短い。
【オーラアーマー】は謂わばオーラで出来たパワードスーツというもので、ブースト率は控えめだが持続時間が長い。
「攻撃力・防御力がおよそ2〜3割上がる。持続時間は30分ぐらいだ」
「何ぃ!?」
「マジで!?」
「凄くない!?」
聞いていたのか、エンデヴァーとサイドキックの人達が振り返ってくる。
そんなギラついた目でこっち見んな、興味津々か。
「……み、皆さんも要りますか?」
「頼む!」
「俺も!」
「……寄越せ」
走りながら手を差し出してくるの器用っすね。
「じゃ、どうぞ」
パン、パン、パン
3人に【オーラアーマー】を付与──
「おお!」
「なんか体軽くなった!」
「ほう……?」
すぐに変化を実感したのか、お三方も一時立ち止まり揃って自分の手や体を見回す。
「……よし急ぐぞ!!」
「はい!!」「了解!!」
「ああ!」「承知です!」
数秒で確認を終え、再び走り出す──その速度は劇的ではないが、確実にさっきまでより速い。
「キヤアァァ!!」
「ゥウゥゥゥ!!」
「っ!?おい気賀、あれって!?」
「ああ、見覚えあり過ぎだな」
数分で現場に到着──そこで暴れていたのは、雄英襲撃事件にもいた脳みそ剥き出し怪人『脳無』、それも2体。
「何だあの敵!?」
「脳みそ剥き出しとかキモ過ぎんだろ!?」
サイドキック2人が脳無の見た目に引く。
「あの異様な外見……雄英襲撃犯の中に同様の輩がいたと情報があったな。確か『敵連合』とかいう安っぽい名を名乗ったというチンピラ集団か」
流石にエンデヴァーはあの事件の事も知ってたか。
ヒーロー独自の情報ネットワークでもあるのか?
て違う!
今はそんな場合じゃない!
先ず状況確認──プロヒーローが6人、脳無と戦っている。
爆発があったか炎が上がり、壊れた車が横倒しになり、地面のコンクリや建物の壁が砕け、正に災害現場そのものだ。
幸いというか、既に避難済みか周囲に一般人の姿は見えず、気も感じない。
「フン、これだけヒーローが集まって不甲斐ない!焦凍ォ!!気賀!俺をよく見ていろ!!」
言うが早いか、エンデヴァーは消える様な速さで駆け出す。
「ヌンッ!!」
ドコォ!!
その勢いを乗せた炎のパンチが、黒い筋肉系脳無の脇腹にめり込み、吹き飛ばす。
速くて重い一撃──【オーラアーマー】のブースト抜きだったとしても、並の人間なら骨も内臓もグシャっと逝くだろう。
「キヤアァァァ!!」
「小賢しいッ!」
2体目の灰色羽の飛行系脳無が空に飛び上がるが、エンデヴァーは炎を噴出しながらジャンプ──近くのビルの壁を一度蹴って二段跳びで追い付き、炎のパンチを上から振り下ろし、飛行脳無を地面に叩き落とした。
「フンッッ!!」
更にダメ押し──地面に墜落した飛行脳無の背中に全体重を乗せて着地。
飛行脳無はその一撃で沈黙した。
「ウウゥゥゥッ!!」
さっき吹っ飛ばした筋肉脳無が起き上がった!
しかも、エンデヴァーの一撃で焼け焦げた脇腹が元に戻っている!
「フン、【再生】か。なら!」
慌てる様子もなくエンデヴァーは、突進してくる筋肉脳無を迎え撃つ──組み付かれる前にその顔面を鷲掴みにし、そのまま火炎放射!!
「炭化した細胞では再生出来まい?」
不敵な笑みを浮かべたエンデヴァーが手を離すと、顔面黒焦げになった筋肉脳無は膝から崩れ落ちた。
あっという間に脳無2体を制圧してしまった。
雄英襲撃の時の脳無よりは弱い個体、そして俺のオーラによるブーストがあるとはいえ、エンデヴァーの対応は早い。
鍛え方と経験が違うって事か、なるほど流石はNo.2ヒーロー、伊達じゃない。
「……」
ん?
エンデヴァー、今ちらっと俺を見たか?
「あれ!?気賀くん!?轟くん!?」
ん?
この声は──?
「「緑谷!?」」
何故ここに!?
飯田もいないのに!
って、そうか!
確か緑谷はオールマイトの先生だったっていう……ナントカって爺さんヒーローの所で職場体験してるんだったか。
で、新幹線で渋谷(だったか?)に行く途中で脳無が現れて、保須に〜って流れだったな。
「む?お前は……」
あ、エンデヴァーが緑谷に気付いた。
マズいか、これ……?
「え、エンデヴァー!?」
「……雄英体育祭で会ったな。焦凍と同じA組の、緑谷だったか」
「は、はい!」
「焦凍達と同じなら職場体験中だろう。体験先のヒーローはどうした?何故現場に1人でいる?」
「そ、それは、そのぉ……」
おい緑谷、そこで目を逸らすのは後ろめたさの白状だぞ。
「クラァー!小僧ォーー!!」
「ぐ、グラントリ──ノォ!?」
ドカ!
叫びと共に小っさい爺さんヒーローが現れ、凄いスピードで緑谷の顔面に飛び蹴りをたたき込んだ。
「新幹線で座ってろって言ったろ!!」
「ご、ごめん、なさい……!」
倒れ伏しながら謝る緑谷に、グラントリノ(そうそう、そんな名前だった)という爺さんヒーローはプンスカ怒る。
「ったく!悪いとこばっか師匠に似てんじゃねえってんだよッ!」
「えっ?に、似て──クゲ!?」
「悪いとこっつってんだろバカタレ!!喜んでんじゃねえ!!」
再び頭を踏まれる緑谷──コントみたいなやり取り、何コレちょっとオモシロ。
「誰?」
轟はマイペースだな……。
「ぼ、僕の職場体験の担当ヒーロー、グラントリノ……」
頭と顔を摩りながら起き上がる緑谷。
「で、でも良かったです!グラントリノが無事で!」
「ふん、舐めんなよ、小僧。これでもおめえの万倍修羅場を潜ってきてんだ」
「そ、それで、あの脳無は!?」
「ああ、あの敵なら動けなくしてから警察に任せてきた。久しぶりのガチ戦闘でちょい手間取ったがな」
「す、凄い!!」
緑谷が驚きの声を上げる。
「直にこっちにも警察が駆けつけてくるだろう。こうなったら仕方ねえ、流石に事情説明しねえと……ったく!だから座ってろっつったのに!」
グラントリノが緑谷を睨む。
ああ、自分1人なら敵を倒して警察に引き渡してさっさと引き上げることも出来たけど、面倒を見てる緑谷共々、他のヒーローにも目撃されている以上、報告と説明から逃れる訳にもいかなくなった、と……。
緑谷って
バササッ
「ッ!?伏せろ!!」
グラントリノが何かに気づいて叫ぶ――。
「敵!?」
見ればさっきエンデヴァーが倒した灰色羽脳無がいつの間にか目覚め、こっちに飛んできていた!
そして――
ガッ
「「緑谷!!」」「小僧!!」
俺達全員の隙をついて、緑谷を足で掻っ攫った!
野郎――!!
「ッ逃がす――かッ!!」
ガシッ!!
俺は咄嗟に【疑似・九尾チャクラモード】を使い、オーラの腕を伸ばして羽脳無の脚を掴んだ!
「くッ!この!!」
そのまま引っ張り上げられそうになり、また咄嗟に逆のオーラの腕を伸ばして近くのビルの壁を掴む!
「んぎぎ……!!」
クソ、引き戻せない……!
「「でかした!小僧!(気賀!)」」
その時グラントリノとエンデヴァーが同時に動く――
「いい加減にしとけこのォッ!!」
「墜ちろォッ!!」
グラントリノは自ら飛び上がり羽脳無の背中に強烈な蹴りを――
エンデヴァーは手で作り出した炎の槍を胴目掛けて投げ――
2人の攻撃はほぼ同時に直撃し、羽脳無は緑谷を離し、墜ちていく。
「緑谷!」
落ちる緑谷を救ったのは轟――得意の氷結で氷のスロープを作り出し、緑谷を墜落から救った。
「緑谷!大丈夫か!?」
伸ばしていたオーラの腕を戻し、轟と一緒に緑谷に駆け寄り声をかける。
「う、うん!轟くんのおかげで大丈夫!ありがとう!」
すぐに起き上がった緑谷――どうやら怪我はないようだ。
「っ、ふぅ……」
安堵の息を吐いた――その時。
「ッ!」
不意に視線を――誰かに見られているという感覚を覚え、その方向――近くのビルの上へ振り向く。
『……ハァ……』
「!!」
ビルの上にいたのは、赤い襤褸のマフラーを首に巻き、刀やナイフを体の至る所に装備した、襤褸覆面で目元を隠した男――
ヒーロー殺し『ステイン』――
飯田の事が無くなったから、会うことはないと思っていたのに……!
『……ハァ……いいな』
「っ!?」
【疑似・九尾チャクラモード】で【凝】よりは落ちる強化率だが、何故かヤツの声が耳にはっきり聞こえた気がした。
「気賀くん?」
「どうした?」
「っ、あ、いや……っ!」
緑谷と轟に声を掛けられ一瞬気が逸れ――次振り向いた時、ステインの姿は無かった……。
原作なら緑谷達の決死の奮戦で、ステインは今日捕らえられるはずだった……。
しかし、俺がいるこの世界では、ステインは今日捕まらなかった……。
これがこの先にどう影響するのか……もう、俺には分からない。
厄介なことにならないといいが……。