僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード25 それぞれの職場体験?とても有意義だったよ

「1週間、お世話になりました」

「世話になった」

 

 制服を着た俺と轟は、事務所所長室にてエンデヴァーに頭を下げた。

 

 

 

 今日で職場体験は終わり──明日から雄英に戻って授業だ。

 

 

 

 脳無による保須市襲撃──あの事件のあった翌日から、報道が少し騒がしかった。

 

 保須で一応逮捕・拘束された脳無3体は、その外見的特徴と報道ヘリから偶然姿を捉えられた死柄木弔と黒霧から、雄英襲撃の犯人グループ『敵連合』との繋がりが指摘されている。

 

 またあの事件の同日、保須市の路地裏でプロヒーロー『ネイティブ』が“意識不明重体”の状態で発見され、保須総合病院で懸命の治療が続けられ、予断を許さない状態だという。

 警察はネイティブの怪我が刃物によるものである事から、噂のヒーロー殺し『ステイン』の犯行と見て、現在も捜索が続けられている。

 

 ステインを狙って保須に出張していたエンデヴァーだったが、結局、ヤツを捕らえるどころか遭遇することも出来ず、そのまま俺達の職場体験期間が終わってしまい、エンデヴァー事務所に戻ってきた。

 ちなみに緑谷とグラントリノも、あの夜警察に報告と事情説明をしてすぐ帰って行った様だ。

 

 今日までニュースや新聞を見てきた限り、『敵連合』とステインは明確に仲間扱いはされていないが、何かしら繋がりがあるのではないかと疑いは持たれている様だ。

 疑い止まりなのは、脳無が暴れた場所と犯行時刻が、被害者であるネイティブが発見された場所と推定犯行時刻が離れている事――そしてあの夜以降、ステインが姿を現さなくなった事が主な理由。

 事件の日から現在に至るまで、保須市は昼夜を問わず、警察とヒーローによる厳戒態勢が敷かれているがステインは発見できず、その後被害者も出ていない。

 もう保須市から立ち去ったのか、それとも隠れているだけか、去ったとして次は何処に現れるのか……日本中に不安が広がっている。

 それと原作にあった様な、ステインを祭り上げる類のものは動画サイト・SNSにアップされていないし、大した話題にもなっていない……今のところ、静かなものだ。

 

 これが嵐の前の静けさでないことを祈りたい……。

 

「──気賀」

 

「はい?」

 

 挨拶を終えて帰ろうとした時、エンデヴァーに呼び止められる。

 

「2年に進級し“仮免”を取得したら、“ヒーローインターン”は焦凍共々またウチに来い」

 

「仮免……」「ヒーローインターン……」

 

 俺と轟は思わず顔を見合わせる。

 単語自体はニュアンスで大体想像出来る。

 

 それよりも、エンデヴァーが俺にそんな誘いをかけてきたのがかなり意外だ。

 

「今は頭の隅にでも置いておけ。詳しくはいずれ教師から話があるだろう。或いは己で聞くがいい。俺からはそれだけだ」

 

 そう言うとエンデヴァーは足早に所長室を出て行った。

 

「……あいつがあんな事を言うなんてな」

 

「ああ。あのオッサン、てっきりお前さんに興味全振りしてるとばっかり……」

 

「……」

 

 轟、嫌そう……。

 

「……多分、気賀の【個性】が便利だからだろうな。将来のサイドキックとして、今の内から抱え込んでおこうって腹だろ」

 

 便利て、言い方……。

 

 しかし、まあ轟の言う通りだろうな。

 俺の【個性:オーラ】は(多分)転生の時に付いたチートの類い、他の人から見れば有用な“強固性”となる訳で、プロヒーローとして確保したいと思うのは理解できる。

 

 その思惑はさて置くとして、俺としても悪い話じゃない。

 言ってみれば一流企業から早い段階でスカウトが来たようなものだ。

 就職、独立、いずれにしても俺には大きなプラスになる。

 

 まあ、それはまだまだ先の事──エンデヴァーも言った様に、今は頭の隅に置いておくとしよう。

 

 

 

 最後に多少戸惑いを投げられたが、俺と轟もエンデヴァー事務所を後にした──。

 

 

 

 翌日──

 

「行ってきまーす」

 

「はい行ってらっしゃい。気をつけるのよー」

 

 母ちゃんに見送られて家を出る──日常が戻ってきたのを実感。

 

 1週間ぶりのいつもの通学路、雄英の校舎、教室、そして──クラスメイト達。

 

 ただまあ、この1週間の変化はチラホラ見受けられる。

 

 例えば、爆豪が82分けのピッチリヘアーになってたり──

 

「「ダッハッハッハッ!!マジか!?マジか爆豪ー!!」」

 

「笑うなクソども……ッ!」

 

 何があった……?

 

 

 麗日がナニカの波動に目覚めて麗らかじゃなくなってたり──

 

コオォォ……とても、有意義だったよ……!」

 

「目覚めたのね、お茶子ちゃん」

 

 何があった……!?

 

 

 峰田が暗黒面に堕ちかけて虚な目をしてたり──

 

ガジガジガジ……女ってのは元々、悪魔の様な本性を隠し持ってんのさ……!」

 

 何があった──!?

 

 

 ともかく……皆、存分に職場体験で何か(ナニカ)を得て戻ってきたようだ。

 

 

 そんな中でやはり話題に上がってしまうのは保須の一件──その渦中にいた俺と轟だ。

 ちなみに緑谷の事は皆に知られていない。

 ニュース等でグラントリノの名前が出なかった事に加え、当人が俺と轟に口止めを頼んできたからだ。

 あった事と言えば羽脳無に攫われかけただけで、皆に心配をかけたくないんだと。

 

「まさか、保須にヒーロー殺しだけでなく『敵連合』まで現れるとは……!大事がなくて良かった……」

 

「本当ですわ……。事件のことをニュースで知って、心配しました……」

 

 飯田、八百万は俺や轟の身を案じてくれる。

 

「ニュースとか見たけど、『敵連合』とヒーロー殺しが何か繋がりがあるんじゃないか?みたいに言われてるよな」

 

 皆が、報道された内容について話し合う中、尾白がそう口にした。

 ヒーロー殺しが出没した保須市に突如、雄英襲撃犯の『敵連合』――その一味として以前捕縛された脳無と外見が酷似している敵が現れた訳だから、関係性を疑うのは必然だろう。

 

「にしてもさ、ヒーロー殺しって、一体何がしたいんだろうな?」

 

 上鳴がそんな事を口にする。

 

「飯田の前で言うの、マジゴメンなんだけどさ……インゲニウムはほら、チャート上位の人気ヒーローで、敵として目立ちてえから~とかなら狙った理由も分かんだけど……今回の被害者、ネイティブだっけ?俺、知らなくて検索したら、チャート4桁台の鳴かず飛ばずって感じのヒーローでさ。動機?みたいなのが見えてこないっつーか……」

 

 なるほど、側から見るとそういう印象になるか。

 ヒーロー回顧論だったか、ステインが掲げるというか自分の芯に据えてる思想は……。

 

──英雄(ヒーロー)とは偉大な功績の元に贈られる称号

──英雄(ヒーロー)は見返りを求めてはならない

 

 だから、今の社会に出ている大半の、所謂“職業ヒーロー”達を『拝金主義』の“偽物”と断じて、ヒーローを取り戻すと宣い、殺意を持って襲撃を繰り返している。

 

 俺はギリギリ原作知識で知っているが、ヒーロー殺し『ステイン』の素性は一般には知られていない。

 奴の思想を知らず、その行為をメディア越しに見るだけでは動機までは結び付かないか。

 それならそれで、下手にステインに感化されるよりはいい。

 

 そして何より──

 

「──どんな主義・主張・思想があろうと、真っ当に生きてる誰かに危害を加えていい理由にはならねえよ」

 

『!!』

 

 どんなご立派な思想も、暴力を正当化するために使った時点で“言い訳”に成り下がる。

 

「ヒーローとか敵とか以前に、先ず人として、そこだけは間違えちゃいけない。俺は、そう思う」

 

「気賀くんの言う通りだ!」

 

「だな」

「うん」

 

 飯田を皮切りに、皆が頷き、同意を示してくれる――俺は仲間に恵まれた。

 

 ステインも、こうして意見を交わし、共感を抱き、対等に向き合う事ができる仲間がいたら……或いは違う生き方が出来ていたのかも……いや、詮無いことか。

 

 

 

 考えることの多い一件ではあったが、一先ず過ぎたこと――日常は戻ったら戻ったで進んでいく。

 

 という訳で、日常の一部である学校の授業も平常通り進んで午後――。

 

 

ハイ、私が来たー。てな感じでやっていくワケだけどもね。ハイ、ヒーロー基礎学ね!久しぶりだ!少年少女!元気か!?」

 

 午後の実技、ヒーロー基礎学――1週間以上ぶりのオールマイトである。

 

「ぬるっと入ったな」

 

「久々なのにな」

 

「パターンが尽きたのかしら?」

 

尽きてないぞ、無尽蔵だっつーの。さて、今回のヒーロー基礎学だが、職場体験直後ってことで、遊びの要素を含めた救助訓練レースを行う事にする!!」

 

 このコミカルな感じ、うんうん、日常だ。

 

 さておき、レースだ――競争は一定の楽しさがある。

 

 コースは『運動場γ』、複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯――を再現した訓練場だ。

 クラスを5人4組(俺がいるので1組は6人)に分けて、1組ずつ訓練(レース)を行う。

 オールマイトがどこかで救難信号を出し、街外から一斉スタート。

 誰が1番にオールマイトの所に着けるかを競う。

 

「勿論、建物への被害は最小限にな!」

 

 誰とは言わないが、オールマイトの指はどっかの誰かさん(爆発さん太郎)を差す。

 

「指さすなよ……!」

 

 まあ、当たり前だな。

 

 

 

 第一レース――緑谷・尾白・飯田・芦戸・瀬呂

 

 選手以外は運動場γ内を移す巨大モニターが設置された待機場所『OZASHIKI』で観戦する。

 

「俺、瀬呂が一位」

 

「うーん、ムズい……けど、尾白もあるぜ?」

 

「オイラは芦戸!」

 

「デクが最下位」

 

「やっぱり飯田くんな気がするなあ」

 

 クラスでも機動力に定評のあるメンバーが集まった組だけに、トップ予想が白熱する。

 僅差だが、コースとの相性で瀬呂、レースとくれば快足を誇る飯田の2人が人気だ。

 

 で、残念ながら緑谷は不利と見られている。

 俺の入れ知恵で【フルカウル】を早い段階で体得していても、それを明確に示す場が余りにも少なく、評価がイマイチ上がっていない様だ。

 

『それではいくぞ!!――START!!

 

 オールマイトの合図でレーススタート――全員が動き出す中、先手を取ったのは瀬呂。

 

 【個性:テープ】で配管にテープを巻き付け、建造物の上へ飛び上がる。

 

「ほら見ろ!こんなごちゃついたとこは上行くのが定石!」

 

 瀬呂をトップと予想した切島が声を上げる。

 実際その通り――遮蔽物で死角だらけの工業地帯、開けた上に行くのはセオリー。

 そして、瀬呂の【個性】とそれを活かすセンスは、遮蔽物を移動手段と道に変換し、逸早くセオリーを実行できる――正にこのコースにうってつけだ。

 

 だが――

 

『おおお!?緑谷!?』

 

 下馬評を覆し、瀬呂を抜き去ってトップに躍り出たのは緑谷――見違えたその動きで観戦組の、いや奴を見ていた全員の度胆を抜いた。 

 

 配管や壁を飛び跳ねながら速度を落とす事なく、抜いた瀬呂との差を広げながらオールマイトへと突き進んでいく。

 

 その跳ね回るような動きは、爆豪によく似ていた――きっと参考にしたんだろう。

 

 前より明らかに【フルカウル】が洗練されている。

 強化のぎこちなさが減り、自然に近い動きが出来ている。

 どうやら職場体験の1週間、グラントリノに相当しごかれた様だな。

 

ズルッ

 

「お?」

 

 感心して見ていたら、緑谷が途中の配管で足を滑らせた。

 

 あ、落ちる――と思ったら。

 

『ッ!!』

 

 再び度胆――滑った足を瞬時に動かして、配管を蹴りつけ横跳び――その先の別の配管に両手を掛けて一回転、体勢を立て直して再び飛び跳ねてオールマイトへ向かう。

 

 なんてアクロバットな……緑谷、やるじゃないか。

 

『――フィニーーッシュ!』

 

 そしてレース終了――一位に輝いたのは緑谷!

 続いて二位瀬呂、三位飯田、四位尾白、五位芦戸となった。

 

『――次の組!位置について!』

 

 第一レース組が戻り、第二レース組が準備に向かう。

 

「緑谷、やるじゃないか」

 

「あ、ありがとう!気賀くん!」

 

「動き、かなり練度上がったな。グラントリノのしごきの賜物か?」

 

え――ア、ウン、ソウダネ……ガタガタガタ

 

 え、何、どうした……!?

 緑谷の目からハイライトが消えてバイブレーションを始めた。

 

「おい、おい!?緑谷!?どうした!?」

 

「HAHAHA!ナンデモナイヨ!ダイジョウブ!グラントリノノ組手ト実戦訓練ノオカゲデ、【フルカウル】ガ大分馴染ンダミタイデネ!HAHAHA!!ガタガタガタガタガタガタ!!

 

 何があった――!!??

 

 

 

 そんなこんなで、午後の授業終了――ちなみに俺はレース一位だった。

 俺の【個性】で、この系統の訓練に後れをとっちゃ話にならん。

 

 

 

「なかなかハードな訓練だったな~」

 

「久々の授業、汗かいちゃった☆」

 

 更衣室にて、コスチュームから制服に着替える面々――今回の訓練で浮かんだ自分の課題や、そこにどう向き合うかなどが話題に上がる。

 

「――おい緑谷!!ヤベェ事が発覚した!!こっちゃ来い!!」

 

 と、そんな中、峰田が剝がれかけのポスターを前に緑谷を手招きしている。

 

 ん?

 なんだあの壁の穴……穴!?

 

「見ろよこの穴ショーシャンク!!恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!!隣はそうさ!わかるだろう!?女子更衣室!!」

 

『!』

 

 おいおい、諸先輩方の中にも峰田の同類がいたのか……しかもご丁寧にポスターで隠蔽までして……。

 あと野郎ども、『ざわ』っとかしてんじゃないよ……。

 

「峰田くんやめたまえ!!覗きは立派な“ハンザイ行為”だ!!」

 

「オイラの“リトルミネタ”はもう立派な“バンザイ行為”なんだよォォ!!」

 

 いや、ウルセエな……。

 飯田の制止も聞く耳持たず、峰田は壁の穴に張り付く。

 

「八百万のヤオヨロッパイ!!芦戸の腰つき!!葉隠の浮かぶ下着!!麗日のうららかボディに!!蛙吹の意外おっぱァアアア――」

 

 だからウルセエっての。

 壁際でそんなに騒いでたら――

 

ドス、ドックン!

 

「――ああああ!!??」

 

 そうなるに決まってる。

 

「耳郎さんの【イヤホンジャック】!!正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!!」

 

 緑谷、解説乙。

 

 向こうにはA組の“盗聴クイーン”耳郎がいるんだから、気付かれない訳ないんだよなぁ……。

 

「目があ!!目がアアア!!?」

 

 自業自得の峰田を尻目に、A組男子はそそくさと着替え終わって更衣室を後にした。

 

 

 ちなみに、この件は即日相澤先生に報告――これでも委員長なんでね。

 峰田は捕縛の上、ペナルティとして3日間、放課後1階男子トイレの掃除を命じられたとか。

 

 

 それはそれとして翌日――

 

 

「えー……そろそろ夏休みも近いが、勿論、君らが1か月休める道理はない」

 

『まさか……』

 

「夏休み、林間合宿やるぞ」

 

『知ってたよーー!!やったーー!!』

 

 クラス熱狂――ちなみに俺は知らなかった。

 何かしら補講的なものがあるかもとは思ってたが、合宿とはな。

 

「肝試そー!!」

 

「風呂!!」

 

「花火」

 

「行水!!」

 

「カレーだな」

 

「湯浴み!!」

 

 とりあえず峰田は黙ってトイレ掃除しとけ。

 

「――ただし」

 

シーン!!

 

「その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は……補習地獄だ

 

 という訳で、クラス全員期末テストに向けて準備に入った――。

 

 

 

 

 

 

◇とある闇の中――

 

「ヒーロー殺し……欲を言えばもう少し死柄木弔の糧になってほしかったが、まあ概ね想定通りだ」

 

 闇の中、モニターに映る死柄木……その前に座る人影……。

 

「多少時間は掛かっても、暴れたい奴、感化された奴……噂を聞きつけ様々な人間が、衝動を解放する場として『敵連合』を求める。死柄木弔はそんな奴らを統括しなければならない立場になる……!」

 

 巨悪は闇の中で蠢く……。

 

「今のうちに謳歌するといいさ、オールマイト……“仮初の平和(茶番)”をね」

 

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