僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード28 課題ズ?誰もが山積みに決まってる

「そういうことかよ!!ド畜生がッ!!」

 

 妨害役、1人じゃなかった──!!

 

 初っ端から危なかった!!

 人形を確保した途端に室内に漂った甘い匂いに強烈な眠気──間違いなくミッドナイト先生の【眠り香】!

 口元を押さえて咄嗟に【疑似・九尾チャクラモード】を展開、眠気を振り払って部屋から飛び出て何とか眠りを回避した!

 【疑似・九尾チャクラモード】は防護服じゃない、空気や水を完全に遮断するわけじゃないから【眠り香】は防ぎ切れない!

 

 建物の外へ出たら、スナイプ先生と思しき銃撃が来るわ!

 

 逃げてる途中で地面から壁が生えて迫ってくるわ──あれセメントス先生だな!

 

 何人か知らんが先生複数名が各々【個性】を駆使して俺を妨害してくる気だ!!

 

「クソが!!」

 

 何でもかんでも“Plus Ultra”って言っときゃ通ると思うなよ!!

 

 流石に頭にキタ──絶対クリアしたる!!

 

 といっても自棄を起こしてはいかん。

 演習試験の採点基準が明かされていない以上、例え勝利条件を達成しても場合によっては赤点もあり得る。

 無闇に建物を破壊したり、この要救助者人形をぞんざいに扱ったらまず間違いなくアウトだ。

 

 この人形は本物の要救助者と思って行動するんだ──。

 

 (ヴィラン)はこっちの弱みを喜んで突いてくる。

 今の俺の弱みは、この“動けない要救助者”だ。

 

 もう【疑似・九尾チャクラモード】は解けない──死角から要救助者を攻撃されたら終わりだ。

 迂闊に【疑似・舞空術】で飛び上がれもしない──背負ったまま飛んで、不意に【抹消】で止められたら要救助者ごと墜落して終わりだ。

 

「っ……全く、ヒーローは大変だぜ……!」

 

 

 

 考えなきゃならないことが、こんなに多いなんてなぁ──!

 

 

 

 なるべく建物の陰に隠れつつ脱出ゲートを目指して走る。

 要救助者を抱えたまま戦闘なんて論外、どこかに隠してもダメだ!

 

 走りながら気を探る──先生達の気はもう覚えている。

 

 ブラドキング先生、発見──高さは俺とほぼ同じ地上にいる、今のところ動いていない。

 ミッドナイト先生、発見──地下にいる、察するに俺が屋内に隠れた時の担当か。

 スナイプ先生、発見──高い場所、建物の屋上、俺を追って来ている。

 セメントス先生、発見──地上にいる、スナイプ先生同様、俺を追って来ている。

 相澤先生、発見──スナイプ先生とは違う高い場所、今は動いていないが相澤先生は捕縛布の機動力がある。

 

 まったく「ふざけるな!」と叫びたい!

 ここまで不利も不利な状況に追い込まれるとか、プロの現場でもそうそうないだろ──ないよな!?

 

 一旦ビルとビルの間の路地に入って立ち止まる。

 さてどうする!?

 長く立ち止まるときっと妨害──多分銃撃かセメントが来る!

 俺の位置はバレてるに違いないんだ!

 

 時間は掛けられない、先生達の隙を突いて──いや隙を作って(・・・)脱出する!!

 

「……よし!」

 

 半ば出たとこ勝負だが、コレでやってみよう!

 

 路地を出て大通りを全速で走る──スナイプ先生の現在位置から銃撃されない様に建物を盾にする!

 

「っ!」

 

 相澤先生が動いたな──俺の速度と進行方向から先回りするような動きだ。

 

 セメントス先生もゆっくりと俺の後ろへ向かって動いている。

 あの人の【個性】がどこまで届くか分からないが、遮蔽物の無い直線上は拙い気がする!

 

 脇道に入って進路変更──走る走る走る!!

 

 脱出ゲートまではそう遠くない。

 妨害や要救助者がいなければ、今の俺なら強化込みで走って3分と掛からない距離だ。

 

 だが、当然敵役のブラドキング先生が待ち構えている。

 

 先生達はハンデの錘で動きが一定鈍るから、俺の移動速度について来れない。

 相澤先生、セメントス先生、スナイプ先生……この3人の動きから考えられる狙いは、地形にもよるがゲート付近で待ち伏せ、戦闘と妨害で手間取らせてのタイムアップ、或いは要救助者を何らかの救助失敗に追い込んで失格ってとこか。

 

 やらせねえぞ──!

 

「……見えた……!」

 

 建物の陰に身を隠しつつ、視力強化の【凝】で様子を窺うと、妙に可愛らしい脱出ゲートとその前方に待ち構えるブラドキング先生の姿を捉えた。

 

 地形は大型車両が複数余裕で停まれる開けた広場、近くにスナイプ先生・相澤先生がそれぞれ配置についたビルがあり、広場とゲートまで一直線の大通りもあってセメントス先生がもうすぐ来る。

 

 やはり厄介なのは相澤先生だな、【個性】を睨み殺されたら一気に詰みだ。

 先ず相澤先生の目を封じなければ──頼むぞ、上手くいってくれぇ!

 

「はぁぁ……!」

 

 オーラを集中して、掌の上に球を作り出す。

 白色に薄く光るオーラの球、俺はそれを相澤先生の頭上目掛けてぶん投げる──!

 

 オーラの球が相澤先生の真上に来たところで──

 

「弾けて混ざれ!!」

 

 言葉と共に、開いた掌をグッと握った──次の瞬間!

 

カッッ!!

 

 言葉通り弾けるようにオーラの球──【擬似・パワーボール】が数倍に膨らみ、閃光が辺りを眩しく照らす──!

 『ブルーツ波』など1ゼノも発しない、10秒と保たない唯の閃光弾──遠隔式【擬似・太陽拳】と言うべきこの技、幾ら相澤先生でも数秒は目を開けていられまい!

 

 今しかない──!!

 

 【擬似・界王拳】を重ね掛けし、一気に飛び出し脱出ゲートへ全速力で駆ける!!

 

「くっ!一気に抜ける気か!そう簡単には通さんぞ!」

 

 俺に気づいたブラドキング先生が構える。

 ブラドキング先生の【個性】は確か【操血】──血液を自在に操る【個性】で、噴出させた血液を凝固させて敵を拘束するのが得意技だったはず。

 

 捕まっても弾き飛ばす事は出来る気がする──しかし秒単位の硬直は免れない。

 その間に相澤先生、スナイプ先生、セメントス先生のいずれかの妨害が来る。

 

 捕まる訳にはいかない!

 

 走る速度は落とさず──

 

「ガアッ!!」

 

 口からの【擬似・リクームイレイザーガン】で攻撃!!

 

「グオォッ!!?」

 

 ブラドキング先生は咄嗟に凝固させた血液を盾にして防御──流石だが、吹き飛ぶのまでは防げなかった。

 溜めが短くて威力はそれなり止まりだが、ノックバックできれば十分!

 

 道は開いた──あとは一気だ!!

 

「ウオォォ──ッ!!」

 

 今出せる最高速度で駆け抜ける──そして。

 

『気賀、要救助者と共に脱出ゲートより脱出──条件達成』

 

 合成音声アナウンスとブザーが響き、俺の演習試験は終了した。

 

 

 

 過去一しんどかった……!!

 

 何とか勝利条件は達成できたが、もうヘトヘト……。

 オーラの制御、周囲への警戒、即興の策が成功するか否かの不安……心身の消耗がエグい。

 

「期末テストの成績はこれから採点する。まあ、先ず赤点はないだろう。よく頑張った!」

 

 試験を担当したブラドキング先生から、そんなお言葉を頂戴した。

 

 演習試験は終わったので、俺は今日はもうやる事がない。

 なので、休むでも他の面々の試験を見学するでも好きにしていいと言われた。

 なんなら帰宅しても構わないそうだが……俺は皆の演習試験を見学する事にした。

 

 折角の機会だ、皆の実戦的な動きを見たい。

 それと、ちょっと心配なのが数人……。

 

 という訳で、リカバリーガールが控えたモニタールームにお邪魔する。

 

「失礼します」

 

「ほい、お疲れさん。ラムネお食べ」

 

「頂きます」

 

 うむ、ぶどう糖が消耗した体に沁みる。

 

「皆は配置に着きましたか」

 

 モニターには、先に発表されたペアが、それぞれの演習試験場で開始の合図を待つ姿が映っている。

 

 砂藤・切島ペアは市街地──

 梅雨ちゃん・常闇ペアは円形の施設内部──

 轟&八百万ペアは住宅街──

 障子&葉隠ペアは円柱立ち並ぶ薄暗い屋内空間──

 麗日&青山ペアはUSJ(“ウソ”の“災害”や“事故”ルーム)──

 峰田&瀬呂ペアは岩場を模した訓練場──

 飯田&尾白ペアは遮蔽物の少ない掘削現場のような訓練場──

 上鳴&芦戸ペアは工業地帯──

 緑谷&爆豪ペアは市街地──

 

「さて、今日は激務になりそうだね」

 

 リカバリーガールが軽く溜め息を吐く。

 怪我人は確実に出るからな、希少で有用で有能なお人は大変だ。

 

『演習試験、レディ……ゴー!』

 

 お、始まった──各ペア、一斉にスタート。

 

 最初に動きを見せたのは、梅雨ちゃんと常闇のところだ。

 

『──!?』

 

 アナウンス直後、2人を取り囲む様に複数のエクトプラズム先生が出現──

 

『咥えろ闇影(ダークシャドウ)!蛙吹!投げる!』

 

 常闇が短く告げると、闇影(ダークシャドウ)が梅雨ちゃんを上階に投げる。

 

『常闇ちゃん!』

 

 続いて梅雨ちゃんも空中で舌を伸ばして常闇に巻き付け、壁に両手両足で張り付くと同時に引き上げていく。

 

 上手いな、取り囲むエクトプラズム先生の包囲を抜けた。

 流石冷静さに定評のある梅雨ちゃんと常闇のペア、事前に打ち合わせたのか、状況への対応と連携がきちんと取れている。

 

「コミュニケーション能力――この社会、ヒーローとして地味に重要な能力。特定のサイドキックと抜群のチームプレイを発揮できるより、誰とでも一定水準をこなせる方が良しとされる」

 

「ヒーロー飽和時代なんて言われるほどヒーローが溢れかえっている昨今、プロの現場で初見同士がかち合うことも日常茶飯事だと聞きますからね」

 

「そうさね。即興のチームアップともなれば、より一層コミュニケーション能力は重要になる」

 

 その点でいうと、常闇も若干厨二っぽいところはあっても及第点は取れているし、梅雨ちゃんは優秀と言えるだろう。

 この2人は割と安心して見ていられる。

 

 それに比べて──

 

『──だぁから!!てめえの力なんざ合格に必要ねえっつってんだ!!』

 

『──怒鳴らないでよ!!それでいつも会話にならないんだよ!!』

 

 爆豪と緑谷──こいつらは、話にならねえ……。

 

 

 

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