僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード29 最悪のふたり?だがもし裏返るなら……

『正面戦闘はマズい!逃げよう!!』

 

『俺に指図すんな!』

 

 モニターに映るウインドウの中で、あのオールマイトというNo.1ヒーローを相手にしておきながら、戦闘か逃走かで意見は真っ二つ……。

 連携もクソもなく、ただただ翻弄され転がされ続ける2人……。

 

 オールマイトという絶対的強者相手でも戦闘による打倒・勝利に固執する爆豪……。

 

 オールマイトという絶対的強者、加えて絶対的憧れの対象であるが故に、戦闘という選択が微塵も無く逃走一択の緑谷……。

 

 両極端、そして一長一短──噛み合ってないを通り越して、お互いを噛み殺し合っている……。

 

『だから!正面からぶつかって勝てるはずないだろ!?』

 

『ッ!気賀の試験見た後で!んなクソしか言えねえならマジでもう喋んな!!』

 

 え?

 俺?

 

『どんだけ不利だろうが勝つんだよ!それが、ヒーローなんだからよお!!』

 

 俺が理不尽な試験をクリアしたから、爆豪は張り合ってオールマイトを倒そうとしてるってのか!?

 おいおい!?

 そりゃ色々筋違いってもんだろ!?

 

 俺が驚いている間にも、状況はどんどん悪化していく……。

 

 緑谷はガードレールの残骸で地面に縫い付けられるわ、爆豪は腹に強烈なブローを叩き込まれてゲロを吐きながら吹っ飛ばされるわ……。

 

 実力差に加えてあの2人の絶望的なまでの相性の悪さ、グダグダの内に蓄積していくダメージと疲労……。

 こりゃあ、本当に拙いかも……。

 

『君が焦る理由はわかるよ、緑谷少年の急成長だろ?』

 

 なんかオールマイトが語り出した。

 

『でもさ、レベル1の力とレベル50の力……成長速度が同じなはずないだろう?もったいないんだ君は!わかるか?わかってるんだろ!?君だってまだ幾らでも成長出来るんだ!でも、それは力じゃない』

 

 爆豪の意識改善を促そうとしているのか。

 でも……幾らオールマイトの言葉でも、あの爆豪が聞き入れるとは思えないんだが……。

 

『ッ、黙れよ、オールマイト……!』

 

 ほらな。

 フラつきながらも立ち上がる爆豪。

 

『あのクソの力ぁ借りるくらいなら……負けた方がまだ……マシだ!』

 

 爆豪……この期に及んでそういうこと言いやがるか。

 

『…………そっか』

 

 気のせいかも知れないが、オールマイトの声と雰囲気に失望の色が混ざっている気がする。

 

『後悔はない様にな』

 

 オールマイトが握った拳が振り下ろされ、終わりか──と思った時。

 

『負けた方がマシだなんて、君が言うなよ!!』

 

 なんと緑谷が飛び込んで爆豪の頰を殴り飛ばした!

 

 そのまま爆豪を抱え上げてビルとビルの間の路地に飛び込む。

 2人の姿が見えなくなった。

 

 ここから仕切り直せるか……?

 爆豪が拗らせてるのは勿論だが、緑谷も変なところで頑固だからなぁ……。

 

 数秒してオールマイトが移動を始めた。

 向かう先は脱出ゲートか、2人が逃げると見て待ち伏せる気かな。

 

『──どこ見てんだぁ!!?』

 

 オールマイトの背後から爆豪が!

 まだ戦う気か!

 

 て──なんだあの顔!?

 身を切る様な葛藤を死ぬ気で押し殺している様な必死の形相……!

 

 オールマイトが迎撃しようと振り返る。

 

『デクゥーー!!撃てぇーー!!』

 

 爆豪の怒号──緑谷がオールマイトの背後に!

 

「あれは!?」

 

 緑谷の腕に、爆豪のコスチュームの小手!?

 

 次の瞬間──緑谷の腕から大爆発が放たれる!

 

 あれは最初の戦闘演習で爆豪がやってた過剰火力の爆破だ!

 つまりこれは──爆豪と緑谷が、連携した!!

 僅かだがオールマイトが吹っ飛んだ!

 

『走れや!!アホが!!』

 

『うん!!』

 

 2人は脱出ゲートに向かって走る。

 

 爆豪が自分を曲げた──勝利の為に意地を捨てた!

 緑谷がどうにかこうにか説得したのか分からないが、何にしてもこれならまだ勝機はある!

 

『八百万、何でもいい、常に何か小物を作り続けろ』

 

 お?

 轟の声──近くにあったマイクが拾ったのか。

 

 見れば、轟と八百万が細い道を、塀で身を隠しながら進んでいた。

 

『作れなくなったら相澤先生が近くにいると考えろ。この試験、どっちが先に相手を見つけるかだ。視認でき次第、俺が引きつける。そしたらお前は脱出ゲートへ突っ走れ』

 

『っ!お、お待ち下さい!轟さん!』

 

 八百万が轟を遮った。

 なんだか、言い出す時の八百万が何かをグッと堪えた様に見えたな。

 

『轟さんの策は分かりました!今度は、わたくしの考えた、考えていたオペレーションを聞いてください!』

 

『けど急がねえと……』

 

『急がば回れ、ですわ!脱出と戦闘、どちらを取るにせよ勝率が高くなる様考えました!』

 

『……分かった。なるべく早く話してくれ』

 

 轟と八百万が身を隠しながら、少しずつでも移動しながら話し合いを始めた。

 

 流石に設置されたマイクではその内容は拾えない様で分からないが、数分後には2人は動きを変えた。

 

 移動は走り、細い路地と広い道を交互に、辺りを警戒しつつ着実に進んで行く。

 轟は右腕で氷結を発動しながら、八百万はなんかずんぐりしたボウリングのピンみたいな人形?を作りながら──あれは多分、相澤先生の【抹消】を察知する為だろう。

 

 そうして脱出ゲートに近づいて行く2人──だが、遂に相澤先生と会敵。

 

 相澤先生は得意の捕縛布を使って、まるで某蜘蛛ヒーローの様に自在に飛び回りながら2人に迫る。

 

『轟さん!』

 

『おう!』

 

 一言の後、八百万が作って保持していた人形を相澤先生に向けて投げつける。

 相澤先生は咄嗟にか、自分に当たりそうな人形を腕で払った。

 

 と、次の瞬間──

 

カッ!

 

 ウインドウが白一色になった。

 閃光弾──俺もやった目潰し攻撃か!

 【個性】が『目』に由来する相澤先生にはマストな対策だな。

 

 そして、映像が回復した時には、相澤先生の前に巨大な氷の壁──轟が体育祭でやった氷結ブッパの大技だ。

 

 二段構えの相澤先生の【抹消】封じ──それはいいが、轟と八百万はどこ行った?

 2人の姿が見えないからか、相澤先生は住宅の屋根に上がる。

 位置は……なるほど、脱出ゲートを背にして広く周囲をカバーできる様に陣取ったか。

 

 果たして2人はどう出る?

 脱出か、捕縛か──轟と八百万が組めば、どちらにも勝機はあるはずだ。

 

 おっ、出てきた──って、2人して布で全身を覆っている?

 布は八百万の【創造】だろうが、あれも【抹消】対策か?

 

 見ていると、相澤先生が捕縛布で2人の頭を纏めて縛る。

 

「マネキン!?」

 

 なんと捕縛布が掛かったのは、八百万が屈みながら持っていた上半身だけの簡素なマネキンだった。

 そして八百万の足元には──

 

「カタパルト!?」

 

 今度は木製の小型カタパルト!

 その発射台には、纏められた帯──あれって相澤先生の捕縛布か?

 

 それを八百万が撃──

 

「あ!?」

 

 八百万が発射レバーを押そうとして外した!

 拙い!

 

「あ、あれっ?」

 

 何故か相澤先生が退いた。

 相澤先生なら今の隙に八百万を捕縛するなり、カタパルトを壊すなり出来そうなのに……もしかして?

 

 そこで持ち直した八百万が改めてカタパルトを発射──捕縛布が相澤先生の周りに広がる。

 

『っ!今です轟さん!地を這う炎熱を!!』

 

 八百万が叫ぶと、隣の轟が地面を這う炎を放つ。

 相澤先生狙いじゃない?

 

 すると、打ち出した八百万の捕縛布が急に収縮し、相澤先生の胴を腕ごとぐるぐる巻きに拘束した!

 

「何だあれ!?」

 

「恐らく『エチノール合金』だね」

 

「エチノール?」

 

「謂わゆる“形状記憶合金”の一種さね。熱で記憶させた元の形状に戻る性質があるんだよ」

 

「ああ、轟の炎で!」

 

 なるほど、流石は八百万!

 自分と轟の両方の【個性】を活かして勝利を掴んだ!

 

 しかし──

 

「リカバリーガール、最後の相澤先生の動き……」

 

「フフ、なんだかんだ言って、甘い男さね」

 

 やっぱりそういうことか。

 相澤先生も、味な事を……。

 

『轟・八百万チーム、条件達成』

 

 何はともあれ──動きを封じた相澤先生の両手に手錠を掛けて、轟と八百万は試験クリアだ。

 

 八百万、体育祭以降、自信を失くしかけていた様だから少し心配だったが、なんとか吹っ切れた様だ。

 試験前の勉強会の打ち合わせの時、ほんの少しアドバイスの真似事などしてみたが、役に立っただろうか?

 

 

 

『……八百万、体育祭のことを重々承知の上で言わせてもらう。競うな!持ち味を生かせ!』

 

『え……!?』

 

『お前さんの強みは、知識と【個性:創造】を駆使することで生み出せる幅広い対応力だ。直接戦闘が得意じゃないことなんか小さな問題、気にする事じゃない』

 

『っ……で、ですが……』

 

『八百万、どうしても自分を信じられないなら、俺を信じろ』

 

『えっ……!?』

 

『お前さんには仲間を勝利に導ける頭脳と【個性】の両方がある!どんな困難な状況だろうと、お前さんならその場の最適解を導き出せると信じてる!お前さんを信じる俺を信じろ!』

 

『気賀さん……!はいっ!』

 

 

 

 まあアドバイスと言っても、某地上最強の生物や某兄貴のセリフを引用させてもらっただけなんだが……しかし、あれらが万事に通ずる名言なのは間違いない。

 

 

「む!ったく、あのバカタレは!」

 

 はい?

 バカタレ?

 

 リカバリーガールが何やら怒っている。

 その視線を追うと──そこには、オールマイトに片腕を掴まれて吊り上げられた緑谷と、同じくオールマイトに地面に踏みつけられた爆豪の姿が!

 

「マジか……!?」

 

 ちょっと目を離した隙に、もう追いつかれて潰されてたのか!?

 錘のハンデがあって、あの2人が連携してもこれか……。

 やはりNo.1ヒーロー、日本どころか世界最強とさえ言われる男……立ちはだかる壁が高過ぎる!

 

「全く、どうしてああ加減ってもんが下手なんだろうね……!」

 

 リカバリーガールの怒るポイントはそこか……。

 しかし、パンチの衝撃波で街を半壊させるデタラメ男を相手に、原形を保っている時点で手加減はしてはいるんだろう。

 

 手加減して、尚突破できない……。

 

 見れば、爆豪のコスチュームの小手も両方破壊されている。

 もうあの大爆発は──

 

『うるせぇぇぇーー!!』

 

FABOOOOOM!!

 

 起こせたのかよ!?

 あの小手は補助装備の類いでしかなかったのか!

 

 今の爆煙で2人が見えなくなった。

 

『死ねえぇー!!』

 

 何だあ!?

 爆豪のいつもの掛け声とほぼ同時に爆音──そして緑谷が吹っ飛んだ!

 

 あ、爆豪がぶん投げると同時に爆破で飛ばしたのか!

 脱出ゲートまで一直線──オールマイトも宙に浮いている!

 

 いったか!?

 

『【ニューハンプシャースマーーッシュ】!!』

 

 はあ!?

 

『いやいや甘いぞヒーローども!!』

 

「パンチの反動で空飛ぶんじゃねえよ!!」

 

 ふっざけんな!!

 何だあのインチキ!?

 しかもそのアホみたいな勢いを乗せたヒップアタックで、緑谷の腰にぶちかましやがった!

 

「ちょっ!?リカバリーガール!あの威力で腰はヤバいのでは!?」

 

「あんの大バカ!!やり過ぎだってんだよ!ったくもう!悪いけど、いざとなったら、あんたの力を借りる事になるかもね……!」

 

 おいおい、インゲニウムの時の再現ってか!?

 リカバリーガールが焦るって相当だぞ!?

 

FABOOOOOM!!

 

『行けデク!!』

 

 爆豪がオールマイトに追撃の大爆破──あれは爆豪の腕にかなり負荷があるはず!

 多分小手はその負荷を回避或いは軽減する為の装備だろう、それ無しであんな連続爆破は危険では!?

 

『早よしろ!!俄仕込みのてめえよか俺のがまだ立ち回れんだ!!役に立てクソカス!!』

 

BOOOOM!!

 

 地面に倒れた緑谷は……やはり腰のダメージがキツいのか上手く動けていない。

 なんとか立ち上がり、ゲートへ向かっているが鈍い。

 

 爆豪が連続爆破でオールマイトを浮かせ続けているが、間に合うか!?

 

「クソ!」

 

 オールマイトが爆破を躱して緑谷へ向かう──爆豪が止めにいったが逆に地面に押さえ付けられた!

 

BOM!

 

 爆豪はもう腕が限界なのか、それでも小さな爆破を起こして攻撃を続けている。

 

 急げ緑谷──と思ったその時。

 

『スマーーッシュッ!!』

 

 ゲートに向かったと思っていた緑谷が、オールマイトの頬にパンチを叩き込んだ!

 

 そこで攻撃!?

 完全な予想外──しかし良いのが入ってオールマイトがよろけ、爆豪の拘束が解けた。

 

 そして緑谷が爆豪を脇に抱えて脱出ゲートに走る。

 爆豪は気絶しているらしく、ダラリと四肢を力なくぶら下げている。

 

 精魂尽き果てたか……だが、その奮闘と執念は無駄じゃない。

 爆豪としてはスッキリしないだろうが、最低限──

 

『爆豪・緑谷チーム、条件達成』

 

 演習試験クリアは果たしたのだから――!

 

 

 

 

 

「──オールマイト・ナニサラシトンジャ・スープレックスーー!!」

 

「あ痛ァーー!!??」

「ええぇーーーー!!??」

 

 担架ロボに搬送されてきた緑谷と爆豪の治療が終わったところで、一緒に戻ってきていたオールマイトの後頭部を、俺は強めに地面に叩きつけた。

 ギリ意識を保っていた緑谷が目ん玉を剥き出しにしたが、敢えて無視──ちゃんとリカバリーガールの許可を、いや寧ろ推奨を貰っている。

 

「オールマイト!あんた本当に加減を知らないね!!もう少し強く打ってたら、取り返しがつかんことになってたよ!?」

 

 そのリカバリーガールは、ある種芸術的な姿勢のオールマイトを注射器を模した杖で強めにシバく。

 

「特に緑谷の腰!これギリギリだったよ!」

 

 そう、もう少しイってたら俺の出番だった。

 期末試験で危うく下半身不随とか、負っていい怪我じゃないぞ……。

 

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