僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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 お読みいただき恐縮千万。


エピソード30 クラス観察記?いやいやこれは見守り

 爆豪と緑谷の2人はリカバリーガールの治療を受けた後、また担架ロボで校舎の保健室に運ばれていった。

 オールマイトは放置──俺とリカバリーガールは再びモニタールームに戻り、まだ試験中の皆の様子を見守る。

 

 そろそろ終わりが近いのは、梅雨ちゃんと常闇のところか。

 2人は安定感のある連携で、エクトプラズム先生の【分身】を倒しつつ着実に進んでいる。

 

 そして、脱出ゲート前にたどり着き、エクトプラズム先生本体と会敵──と同時にエクトプラズム先生が巨大な分身を作り出し、通路ごと梅雨ちゃんと常闇に食らいついた(・・・・・・)!?

 

「なんだと!?」

 

 見ていると、巨大エクトプラズム先生の背中に2人が身動きを封じられた状態で浮き上がる。

 あんな使い方もできるのか、【個性:分身】──人数を増やせるだけでなく、相手を強引に拘束できるとは……俺の【オーラ】で再現できないかな?

 

 さておき──常闇から【闇影(ダークシャドウ)】が伸びて脱出ゲートに向かう。

 だが、エクトプラズム先生は簡単には通してくれない。

 あの人、蹴り主体の格闘技を体得しているらしく、【闇影(ダークシャドウ)】が向かっては弾かれ、倒すことも抜けることもできない。

 

 残り時間は10分を切った。

 このまま【闇影(ダークシャドウ)】だけで接近戦を続けても勝ち目は薄い。

 

 ここにきて敗色が濃くなったか──と、心配になった時だった。

 

『蛙吹・常闇チーム、条件達成』

 

「えっ!?」

 

 クリアのアナウンス!?

 何が起きた!?

 

「あっ!」

 

 エクトプラズム先生の足に手錠が!?

 いつの間に!?

 

「リカバリーガール、何が起きたか分かりますか?」

 

「ふぅむ、ちょいとお待ち。蛙吹梅雨と常闇踏影の方の映像をリプレイしてみよう」

 

 リカバリーガールがパネルを操作すると、別ウインドウにリプレイが表示される。

 

 数十秒前、巨大分身エクトプラズム先生に磔の2人……何か梅雨ちゃんがもぞもぞ動いている。

 

「っ!?」

 

 思わず声が出そうになった。

 なんと梅雨ちゃん、口から手錠を吐き出した!

 結構ショッキングな映像を見てしまった……早めに忘れよう。

 

 ともかく、そうして隠し持っていた手錠を【闇影(ダークシャドウ)】に持たせた。

 そして戦闘に紛れてエクトプラズム先生の足に掛けた訳だ。

 

「エクトプラズムの拘束から逃れる術がないと判断して咄嗟に手錠を飲み込んだんだね。やはり優秀な子だね。あの冷静さは、人々の精神的支柱となれる器さね」

 

 確かに──元々梅雨ちゃんは、いつも物怖じせず泰然としている印象だったが、こんな土壇場でもそれが崩れないのは凄い。

 それが見事に勝利のカギとなった。

 

ドゴォ!!

 

『『どわあぁ!!?』』

 

 む、今度は上鳴&芦戸か──忙しねえな。

 

『どこをどう壊せばどう連鎖していくか……そんな計算お茶を淹れるくらい簡単なことさ!』

 

 別ウィンドウに根津校長が映る。

 重機の操縦席か。

 

『そして君らは気づかない……。脱出ゲートへの道が着々と封鎖されていることに!頭脳派(ヴィラン)は高みの見物さあ!!HAHAHAHAーー!!!

 

「ね、根津校長……?」

 

 何あれ……怖。

 

「……根津は昔、人間に色々弄ばれてるからねぇ。こういう時うっかり素が出るね」

 

「……とんだ闇ネズミ……!」

 

 リカバリーガールから根津校長先生の恐ろしい過去が……あんまり聞きたくなかった【個性】社会の闇の一面も……色々と戦慄を禁じ得ない。

 

『YEAHーーーーーー!!!!』

 

「うおっ!?」

 

 なんだなんだ!?

 

 あ、プレゼント・マイク先生の【個性:ヴォイス】攻撃か──収音マイクがイかれるんじゃないか、この声量?!

 こんなもんを現地で喰らっている口田・耳郎チームの鼓膜が心配……2人の【個性】も掻き消されるし、じわじわダメージも蓄積する。

 

『まぁだでぇすかあぁーーーーーー!!?』

 

 ダメだな、2人は近づけもしない。

 このままじゃジリ貧だ。

 

『キヤアアア!!??』

 

 なんだ今の悲鳴!?

 耳郎の声じゃない……という事は、口田?

 

 映し出された耳郎と口田、森の中の岩の後ろに屈んでいる……。

 耳郎がなんか手の甲を口田に差し出した……その上に黒い点?

 あれは……虫か?

 

『キヤアアアア!!??』

 

 やっぱり口田の悲鳴だったか、何気にあいつがあんな大声をあげたところは初めてだ。

 脱兎の如く逃げ出して木の陰に隠れた……。

 口田、虫、ダメなんだ……。

 

『そこかああああーーーーー!!!!』

 

 拙い、今の悲鳴でプレゼント・マイク先生に居場所がバレた!

 

『……!』

 

 耳郎がブーツに自分の【イヤホン・ジャック】を接続し、音波攻撃でプレゼント・マイクの【ヴォイス】を相殺する。

 が、一時しのぎにしかならない……【個性】もサポートアイテムも、完全に上位互換だ。

 プレゼント・マイク先生は脱出ゲート前から動かないで攻撃できるから、ハンデで着けているはずの錘もまるで役目を果たしていない。

 

 あと、もしかしてだが……プレゼント・マイク先生、試験前の説明の時、耳郎に『格上のイメージがない』って言われたこと根に持ってるんじゃ……?

 

『おーーーーーーい!!』

 

 おいおい、このままじゃ本当に拙いぞ?

 何か打開策を──ん?

 

『…………!!』

 

 なんだ、口田がガタガタ震えながら四つん這いになって地面に何かやってる……いや、何か言ってる?

 

 首を傾げてみていると──

 

『うおおおお!??』

 

 今度はプレゼント・マイク先生の切羽詰まった声──ホントに忙しねえな!

 

「ヒッ!?」

 

 プレゼント・マイク先生の足に大量の色んな虫が──!?

 

『キャアァァァアアァァーーーーーーー!!!???』

 

 プレゼント・マイク先生は大音量の悲鳴をあげ、終いには泡を吹いて卒倒した……。

 

 そりゃあそうなるわな、あんなのプロでも無理だろ……。

 見てるこっちまで怖気が……虫唾が走るってこういう事だ……!

 下手すりゃトラウマものだぞ……!

 

 その隙に、口田が耳郎を抱えて脱出ゲートを通過──

 

『口田・耳郎チーム、条件達成』

 

 2人は演習試験クリア、なんだが……。

 

「口田、エグいなぁ……」

 

「虫程度で情けない!」

 

 いやいや、リカバリーガール、あれは仕方ないですって……。

 

 しかし、残り時間もあと5分ちょい──皆、着実にクリアして……

 

『──チキショォォ〜〜!!やってられっかこんなクソ試験んん〜〜!!』

 

 峰田……マジかあいつ……。

 

 そんな峰田のギャン泣きが皮切りだった訳じゃないだろうが、残る他のチームも忙しなくなってきた……!

 

『だあぁ!!キリねえよオイオイ!?』

 

 今度は切島か──砂藤と切島のチームは市街地の大通りで、セメントス先生と対峙している。

 

『ぶっ壊してもぶっ壊しても!壁生えてきやがる!!』

 

ドガガガガガガ!!!

 

 セメントス先生が地面から次々生やしていく壁を、切島と砂藤は各々【個性】を発動して殴り砕いていく。

 2人の性格からして、恐らく正面突破を狙って立ち向かって行ったんだろう。

 

「あちゃー……」

 

 しかし、そりゃ悪手だろう、切島、砂藤……。

 

 切島の【硬化】も砂藤の【シュガードープ】も、長い時間は維持できないし、戦闘スタイルも近接オンリー。

 対するセメントス先生の【セメント】は、文字通りセメントさえあれば幾らでも発動し続けられる上に、ある程度遠距離攻撃も可能。

 

 相性最悪──その上、2人の選択も悪かった。

 

『もう……眠い……』

 

 あ、砂藤はもうドープが切れた。

 

 こりゃあ、ダメだな……。

 

『『うわあぁぁぁ!!??』』

 

 凌ぎ切れなくなった2人はセメントの壁に取り囲まれ、押し流されてしまう。

 

『いいかい?戦闘ってのは、いかに自分の“得意”を押し付けるか、だよ』

 

 残念、途切れない怒涛のセメント攻撃の前に、砂藤と切島が倒された──残り時間は約5分、ここから目覚めて逆転は無理そうだ。

 

『飯田・尾白チーム、条件達成』

 

「お?」

 

 飯田と尾白がクリアしたか。

 相手はパワーローダー先生、掘削現場みたいな試験場は穴ボコだらけ……飯田の強みである速度を奪う為に足場を崩したんだな。

 飯田が穴に嵌って首から上だけ出た状態になっていて、尾白が脱出ゲートの向こうにいる。

 

 足場が崩れたところを飯田が尾白をぶん投げてゲートを通過させ、飯田はそのまま埋まったってところか。

 強引ではあっても、仲間を脱出させ、助けを呼びに行かせる判断は良かったと思う。

 

『ぬぅおぉぉ〜!?あと少しだったのにぃ〜!?』

 

 お次は麗日&青山ペアに動き──脱出ゲート手前で13号先生に捕捉され、【ブラックホール】で動きを止められていた。

 【ブラックホール】の吸引力に、手摺にしがみ付いて耐える麗日と青山。

 

『危ない危ない、逃がさないぞ〜』

 

 宙吊り状態で動くに動けない2人に13号先生が迫る。

 

 青山がヘソビームをコスチュームの機能で膝から後ろに撃ち出して反撃を試みるも、13号先生の【ブラックホール】は光も飲み込む。

 ついでに青山のコスチュームのメガネが外れて吸い込まれて消えた。

 

 うーん、ピンチだな。

 2人の【個性】じゃあ打開するのは難しそう……。

 

 大丈夫かな……なんて心配して見ていた時だった──。

 

「は!?」

 

 何やってる!?

 なんでいきなり手を離した麗日!?

 なんか青山と話してたみたいだったが、青山何か言ったか!?

 

『っ!?』

 

 吸い寄せられる麗日、13号先生が咄嗟にコスチュームの指先を閉じる。

 

『──ッ!!』

 

 む?

 麗日の目つきが変わった?

 

『ッえいッ!!』

 

 麗日の鋭い拳──避けた拍子に13号先生の体勢が崩れる。

 そこから麗日は13号先生の腕を掴むと同時にのし掛かり、仰向けに倒して動きを封じる──上手い、流れる様な見事な動きだ。

 

『っ、なんのぉ!』

 

『ビューン⭐︎&キャッチ⭐︎』

 

 空いた手で振り払おうとした13号先生だが、青山がヘソビームで飛んでその腕を取り封じる。

 

 そこをすかさず麗日が手錠を掛けて捕縛──。

 

『青山・麗日チーム、条件達成』

 

 色々とツッコミどころはあったが、何とかクリアだ。

 

 最後の動きは一見、相手の【個性】を利用して機転を効かせた良い攻めだった様にも見えるが……麗日のさっきの様子からして、なんか微妙……。

 どうも偶然っぽいというか……麗日は肝心なところで気を抜く悪い癖があるな。

 

『障子・葉隠チーム、条件達成』

 

 おお、障子と葉隠もクリアか。

 見ればスナイプ先生に手錠が、片方は宙に浮いている。

 という事は葉隠か──なんか、スナイプ先生が空いた方の手を高速で動かしてワタワタしているが、どうした?

 

 さておき、遠距離攻撃のスナイプ先生相手で薄暗く遮蔽物の多い空間……勝利のカギは『隠密行動』、それは葉隠の最も得意とするところだ。

 障子はスナイプ先生の注意を引く事で葉隠をサポートしたか──障子は【個性】よりフィジカルを活かした感じかな。

 

 

 さて、これで残るは瀬呂・峰田ペアだが──

 

 

『クソだろこれ!?圧倒的クソ!!こんな理不尽試験やってられっかあぁ〜〜!!!』

 

 泣き叫び過ぎだろ……心バキボキじゃねえか……。

 

 一目散に1人で逃げ散らかしているが、瀬呂は……あ、ミッドナイト先生に眠らされたのね、膝枕で寝かしつけられてる。

 

『ッッ〜〜!!瀬呂ぉぉ〜〜!!チクショウがあぁ〜〜!!許せんんん〜〜!!!』

 

 血涙!?

 そこまで瀬呂が羨ましいのか!?

 こんな時にあのアホ……仮に立場が逆でも寝てたら分からんだろうに……。

 

「……ああいう子はここで生き抜くには辛いかもね」

 

 リカバリーガール?

 

「と言いますと?」

 

「雄英は絶え間なく壁を用意し、それを越えさせるって方針。そこを息切れせず乗り越えていくには、具体的な目標を見据えている必要があるのさ」

 

 具体的な目標……。

 

「なんとなくヒーローやりたい、で登れるほど、優しい道じゃないんでね。仮にヒーローになれたとして、ヒーローになる事がゴールの人間に先はない」

 

 ヤバい、それは俺の耳にも痛い話だ……。

 

 俺が見据えている目標といえば、前世の記憶、原作『僕のヒーローアカデミア』という漫画を途中まででも知っているが故に、この先に待ち構えているであろう宿敵に備える事……だが、その先がまだ定まっていない。

 

 リカバリーガールが言った様に、事が終わったらなんとなくチートな【個性】でヒーローやるかな〜ぐらいの、ぼんやりした……ビジョンとも言えないビジョンしかない。

 

 雄英に入学してから、度々考えてはいるが、未だこれだという目標は定まらない……。

 峰田の事、とやかく言えんな、俺……。

 

『はぁ……はぁ……女体触りたい。モテたい』

 

「直球だね……」

 

「……」

 

 なんか、あいつを見てると悩んでたのがアホらしくなってくるな……。

 

 脱出ゲートから大分離れた場所で立ち止まった峰田……まさか、本当に諦めてしまったのか?

 

 止まっていれば、やがてミッドナイト先生が追いついてくる──手にした長い鞭で打たれる峰田。

 前世の動画で見たことあるんだが、鞭って実は扱い次第でビール瓶をズバッと切り裂く事も出来る威力があるはず……そうでなくても、皮膚を打ち付ける攻撃は破壊力はともかく、人間の痛覚に強く作用する。

 

 心の折れた峰田に、その強烈な痛みは、正しく痛恨の一撃となりうる。

 

 鞭の一撃から立ち上がった峰田は、再びミッドナイト先生から逃げて岩の陰に隠れる。

 

 リカバリーガールの言った様に、峰田にこの試験は辛いか……?

 

 俺が半ば、諦め気味に見ていた時だった──

 

『──全部カッケェ男になる為なんだよなあーー!!』

 

 今までにない力の入った声で、峰田が吠えた。

 

 そして──奴は一気に動く。

 

「うおッ!?マジかあいつ!」

 

 峰田は口に瀬呂のテープを貼り付け、息を止めたまま【モギモギ】をミッドナイト先生に投げつけ、そのままその脇を駆け抜けた。

 

 言葉にすれば簡単だが、その効果は絶大で最大──

 

 ミッドナイト先生は鞭を【モギモギ】で地面と手に貼り付けられている。

 彼女の腕力では鞭を地面から剥がす事は出来ず、また鞭を手放す事も出来ないので、その場から動けなくなった。

 しかもそこはゲートから遠く、【眠り香】はゲート付近までは先ず届かない。

 

 ほぼ完璧なミッドナイト封じ──全部計算でやったとすれば……あいつ、とんだ策士じゃねえか!

 

「ほぉ〜、器用な子だね。すっかり騙されちまったよ、あたしゃ」

 

「騙されたとすれば、俺もですよ」

 

「モテたいも、突き詰めれば見据えるべき一つの“目標”ねぇ」

 

 全く峰田って野郎は、凄くないんだか凄いんだか、掴めない奴だ。

 

 ともあれ──

 

『瀬呂・峰田チーム、条件達成』

 

 あいつらも試験クリア──そして。

 

ビィーー!

 

『タイムアップ。演習試験、終了』

 

 30分が経ち、演習試験は完全終了──。

 

 残念ながら、芦戸・上鳴ペアは試験クリアならず……時間いっぱい右往左往するだけで終わった。

 

 

 

 かくして、俺達A組の期末試験は終了──結果は後日発表される。

 さて、合宿、どうなるかな……?

 

 

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