僕のヒーローアカデミア A Little Extra   作:ジョン堂

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エピソード34 死柄木弔の要求?一体何を考えているんだ……?

「な……?!」

 

 思考が数瞬停止した。

 

 死柄木弔が、オールマイトに、会いたい……!?

 会わせてくれと、俺に、頼んでいる……?!

 

 思考が戻っても混乱が収まらない。

 死柄木にとってオールマイトは殺害目標のはず……それが会いたいという?

 どんな心境の変化だ……!?

 

 殺害が目的ならわざわざ俺に頼んだりしないだろう、それもこんな手間を掛けてまで。

 いや、そもそも、死柄木が『敵連合』や『AFO』じゃない誰かを頼るというのが先ずおかしい!

 しかも頼っているのが、現状、オールマイトと『AFO』の因縁にほぼ全く関与していない、雄英生徒で体育祭優勝ぐらいしか肩書きも持っていない俺だ……。

 

 理解が及ばん……死柄木は一体何を考えているんだ……?

 

「っ……場所を、変えたい」

 

「いいぜ……」

 

 死柄木はあっさり俺の要求を飲む。

 

 混乱と緊張に包まれつつ、俺は死柄木と連れ立って人気のない道の端に移動する。

 

「先に、聞いてもいいか……?」

 

「なんだ……?」

 

「……オールマイトに会って、どうするんだ?」

 

 混乱を何とか抑え、俺は死柄木に問いかける。

 雰囲気は変わっているようでも、以前としてこいつは敵──原作における宿敵に違いはない。

 油断はできない……曲がりなりにもヒーロー志望として、いざとなったら一般市民を守らなければ……!

 

「話したいこと……確かめたいことがあるんだ……」

 

「話したいこと……?」

 

「それはお前には関係ない……はぐらかしでも何でもなくガチでな」

 

 関係ない、か……何にせよ、俺にここで明かす気はない、と……。

 食い下がるのは危険そうだ、止めておこう。

 

「……何故、俺に頼む?」

 

 俺と死柄木との接点なんて、ショッピングモール以外では何一つ、間接的にすら無いはずだ。

 疑問しかない。

 

「他に頼めそうな奴がいなかった。何人か捕まりそうな奴はいたが、お前以外じゃあ俺が誰かも分からなそうだったからな……」

 

 そ、それだけ……?

 うぅん、聞けば聞くほど不可解で、疑問と違和感が強くなる……。

 

 迷う……どうすればいいのか分からない……。

 

「……もし、俺が断ったら、どうする?」

 

 この質問は危険かも知れない……。

 だが、判断に迷った俺は聞かずにはいられなかった。

 

「その時は仕方ないな……帰って、今まで通りにするだけさ……」

 

 俺の質問にまたあっさりと答える死柄木……本当に聞く度に疑問が強まる。

 何故こうもあっさり答えるのか……?

 今まで通り、という言葉に含むのは『今まで通り敵としてヒーローと戦う』という意味だと思うが、『帰って』というのがまた奇妙だ。

 敵が、おとなしく帰る……?

 

 本当に、死柄木が何を考えているのかまるで分からない……!

 

「…………一応、オールマイトに連絡してみる」

 

 迷い、悩んだ末、俺は一先ずオールマイトに話してみる事にした。

 自分の身の危険、一般市民の危険、そういうのも勿論考えたがそれ以上に、やはり死柄木から感じる雰囲気がどうにも引っかかるのだ。

 

「先に言っとくが、結局、オールマイトが応じなければどうにもならない。その時は、諦めてくれ」

 

「ああ、それでいい……」

 

 俺は死柄木に断りを入れてから、スマホを操作する。

 オールマイトの連絡先は、あの人も一応教師なので入学初めに貰った案内に載っていたのを連絡先に入れてある。

 これは多分、ヒーローとしての仕事やプライベートとは別の番号だよな……夏休み期間のこの時間に、出てくれるかどうか……。

 

プルルルル……プルルルル……

プッ

 

『HI!もしもし!』

 

 出た──さて、ここからだ。

 

 

 

<side:オールマイト>

 

『電話が〜来たー!電話が〜来たー!』

 

「おや?」

 

 警察署で塚内くんから以前雄英を襲撃してきた『敵連合』や脳無についての調査の進捗を聞かせてもらっていた時、スマホが着信を知らせてきた。

 こちらは教師になった時に、生徒からの連絡用に用意した方だ。

 

 思えばこっちに着信が来たのは初めてだな、緑谷少年にはプライベート用の番号を教えてあるし、誰だろう?

 

「すまない、塚内くん。ちょっと……」

 

「ああ、構わないよ。しかし……その着信音、止めた方が良くないか?」

 

「え?分かりやすいだろう?」

 

「分かりやす過ぎるというか、そういう問題ではないというか……」

 

 むぅ、塚内くんは何故苦笑いを……?

 

 おっと、いけない──早く出ないと!

 

 お借りしている会議室から出て、通路の隅へ移動する。

 生徒からの電話だ、ちゃんとヒーロー&教師としての私──マッスルフォームで応じなければ。

 

ムキン!

 

 よし、今日は出動していないから大分余裕があるぞ。

 

「HI!もしもし!」

 

『あっ、オールマイトですか?1-Aの気賀です』

 

 おや、気賀少年だったか。

 

「やあ気賀少年!こんばんわ!どうしたんだい?私に電話なんて珍しいね?」

 

『お忙しいところ、すみません。少々、ご相談がありまして……』

 

「HAHAHA!気にする事はないよ!何しろ私は君達の先生だからね!」

 

 生徒の相談に応じるのも教師の務め!

 塚内くんは「向いてない」とか言ってくるけど、こうしてちゃんと生徒が相談の電話をかけてくるんだ!

 私だって、やればできるさ!

 

「それで、相談って何だい?」

 

『その前にお聞きしますが、オールマイト、今、周りに人はいますか?』

 

「うん?いや、いないよ?」

 

 警察署だが、塚内くんが気を遣って人払いをしてくれているからね。

 

『……実は、今、すぐ側に死柄木弔がいます』

 

「…………What?」

 

 一瞬、思考が停止した。

 

 死柄木弔って、あの死柄木弔──?!

 『敵連合』の──?!

 気賀少年のすぐ側に──?!

 

 WHY!?

 まさか捕まって人質に!?

 いや気賀少年がむざむざ人質に取られるとは考え難い!

 

 ならば脅されて言う事を聞かされている!?

 木椰子区ショッピングモールの例もある、これはあり得るぞ!?

 

 状況が分からないが、対応を誤れば気賀少年の命が危ない!

 慎重に、冷静に対応しなければ……!

 

「(ふぅぅ)……気賀少年、今、私と通話しているのは、死柄木の要求なのかな?」

 

『はい』

 

 やはりか……。

 気賀少年が私の周囲の人の有無を確認したのも、その為だろう。

 

 しかし……スマホを通して聞こえる音からして、彼らも人気のない場所から通話している様だ。

 よく考えると、これは少しおかしい……。

 

 死柄木からすれば、周囲に一般市民がいる状況の方が優位に立てるはずだ……。

 奴らには黒霧という【ワープ】系の【個性】持ちがいる。

 僅かな合図で、逃げる事も、あの脳無を送り込む事も出来る。

 だから場所を選ばないとも言えるが、だからこそ、わざわざ人気のない場所に気賀少年を連れ出している事が奇妙に思える……。

 

 不可解な行動に思えるが、先ずは要求を聞いてからだな。

 

「……死柄木は、私に何を求めているかな?」

 

『……会って話したい、と』

 

「話?」

 

 死柄木が、私と対話を望むと……?

 以前、雄英で僅かに相対した時は、嫌悪と殺意を向けてきた、あの死柄木が……?

 

 普通に考えれば罠だろう──気賀少年を人質に私を誘き出そうとしている、というのがセオリーだ。

 似たような事をする敵は過去に幾らでもいた。

 

 しかし、状況に違和感がある事も否めない……。

 誘き出すにしても、気賀少年に連絡させている事も妙だし、その気賀少年の声にも焦りがなく、寧ろ戸惑いの色が強い様に感じる。

 

 誰かを人質に取るでもなく、わざわざ気賀少年というクッションを挟んで要求を伝えてくる……以前に会った時に感じ、考察した死柄木弔という敵、その人間性と噛み合わない。

 

「……私に何の話があると?それに、直接会う必要があるのかな?」

 

 話だけなら、今この通話で済ます事もできる。

 死柄木にとっても、その方が安全なはず……。

 

『なんでも、確かめたいことがあるそうで……内容は、俺には関係ないと……』

 

 ふむ、まあ、そう都合よく聞き出せはしないか。

 それにしても、確かめたいこと、か……何だろう?

 

 今思いつく事といえば、『AFO』に関わる事だろうか……。

 奴が死柄木のバックにいるのは、ほぼ間違いない……。

 

 いや、現状では判断材料が少な過ぎる。

 それに気賀少年の身の安全を考えれば、下手に時間を掛けるのは拙い。

 

 ここは、要求を飲んで会うしかないだろう。

 もし待ち伏せの罠だったとしても、私は負けないさ──私は『平和の象徴』なのだから!

 

 それに、ないとは思うが、もし『AFO』が出てきたなら、それは寧ろ好都合──罠を食い破って、過去の因縁を終わらせる……!

 

「……気賀少年、死柄木に伝えてくれ。要求を飲むと」

 

『っ、オールマイト、いいんですか……!?』

 

「ああ、いつどこに行けばいいのか聞いてくれるかい?或いは、死柄木と直接話してもいいが」

 

『…………えっと、『話すなら会って直接話す』『今夜0時、市営多古場海浜公園で待つ』と言ってます』

 

「OK、了解したよ」

 

 今夜0時……それなら人目にも付きにくい。

 しかし、市営多古場海浜公園か……緑谷少年のトレーニングで縁が出来たあの場所で、敵と対話に臨む事になるとはね……。

 

『……オールマイト、俺からもいいですか?』

 

「うん?何かな?」

 

『その話し合い、俺も同席させて下さい』

 

「What!?」

 

 何を言い出すんだ気賀少年!?

 

「何を言い出すんだ少年!?危険過ぎる!許可なんてできる訳がない!」

 

『危険は重々承知しています、でも──!』

 

「NO!!ダメだ!!それともそれも死柄木の要求か!?」

 

『いいえ、これは俺の要望です。死柄木は、この通話が終わったら俺は帰っていいと言ってます』

 

「だったら尚更ダメだ!死柄木との事は私に任せて、君は家に帰りなさい!!」

 

『お願いします!』

 

「っ!」

 

『俺は今、ヒーローとして、ヒーローを志す者として間違っています。でも、どうしてもこの話し合いに立ち会いたいんです!ヒーローと敵──あなたと死柄木の間に立った人間として──どうか、お願いします!』

 

 特別に大きな声ではなく、激しく強い口調でもない──しかし、気賀少年の強固な意志を、その言葉から感じてしまった。

 

 この感覚、覚えがある──緑谷少年。

 彼と出会ってから今日までに何度も感じた、決して曲がる事のない強い意志──。

 

 もしここで断り続け、通話を切ったとしても……恐らく気賀少年は、来てしまう。

 場所など、彼の【個性:オーラ】を使えばすぐに探し出せてしまう。

 

 まったくもう、十代……!

 

「……ッ、仕方ないね」

 

 勝手に来られるより、目の届くところにいてもらった方がまだマシだ。

 いざとなったら、私が命に替えても少年を守る──私はヒーローであり教師で、彼は教え子なのだから。

 

『ッ、オールマイト……!』

 

「ただし、現地では私の指示に絶対に従う事、約束できるかい……?」

 

『勿論です!必ず従います!』

 

 気賀少年、その言葉、信じるよ……?

 

『ご無理を言ってしまい、申し訳ありません』

 

「……申し訳ないと思うなら、後日反省文でも書いて提出してもらおうかな?」

 

『分かりました、近日中に提出します』

 

 やれやれ、こういう教師と生徒の対話は、もっと何事もない時にしたいものだ。

 

 その為にも、何もしても死柄木との対話を無事に乗り越えなければ──!

 

「さて、死柄木の要求は以上かい?」

 

『…………はい、以上だそうです。あと今更ですが、俺が同席するのは別に構わないと言っています』

 

「分かったよ。では、今夜0時、現地で落ち合おう」

 

『分かりました』

 

「では、失礼するよ」

 

『はい、失礼します』

 

 通話を切る。

 

 さて、大変なことになってしまったな……。

 この件は塚内くんには今は言えないな……話し合いの内容次第だが、後で話したら怒られそうだ。

 

 とりあえず、早く帰って支度を整えないと──!

 

 私はスマホを仕舞い、会議室に戻る。

 上手く誤魔化さないとな……。

 

 

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