僕のヒーローアカデミア A Little Extra 作:ジョン堂
林間合宿の目的──ヒーロー仮免許、“仮免”の取得を目標に俺達1年の【個性】を伸ばすこと。
その為にやる事は1つ、すなわち『限界突破』──筋繊維を酷使する事で壊し、いわゆる超回復を経て太く強くなるように、【個性】も同じく使い続けることで強くなり、逆に使わなければ衰える。
許容上限のある『発動型』は上限の底上げ、『異形型』・その他『複合型』は【個性】に由来する器官・部位の強化鍛錬──これを基本として、各々の【個性】に合った特訓が課される。
俺達雄英1年A組・B組総員41人、41通りの【個性】、それを各々に合った特訓を課すに当たって力を貸してもらうのが、今回の合宿場所を所有するヒーロー集団『プッシーキャッツ』である。
「煌めく眼でロックオン!」
「猫の手手助けやって来る!」
「どこからともなく、やって来る……!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「「「ワイルドワイルド!プッシーキャッツ!フルバージョン!!」」」」
昨日会った赤のマンダレイ、青のピクシーボブに加えて、黄色の『ラグドール』、茶色の『虎』が合流してプッシーキャッツ全員集合──
「アチキの【個性:サーチ】!この目で見た人の情報を100人まで丸分かり!居場所も弱点も!」
「私の【土流】で、各々の鍛錬に見合う場所を形成!」
「そして私の【テレパス】で、一度に複数の人間へアドバイス!」
「そこを我が、殴る蹴るの暴行よ……!」
この強化合宿に打ってつけのチーム構成(最後はどうかと思うが)──建前および事実として、雄英高校の教師陣も忙しく、ヒーロー科1年だけに人員を割くことは難しい。
この4名の実績と広域カバーが可能な【個性】は、短期で全体の底上げをするのに最適である。
そして、裏の事情として『敵連合』への警戒がある……。
トムラから貰った、雄英内に『AFO』の内通者がいるという情報……そこから今回の合宿の場所と日程がバレているという話……。
敵に動向を悟られないように~、なんて前提は端から破綻している……。
こちらも一応、秘密裏に迎撃態勢は整えているが……敵の出方が分からない以上、下手に警戒を露わにする訳にもいかない。
よって、予定通り強化訓練が実施される──。
「うおおおッ!!クッソがあ!!」
爆豪──熱湯に両手を突っ込んで、都度、爆破を繰り返す特訓。
汗腺の拡大と強化、および爆破の規模を大きくする。
「ハア……ハア……んっ!」
轟──ドラム缶風呂に浸かりながら、氷結と炎を交互に発動し、風呂の温度を一定に保つ特訓。
凍結に体を慣れさせ、炎の温度調節を試みる。
「うおああああ〜〜!??」
瀬呂──テープを限界まで射出し続ける特訓。
容量の拡大、テープの強度と射出速度を強化する。
「うっ…!おっしゃ来い!」
「ふんっ!はあっ!」
切島と尾白──【硬化】した切島を、尾白の【尻尾】で打ち続ける特訓。
お互いの【個性】の強度を高める。
「いぃぃやあぁぁあばばばばッッ!!??」
上鳴──大容量バッテリーと通電する特訓。
大きな電力にも耐えられる体にする。
「ああああ〜〜……!!」
口田──大声を出し続ける発声の特訓。
生き物を操る声が遠くまで届くように声帯を鍛え、ついでに内気な性格を直す。
「うぅ、ぅぅ……!??」
青山──ヘソビームを撃ちまくる特訓。
腹痛を限界まで我慢して撃ち続けることで体を慣らし、ビームの飛距離アップを目指す。
「うああああ……!!闇影ぉぉぉ……!!」
常闇──洞窟の奥の暗闇の中で【闇影】を制御する特訓。
闇が深いと暴走する【闇影】をコントロール出来るようにする。
「うぶっ……!ぅ、ぶぶ……!?」
麗日──自分を【無重力】で浮かし、どこかのアトラクションで見た透明なボールの中に入って転がる特訓。
三半規管を強化して酔いを軽減し、【無重力】の限界重量を上げる。
「ふんふんふんふん!!」
飯田──全速力で走り込みの特訓。
脚力と持久力を高める。
「ケ、ロ……!」
梅雨ちゃん──舌と全身を使ってロッククライミングをする特訓。
【個性:蛙】に由来する舌と全身の筋力を鍛える。
「はぐ!ふん!ふん!もぐ!ふん!ふん!」
砂藤──甘い物を食べながら筋トレ特訓。
【シュガードープ】の持続時間と筋力を強化する。
「はく、もぐもぐ……!」
八百万──高脂質のチョコレートなどを食べながら【創造】で物を作り続ける特訓。
創造物の拡大、また創造時間の短縮を目指す。
「やあああッ!!」
耳郎──岩にピンジャックを叩きつける特訓。
ピンジャックを鍛え、音質を高める。
「ぅう……!くぅ……!」
芦戸──岩に断続的に酸を出し続ける特訓。
分泌する酸の強度と量を増やし、更に皮膚の耐久力を上げる。
「うぅぅ、ひぃぃ……!」
峰田──頭の【モギモギ】をもぎり続ける特訓。
もぎっても血が出なくなるよう頭皮を強くする。
「……む」
「……!」
障子と葉隠──障子は【複製腕】を駆使して、【透明】で隠れ潜む葉隠を探す特訓。
障子は【複製腕】を同時かつ素早く切り替え、葉隠は徹底して隠密行動をとる事で互いの【個性】を鍛える。
「さあ今だ!打ってこい!!」
「【5%デトロイト・スマーーッシュ】!!」
「よぉし!まだまだキレッキレじゃないか!伸ばせ千切れ!ヘボ【個性】を!!」
緑谷──【OFA・フルカウル】維持、更に手足にリストウエイト装着でプッシーキャッツの黒一点、プロヒーロー『虎』の『我ーズブートキャンプ』特訓。
【フルカウル】持続時間の延長と強化率の上昇、および持久力と全身筋力を強化する。
そして俺──【疑似・超サイヤ人】状態のままオーラを限界まで高めた状態を維持しつつ座禅体勢のまま【疑似・舞空術】で宙に浮き続ける特訓。
『念』の基礎『四大行』の一つ【練】──オーラを練り上げ、通常時以上の量のオーラを生み出す技術、それを長時間維持することでオーラの底上げと持久力を上げる修行があったのを流用した。
相澤先生にも方法を伝えて了承を貰ってある。
で、皆と同じく特訓に励んでいる訳だが……滅茶苦茶キツい!!
気を抜くとオーラが弱まるか、【擬似・舞空術】の制御が乱れて落ちそうになる……!
そして、忘れてはいけないのが周辺警戒──気を感知し、敵の襲撃を察知する事……これは最優先事項だ。
【擬似・舞空術】+ 【練】+気の感知……脳みそが焦げそうなマルチタスクだが、それを可能にしているのが【擬似・超サイヤ人】、オーラの出力が爆上がりするのと同時に肉体も超強化される事で、このマルチタスクを実現した。
後でくるだろう疲労感がエグい事になりそう……。
そうして俺達は夕方まで強化訓練に励んだ――。
「――さあ!昨日言ったね!『世話焼くのは今日だけ』って!」
「己で食うメシくらい己で作れー!カレー!」
空が夕焼けで赤くなる頃、今日の訓練は終了――夕メシは自炊、メニューはこういう野外合宿の定番カレーらしい。
外の炊事場で、揃えられた材料と調理器具を前にピクシーボブとラグドールが音頭をとる。
しかし……。
『イエッサー……』
俺達全員、疲労困憊……。
ヤバ、消耗キッツ……俺、【疑似・超サイヤ人】切れそう……。
「アハハハッ!全員全身ブッチブチ!」
何がツボに入ってるのか、ラグドールは爆笑――しかし俺達にそこにツッコむ気力は残っていない……。
「だからって雑な猫まんまは作っちゃダメね!」
「ハッ!確かに……!」
ラグドールの言葉に、飯田が考える仕草を取る。
「災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも、救助の一環……!さすが雄英!無駄がない!」
『さすが雄英』はどうかなと思うが、実際飯田の言う事も尤もだ。
敵を倒すのは民間人を助ける手段の一つ、食事も同じく――美味いものはそれだけで人の心を満たす。
ここでの自炊経験も、将来の役に立つはず――そう思って、もうひと踏ん張りするのは悪くなかろう。
「皆、疲れてるだろうが、疲れを取るためにも栄養付けねえとだ。もうひと踏ん張り、美味いカレー作って食おうや」
『おお……』
飯田に乗って、俺も全員に声を掛ける。
飯田に負けず、委員長らしいこともしないとだからな。
疲れはあれど、皆それぞれ夕メシの為に動き出す。
火起こし、下拵え、調理、食器準備、等々……作業を分担して、カレーを作っていく。
こういうキャンプっぽさはワクワクして好きだ。
皆も同じなのか、作業が始まると疲れを引っ込めて楽しそうにしている。
束の間、心の癒しだな。
そして日もすっかり暮れて夜空となった頃、カレー完成――ランタンで明かりを点けて、全員に配膳したところで、お待ちかねの夕メシである。
『いただきまーす!』
ガツガツガツガツ!
食いだしたらもう止まらない!
空っぽの胃袋にカレーの香辛料と肉の脂と野菜の旨味と白飯の甘味が染みる!
「おかわり!」
思わず言ってしまったが、おかわりはセルフである。
「気賀早えな!?」
「カレーは飲み物だ」
近くに座る瀬呂にそう応えて席を立ち鍋へ――カレーも白飯も、全員がじゃんじゃんおかわりできる様にたんまり用意されている。
「ヤオモモもがっつくね~」
「ええ」
盛り付けて戻ると、芦戸と八百万の会話が耳に入る。
「私の【個性】は脂質を様々な原子に変換して創造するので、沢山蓄えるほど沢山出せるのです」
「う〇こみてえ」
ブッ――!?
「~~……!」
ズガアッ!!
「「謝れッ!!」」
「ずい"ま"ぜん"ッ!?」
落ち込む八百万――瞬間、俺と耳郎の怒りの【疑似・クロスボンバー】が瀬呂に炸裂――選りにも選って何てこと言いやがる!!
色々何重にもアウトだ!!
「……ッ!」
来た──!
遠くに突如現れた気を感知した。
黒霧、そして知らない気が4つ……黒霧が現れた時点で『敵連合』確定──トムラはいないが、あいつは既に『AFO』から離れたんだろうか?
つい心配になるが、トムラがどうしたかは知る術がないので、頭の隅に置いておくしかない。
残りのカレーをかき込んで席を立ち、施設内の食堂で食事を取っていた相澤先生に報告に行く。
「相澤先生!来ました……
「っ、分かった……。すぐに仕掛けてきそうか……?」
「……今のところ、現れた場所から動いていませんね。人数も、まだ4人と少ないですし……」
黒霧の気が消えている……。
襲撃の人員を集めに回っているというところか……。
こっちは相澤先生にブラドキング先生、プッシーキャッツと計6人のプロヒーローがいるし、学生とはいえ俺達ヒーロー科41人もいる。
奇襲だとしても、4人そこらで仕掛けてくるとは考え難い。
「そうか……一旦様子を見る。他の奴らには知らせるな……雄英には俺から連絡する。お前は一先ず食事に戻っておけ。それと悪いが、引き続き敵を監視し、奴らの動きに変化があればすぐ知らせろ……」
「承知です……!」
報告を終えて俺は一旦、メシの席に戻る。
皆に悟られないように注意して、顔も取り繕ったつもりだ。
それが功を奏したか、俺の緊張が皆にバレることはなく、カレーを残さず食べ切って夕メシは終了――後片付けを済ませ、風呂に入って汗と汚れを洗い流し、部屋に戻って就寝となった。
「……」
皆が泥のように眠る中、俺は1人起きていた――。
というか、いつ『敵連合』が仕掛けてくるかという緊張で眠れなかった……。
距離が離れていて、施設内からでは幾ら【凝】や【疑似・九尾チャクラモード】を使っても、敵の話し声は拾えない……。
しかし、襲撃の兆候を見逃すわけにはいかないと思うと、使える技を最大限使うことを止められなかった……。
結局、その夜、奴らは仕掛けてはこなかった。
ただ、人数は6人に増え、向こうの準備は進んでいる様に感じた。
結果、俺は緊張を解くことができず、一睡も出来ずに翌朝を迎えてしまった……。