僕のヒーローアカデミア A Little Extra 作:ジョン堂
合宿三日目──引き続き、【個性】を伸ばす訓練……!!
「ハァ……!ハァ……!」
ヤバい……キツい……!
昨夜の徹夜の警戒の疲れで、頭の奥が痛ぇ……!
【練】と【疑似・舞空術】が安定しねえ……!
「補習組!動き止まってるぞ!」
「アッ!?お、オッス……!!」
声に振り向いてみれば、切島が相澤先生の捕縛布で頭を引き起こされていた。
補習組──切島、芦戸、瀬呂、上鳴、砂藤、
今朝の朝食の時からずっとあんな調子……聞いた話では、昨夜の補習は午前2時までやってたそうだ……。
で、起床は7時寝坊厳禁……補習組は5時間程度しか寝れてない訳だ。
「ぅぅ……なんで、オイラまで……!?」
『自業自得だろ……』
ちなみに峰田は覗き(未遂)の
うん、自業自得だ。
「気を抜くなよ。皆もダラダラやるな。何をするにも“原点”を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗かいて、何の為にこうしてグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ」
原点……そう言われてパッとは出てこないが、何の為に強くなるかは今の俺にもある。
打倒『AFO』──それだけは腹に決めている。
奴だけは許せない、許さない……絶対に、だ!
そうだ、その為にも──疲労がどうの頭痛がどうのと言っていられない。
気を引き締め、訓練と感知に集中する。
既に
『敵連合』と思われる気は、今のところ6つ……合宿所から一定離れた場所をウロウロしているだけで近づいては来ない。
やはり面子が揃うのを待っていると見るべきか……。
いつ来るか分からないのが緊張感を煽る……相澤先生もいつも通りに振る舞っているが、内心は警戒と緊張を高めているはずだ。
「──みんな!今日の晩はね、『クラス対抗!肝試し』を決行するよ!」
ピクシーボブの声に我に返る。
「しっかり訓練した後は、しっかり楽しいことがある!ザ・飴と鞭っ!」
本当にやる予定があったのか、肝試し……。
「という訳で──今は全力で励むのだー!!」
『イエッサー!』
疲れはあっても皆の声に少し張りが戻る。
俺は別に肝試しが好きな訳じゃないが、合宿のイベント・レクリエーションはそれだけでも楽しいものだ。
皆、少し気分が上がったんだろう。
本当なら、このまま皆とワイワイ楽しんでいられた筈なのになぁ……『AFO』と『敵連合』のクソッタレどもめ……!
ともあれ、今日も日中は【個性】伸ばしの訓練──そして日が暮れたら全員で夕メシの支度だ。
「オールマイトに何か用だったのか?」
米を研いでいたら、轟の声がふと耳に入った。
見れば、轟が鍋を手に、火起こしをしている緑谷に話しかけていた。
何でも緑谷は、洸汰くんの事でオールマイトに相談したい事があったらしい。
その洸汰くんはこの場にはおらず、少し離れた高い場所に彼の気を感じるので、そこにいるようだ。
「その子がさ、ヒーロー……いや、【個性】ありきの超人社会そのものを嫌ってて、僕は何もその子の為になるようなこと言えなくてさ……。オールマイトなら、何て返したんだろうって思って……」
緑谷も、洸汰くんの事を気にしていたか……。
初日に痛恨の一撃をもらったっていうのに、なんていうか、人が良いな。
「轟くんなら、何て言う……?」
「……場合による」
正論……。
「そりゃあ場合によるけど……!」
「素性も分かんねえ通りすがりに正論叩かれても煩わしいだけだろ。大事なのは、何をした、何をしてる人間に言われるか、だ。言葉単体だけで動くようなら、それだけの重さだったってだけで、言葉には常に行動が伴う、と思う」
これまた正論──高校1年の青少年とは思えない深い言葉だ。
複雑な家庭環境と、父エンデヴァーへの複雑な思いを抱えた轟だから言える事……なのかも知れない。
「……そう、だね。轟くんの言う通り。通りすがりが何言ってんだ?って感じだ」
腑に落ちた、という風に緑谷は笑みを浮かべる。
洸汰くんに対する答えが見えた、という訳ではなさそうだが、一定の納得は得たのかも知れない。
「お前がそいつをどうしてえのか知らねえけど、デリケートな話にあんまズケズケ首突っ込むのもアレだぞ?そういうの気にせずぶっ壊してくるからな、お前意外と……」
轟が言うのは、体育祭の時の事だろうな。
しかし、だ。
「無駄だよ、轟」
「?」
俺は思わず口を挟んだ。
轟と緑谷がこっちを向く。
「悪いな、話聞こえちまった。で、だ。緑谷は一度気にしたら、周りが何言ったって自分が納得しない限り止まりやしない。行儀良い振りして、実は頑固一徹マンだからな」
「頑固一徹マン!?」
「ああ、確かにな」
「轟くんまで!?」
「「反論できんのか?」」
「……すいません」
自覚があるようで結構だ。
自覚があればいいってもんじゃないが。
ともあれ、支度が整ったら全員で夕メシを頂く――ちなみに今日のメニューは肉じゃが定食。
米粒1つ、みそ汁一滴、肉じゃがの欠片1つ残さず食い切って――
「──さて、腹も膨れた。皿も洗った。お次は〜!」
「肝を試す時間だー!!」
『試すぜー!!』
と、日も暮れて完全に夜となった時間にテンションのを上げまくる補習組。
しかし……。
「──と、楽しみにしていたところ大変心苦しいが、肝試しは中止だ」
『嘘・だ・ろォォーー!!??』
相澤先生から告げられた事実に、芦戸を初めとした楽しみにしてた組が目を剥き出す。
しかし、これは残酷で無慈悲な事実──
「──敵が現れた。A組・B組、総員速やかに施設内に退避しろ。これは訓練でも、合理的虚偽でもない。正真正銘の緊急事態だ!」
遂に、敵が動き出した。
人数は9人、うち1人は気の感じからして恐らく脳無──そいつらが散らばりつつ、こっちに向かって来ている。
『敵……!?』
『どういうこと……!?』
『万全を期していたはずじゃ……!?』
A組・B組全員に動揺が走る。
「狼狽えてないで動け!!施設に向かって走れ!!」
『!!』
相澤先生の一喝で全員が返り、施設に向かって走り出す。
途中から焦げ臭さが漂い、走る俺達の後方やや遠くで黒煙が立ち上り始めた。
敵の中に火か、或いは何か燃焼させる系の【個性】持ちがいるのか。
俺は軽く宙に飛び上がり、木々の上から辺りを見渡す。
すると、森の広範囲に『蒼い炎』と黒煙、それに薄いピンク色の気体が広がっているのが見えた。
それぞれ、敵の気が1つずつ……炎は当然として、ピンクの気体も【個性】によるものでこの状況で使っている以上、人体に無害な訳がないな!
地上に降りて皆と一緒に走る。
皆の顔色に、不安と動揺、そして恐怖が見える。
以前の雄英襲撃からたった数ヶ月、しかも実際に襲われた俺達A組でさえ直接の交戦は無く、B組に至ってはこれが『敵連合』との初遭遇になる。
恐れるのも仕方ない……。
だが、もうすぐその恐怖も晴れるだろう。
「──戻って来たな、少年少女達!」
『!!??』
「もう大丈夫!何故って?」
施設で待っていた、その人──
「──私が来た!!」
“平和の象徴”オールマイトを見れば──!
『オールマイトーー!!??』
案の定、皆が一瞬で驚きの混ざった安堵の笑みを浮かべて叫んだ。
「なんでここに!?」
「いつ来たんですか!?」
「来ないって話じゃ!?」
「でもオールマイトがいれば!」
「HAHAHA!!色々疑問はあると思うけど、先ずは中にお入り!少年少女!今が緊急事態だって事を忘れちゃあいけない!」
オールマイトは笑みをそのままに皆を中に誘導する。
て、あれ?
今の声の中に緑谷がいなかった……?
オールマイトがいたら真っ先に反応しそうなのに……?
あれ!?
緑谷……!?
「おい!緑谷どこ行った!?」
『!?』
集まったA組・B組の中に、緑谷の姿がない……!
「デクくんおらへん!?」
「緑谷くん!?」
麗日、飯田が辺りを見渡す。
A組全員に動揺が広がり、すぐにB組にも伝わって場がざわつく──その中で俺はすぐ気を探した。
そして、すぐに見つけた──が。
「相澤先生!オールマイト!拙いです!緑谷、敵と戦ってます!」
「What!?」
「何だと!?」
普段と違う激しい緑谷の気の側に小さな気──これは洸汰くんだな!
そして、もう1つデカく、激しく、そして嫌な感じの気──昨日から感知している『敵連合』の内の1人だ!
「向こうの高い場所!相手は『敵連合』の1人と思われます!すぐ側に洸汰くんもいる!」
「洸太が!?」
「くそ!いきなり最悪か!」
マンダレイと相澤先生が焦りの表情を浮かべる。
「──私が行く!!相澤くんとブラドは生徒達の保護を!!」
即座にオールマイトが飛び出そうと腰を落とすーー待て待て待ってくれ!
「オールマイト!受け取って!!」
「っ!Hey!」
俺の声を受け、すぐに意図を察して手を伸ばしてくるオールマイトーー俺はその手にタッチ、かなり多めにオーラを込めて【オーラアーマー】を付与する。
「OHっ!サンキュー!気賀少年ッ!」
次の瞬間ーー爆風と土煙を残してオールマイトの姿が消えた。
相手の戦闘力とオールマイトの戦い方にもよるだろうが、【擬似・超サイヤ人】のブーストもあるし、結構オーラを込めたから【オーラアーマー】は40〜50分は保つはずだ。
オールマイトの『残り火』の消耗も極力抑えられるはず……。
間に合ってくれ、オールマイト……!
緑谷……無事でいろよ!