僕のヒーローアカデミア A Little Extra 作:ジョン堂
我らが担任、抹消ヒーロー『イレイザー・ヘッド』こと相澤先生からの洗礼のごとき怒涛の入学初日から明けて翌日――本格的に雄英高校での高校生活がスタート。
朝起きて、朝メシ食って、登校――で、午前の授業。
「んじゃ次の英文のうち、間違っているのは?」
ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』担当の英語を初め、高校必修科目の座学が主。
ここは担当教師以外は普通だ。
「おらエヴィバディヘンズアップ!盛り上がれーー!!」
無茶言うなや……。
昼休み――デパートのフードコート顔負けの大食堂で、和・洋・中・その他諸々網羅した一流料理がマジ学食価格で食える。
因みに俺のセレクトは『唐揚げ定食・大盛り』――唐揚げ大好物、超美味い。
「白米に落ち着くよね!最終的に!」
学食を取り仕切るクックヒーロー『ランチラッシュ』――機械的な管が付いたマスクを被った白のコック帽・コックコートの変わり種ヒーロー、料理の腕は超一流、何の【個性】かは分からん。
で、いよいよ午後――ヒーロー科のメイン『ヒーロー基礎学』、午後の授業時間全部ぶち抜きで行う実習授業だ。
『わーたーしーがーー!!』
ガラッ!!
「普通にドアから来たぁー!!」
はい出ました、オールマイト。
「オールマイトだ……!!」
「すげえや、本当に先生やってるんだな……!!」
「シルバーエイジのコスチュームね……!」
上鳴、切島、蛙吹……クラス皆が感動に打ち震えながら声を上げていく。
今日のオールマイトは赤を基本としたボディスーツにマントを付けたコスチュームを着ている。
オールマイトがヒーローとして活躍していた時期を一般に、プロデビュー当初の『ヤングエイジ』・初期の『ブロンズエイジ』・中期の『シルバーエイジ』・以降現在までの『ゴールドエイジ』という呼び分け方をし、今日の格好は中期の頃のコスチュームな訳だ。
クラスの皆は、No.1ヒーローの登場に活気づいているが、俺は特にこれと言って思うところはない。
特にファンな訳でもないし。
「私の担当は『ヒーロー基礎学』!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う科目だ!単位数も最も多いぞ!」
何やらこっちに背を向けて屈むオールマイト。
「早速だが今日はコレ!!『戦闘訓練』!!」
振り返って勢い良く出してきたカードには『BATTLE』の文字――戦闘訓練かぁ……入試のロボ以来、初の戦闘になる訳だが、果たしてどうなるやら。
「そしてそいつに伴って……こちら!!」
オールマイトが手元の小型リモコンを押すと、教室の壁が開き、金属製のケースが治まった棚が出てきた。
凄い仕掛けだな、いつ仕込んだ?
「入学前に送ってもらった“個性届”と“要望”に沿ってあつらえた……『コスチューム』!!!」
『おおお!!!』
コスチューム――これはちょっとドキドキするな。
俺も要望は一応描いたが、どんな仕上がりになっているかな?
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」
『はーい!!!』
さーて、どうなる事やら。
グラウンド・β、入試の時にも使った市街地演習用のグラウンド――見た目はまるっきり街中。
「始めようか、有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」
そこの一角、ビルの屋上にコスチュームに着替えた俺達1-A全員が集合した。
「良いじゃないか皆。カッコいいぜ!!」
オールマイトのお褒めの言葉。
皆、前世で原作漫画やアニメを見た時に見たまんまのコスチュームを着ていて、少し楽しい。
そして俺も、その中に混ざっている。
俺のコスは、肌密着タイプの黒の半袖アンダーシャツ、少しゆとりのある動き易い黒ズボン、その上から袖無しで裾が膝くらいまである赤い上着を羽織り、それを腰で青い帯紐を締めて固定、腕には青のリストバンド、足元は脛まで守る頑丈な黒のブーツ――モデルにしたのは、『ドラゴンボールヒーローズ』の『未来悟空』のコスチュームだ。
何しろ俺にはコスチュームを一から考えるセンスが無いので、亀仙流の道着やサイヤ人の戦闘服、『NARUTO』の各種忍者衣装など色々参考に考えた結果、亀仙流道着とNARUTO忍者衣装の中間の様な、このコスチュームに思い至ったのだ。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
白いアーマーと良い感じに尖がったパーツがついたフルフェイスマスクを着た飯田が手を挙げる。
「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での『対人戦闘訓練』さ!!」
オールマイトの説明が入る。
曰く――統計的に凶悪敵出現率は屋外より屋内の方が高く、監禁・軟禁・裏商売等々……ヒーロー飽和社会の現代において、賢しい
という事で、俺達はこれから『ヒーロー組』『ヴィラン組』に分かれて2vs2の屋内戦を行う、とのこと。
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ブッ飛ばしていいんスか?」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」
「このマントヤバくない?☆」
「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか?」
八百万が、爆豪が、麗日が、青山が、飯田が、答えさせる気あんのか?ってぐらいの怒涛の勢いで質問を重ねていく――約1名(青山)、質問の内容がアレだが。
「んんん~~~聖徳太子ぃぃ!!!」
オールマイトはなんか打ち震えながら困っていた。
気を取り直したオールマイトが再び説明――状況設定は『敵がアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている』という、何ともツッコミどころの多い設定……。
勝利条件は――
・ヒーロー組は制限時間内にヴィラン組を捕縛、または核兵器を確保・回収する。
・ヴィラン組は制限時間内まで核兵器を守る、またはヒーロー組を捕縛する。
さて、組決めは……
「“クジ”だ!」
「適当なのですか!?」
オールマイトに飯田のツッコミが入る。
「プロは他事務所のヒーローと急増チームアップする事が多いし、そういう事じゃないかな?」
「そうか……!先を見据えた計らい……失礼いたしました!」
緑谷の見解に納得し、飯田がオールマイトに謝って落着。
で、組み分けは――
Aチーム『麗日&緑谷』
Bチーム『障子&轟』
Cチーム『峰田&八百万』
Dチーム『飯田&爆豪』
Eチーム『青山&芦戸』
Fチーム『口田&砂籐』
Gチーム『雷鳴&耳郎』
Hチーム『蛙吹&常闇』
Iチーム『尾白&葉隠』
Jチーム『切島&瀬呂』
Kチーム『気賀』
と、決まった――ってオイ!?
「あの!?オールマイト先生!!俺1人ですか!?」
しかもこのチーム数だと、どこか1チームがあぶれるか2度対戦する事になるのでは!?
「ハーハッハッハッ!仲間外れみたくなってゴメンな!でも!ヒーローはいつでも万全の状態や望む展開でばかり戦える訳じゃあない!時に降り掛かる不運や逆境を、自分の知恵と勇気と肉体で乗り越えなければならない事もあるのさっ!!」
理屈は分からないでもないが……いや、でもこれってまさか、俺というイレギュラーが入った事による弊害!?
「気賀少年が人数的不利を被るのに対して、どこか1チームは連戦という気力・体力的不利を被る!これもまた“Plus Ultra”さ!!」
そう言ってサムズアップするオールマイト。
クラスの皆もそれで納得しているし、話の筋はまあ通っていると思うので俺もこれ以上つべこべは言わない。
しかし頭の片隅で、何でも“Plus Ultra”って言えば罷り通る様な空気に疑問が残っている……。
まあ、それは一先ず置いておいて――対戦カード。
細かい部分はかなりあやふやだが、原作では確か緑谷と爆豪がぶつかる話だったはずで、2人のチームメイトも麗日と飯田で同じだったと思う。
他はどうだったか、思い出せん……。
「さて!最初の対戦相手は~~……こいつらだ!!」
オールマイトが引いたボールによって決まった対戦カードは『ヒーロー』AチームVS『ヴィラン』Dチーム――やっぱり緑谷と爆豪だ。
原作の流れ……俺がいる事で何かしら変わるかとも思ったが……いや、まだ何とも言えないか。
何はともあれ、屋内対人戦闘訓練は開始される――。
緑谷・麗日・爆豪・飯田の4人が訓練場となるビルの所定の位置につきスタートの合図で動き出す。
「さあ、君達も考えてみるんだぞ!」
俺達は同じビルの地下のモニタールームでオールマイトと共に観戦する。
モニターにはビル内の各所の映像が映し出されている。
定点カメラらしく、映像のみで音声は入ってこない。
おかげでモニタールームは静かだ。
てかモニタールームのSF的雰囲気凄えな!
立体映像とかちょいちょい出てくるし、前世の感覚が残っているから近未来的に見えて興奮しまう!
いかんいかん、落ち着かなければ……!
今はそんな事より緑谷達だ――。
緑谷達はビルの窓から内部へ侵入、周囲を警戒しつつ進んでいく。
原作と違い、今の緑谷は一応【フルカウル】の取っ掛かりを掴んでいる。
そこがどう影響するか、興味があるな。
と、見ていると――
「いきなり奇襲!!」
峰田の驚きの声――見ればモニターの1つに、緑谷達を急襲する爆豪の姿が映っていた。
「爆豪ズッケぇ!!奇襲なんて男らしくねえ!!」
切島が叫ぶ。
「奇襲も戦略!彼らは今、実戦の最中なんだぜ!」
オールマイトの指摘が飛ぶ。
「緑くん、よく避けれたな!」
言ったのは芦戸。
確かに、爆豪の奇襲はほぼ完璧だったように思う。
緑谷達へ【個性】を使う事にもまるで躊躇いがなかった。
あんな【個性】、本気で人に当てたら高確率で死ぬか、重傷を負わせるだろう。
本当にこれが初の対人戦闘なのか……?
奴の行動や目付きは、どう見てもヒーローと結び付かないぞ……?
爆豪は更なる攻撃を仕掛けようと、右手を振りかぶる。
が――
『おお!?』
なんと緑谷、その右腕を素早く踏み込んで躱し、反動をつけて爆豪の腹にブローを叩き込んだ!
その様はさながら、ボクシングのデンプシーロール――更に緑谷は爆豪に見事な一本背負いを決める。
『おおーー!!』
その一連の動きに、モニタールームの皆が目を見張った。
流れる様な良い動きだった――短時間ではあるものの、緑谷は【フルカウル】を使っていた。
俺のアドバイスも少しは役に立ったか。
昨日の帰り道、俺は緑谷に格闘技を学ぶ事を勧めたのだ。
昨今はネットに、動画でもHPでも、あらゆるスポーツや格闘技のハウツー教材が溢れかえっている。
それこそ、武闘系ヒーローが副業的にネットに上げている事も多いから、ヒーローオタクの緑谷なら苦もなく履修できるだろうと思ったのだ。
目論見が上手くハマったみたいだ。
【フルカウル】が短時間なのは恐らく、取っ掛かりを掴んだのがつい昨日の事で、ちゃんと訓練する時間も場所もなかったのと、実戦の緊張感と切迫感で、上手く維持し続けられないからだろう。
その後、緑谷が爆豪を抑えて麗日は先へ――緑谷は【フルカウル】と先読みを駆使して爆豪に善戦し、段々と注目を集める様になっていく。
やがて麗日と飯田が対峙し、一旦離れた緑谷と爆豪が再び対峙した時、爆豪はコスチュームの籠手の機能を使用――ビルを揺らす程の大爆発を放ってしまう。
爆豪、マジヤバい……正気の沙汰じゃねえ。
焦って止めるオールマイトに向かって「当たらなけりゃ死なねーよ!!」とか平然とほざいたが、裏を返せは『当たったら死ぬ』ってことだろ。
ヒーロー志望の言動じゃないだろ、それ……もはや完全に敵だ。
「ッ……オールマイト、このまま続けさせるんですかっ?」
原作の展開を知っていても、間近で見ると危機感が募る。
俺はどうにも我慢しきれず、オールマイトに一声かけた。
「むぅ……確かに、あの攻撃は危険だ。だが、先程も言ったが、これは実戦を想定した訓練、危険だからと中止させては訓練の意味がない」
「それはそうですが……!」
「だから……爆豪少年!次それ撃ったら、強制終了で君らの負けとする!」
やっぱ警告はしても止めはしないか……。
「屋内戦において大規模な攻撃は守るべき牙城の損害を招く!ヒーローとしては勿論、敵としても……愚策だそれは!大幅減点だからな!」
そういう問題なのか……?
あんな行動を警告――イエローカードに留まるって、どうなんだ?
これは俺の考え方が甘いのか?
俺がまだヒーローってもんに、この世界の常識に馴染んでないから、この学校の方針に納得できないだけなのか?
その後、爆豪は緑谷をフルボッコ――緑谷は為すすべなく殴られ、爆破を喰らい、投げられ、床に叩きつけられる。
しかし、受ける一方だった緑谷が急に攻勢に転じ、爆豪も迎撃態勢を取り、また大激突かと思われた時――緑谷が拳を方向転換、アッパーに切り替えた。
すると衝撃波が上に行き、天井をぶち抜いて更に上まで破壊し、飯田と麗日が対峙するフロアまで貫通した。
そこで麗日は掴まっていた柱の一本を【個性:無重力】で持ち上げ、その場でフルスイング――緑谷が破壊したフロアの瓦礫を散弾のように飯田に撃ち放つ。
その隙を突いて麗日が無重力ジャンプでターゲット『核』を回収に成功――とりあえず、緑谷・麗日ペアの勝利となった。
思い出せる限り、ほぼほぼ原作通りの展開だ……。
緑谷が【フルカウル】を使って優位に立てたのは序盤だけ……。
そう易々、爆豪との差は埋まらないか。
この先、早い内に仕上がる事を祈るしかない。
その後、緑谷は保健室に直行――無事な爆豪・飯田・麗日はモニタールームで総評を受けた。
まあ、原作通り、飯田以外が八百万に酷評されて終わったが。