僕のヒーローアカデミア A Little Extra 作:ジョン堂
大怪我を負った緑谷を欠いたが授業は進んでいき、次々対戦カードが消化されていく……。
「お次の対戦相手は~~……こいつらだ!!」
その手に握られていたボールには『K』と『B』の文字――
「第4戦――ヒーローチーム『K』コッ……ンンッ!ヒーロー『K』ッ!」
遂に俺の番が来た――てか、オールマイト、言い直さなくていいから……。
「ヴィランチーム『B』コンビ!」
対戦相手は、轟と障子のコンビか。
「この対戦ではハンデとして、ヒーロー『K』には勝利条件を追加する!気賀少年はターゲットの【核】を回収するか、ヴィランチームのどちらか一方を捕縛した時点で勝利とするよ!」
俺に対して人差し指を立てて勝利条件を追加するオールマイト。
「轟少年と障子少年のコンビは先程オフェンス・ヒーローチームとして対戦したが、今度はディフェンス・ヴィランチームだ!先程とは考え方や立ち回りが変わってくる!そうした違いもしっかりと学ぶようにな!」
オールマイトに送り出され、俺は建物の入り口付近で待機、轟・障子の2人は建物内に入り、それぞれスタートを待つ。
「さてと……」
オーラを高めながら作戦でも考えるか。
第2戦で轟と障子のコンビは、尾白と葉隠のコンビに対して、轟の【個性】による氷結で建物丸ごと凍らせて完勝した。
この時点での轟は、氷結しか使わない筈……父親、プロヒーロー『エンデヴァー』との確執故に……。
しかもその使い方は大雑把、殆どブッパばかり……今までそれで大抵片付いてしまった所為で、すでに癖になっている。
なら、俺に対しても初手ブッパで早々に片付けようとするか……。
しかし、俺が空を飛べる事は初日の【個性】把握テストでクラス皆に知られている……。
氷結を避けられる事を想定しないでブッパする程、轟は単純じゃない…‥と思う。
それにさっきの対戦と違って轟達のスタートは建物内……さっきの対戦と同じく建物を丸ごと凍らせたりしたら、味方の障子まで巻き込んでしまう。
そんな事になれば流石に大幅減点は免れないし、そもそも味方を巻き込む事を躊躇しないのはヒーロー志望のする事じゃない。
それも轟なら分かっている筈だ、でなければ第2戦で障子を建物の外へ退避させない。
しかし、氷結の範囲はある程度コントロール出来る様に見えたな。
凍っていたのは建物だけで、その周辺にまで氷結が無作為に伝播していた形跡は見られなかった。
まあ、モニタールームがかなり寒くなったが、それは冷気が伝わっただけだからノーカンとして……。
となると思い付く作戦としては――
先ず、障子に俺が建物に侵入したのを感知させる。
そして、そのまま障子をターゲットの側に置いて轟が1人で部屋の外に出て、下の階だけを氷漬けにして俺の拘束を狙う……とか?
俺が飛んで避ける事を想定したとしても、氷に覆われた建物内は動き難いから動きを封じる効果が……いや、これは違うか。
動き難くなる条件は向こうも同じだ。
となると……もっとシンプルに、障子の索敵で通路で待ち伏せて、俺を通路ごと氷漬けにして捕縛……うん、こっちの方がありそうだな。
『それでは!屋内対人戦闘訓練!第4戦!スタート!!』
おっと、開始か。
作戦は決まらなかったが、一先ず建物内に入り、気を探って轟達の位置を把握し、オーラで聴力を強化して2人の会話の盗聴を試みる。
あと、いつでも飛べる様に準備をしておこう。
さて?
『……入り口付近で止まっている。お前の氷結を警戒しているのかも知れない』
先ず聞こえてきたのは障子の声……。
『どうする?』
『ここにいろ』
む?
轟が移動し始めたな……。
『おい、また建物ごと凍らせるつもりか?』
『安心しろ、下の階だけだ。巻き込んだりしねえ』
おいおい、ここでもブッパなのか?
様子を見ていると、轟が障子から離れていき下の階に降りた様だ。
おっと、気が高まった――氷結くるな。
【疑似・舞空術】で宙に浮く。
その直後、通路の向こうから氷結が広がってきた。
と、轟が障子の近くに戻った……何だったんだ?
『凍らせてきた。どうだ?』
『……音は聞こえなくなった。氷の軋む音が混じって少し聞き取り難いが、気賀が出しているだろう音は無い様だ』
『飛んで避けたんだろうな。流石にさっきほど簡単にはいかねえ』
想定通りって事か。
この氷結は様子見……を兼ねての攻撃だったかな。
『なら、次はどうする?』
『ここで待ち伏せる』
やっぱり待ち伏せか……。
『しかし、気賀の戦闘能力は未知数だぞ?』
『さっき下の階を凍らせるついでに、階段を氷で塞いできた。氷を砕いて侵入してくれば音で気付ける。それをフェイントにして飛んで窓から侵入するとしても同じだ。もう建物の大破壊や【核】を損壊させる行動が減点な事は誰でも分かる。どっちから来るにしろ侵入してきたら、俺が凍らせて終わりだ』
ふーん、なるほど……。
これなら何とかなりそうだな。
よし――いってみようか。
俺は【疑似・舞空術】を維持したまま、壁や天井に触れない様に建物の奥へと進む。
辺り一面氷漬けだ……この威力は確かに驚異的……この氷に捕まったら寒い冷たいってレベルじゃないだろう。
氷だけでも捕縛と攻撃の両方がこなせる強個性……後に炎まで気兼ねなく使う様になったら、文字通り半端じゃなくなるな。
まあ、そこは緑谷に任せるとして――。
着いた、轟達がいる1階下のフロア……そして、轟達がいる部屋の真下の部屋……。
轟と障子は動いていない。
強化した聴覚で探る限り、警戒はしている様だが俺の接近に気付いている様子はない。
さぁて、上手くいくといいが……腹を決めて、作戦開始!
いけ!
【擬似・操気弾】――!!
ガシャァァァン!!!
『ッ!来たか!?』
『まだ動くな。誘いかもしれねえ』
誘われなくてもいいからその調子で緊張してくれ――そらもう1発!
バァァン!!
『『ッ!?』』
上手く轟達のいる部屋のドアにぶつかって破裂したな、今だ――【擬似・スピリッツソード】で素早く天井を切断!!
間髪入れずに【擬似・九尾チャクラモード】――オーラの掌で天井の板を引っこ抜く!
空いた穴に最速で滑り込み――うおっ、【核】の真横か此処!!
「回収ッ!!」
ターゲットにタッチ!
「「なっ!?」」
『ヒーロー、WIーーーNッ!!』
オールマイトのアナウンスで、俺の勝利が決定――
「ふぅ~……!」
穴から這い出て一息。
何とか勝ったかぁ、最後の技の連続は神経使ったぁ~……。
「まさか、そんなところから来るとはな……抜かった」
「なに、正面からだと分が悪いと思ったからな。奇策を打たせてもらった」
「…………」
障子に答えつつ、こっちを無言でジッと見てくる轟に気付かないフリ……よせよせ、何思ってるか分からない目でこっち見んな。
ともあれ訓練終了――モニタールームに戻って講評タイム。
「今回のMVPは気賀少年!まあ、これは誰の目にも明らかだね!破壊は最小限に抑え、【個性】を巧みに活かして敵の注意を引き、その隙にターゲットを迅速に回収――見事だ!」
「ありがとうございます」
褒められた――とは言え、これはあくまで訓練であり、設定された勝利条件を満たしたに過ぎない。
実戦だったらこうはいかないだろう。
「ところで気賀少年」
「はい?」
「ちょっと気になったんだが、君は訓練中、建物内を移動していた時、曲がり角等であまり先を警戒していなかった様に見えたが、もしかして君はヴィランチームの位置を把握していたのかい?」
ああ、その事か。
「はい。俺は【個性】の影響か、他人のオーラ――所謂“生命反応”的なものを感知出来るんです」
「おお!それは凄いな!なるほど!だから轟少年と障子少年がターゲットの側を離れていない事を把握していた訳かい!」
「はい」
「そして、真下の部屋からの奇襲を選択――自身の能力を最大限に活かし、数の不利を乗り越えて勝利を掴む!素晴らしい!」
「ど、どうも。あ、ちなみにオマケでこんな事も出来ます。オールマイト先生、ちょっと手をお借りしても?」
「む?シェイクハンドかい?いいとも!」
差し出されたゴツくてデカいオールマイトの手を取り、握手の形に――繋いだ手から俺のオーラを送り込む。
「おお?これは……!」
「こうやって相手に、自分のオーラを他人に分ける事が出来ます。リカバリーガールの様にその場で治療とかは無理ですが、体力を補うくらいには使えます」
「むうう、益々素晴らしい!これは人命救助に大いに役立つ!いやぁ、君の【個性】は応用の幅が実に広いな!気賀少年!」
「恐縮です」
「応用の幅の話ついでに言っておこう。【個性】を鍛えたヒーロー達は出来る事が一般の人々より遥かに多い!だがしかし、“何でも出来る”訳ではない。必ず出来る事・出来ない事が出てくる。だからこそ、各々が出来る事・出来ない事をしっかりと把握し、各々が出来る事を全力で行う事でお互いの出来ない事を補う!このヒーロー基礎学はそれを学ぶ事が一つの大きな目的になる!有精卵達よ!しっかり学んで、素晴らしいヒーローになってくれよ!」
『はい!!』
オールマイトの先生らしい姿を見てしまった。
緑谷、きっと見たかっただろうに……残念だったな。
その後も対戦式訓練は進み、午後のヒーロー基礎学は怪我人は緑谷のみで終了――相澤先生の後で真っ当な授業だったという事で、皆が拍子抜けしていたのは地味にウケた。
「それじゃあ!私は緑谷少年の怪我の経過を見つつ講評を聞かせねば!着替えて教室に!お戻りィィーー!!」
オールマイトはソニックブームが出そうな勢いで走って行った。
普段の規格外パワースタイルのおかげで皆は気にせず「カッコいい」と見ていたが、あれは活動限界が近いからダッシュしているんだよな、確か……。
バレちゃいけないっていうのは、中々大変そうだ。
<side:オールマイト>
「むぅ……?」
そろそろ活動限界が近い時間だったから、秘密を守るためダッシュで職員専用通用口に駆け込んだんだが……。
落ち着いてみると、なんだかもう10分……いや15分ぐらいマッスルフォームを維持できそうな感覚だ。
いつもと違う感じ……。
「これは一体……っ、もしや?」
思い至ったのは、先ほどの気賀少年の【個性】と行為――彼の【個性:オーラ】、その使用法の1つとして他人にオーラを分け与えられるらしく、その実演で私は、彼からオーラの供給を受けた。
それが、私の活動限界時間を延長してくれたのではないだろうか?
だとすれば……先生としては卑しいが、何て有用な【個性】だろう。
もし、彼に私の事情を明かし、そして協力してもらえたならば……!
「ッ!?NOッ!Damn itッ!」
スパンッ!
自身の頬を張り飛ばす――何を考えているんだ私!!
仮にも『平和の象徴』を自負する者でありながら……!
仮にも教師ともあろう者が……!!
守り、教え導くべき生徒を利用しようなどと……!!
「気が緩んでいるなぁ……私……シットッ!!」
ちなみに頬を強く張り過ぎたらしく……緑谷少年を見舞いに保健室へ入った際、リカバリーガールに頬の手形と鼻血跡について言及され、呆れられてしまった……。
<side:out>
放課後、緑谷も満身創痍ながら教室に戻って来て、皆に奮闘を讃えられて受け入れられていた――。
で、緑谷と爆豪のなんやかんやあった後の帰り道――俺は緑谷に同行して、確認の意味でちらっと聞いてみた。
「なあ、緑谷。今日の訓練のことだけど、昨日、何か掴んだっぽいこと言ってたアレ、あんまり使ってなかったみたいだけど、どうしたんだ?」
「あ、うん、掴んだ事は掴んだんだけど、まだ上手く使いこなせなくて、かっちゃん相手だと緊張感凄くて、先読みがハマった最初以外、うまくコントロール出来なかったんだ」
やっぱり如何に原作主人公といえど、昨日の今日で【フルカウル】の調整と習熟は無理だったか。
「そうか……あんまり無理するなよ?体の故障が続くと、いつか取り返しのつかない事になりかねないぞ?」
「うん、ありがとう、気賀くん!」
過ぎたお節介はせず、その後は雑談をして別れた。