獣人魔族チャン「幼馴染 クン ト 結婚 スル~♡」 幼馴染クン「……」   作:イスカリオテのバカ

1 / 1
 書きたいもの=Twitterとかでよく見る上位者と人間のラブコメ

 書きたいジャンル=戦記物

 性癖=筋肉バキバキ系高身長人外女子が異形化しつつも好きな子に甘える話(ただし襲われる側も強か)

 で、悪魔合体した結果がこれである。


北部戦線

「定時となりました。これより今期における第十三回定例会議を始めさせて頂きます」

 

 議事進行を務めるのは、齢三十五歳にして大佐にまで上り詰めた僕の右腕的存在の部下だ。そして、居並ぶ列席者を見渡せば全員が国防の中枢を担う英傑ばかり。

 こうした面々と一堂に顔を合わせるのも、僕の代に代わって今回で十三度目となる。

 

「本日の議題は、第二偵察隊より提出されました『魔王軍北部侵攻隊』の指揮系統の通報であります」

 

 人類が魔王率いる魔王軍との争いが『全面戦争』という局面へ移行して百四十年余りが経過して久しい。

 ここに集う面々も、今回の定例会議がどう言った意味を持つものであるかは百も承知だろう。死に物狂いで持ち帰られた情報が記載された会議資料に目を通せば、今度の侵攻が今までのような揺動ではないと教えてくれる。

 

「前回の定例会議にてフェルディナンド元帥が危惧されたように、北部における魔王軍の侵攻進路は、元帥の指揮下における焦土作戦により進路変更が確認されました」

 

 俯瞰的視点を全体へ向けつつ、フェルディナンド・フォン・オーベルシュタインは努めて現実的視点からなる未来を予想していた。齢五十八歳でありながら幼少期より卓越した魔術の才覚を惜しみなく発現し、理知的な淡い青を帯びた目と青年と見間違える若々しい相貌で会議資料から視線を外した。

 ()()()()と取れる紹介文であるが、それらの事柄は客観的に見て事実であるのだから仕方がない。

 閑話休題(それはそれとして)今回の要となる話題は進路変更ではなく、それによる魔王軍の人事的損害こそ着目点である。

 

「それにより第二偵察隊は間諜により魔王軍の内部情報の一部を奪取する事に成功しました。詳しい情報は資料の七頁をご覧ください」

 

 立場上この資料に記載されている情報は事前に知っているものの、僕の視線はある一点で固定されていた。

 

「今回の侵攻進路の大幅な修正で判明した情報により北部侵攻隊を率いる人物の特定に成功しました。部隊を率いる魔族が登録魔名:ノルト-ヴォルフ(北部の狼)であると判明しました」

 

 その場にいる全員が固唾を呑む音が会議室に響く。

 そこに秘められた感情が各々にとってどう言ったものであれ、共通して『恐怖』という感情が込められているのは自明の理であった。

 魔族は個体差が激しい。種族的な身体機能の差異はあるものの、その種族内においても突出した特殊な個体がごく稀に出現する。それらの個体はおおよそが魔王軍においても特殊な地位に属する事が多く、人類側から認知された個体にはそれぞれ識別名が登録される。

 過去に認知され、登録された個体の総称が『魔名保持者』なのである。

 

 そして『登録魔名:ノルト-ヴォルフ』は北部を主な生息地とする人狼種の魔王軍幹部である。人狼種の共通点として身体機能が人類よりも数倍を誇り、特殊な条件を満たした際には肉体構造が変化し巨大な狼に変異する特徴を有している。

 ノルト-ヴォルフはその中でも魔名を保有する雌の個体であり、その身体機能は通常の人狼種と格別したものとされている。また、()()が人類側にもたらした被害は個人としては破格の一個大隊の壊滅という恐ろしいものとされている。

 

「狼の率いる部隊による我が軍の被害は、皆さんもよく存じ上げる所存だと思われます。今回の定例会議における重点課題として、今後狼に対する戦術的アプローチの模索とさせて頂きます」

 

 進行役が資料をもとに会議を進めていく傍で、僕は隣に座る年若い将校と視線を交わしていた。

 肩まで伸ばした黒髪を纏め上げ、モノクルを着けたその視線が僕の視線と交差する。流石は人類の中でも選りすぐりのエリート、その中でも最も若輩ながら参謀本部の戦務参謀に選出されるだけの事はある。自分で言うのも憚られるが、僕の視線を受けながら眉ひとつ動かさない胆力は評価点とさせてもらう。

 

「いかがされましたフェルディナンド元帥殿。もしや此度の魔王軍の動きに疑念が?」

 

「違うさ。むしろヴェルヘルミナ准将こそ今後の奴らの動向に対する対策が思いついたのではないかとね」

 

 ヴェルヘルミナ・フォン・エーレンベルク准将は僕を試すような視線で睨め付ける。

 現状における判断材料が共有された資料に記載されたもの以外では、個人的主観による贔屓が混じっていることもあり、事実この場において僕が全体に通達すべき物は何もない。それを知ったか知らずか、彼女は視線を外すことなく僕の顔を見定め続けた。

 

「……今回の侵攻、ノルト-ヴォルフにしては稍消極的なものに思えます。前回の侵攻でアレが他の部隊と共同で動いていた際は、もっと苛烈な動きを見せていた印象でした」

 

「そうだね。遊撃部隊とは言えこれでは統率に欠く動きにしか見えない」

 

 なんで元帥(お前)と接敵した時だけ消極的になるんだ、という疑いの視線が無遠慮に向けられる。本来ならば元帥という立場にそのような不名誉な疑いをかければ、如何に参謀本部の将校であろうと罰則は免れない。

 

 だが、肝心の僕自身に心当たりがあるせいで何も言えなかった。

 

 ひとつ言い忘れたがこの僕、人類軍陸軍元帥フェルディナンド・フォン・オーベルシュタインは魔王軍北部統括幹部ノルト-ヴォルフとは幼馴染の関係にある。

 

 

 

________________________

 

 

 

 私には人間の幼馴染がいる。

 

(ねぇフェディ❤️大きくなったら結婚しような❤️)

 

 そんな初心な恋心に身を任せ、口から出た約束に彼がどう返答したかは、非常に残念ながら忘れてしまったが、彼を思う気持ちは何一つとして変わっていない。

 小さい頃は両親に黙って秘密基地で遊びまわって、色んな事を経験していつしか彼が好きになっていた。

 その顔も性格も匂いも、もう全部が大好きな私の愛おしい幼馴染の人間。

 出来るなら今すぐ仕事を辞めて彼とラブラブ新婚さんになって寿退社してやりたい。正直今の労働環境はクソオブクソな事を抜きにしても、彼との時間をもっとも〜〜〜っと作りたい。

 

 けれど……

 

「全軍進軍。人間どもを皆殺しにしろ」

 

「「「うおおおおおお!!!!!!」」」

 

 そうは問屋が卸さないっていうのが現実。

 今の私の役職は非ッ常〜〜〜っ!に面倒ながら魔王軍の幹部なんてやらせて貰ってます。

 ただ生まれつき他の人狼よりも力が強くて、体が大きいからって親が勝手に魔王軍に入隊希望の手紙を出しちゃってたのが全ての始まり。

 

(得意な事は?)

 

(運動全般です!!)

 

(人間のことどう思ってる?)

 

((幼馴染以外は)滅んでいいと思ってます!)

 

(採用!)

 

 今思い出しても巫山戯てんのかってくらい適当な面接だったのを覚えてる。即決する人事部門もだいぶ頭おかしいと思いつつ、親の脛齧りになりたくなかった私は嫌々ながらも魔王軍に就職することになった。

 仕事内容は『人間を殺す』事がメインだったおかげで楽に仕事出来ていた。下っ端ながらフィジカルに物言わせて、殴る蹴るで殺し回れば良かったのも幸いした。

 

「閣下、捕虜数名の鹵獲に成功しましたが如何致しましょう」

 

「無論殺せ。人間など存在するだけで不愉快千万」

 

 虫唾が走る。

 どうして人間という生き物は、こう蛆の如く湧いてくるのか不思議でしょうがない。一々生かしておく理由もないからさっさと殺すに限る。

 もちろん幼馴染は別腹だ。将来を誓い合った(一方的)旦那様を殺すなんて私にはとてもとても……。

 

「……いやに時間が掛かっているな」

 

「はっ、人間どもの魔導士たちの活躍が戦線の後退を妨害してるようで」

 

 魔導士かぁ。これまた面倒な奴らが居るじゃないか。

 魔族と比べて貧弱な人間の中でも魔導士ほど厄介な奴らは早々いない。曰く連中のトップが直々に教卓に立って教えを広めてるんだとか。全く面倒な事をしてくれる。

 

「そうか。私が埒を開けてやる」

 

「閣下自らが!?しかしそれは……お待ちください閣下っ!?」

 

 部下の制止を無視して戦場の前線目掛けて疾走する。

 最前線へ到着する頃には目の前を魔導士どもの壁が視界を覆って、私目掛けて魔法を放ってくる。

 だが、幾ら魔法を重ねようと雑魚の力なんて私に傷ひとつ着けることさえ出来ない。

 右腕に力を込めれば、筋肉が膨張して爪が伸び、それを一振りすれば目の前の魔導士数人が挽肉へ早変わりした。

 

「全員私に続け!奴らを皆殺しにするぞ!!」

 

「うぉぉぉぉぉ!!閣下の後に続けぇ!!!」

 

 私の鼓舞する声に合わせて部下たちが一斉に突撃する。

 先陣をいの一番に駆け、全身に力を込める。骨が歪み筋肉が歪な膨張を繰り返しながら、私の体は異形へと変わっていく。

 もともと2メートルほどあった体も、5メートルを超す異形の狼へと変貌していた。正直この形態はブサイクだから嫌いだが、変形するときちょっぴり気持ちが良いから難儀なものだ。

 

「グルオアアアアッッ!!!!!」

 

「たっ、退避!退避ぃ!!」

 

 人間どもを殺せば殺すほど、私の身体は成長と異形化を進めていくのが実感できる。

 気がつけば建物だって一踏みで壊せるほどデッカくなってしまった。

 

「これで全てか…」

 

 死屍累々。生きてる人間なんて一人もいない雪原の荒野で変身を解けば、背後にいる部下たちの歓声が木霊する。

 馬鹿騒ぎする部下たちから視線を逸らして、ふと雪山の一角に視線を向ける。

 

(あっ❤️)

 

 雪の白に紛れるように()()は隠れていた。

 如何に隠密性に優れてても、私の鼻と目は誤魔化せない。大好きな彼の匂いも魔力の癖も全部覚えている。

 私の視線を感知したのか、ソレは空間に溶けるような姿を眩ませたがそんなのはどうでも良い。彼が私を見ていてくれたのが何よりも嬉しかった。

 

(もー!照れ屋さんなんだから❤️いつかゼッテー犯してやから覚悟しろる❤️)

 

 最初から気づいていた。彼が自らの使い魔で私を監視していたのは。

 けれど、そんな事は細事でしかない。

 これがただの人間どもの偵察部隊なら直ぐに殺して喰らっていたかも知れないが、特に見られたところで支障のない光景を彼が見ているのなら、それを無碍にする必要はどこにも無い。

 

「閣下、如何されました」

 

「……羽虫が飛び回っていただけだ。(ダーリンが居た❤️)

 

 踵を返して拠点へ帰還する。

 というか彼の匂いを嗅いじゃったんだからもう無理、部下には悪いが先に戻らせて貰わないと可怪しくなってしまう。ソッコー自室に籠もって妄想ヘコヘコしないとバカになりゅぅ…。

 

 申し遅れたが、この私魔王軍北部統幹部ノルト-ヴォルフは人類軍陸軍元帥フェルディナンド・フォン・オーベルシュタインとは幼馴染の関係にある。




 次回は幼馴染くんパートメイン。
 
 三話目が魔族ちゃんメイン。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。