機動戦士ガンダム ​Vガンダム戦後、15歳になったウッソとシャクティのイチャイチャ深夜ラジオ。なお、裏で冷徹にラブコメのカンペを出している怪しい構成作家は、あの木星帰りの英雄(30代)な模様   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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連邦軍極秘アーカイブHM411737・アクシズに響く少女の旋律と、カサレリアの機材室の変

カサレリアの朝の陽光は、リガ・ミリティアの残した旧式通信コンテナの錆びた外壁を黄金色に染め上げていく。鳥たちの爽やかなさえずりが響く中、15歳になったウッソ・エヴィンは、いつもとは全く異なる異様な光景を前にして、音響ミキサーを握る手をガタガタと震わせていた。

 

いつもなら防音ガラスの向こうの副調整室(サブ)で電子タバコをくゆらせているはずの構成作家カティス・ロゥが、今朝はなぜかブースの内側、つまりウッソのすぐ真後ろに立っていたのだ。サングラスの奥の瞳を怪しく光らせたカティスは、無言のままウッソの背後にぴったりと張り付き、手にした巨大なスケッチブック(カンペ)をウッソの鼻先に突きつけた。

 

そこには、太いマジックでこう書き殴られていた。

 

『本日のオープニング・ミッション。毎回毎回、同じように僕がガラスの向こうからカンペを出して、君がヘタレて、シャクティがからかうというワンパターンな展開に、全宇宙のリスナー(特に私)が飽き飽きしている。よって今回は、私が直接ブース内に潜入し、リアルタイムで肉体的圧迫(プレッシャー)を与える。シャクティが持ってきた採れたての朝採り完熟トマト。その最も赤く熟した一玉を、ウッソの口に丸ごと押し込め。シャクティはウッソの喉にトマトが詰まらないよう、彼の背中をポンポンと優しく叩きながら「ウッソ、私の愛を丸ごと飲み干して……?」と囁け。ウッソがトマトの果汁をブース内にぶち撒けて窒息しかけた瞬間をラッキースケベへの移行トリガーとする。日和った場合は、来週の台本を「ウッソの全裸パーツ互換性間違いカサレリア敗走記」に変更する』

 

「カ、カティスさん!? なんでブースの中に入ってきているんですか! 物理的に距離を詰めてこられたら、カンペの圧迫感がこれまでの10倍以上です! そもそもトマトを丸ごと口に押し込まれたら、僕はプロの顔で喋るどころかリアルに救急医療パックが必要になります! マンネリ打破の方向性が過激すぎます!」

 

ウッソが涙目で振り返り、背後の大男に向かって必死に抗議の声を上げた。

 

「あら、ウッソ。朝からカティスさんと新しいフォーメーションでドッグファイトを展開しているのね? はい、これ、言われていた通りのみずみずしい完熟トマトよ。ウッソのお口なら、すっぽり収まりそうだわ」

 

コンテナのドアが開き、カサレリアの涼しい丘の風と共にシャクティ・カリンが入ってきた。15歳になり、その佇まいには圧倒的な包容力(母性)が備わりつつあったが、ウッソをからかう時の彼女には、完全に計算し尽くされた小悪魔的な余裕が漂う。

 

シャクティはクスクスと楽しそうに笑いながら、自然な動作でウッソの右側に回り込み、彼のパーソナルスペースを完全に無視して肩をぴったりと並べた。ふわり、と彼女の長い髪から、大地の瑞々しい匂いと少女の甘い香りがウッソの鼻腔をダイレクトに貫く。さらに左側からはカティスの放つ歴戦の戦士のプレッシャーが押し寄せ、ウッソは文字通り左右と背後を完全に包囲された。

 

「さあ、ウッソ。カティスさんの指示通り、お口を大きく開けて? ほら、私が優しく押し込んであげるから」

 

「う、うわあぁ! シャクティ、顔が近いよ! 左からはカティスさんのサングラスの威圧感が、右からは君の体温がダイレクトに伝わってきて、僕のメインプロセッサーが完全に過負荷を起こしてる! 音響ミキサーのレベルメーターが、僕の心拍数と連動して全部レッドゾーンに振り切れてるんだ!」

 

「ふふ、そう? でも、ウッソの顔、このトマトよりも真っ赤に沸騰していて、とっても可愛いわよ?」

 

シャクティはいたずらっぽく上目遣いで覗き込みながら、トマトをウッソの唇にちょんと触れさせる。その無自覚な距離感ブレイカーぶりに、ウッソはミノフスキー・フライト状態でガタガタと震えるしかなかった。

 

背後でカティスが『これ以上日和ったらポエム朗読だ』と言わんばかりに、スケッチブックをめくって『本番。全宇宙のリスナーの鼓膜を震わせるプロの顔をしろ』という短い指令をウッソの目の前に突き出した。

 

ウッソは涙目でトマトを一旦机に置き、深呼吸をしてパーソナリティとしての意識をかき集め、ミキサーのフェーダーを上げた。

 

チーンとレトロなベルの音が響き、赤い「ON AIR」のランプが点灯する。手作りのアコースティックギターによる爽快なジングルが流れた。

 

「リスナーの皆さん、こんばんは。宇宙世紀0155年、過酷な戦乱の嵐が去り、少しずつ新しい平和の歩みが始まりつつある地球のカサレリアからお送りしています。パーソナリティのウッソ・エヴィンです」

 

「こんばんは、シャクティ・カリンです。戦後、こうしてカサレリアで迎える朝は本当に穏やかですね。……隣にいるウッソが、さっきからカティスさんの物理的なプレッシャーと私のトマトに挟まれて、完全に脱出不能な防空圏に追い込まれているのを除けば、地球は今日もとっても平和なんですけれど♪」

 

「シャ、シャクティ、マイクの前で僕の戦術的敗北を暴露するのはやめてよ! ……コホン。さあ、リスナーの皆さん! 本日もカサレリア・ストレージの旧民間公衆データ端末に、通信障害を潜り抜けて鳥肌モノの暗号化パケットが届きました。連邦軍極秘アーカイブ・コードHM411737。記録されている歴史のタイトルは、機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く

 

https://syosetu.org/novel/411737/

 

です!」

 

「とあるアクシズの超電磁砲……。宇宙世紀0088年、あの激動のネオ・ジオン抗争の裏側で、指先一つで歴史を貫いた真実の記録なのね。一体どんなお話なのか、お姉様たちの戦いを知る身としては、とても興味深いわ」

 

「そうなんだよ、シャクティ! このパケットに隠されている真実の航跡は、僕たちが立っている0155年から数十年も昔、あのネオ・ジオンの拠点アクシズの内部で、とある特別な力を持った少女たちが、いかにして明日を繋ぎ止めたかという、あまりにも泥臭く、そして気高き魂の記録なんだ。さあ、今日もこの不思議なアンテナに触れて、歴史の裏側をサルベージしてみよう!」

 

シャクティが、ウッソの右手に自分の左手をそっと重ねた。

 

15歳になった二人の、穏やかで成熟しつつある精神波が、コア・ファイターの残骸から発掘されたネオ・ガンダム由来のサイコフレームへと流れ込んでいく。金属の結晶体が、蛍のように淡く、優しい虹色の輝きを放ち始めた。

 

その瞬間、二人の脳裏に、時の壁を超えた圧倒的な史実がありありと流れ込んできた。

 

「……う、うわあああっ!? な、なんだこれ! 指先から放たれる凄まじい電撃のプレッシャーと、アクシズ内部の冷たい居住区の空気が、頭の中にダイレクトに流れ込んでくる! 公式の教科書に載っているような、単なるネオ・ジオンの軍事進駐データなんてものじゃない! そこにあるのは、居住区の公園にあるベンチで、空調の手抜きに文句を言いながらジュースの空き缶を弄んでいたエルピー・プルという少女の寂しさ、そして、彼女を取り巻くあまりにも賑やかで、そして過酷な運命の輝きだ!」

 

ウッソはサイコフレームから伝わってくるあまりの感応波の重圧に、マイクの前で思わず息を呑んだ。

 

「ウッソ、大丈夫よ、私がここでしっかり支えているわ。……それにしても、なんて眩しくて、圧倒的な情報量なのかしら。ステージ裏のハンガーで、特別な式典用塗装が施されたキュベレイMk-IIのコクピットの中にいる少女の姿が視えるわ。操縦桿を握っているほうが落ち着くと呟く彼女。これはアクシズの住民たちに、強化人間の力が『平和のためにある』と示すための大事な広報任務なのね。その大舞台の裏側で、移動指揮官機のコンソールから音響システムをリンクさせるミリィ・チャイルドさんの真剣な眼差しや、隣のドックから愛のプレッシャーをこれでもかと垂れ流して背景を彩るキャラ・スーンさんのゲーマルクの姿まで……!」

 

「そうなんだよシャクティ! 僕、全身の身震いが止まらないよ! この記録の本当に凄いところは、単なるMSの火力の羅列じゃないんだ。観客席の最前列で大きく手を振るジュドー・アーシタさんの笑顔、そして、平和の広報任務という大舞台の裏側で巻き起こる、人間の泥臭くてどこか抱腹絶倒で大爆笑してしまうような、賑やかなお祭りパニックなんだよ! 誰もが武器としてしか見ていなかったバイオ・センサーの輝きを、誰かを笑顔にするための光へと変えようとする、胸がキュッとなるくらい切なくて熱いドラマが詰まっているんだ!」

 

ウッソは冷静な技術・歴史分析スイッチが完全に入り、身を乗り出してマイクに語りかける。

 

「ネタバレになるから、彼女たちの奏でる旋律や放たれる電撃が、最後にアクシズの宙にどんな奇跡を呼び起こすのかは、僕たちのモラルとして絶対に内緒だ。だけど、このパケットにアクセスすれば、宇宙世紀の激動の裏側で紡がれた、人間の純粋な温かさと、指先一つから始まる爽快な電撃ドラマに触れて、魂が激しく震えること間違いなしだよ。地球圏のすべての人に、以下のURLから直接確かめてほしいな!」

 

ウッソが熱弁を振るい、サイコフレームの虹色の光がゆっくりと収束していこうとした、まさにその刹那だった。

 

歴史のサルベージの波形が、宇宙世紀0088年のアクシズから、その数年後――かつて木星圏の暗黒をバタフライ・バスターを手に駆け抜け、そして地球圏の裏舞台で歴史の真実を紡ぎ続けてきた、ある一人の戦士の「精神の残光」を捉えた。

 

――『キンケドゥさん! 俺は……俺は死にません!』

 

その瞬間、ウッソとシャクティのニュータイプ能力の深淵に、あまりにも鮮烈で、生々しい魂の咆哮がカチリと噛み合った。二人は息を呑み、同時に自分のすぐ背後に立つ男を見上げた。

 

ブースの暗がりの中、電子タバコをくゆらせながら二人の背後に佇む構成作家、カティス・ロゥ。

いつもならガラスの向こう側にいるはずの男が、今は至近距離でその圧倒的な存在感を放っている。

 

しかし、サイコフレームが歴史の彼方から引き上げてきた、あのかつて傷つきながらも大切な人を守るために戦い抜いた少年の「精神の波紋(プレッシャー)」が、今、まさに目の前に佇むカティスの身体から、隠しきれない波動となってブワリと溢れ出していた。

 

ウッソの超一流の空間認識が、カティス・ロゥという男の「存在の輪郭」を別の形に塗り替えていく。シャクティの感応力が、そのサングラスの奥に秘められた、数々の過酷な戦いを超え、名前を捨ててまで歴史の真実を裏から支え続けてきた男の、深く、あるいは伝え聞いてきた宇宙世紀の悲劇に誰よりも深く共感し、静かに目を伏せる男のレクイエムの音色をはっきりと聴き取っていた。

 

(カティス、さん……? 違う、この人は……この精神の形は……!)

 

ウッソはマイクの前であることを忘れ、衝撃の意味を噛み締めて口を半開きにした。目の前の男こそが、かつて木星の深淵を戦い抜き、今はこのカサレリアの地で、自分たちの若い声に歴史の真実を肯定してもらうことで、自らの過酷な半生を癒やしている当事者――トビア・アロナクスその人であると、「わかって」しまったからだ。いつもならガラスで隔てられていたそのプレッシャーが、同じ部屋にいることで、より生々しく、痛烈にウッソの脳内へと叩き込まれた。

 

カティス――トビアは、二人の視線が自分に突き刺さった瞬間、すべてを察したようにサングラスの奥の目をかすかに見開いた。

 

だが、彼は何も言わなかった。ただ静かに目を伏せ、電子タバコの煙を深く吐き出す。その手元にあるスケッチブックを握る手が、ほんの少しだけ、かつて掴んだはずの鋼鉄のレバーを思い出すかのように強く、細かく震えていた。

 

彼は、自分がトビアであることを明かすつもりはない。ただの無口な構成作家として、かつて自分が命をかけて守ろうとした世界と、共に戦った者たちの航跡に深い祈りを捧げるように、静かにその胸中でかつての熱い記憶を反芻していた。

 

ウッソはゴクリと唾を飲み込み、震える声をパーソナリティのプロの顔で建て直した。

 

「……本当に、歴史の教科書には載らないけれど、確かにそこに生きた人たちの息遣いが聞こえる素晴らしい記録だったね。みんなも絶対にアクセスしてみてね!」

 

隣のシャクティもまた、カティスの静かな横顔を見つめ、その胸にある痛みに寄り添うように、慈愛に満ちた瞳で深く頷いた。

 

サイコフレームの光が完全に消え去り、コンテナの中に心地よい朝の静けさが戻ってきた。

 

すると背後のカティスが、サングラスの奥の熱い目元をそっと拭うように指先を動かしたあと、いつもの不敵な笑みを取り戻して素早くスケッチブックをめくった。自分の過去に触れ、見事に見抜いてみせた若い二人の凄まじい感応力への驚きを隠し、番組の構成作家として、指示通りにラブコメのアクセルを踏み込むプロの顔に切り替えたのだ。

 

そこには『シリアスパート完全燃焼。今回は展開のマンネリを完全に打破するため、ブース内での最終決戦に移行する。シャクティ、今もサイコフレームに重なっているウッソの手のひらを、自分の両手で絶対に離さないようにぎゅっと恋人繋ぎでロックしろ。固定用ボルトのように締め付けろ。そして、背後にいる私の存在を完全に無視して「もし私が宇宙のどこかで迷子になったら、ウッソは指先一つで新しい奇跡を起こして、私を迎えに来てくれる?」と本気の熱い瞳で迫れ。ウッソ、私のプレッシャーを跳ね除けて男を見せろ。拒否したら即座にトマトを口に押し込む』と書かれている。

 

「カ、カティスさん! だからその話は――うわっ、シャクティ!?」

 

ウッソがいつものように慌てて言い訳をしようとした、その時だった。

 

「……ねえ、ウッソ」

 

不意に、シャクティが重ねていた左手を裏返し、ウッソの右手の指の隙間に、自分の細い指をひとつずつ滑り込ませてきた。そのまま、ぎゅっと、お互いの手のひらが完全に密着するような強い力で「恋人繋ぎ」の形にロックしたのだ。背後にカティスが仁王立ちしているという、かつてない異常なシチュエーションの中で、シャクティの行動はウッソの心臓を限界まで追い詰めた。

 

15歳になった彼女の柔らかな指先の感触と、驚くほど高い体温が、ウッソの手を通してダイレクトに心臓へと伝わってくる。

 

「シャ、シャクティ……? どうしたの、これ、ただの冗談のカンペで――」

 

「冗談じゃないわ。私、少しだけ羨ましくなってしまったの」

 

シャクティは繋いだ手を絶対に離さないという強い意志を込めてさらに力を込めながら、まっすぐにウッソの目を見つめた。過酷なアクシズの空の下で、誰かのために自分の持せるすべての力を振り絞り、未来を掴み取ろうとしていた人々の記憶が、彼女の胸にあまりにも深く突き刺さってしまったのだ。

 

「ウッソは、モビルスーツに乗ったら全宇宙で一番強い戦士でしょう? さっきだって、バイオ・センサーだとか、歴史の専門話をたくさんして……。私、思い出しちゃったの。ウッソがV2ガンダムに乗って、私の手の届かない遥か高い空の上で、一人で命をかけて戦っていた時のことを!」

 

「シャクティ……」

 

「もしまた、新しい戦火が始まって、運命が私をどこか遠くの、恐ろしい暗闇のような場所に連れ去ってしまったら……。その時、ウッソは私のことを、すべてを捨ててでも助けに来てくれる? ガンダムのパイロットとしての誇りも、全部捨てて、ただの私だけの騎士になってくれる?」

 

背後からのカティスの鋭い視線。そして目の前のシャクティの、少し潤んだ真剣な瞳。ウッソは完全に挟み撃ちの形になり、硬直した。心臓のドラムロールは音響ミキサーの針を限界まで叩き割っていたが、そのヘタレな思考は、彼女の本当の、真っ直ぐな想いの前に瞬時に吹き飛んだ。

 

格好つけたいけれど、いざとなると手も握れない不器用な少年。

だけど、彼は世界で一番、シャクティ・カリンという女性を愛している男だった。

 

「……行くよ、シャクティ」

 

ウッソは顔を真っ赤に染めながら、どうしても彼女を抱きしめる勇気は出なくて、だけどシャクティの指に絡みついている自分の指に、今度は自分の方から、壊れ物を扱うように、だけど絶対に離さないという強い力を込めて握り返した。

 

「僕は、戦うために生まれてきたわけじゃない。シャクティやカサレリアの仲間たちと、この大地の温かさの中で一緒に生きるために、あの戦いを生き延びたんだ。もし誰かが君を連れ去ろうとしたり、運命が君を縛ろうとするなら、僕はいくらでも全部捨てる。カティスさんが後ろで見ていたって関係ない。宇宙のどんな果てからでも、君のその手を掴み取りにいく。約束する」

 

ウッソの、15歳特有の、少し背伸びをした、だけどこれ以上ないほど不器用で真っ直ぐな誓いの言葉。その温もりをこの繋いだ手から感じて、シャクティはゆっくりと表情を和らげた。真っ赤になりながらも真剣に自分を見つめてくれるウッソの顔をじっと見つめる。

 

「……本当に? 嘘をついたら、一生ウッソにキャベツもトマトも採ってあげないわよ?」

 

「本当だよ! だからそんなに僕を見つめないで、シャクティ。君が近くにいると、僕の全システムがオーバーヒートして機能停止しちゃうから……うわっ!」

 

あまりの緊張と恥ずかしさで慌てたウッソが、勢い余って自分の足元にあったコードに足を引っ掛け、そのままバランスを崩してシャクティのほうへと倒れ込んでしまった。

 

「きゃっ!」

 

どん、と柔らかな感触と共に、二人は狭いブースの床へと倒れ込む。ウッソの手のひらが、偶然にもシャクティの胸元へとダイレクトに押し当てられていた。

 

「うわっ、ご、ごめんシャクティ……って、あれ? な、何これ、すごく柔らかくて温かいものが僕の手のひらに……ひ、ひえええええ!?」

 

至近距離でカティスが見守る中、偶然の事故による特大のラッキースケベが発生し、ウッソの心拍数はついに限界数値を突破して脳内システムが完全ショート。顔から火が出そうなほど真っ赤になりながら悲鳴を上げた。

 

シャクティもまた、頬をポッと赤く染めながらも、どこか嬉そうにウッソを抱きすくめるように笑っている。

 

すぐ真上に立つカティス――トビア・アロナクスは、至近距離でのその光景に『これが見たかったんだよ! 物理的プレッシャー大成功!』と言わんばかりに、大爆笑しながら親指をガッと突き出し、ウッソの代わりにミキサーのフェーダーをガッと下げるト書きを見せた。お互いの正体を知りながらも、あえて口には出さない。それが、この過酷な宇宙世紀を生き抜いてきた新旧の戦士たちの、粋な黙契(ルール)だった。

 

「……それではリスナーの皆さん、またカサレリアの電波でお会いしましょう。今回紹介した真実の記録、機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く

 

https://syosetu.org/novel/411737/

 

へは、カサレリア・ストレージの暗号化パケットからいつでもアクセス可能です。それでは……」

 

「「おやすみなさい!」」

 

マイクの「ON AIR」ランプが消灯し、コンテナ内には、いつもより少し距離の縮まった二人の、静かで愛おしい息遣いと、それを満足そうに見つめるカティスの電子タバコの白い煙だけが、カサレリアの爽やかな風の中に優しく溶けていった。

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