機動戦士ガンダム ​Vガンダム戦後、15歳になったウッソとシャクティのイチャイチャ深夜ラジオ。なお、裏で冷徹にラブコメのカンペを出している怪しい構成作家は、あの木星帰りの英雄(30代)な模様   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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連邦軍極秘アーカイブHM408396・氷の深淵に灯る茨の王冠と、カサレリアの甘い恋煩い

カサレリアの朝の空気は、どこまでも澄み切っている。小鳥たちの賑やかなさえずりが、リガ・ミリティアの遺産である旧式通信コンテナの金属壁を優しく叩いていた。

 

まだ涼しさの残るブースの中で、15歳になったウッソ・エヴィンは、入念に音響ミキサーのイコライザーを調整していた。声変わりを終え、心身ともに青年へと歩みを進めつつある彼の手つきは、かつて戦場を支配した時と同じくらい精密だったが、その背中にはどこか落ち着かない緊張感が漂っている。

 

ガサリ、と防音ガラスの向こう側、副調整室(サブ)から大きな音が響いた。

 

ウッソがビクッとして見上げると、そこにはお馴染みの構成作家、カティス・ロゥが座っていた。サングラスの奥の瞳を怪しく光らせ、いつも通り電子タバコの白い煙をゆったりとくゆらせている。彼はウッソと目が合うと、不敵な笑みを浮かべ、手元の巨大なスケッチブックに太いマジックでさらさらと文字を書き殴った。

 

ドン、とガラスに叩きつけられたカンペには、こうあった。

 

『本日のオープニング・ミッション。シャクティが朝露の中で摘んできたばかりのミントの葉。その清涼なる香りを、ウッソの左耳の後ろに直接ふっと息を吹きかけながら擦り込んでもらえ。ウッソはその間、いかなる悲鳴も許されず、ただその高い体温でミントの精油を部屋中に揮発させる炉(ジェネレーター)となれ。日和った場合は、来週の台本を「ウッソの全裸おねしょ大偽史」に変更し、カサレリアの電波に乗せて全宇宙のジャンク屋へ一斉配信する』

 

「カ、カティスさん! 朝一番から一体何を言っているんですか! 僕はおねしょなんてしていませんし、そんな不名誉な偽の歴史を宇宙にバラまかれたら、僕はジャンク屋の取引ネットワークで一生の笑いものになります! 深夜ラジオの最低な悪ノリを、こんなに爽やかなカサレリアの朝空に持ち込まないでください!」

 

ウッソが顔を真っ赤にして立ち上がり、ガラスの向こうに向かって必死に抗議の声を張り上げた。

 

「あら、ウッソ。朝からカティスさんと熱いドッグファイトを展開しているのね? はい、これ、言われていた通りに摘んできたばかりのフレッシュミントよ。とってもいい香りがするわ」

 

コンテナのドアが開き、カサレリアの丘の涼しい風と共に、シャクティ・カリンが入ってきた。15歳になり、その佇まいには周囲を穏やかに包み込む聖母のような母性が宿り始めていたが、同時にウッソをからかう時の彼女には、どこか大人びた小悪魔的な余裕が漂う。

 

シャクティはクスクスと楽しそうに笑いながら、自然な動作でウッソのすぐ隣の椅子に腰掛けた。ふわり、と彼女の長い髪から、大地の瑞々しい匂いと、甘く切ない少女の香りがウッソの鼻腔をダイレクトに貫く。

 

「さあ、ウッソ。カティスさんのカンペの通りに、お耳の後ろに塗ってあげましょうか? ほら、動かないで」

 

「う、うわあぁ! シャクティ、顔が近い、近いよ! ミントの葉がどうとか言う前に、君の体温がダイレクトに伝わってきて僕のメインプロセッサーが逆流しそうなんだ! 冷却ファンが完全に機能停止して、心拍数が毎分160を突破するような機材エラーが起きてる!」

 

「ふふ、そう? でも、ウッソの耳の裏、もうこんなに熱々に沸騰しているわよ?」

 

シャクティはいたずらっぽく上目遣いで覗き込みながら、指先でウッソの耳たぶをかすめるように近づける。そのパーソナルスペースを完全に無視した無自覚な距離感ブレイカーぶりに、ウッソは直立不動のミノフスキー・フライト状態でガタガタと震えるしかなかった。

 

ガラスの向こうで、カティスが『相変わらずのヘタレめ』と言わんばかりに大袈裟に肩をすくめ、スケッチブックをめくった。今度は『本番。全宇宙のリスナーの鼓膜を震わせるプロの顔をしろ』という短い指令だ。

 

ウッソは深呼吸をして、必死にパーソナリティとしての意識をかき集め、ミキサーのフェーダーを上げた。

 

チーンとレトロなベルの音が響き、赤い「ON AIR」のランプが点灯する。手作りのアコースティックギターによる爽快なジングルが流れた。

 

「リスナーの皆さん、こんばんは。宇宙世紀0155年、過酷な戦乱の嵐が去り、少しずつ新しい平和の歩みが始まりつつある地球のカサレリアからお送りしています。パーソナリティのウッソ・エヴィンです」

 

「こんばんは、シャクティ・カリンです。戦後、こうしてカサレリアで迎える朝は本当に穏やかですね。……隣にいるウッソが、さっきから安全弁の壊れたジェネレーターみたいにガタガタとオーバーヒートしているのを除けば、地球は今日もとっても平和なんですけれど♪」

 

「シャ、シャクティ、マイクの前で僕の稼働状況を暴露するのはやめてよ! ……コホン。さあ、リスナーの皆さん! 本日もカサレリア・ストレージの旧民間公衆データ端末に、通信障害を潜り抜けて鳥肌モノの暗号化パケットが届きました。連邦軍極秘アーカイブ・コードHM408396。記録されている歴史のタイトルは、機動戦士ガンダム 木星の深淵 シロッコの亡霊とジュドー・アーシタ王王女ベルナデットの木星戦記

 

https://syosetu.org/novel/408396/

 

です!」

 

「木星の深淵……。今回は、地球から遥か遠く離れた、あの過酷な木星圏の歴史の記録なのね。シロッコの亡霊、それにジュドー・アーシタさんやベルナデットさんの名前まで入っているなんて、なんだか胸がざわざわするほど大きな歴史のうねりを感じるわ」

 

「そうなんだよ、シャクティ! このパケットに隠されている真実の航跡は、僕たちが立っている0155年から数十年も昔、あの第一次ネオ・ジオン抗争を戦い抜いたシャングリラの少年や、木星帝国の血を引く王女様たちが、冷たい漆黒の宇宙でいかにして明日を繋ぎ止めたかという、あまりにも泥臭く、そして気高き魂の記録なんだ。さあ、今日もこの不思議なアンテナに触れて、歴史の裏側をサルベージしてみよう!」

 

シャクティが、ウッソの右手に自分の左手をそっと重ねた。

 

15歳になった二人の、穏やかで成熟しつつある精神波が、コア・ファイターの残骸から発掘されたネオ・ガンダム由来のサイコフレームへと流れ込んでいく。金属の結晶体が、蛍のように淡く、優しい虹色の輝きを放ち始めた。

 

その瞬間、二人の脳裏に、時の壁を超えた圧倒的な史実がありありと流れ込んできた。

 

「……う、うわあああっ!? な、なんだこれ! 木星圏の、全身の骨が軋むような恐ろしい超重力のプレッシャーと、冷たい鉄を噛むような過酷なプラントの生活環境が、頭の中にダイレクトに流れ込んでくる! 公式の教科書に載っているような、単なる木星エネルギー公社の定期輸送データなんてものじゃない! そこにあるのは、かつての天才パプテマス・シロッコが遺したドス黒い執念の残り火、そして、ボロ布の旗を掲げて地獄の底で火を消し続けようとした人々の、凄まじい執念のドラマだ!」

 

ウッソはサイコフレームから伝わってくるあまりの重圧に、マイクの前で思わず息を呑んだ。

 

「ウッソ、大丈夫よ、私がここでしっかり支えているわ。……それにしても、なんて切なくて、圧倒的な情報量なのかしら。かつてジュドー・アーシタさんが遺していったバイオ・ドームの中で、不器用ながらも必死に葉を広げる小さな苗木……。テテニス・ドゥガチという本名を捨て、ベルナデット・ブリエットとして『茨の冠』を被り続けることを選んだ王女様の、数え切れないほどの後悔と、それでも未来を諦めない気高き指先が視えるわ。エンジェル・ハイロウの悲鳴を知る若き検体番号の少年との邂逅、そして、酸素の檻の中で狂気と戦いながら、拾った小さな石に命の価値を見出そうとする人々の息遣いが……!」

 

「そうなんだよシャクティ! 僕、全身の身震いが止まらないよ! この記録の本当に凄いところは、単なるMSの性能やスペックの羅列じゃないんだ。かつてクロスボーン・バンガードの旗の下で戦った者たちの遺言、アナハイムの思惑、そして木星の地獄の底で『仕事終わりの一杯』を願いながら、システムの稼働率を下げるバグとして切り捨てられていく底辺の労働者たちの、ルサンチマン全開の掛け合いなんだよ! 危険なガスやデブリをプロ野球のバッターみたいに弾き飛ばすような、泥臭くてどこか抱腹絶倒で大爆笑してしまうような賑やかな作業パニックがある一方で、その裏にある連邦政府のドス黒い支配構造や、見えない境界線の話には、胸がキュッとなるくらい切なくて熱いドラマが詰まっているんだ!」

 

ウッソは冷静な技術・歴史分析スイッチが完全に入り、身を乗り出してマイクに語りかける。

 

「ネタバレになるから、彼らが最後にどんな結末を迎え、いつか重力のない空でどんな答えを見つけるのかは、僕たちのモラルとして絶対に内緒だ。だけど、このパケットにアクセスすれば、宇宙世紀の最も深き深淵で紡がれた、人間の泥臭い温かさと純愛の結晶に触れて、魂が激しく震えること間違いなしだよ。地球圏のすべての人に、以下のURLから直接確かめてほしいな!」

 

ウッソが熱弁を振るい、サイコフレームの虹色の光がゆっくりと収束していこうとした、まさにその刹那だった。

 

歴史のサルベージの波形が、宇宙世紀0130年代から0140年代、木星圏の暗黒をバタフライ・バスターを手に駆け抜けていた、ある一人の少年の「精神の残光」を捉えた。

 

――『キンケドゥさん! 俺は……俺は死にません!』

 

その瞬間、ウッソとシャクティのニュータイプ能力の深淵に、あまりにも鮮烈で、生々しい魂の咆哮がカチリと噛み合った。二人は息を呑み、同時に防音ガラスの向こう側を見た。

 

サブの暗がりの中、電子タバコをくゆらせている構成作家、カティス・ロゥ。

いつも通りサングラスで目元を隠し、無言のト書きのみで番組をコントロールしているはずの男。

 

しかし、サイコフレームが歴史の彼方から引き上げてきた、あの木星で傷つき、それでもお姫様を救うためにすべてを賭けて戦い抜いた少年の「精神の波紋(プレッシャー)」が、今、まさに目の前のガラスの向こうに佇む男の身体から、隠しきれない波動となってブワリと溢れ出していた。

 

ウッソの超一流の空間認識が、カティス・ロゥという男の「存在の輪郭」を別の形に塗り替えていく。シャクティの感応力が、そのサングラスの奥に秘められた、数々の戦友たちの死を看取り、茨の冠を被るお姫様を支え続けてきた男の、深く、あまりにも重いレクイエムの音色をはっきりと聴き取っていた。

 

(カティス、さん……? 違う、この人は……この精神の形は……!)

 

ウッソはマイクの前であることを忘れ、衝撃のあまり口を半開きにした。目の前の男こそが、かつて木星の深淵を戦い抜き、今はこのカサレリアの地で、自分たちの若い声に歴史の真実を肯定してもらうことで、自らの過酷な半生を癒やしている当事者――トビア・アロナクスその人であると、「わかって」しまったのだ。

 

ガラスの向こうで、カティス――トビアは、二人の視線が自分に突き刺さった瞬間、すべてを察したようにサングラスの奥の目をかすかに見開いた。

 

だが、彼は何も言わなかった。ただ静かに目を伏せ、電子タバコの煙を深く吐き出す。その手元にあるスケッチブックを握る手が、ほんの少しだけ、かつて掴んだはずの鋼鉄のレバーを思い出すかのように強く、細かく震えていた。

 

彼は、自分がトビアであることを明かすつもりはない。ただの無口な構成作家として、かつて自分が命をかけて守ろうとした木星の王女の、そして共に戦った者たちの航跡に深い祈りを捧げるように、静かにその胸中でかつての熱い記憶を反芻していた。

 

ウッソはゴクリと唾を飲み込み、震える声をパーソナリティのプロの顔で建て直した。

 

「……本当に、歴史の教科書には載らないけれど、確かにそこに生きた人たちの息遣いが聞こえる素晴らしい記録だったね。みんなも絶対にアクセスしてみてね!」

 

隣のシャクティもまた、カティスの静かな横顔を見つめ、その胸にある痛みに寄り添うように、慈愛に満ちた瞳で深く頷いた。

 

サイコフレームの光が完全に消え去り、コンテナの中に心地よい朝の静けさが戻ってきた。

 

するとガラスの向こうで、カティスがサングラスの奥の熱い目元をそっと拭うように指先を動かしたあと、いつもの不敵な笑みを取り戻して素早くスケッチブックをめくった。自分の過去に触れ、見事に見抜いてみせた若い二人の凄まじい感応力への驚きを隠し、番組の構成作家として、そして若い2人の未来を後押しするアクセル役としてのプロの顔に切り替えたのだ。

 

そこには『シリアスパート完全燃焼。今回は命をかけてお姫様を支え続けた「戦士の執念」に対抗して、カサレリアに本気の嵐を巻き起こせ。シャクティ、今もサイコフレームに重なっているウッソの手のひらを、自分の両手で絶対に離さないようにぎゅっと恋人繋ぎでロックしろ。そして「私がどこかの深淵に沈んだら、ウッソは全部を捨ててでも助けに来てくれる?」と本気の熱い瞳で迫れ。ウッソ、脳が焼き切れて赤面しろ。拒否したら来週の台本はウッソがパーツの互換性を間違えて大赤面した事件の暴露大会にする』と書かれている。

 

「カ、カティスさん! だからその話はもういいって言ってるじゃないですか! シャクティ、今のカンペは完全に無視して――」

 

ウッソがいつものように慌てて言い訳をしようとした、その時だった。

 

「……ねえ、ウッソ」

 

不意に、シャクティが重ねていた左手を裏返し、ウッソの右手の指の隙間に、自分の細い指をひとつずつ滑り込ませてきた。そのまま、ぎゅっと、お互いの手のひらが完全に密着するような強い力で「恋人繋ぎ」の形にロックしたのだ。

 

15歳になった彼女の柔らかな指先の感触と、驚くほど高い体温が、ウッソの手を通してダイレクトに心臓へと伝わってくる。

 

「シャ、シャクティ……? どうしたの、これ、ただの冗談のカンペで――」

 

「冗談じゃないわ。私、少しだけ怖くなってしまったの」

 

シャクティは繋いだ手を絶対に離さないという強い意志を込めてさらに力を込めながら、まっすぐにウッソの目を見つめた。過酷な木星の深淵で、名前や身分を捨ててまでお互いを支え合おうとしていた人々の記憶が、彼女の胸にあまりにも深く突き刺さってしまったのだ。

 

「ウッソは、モビルスーツに乗ったら全宇宙で一番強い戦士でしょう? さっきだって、木星の技術だとか、歴史の専門話をたくさんして……。私、思い出しちゃったの。ウッソがV2ガンダムに乗って、私の手の届かない遥か高い空の上で、一人で命をかけて戦っていた時のことを!」

 

「シャクティ……」

 

「もしまた、新しい戦火が始まって、運命が私をどこか遠くの、恐ろしい木星の深淵のような場所に連れ去ってしまったら……。その時、ウッソは私のことを、すべてを捨ててでも助けに来てくれる? ガンダムのパイロットとしての誇りも、全部捨てて、ただの私だけの騎士になってくれる?」

 

「――っ!」

 

ウッソは完全に硬直した。心臓のドラムロールは音響ミキサーの針を限界まで叩き割っていたが、そのヘタレな思考は、彼女の本当の、少し潤んだ真剣な瞳の前に瞬時に吹き飛んだ。

 

格好つけたいけれど、いざとなると手も握れない不器用な少年。

だけど、彼は世界で一番、シャクティ・カリンという女性を愛している男だった。

 

「……行くよ、シャクティ」

 

ウッソは顔を真っ赤に染めながら、どうしても彼女を抱きしめる勇気は出なくて、だけどシャクティの指に絡みついている自分の指に、今度は自分の方から、壊れ物を扱うように、だけど絶対に離さないという強い力を込めて握り返した。

 

「僕は、戦うために生まれてきたわけじゃない。シャクティやカサレリアの仲間たちと、この大地の温かさの中で一緒に生きるために、あの戦いを生き延びたんだ。もし誰かが君を連れ去ろうとしたり、運命が君を縛ろうとするなら、僕はいくらでも全部捨てる。宇宙のどんな果てからでも、君のその手を掴み取りにいく。約束する」

 

ウッソの、15歳特有の、少し背伸びをした、だけどこれ以上ないほど不器用で真っ直ぐな誓いの言葉。その温もりをこの繋いだ手から感じて、シャクティはゆっくりと表情を和らげた。真っ赤になりながらも真剣に自分を見つめてくれるウッソの顔をじっと見つめる。

 

「……本当に? 嘘をついたら、一生ウッソにミントを摘んであげないわよ?」

 

「本当だよ! だからそんなに僕を見つめないで、シャクティ。君が近くにいると、僕の全システムがオーバーヒートして機能停止しちゃうから……うわっ!」

 

慌てたウッソが勢い余ってマイクスタンドに足を引っ掛け、そのままバランスを崩してシャクティのほうへと倒れ込んでしまった。

 

「きゃっ(!)」

 

どん、と柔らかな感触と共に、二人は床へと倒れ込む。ウッソの手のひらが、偶然にもシャクティの胸元へとダイレクトに押し当てられていた。

 

「うわっ、ご、ごめんシャクティ……って、あれ? な、何これ、すごく柔らかくて温かいものが僕の手のひらに……ひ、ひえええええ!?」

 

偶然の事故による特大のラッキースケベが発生し、ウッソの心拍数はついに限界数値を突破して脳内システムが完全ショート。顔から火が出そうなほど真っ赤になりながら悲鳴を上げた。

 

シャクティもまた、頬をポッと赤く染めながらも、どこか嬉しそうにウッソを抱きすくめるように笑っている。

 

ガラスの向こうで、カティス――トビア・アロナクスは『これが見たかったんだよ!』と言わんばかりに、大爆笑しながら親指をガッと突き出し、完璧なタイミングでフェーダーを下げるジェスチャーを送る。お互いの正体を知りながらも、あえて口には出さない。それが、この過酷な宇宙世紀を生き抜いてきた新旧の戦士たちの、粋な黙契(ルール)だった。

 

「……それではリスナーの皆さん、またカサレリアの電波でお会いしましょう。今回紹介した真実の記録、機動戦士ガンダム 木星の深淵 シロッコの亡霊とジュドー・アーシタ王女ベルナデットの木星戦記

 

https://syosetu.org/novel/408396/

 

へは、カサレリア・ストレージの暗号化パケットからいつでもアクセス可能です。それでは……」

 

「「おやすみなさい!」」

 

マイクの「ON AIR」ランプが消灯し、コンテナ内には、いつもより少し距離の縮まった二人の、静かで愛おしい息遣いと、カサレリアのどこまでも爽やかでキュンキュンする風の音だけが、いつまでも優しく響いていた。

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