機動戦士ガンダム ​Vガンダム戦後、15歳になったウッソとシャクティのイチャイチャ深夜ラジオ。なお、裏で冷徹にラブコメのカンペを出している怪しい構成作家は、あの木星帰りの英雄(30代)な模様   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

20 / 26
重力のない声、逃げられない日常 ―サイド7の残響とUC0010の現実―

朝露に濡れた草の海を渡る風が、カサレリアの小さな放送ブースの窓を優しく叩いていた。木製の机の上では、古びたミキサーのメーターが、まだ眠たげにゆらゆらと揺れている。

 

ウッソは、その針の動きを見つめながら、端末から受信したばかりのデータパケットを慎重に展開していた。

 

「……すごいな。こんなに圧縮されてるのに、ちゃんと復元できるんだ」

 

呟いた声は、少し低くなった。声変わりを終えたそれは、少年と青年の境界にいる証のようでもある。

 

その背後から、ふわりと香る草花の匂い。

 

「ウッソ、あまり難しい顔してると、リスナーに怖がられちゃうわよ?」

 

シャクティが、いつの間にかすぐ隣に立っていた。肩と肩の距離は、ほとんどゼロに近い。

 

「うわっ……え、ちょ、シャクティ、近いよ……!」

 

思わずミキサーに肘をぶつけ、レベルメーターが一瞬跳ね上がる。心拍数と同期するかのように、針が震えた。

 

「今の、完全にクリッピングしてるよ……僕の心臓が……!」

 

「ふふ、じゃあ少し調整してあげるわね」

 

そう言って、シャクティは自然すぎる動作でウッソの肩に手を添えた。逃げ場はない。

 

(抱きしめろ。男なら行け)

 

ガラス越し、カティスがゆっくりとスケッチブックを掲げる。無表情のまま、親指をぐっと立てた。

 

「だから無理ですって!!」

 

ウッソは小声で絶叫した。

 

「何が無理なの?」

 

「な、なんでもない、なんでもないよ!さあ、放送に入ろう!」

 

強引にスイッチを入れる。

カサレリア・リミテッド・レディオ、本日の放送が始まった。

 

軽いオープニングトークを終えた後、ウッソはデータパケットの一つを選び、慎重に読み上げる。

 

「今日の活動報告は……ちょっと特別だよ。完全に別の時代のものなのに、奇妙に繋がっているんだ」

 

シャクティが静かに頷き、彼の隣でサイコフレームに手を伸ばす。

虹色の光が、二人を包み込んだ。

 

視界の中に浮かび上がるのは、宇宙世紀0079。

サイド7の閉ざされた空間。警報音。誰かの息遣い。

 

「これは……連邦軍極秘アーカイブ・コード:HM編0079-S7……」

 

ウッソの声が震える。

 

「“受信機”。でも、ただの機械じゃない……これは、人の意識そのものを拾ってたんだよね……!」

 

戦場の記録の裏側で、確かに存在していたもう一つの声。公式には残されていない、しかし確実にあった“兆候”。

 

「隣にいるのに、届かない声……」

 

シャクティの瞳が揺れる。

 

「でも、それがあったから、未来に繋がったのよね……」

 

場面が跳ぶ。

次に現れたのは、宇宙世紀0010。

静かなオフィス。書類。端末。疲れ切った人々。

 

「……これが、宇宙世紀の初期だったんだよね……」

 

ウッソは息を呑む。

 

「旧連邦基幹データ・識別名:UC0010-LB……“住宅ローン”……」

 

そこには、戦場ではない別の重力が存在していた。

制度、生活、責任。

逃げられない現実。

 

「戦いじゃないのに……こんなに苦しいなんて……」

 

 

「でも、繋がってるのよ」

 

シャクティが優しく言う。

 

「さっきの声が、ここで形になってる。埋もれていたものが、日常になったの」

 

ウッソは静かに目を閉じた。

 

「戦場だけが、宇宙世紀じゃないんだよね……」

 

光が消える。

気が付けば、またカサレリアの放送ブースだった。

 

「……すごい活動報告だったね」

 

ウッソはマイクに向かって語る。

 

「あの二つは直接の続きじゃない。でも、確実に同じ世界の中にあった」

 

シャクティも頷く。

 

「見えなかったものが、少しずつ形になっていく。それが、歴史なのかもしれないわね」

そしてふっと、彼女が距離を縮めた。

 

「ウッソ」

 

「え?」

 

「私たちも、その一部なのよ?」

 

顔が、近い。近すぎる。

 

「い、いや、ちょっと、それは距離が近いっていうか」

 

「ドキドキしてるわね」

 

「してないよ!!してないってば!!」

 

ミキサーの針は完全に振り切れていた。

 

(今だ。キスしろ)

 

カティスのカンペ。

 

「できるかーーー!!」

 

ウッソの悲鳴がブースに響く。

シャクティは楽しそうに笑った。

 

「ふふ、ほんとにウッソは変わらないわね」

 

「シャクティが変わりすぎなんだよ……!」

 

「そうかしら?」

 

 首を傾げ、そのまま肩に頭を預けてくる。

 

「……っ!」

 

完全に限界突破。

 

 

「本日の記録、いかがだったでしょうか」

 

ウッソは必死に平静を装う。

 

「皆さんからのデータパケット、引き続きお待ちしています」

 

シャクティが優しく続ける。

 

「宛先は、カサレリア・ストレージ。暗号化して送ってくださいね」

 

「それじゃあ、今日紹介した活動報告へのリンクも残しておくよ」

 

ウッソが端末を操作する。

 

― 二作品が一本の宇宙世紀史として繋がるということ ―

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=341087&uid=504230

 

「次に繋がる声を、僕たちは待ってる」

 

「あなたの“記録”、聞かせてほしいわ」

 

窓の外、吹き抜ける風が草を揺らす。

戦いも、日常も、その中に溶け込んでいく。

 

そしてブースの中では、まだ一人の少年の心拍数だけが、収まる気配を見せていなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。