機動戦士ガンダム ​Vガンダム戦後、15歳になったウッソとシャクティのイチャイチャ深夜ラジオ。なお、裏で冷徹にラブコメのカンペを出している怪しい構成作家は、あの木星帰りの英雄(30代)な模様   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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連邦軍極秘アーカイブHM409498・追憶の雨音と硝煙に溶ける双星の円舞曲

カサレリアの朝は早い。小鳥のさえずりが、かつて戦火の拠点となったリガ・ミリティアの通信コンテナへと静かに染み込んでいく。

 

まだ肌寒さの残る室内で、ウッソ・エヴィンは手作りの木製デスクに座り、古い音響ミキサーの基盤に溜まった微細な塵を、専用の細いブラシで丁寧に取り除いていた。15歳になり、少しだけ大きくなった手が、精密機械の繊細なツマミの感触に馴染んでいる。

 

ガサリ、とブースの向こうの副調整室(サブ)で音がした。

 

見上げると、サングラスをかけた構成作家のカティス・ロゥが、すでに椅子に深く腰掛け、怪しい電子タバコをくゆらせている。彼はウッソの視線に気づくと、不敵な笑みを浮かべ、手元のスケッチブックにさらさらと文字を書き殴った。

 

バッとガラスに貼り付けられたそのカンペには、太い黒マジックでこうあった。

 

『本日のオープニング・ミッション。シャクティが持ってきたリガ・ミリティアの遺品。その錆びついた通信機用ヘッドセットを、ウッソの指先で彼女の髪に引っかからないよう極めて繊細に装着せよ。その際、彼女の耳元に触れ合う時間がジャスト3秒を上回った場合、その熱量を熱伝導シミュレートとみなし心拍数カウンターを起動する。日和った場合は来週から水着回、あるいはカサレリアのアンテナ鉄塔をすべて対空レーザーで一瞬にして巨大なひまわり風車にする』

 

「カ、カティスさん! 朝から遺品のヘッドセットで何を計測させているんですか! 僕たちの貴重な通信アンテナを勝手にひまわり風車に改造しないでください! 僕は至って健全な15歳です! 深夜ラジオの最低な悪ノリをカサレリアの清々しい朝空に持ち込まないで!」

 

ウッソは思わず立ち上がり、マイクも入っていないガラスに向かって声を張り上げた。朝の機材整備の手伝いにと、古いパーツボックスを両手で抱えて、カサレリアの丘に広がる朝霧を髪にまとわせながら入ってきたシャクティが、ちょうどコンテナの扉を開けて入ってきたのは、まさにその瞬間のことだった。

 

「あら、ウッソ、朝からカティスさんと熱いドッグファイトをしているのね? はい、これ、倉庫のコンテナから見つけてきた古い通信パーツよ。……って、どうしてそんなに私の耳元を泥棒みたいにコソコソ見つめているの?」

 

シャクティが不思議そうに首を傾げると、コンテナのドアから吹き込んだ冷風が、彼女のロングスカートの裾をほんの少しだけふわりと揺らした。抱えたボックスから漂うレトロなオイルの匂いと彼女自身の髪の香りが狭いコンテナの空気に混ざり合い、ウッソの脳内センサーは瞬時にメガ粒子砲の直撃を受けたかのように完全パニックに切り替わる。

 

「あ、いや、なんでもないんだ、シャクティ! 機材の、その、メインプロセッサーが逆流して僕の冷却ファンがおかしくなっていて! つまりヘッドセットの、いや、心拍数のオーバーヒート対策の話を!」

 

「ふふ、そう? でも、ウッソの顔、その錆びついた通信機のインジケーターよりも真っ赤に沸騰しているわよ?」

 

シャクティはクスクスと楽しそうに笑いながら、自然な動作でウッソの隣の椅子に腰掛けた。ふわり、と距離が近づく。15歳になった彼女の柔らかな体温がダイレクトに伝わってくる距離に、ウッソは座ったまま背筋をピンと直立不動のミノフスキー・フライト状態にするしかなかった。

 

ガラスの向こうで、カティスが『相変わらずのヘタレ童貞め』と言わんばかりに、大袈裟に肩をすくめてカンペをめくった。今度は『本番。全宇宙のリスナーの鼓膜を震わせるプロの顔をしろ』という、短い指令が書かれている。

 

ウッソは小さく息を吐き、パーソナリティとしての意識をかき集めてミキサーのフェーダーを上げた。

 

レトロなベルの音がチーンと響き、赤い「ON AIR」のインジケーターが点灯する。

 

手作りのアコースティックギターのジングルが、カサレリアの爽やかな風のように流れた。

 

「リスナーの皆さん、こんばんは。宇宙世紀0155年、少しずつ戦後の新しい歩みが始まりつつある地球のカサレリアからお送りしています。パーソナリティのウッソ・エヴィンです」

 

「こんばんは、シャクティ・カリンです。戦後、こうしてカサレリアで迎える朝は本当に穏やかですね。……隣にいるウッソが、さっきからリミッターの外れたジェネレーターみたいにガタガタ震えているのを除けば、地球は今日もとっても平和なんですけれど♪」

 

「シャ、シャクティ、マイクの前で僕の稼働状況を暴露するのやめてよ! ……コホン。さあ、リスナーの皆さん! 本日もカサレリア・ストレージの旧民間公衆データ端末に、全宇宙のジャンク屋経由で鳥肌モノの暗号化パケットが届きました。連邦軍極秘アーカイブ・コードHM409498。記録されている本物の歴史のタイトルは、機動戦士ガンダム ミハルの遺児たちは、閉ざされた部屋で心中を誓う カイ・シデンへの復讐と、透明な禁忌に溶ける僕たちの宇宙世紀

 

https://syosetu.org/novel/409498/

 

です!」

 

「あら……ミハルさんの遺児たち、ですって? あの、一年戦争の時にカイ・シデンさんと出会って、大空に散っていったという、あの方の遺された子供たちの記録なのね。それにしても『閉ざされた部屋で心中を誓う』だなんて、なんだか朝からすっごく、ただ事じゃない雰囲気が漂うタイトルね?」

 

「そうなんだよ、シャクティ! このパケット、僕も最初は歴史のシリアスなドキュメンタリーだと思って読み始めたんだけど、中身を開けてみたらもう、頭がひっくり返るくらいドロドロで生々しい、とんでもない禁断の人間ドラマだったんだ! 舞台は僕たちが立っている宇宙世紀0155年から数えて70年以上も昔、宇宙世紀0093年。あのアムロ・レイとシャア・アズナブルがアクシズで戦っていた、まさにその裏側なんだけど……描かれているのは世界の救済なんかじゃなくて、ダブリンの閉ざされた部屋に引きこもった、血の繋がった姉弟の息が詰まるようなお話なんだよ!」

 

「ええっ? 姉弟の、閉ざされた部屋でのお話……? それって、どういうことかしら、ウッソ」

 

「このサイコフレームに手を重ねて視えてくる真実に、地球圏の誰もが綺麗事の裏に隠してきた、人間のドロドロとした生々しい本能の記録が眠っているんだ。さあ、今日もこの不思議なアンテナに触れて、ちょっと裏側のディープな歴史をのぞき見してみましょう!」

 

シャクティが、ウッソの右手に自分の左手をそっと重ねた。

 

15歳になった二人の精神波がサイコフレームの結晶へと伝わっていく。金属の塊が、蛍のように淡く、どこか妖しげな虹色の輝きを放ち始めた。

 

その瞬間、二人の脳裏に、時の壁を超えた生々しい人間の情動がありありと流れ込んできた。

 

「……う、うわあああっ!? な、なんだこれ! 頭の奥に流れ込んでくる感情の密度が、今までと全然違うよ! ベルファストの冷たい雨の音の向こうで、13年間ずっと世界への恨みを募らせてきた姉弟が、お互いの身体と心を貪り合うようにして、泥のような愛欲に溺れていく気配がダイレクトに伝わってくる! 宇宙世紀0093年のダブリンの密室で、二人が倫理も理性も全部投げ捨てて、お互いだけを求めてドロドロに混ざり合っているんだ!」

 

ウッソはサイコフレームから伝わってくるあまりに生々しい背徳感のプレッシャーに、マイクの前で顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 

「ウッソ、落ち着いて……って、ひゃあ!? な、なんて生々しい情報量なのかしら。宇宙世紀0079年のあの戦火で姉のミハルさんを失ってから、連邦の軍靴の音に怯え、管理されてきた二人の歪んだ成長の足跡が視えるわ。実際に物理的な死を選んで心中したかどうかなんて、そんなことすら些細に思えるくらい、この部屋の中で二人が紡いでいる関係はもっと淫らで、退廃的で、だけど絶対に離れられない底なしの沼のようになっているのね。人類がサイコフレームの美しい虹の光に目を奪われていたその裏側で、公式記録から抹消されたベッドの上、透明な禁忌に身を浸しながら、かつての英雄カイ・シデンへの凄まじい執着と妄執を燃やしている……!」

 

「そうなんだよシャクティ! 僕、別の意味で全身の身震いが止まらないよ! 教科書では、宇宙世紀0093年は人類の革新だとか、美しい奇跡の光の年としてロジカルに片付けられているけど、現実はそんな綺麗事だけじゃないんだ! この記録の本当にゾクゾクするところは、世界がどれだけ激動しようが知ったことかと言わんばかりに、閉ざされた部屋の中で、13年越しの絶望をお互いの肌の温もりだけで塗りつぶそうとする二人の、息が詰まるほど濃密な愛執のドラマなんだよ! 型式番号RGM-89ジェガンの重厚な駆動音が外で日常を管理しているからこそ、その断絶された箱庭の中で、不義の彼方へとログインしていく二人の生々しい吐息が、いやにリアルに響いてくるんだ!」

 

ウッソは15歳男子としての本能がパニックを起こしつつも、その面白さに身を乗り出してマイクに語りかける。

 

「僕が一番ひっくり返りそうになったのは、このドロドロに歪みきった愛の形のまま、物語が宇宙世紀0093年のあの冬の星空の夜へと突き進んでいくところだよ! カイ・シデンへの復讐という大義名分を抱えながら、その実、お互いの存在なしでは一歩も動けなくなっている姉弟の、甘やかで恐ろしい共依存の結末……! まさか自分たちが立っている宇宙世紀0155年から数えて何十年も昔に、こんなにもドロドロで、だけど一度読み始めたら絶対に目が離せなくなるような、極上の禁断サスペンスがあったなんて……本当に別の意味で鳥肌が止まらないよ!」

 

ウッソの熱弁は止まらない。ガラスの向こうでは、構成作家のカティスがサングラスを激しく歪ませ、電子タバコの煙をこれでもかと吹き出しながら、大爆笑して机を何度も激しく叩いていた。彼自身、かつて宇宙世紀の綺麗も汚いもすべて見てきた男だからこそ、この記録に刻まれた「世界なんてどうでもいい、お前だけがいればいい」という人間の剥き出しのドロドロとした本音が、不謹慎ながらも面白くて仕方がなかったのだろう。

 

「ウッソ、あまりの生々しさにマイクのレベルメーターが完全にオーバーヒートして踊っているわよ。でも確かに、この『機動戦士ガンダム ミハルの遺児たちは、閉ざされた部屋で心中を誓う カイ・シデンへの復讐と、透明な禁忌に溶ける僕たちの宇宙世紀』をサルベージしていると、ただお互いの歪んだ欲望と絶望のすべてをぶつけ合って超越していった人々の、人間の泥臭い本能に圧倒されてしまうわね」

 

「うん、その通りだね、シャクティ! 歴史の表舞台からは完全に隠蔽された、だけどこれ以上なく生々しく生きていた人間たちの物語。具体的な二人の関係の行く末や、ダブリンの部屋の向こうに待つ衝撃の結末は、これを受信した僕たちのモラルとして、これ以上のガッツリとしたネタバレは封印する。だけど、このパケットにアクセスすれば、宇宙世紀の隠された一番ディープでゾクゾクする裏側に触れて、魂が激しく震えること間違いなしだよ!」

 

ウッソが興奮冷めやらぬ様子で締めくくると、サイコフレームの虹色の光が、ゆっくりと収束していった。頭の中に流れていた、濃密なベッドの軋みや、ジェガンの駆動音、そして妖しげな愛欲の気配が、静かにカサレリアの現実に溶けて消えていった。

 

コンテナの中に、心地よい朝の静けさが戻ってきた。

 

するとガラスの向こうで、カティスがニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、素早くスケッチブックをめくった。

そこには『シリアスパート完全燃焼。今回は歴史の裏でお互いのすべてを貪り合った「禁断の共依存」に対抗して、カサレリアに本気の嵐を巻き起こせ。シャクティ、今もサイコフレームから手を離したあと、ウッソの頬に付いたブラシの毛を優しく指先で取り除きながら、そのまま彼のパーソナルスペースを完全にゼロにして耳元で囁け。「ねえウッソ、私たちも血は繋がっていないけれど、この閉ざされたコンテナの中で、世界を全部忘れて泥のようにドロドロに混ざり合ってみる……?」と本気の妖しい吐息で迫れ。ウッソ、全思考回路をジャミングされて赤面大爆発しろ。拒否したら来週の台本はウッソがマルチプル・モビルスーツのコア・ファイター換装時に操作を間違えて赤面した事件の暴露大会にする』と書かれている。

 

「カ、カティスさん! だからその話はもういいって言ってるじゃないですか! シャクティ、今のカンペはいつも以上に最低だから絶対に無視して――」

 

ウッソがいつものように慌てて言い訳をしようとした、その時だった。

 

「……ねえ、ウッソ」

 

不意に、シャクティが椅子の位置をスッと近づけてきた。いつもならカティスのカンペを見て「ふふ、どうする? ウッソ」と余裕の笑みを浮かべる彼女が、今はなぜか、さっきのドロドロした記録の余韻に当てられたかのように、潤んだ瞳でウッソの顔を覗き込んできたのだ。そして、その細い指先をウッソの頬へとそっと伸ばしてきた。

 

指先が頬に触れる。15歳になった彼女の柔らかなタッチと、驚くほど高い体温が、ウッソの肌を通してダイレクトに心臓へと伝わってくる。

 

「シャ、シャクティ……? どうしたの、これ、ただの冗談のカンペで――」

 

「冗談じゃないわ。私、さっきの記録を見ていたら、なんだか頭がぼんやりしてきちゃって……」

 

シャクティはウッソの頬に触れた指先をそのままに、彼のパーソナルスペースを完全にゼロにするまで顔を近づけた。彼女の長い髪がウッソの肩にハラリとかかり、甘い髪の香りがウッソの鼻腔を容赦なく突き刺す。彼女はそのまま、ウッソの耳元に唇が触れそうなほどの至近距離で、そっと妖しく囁いた。

 

「ウッソ、私たちも血は繋がっていないけれど……この誰も来ない閉ざされたコンテナの中で、世界の戦いも、リガ・ミリティアのことも全部忘れて、あの姉弟みたいに、二人だけで泥のようにドロドロに混ざり合ってみる……?」

 

「――っ!!!???」

 

ウッソの脳内ジェネレーターは瞬時に臨界点を突破し、全システムが爆発四散した。顔面はトマトを遥かに通り越して真っ赤に沸騰し、心臓のドラムロールは音響ミキサーの針を限界まで叩き割って火花を散らしている。

 

「しゃ、しゃしゃしゃ、シャクティ!? 何を言っているんだよ! 混ざり合うって何!? 泥って何!? 僕たちのメインプロセッサーは至って健全で、出力4890キロワットどころか、僕の心拍数が合計15530キログラムの推力で宇宙まで飛んでいっちゃいそうだよ! 僕は健全な15歳男子なんだから、そんな誘惑をされたら、僕のバイオ・コンピュータがバグを起こして完全に動作停止しちゃうよ!」

 

ウッソは直立不動のまま、手をどこに置いていいかわからず、カタカタと全身を震わせて大パニックを起こした。

 

そのあまりのヘタレ具合と、期待通りの大爆発っぷりを見て、シャクティはついに堪えきれず、クスッと悪戯っぽく笑った。

 

「ふふ、冗談よ、ウッソ。そんなにリミッターの外れた顔をしなくてもいいのに。でも、ウッソがそうやって私の言葉に本気で狼狽えてくれるの、なんだかちょっと嬉しいわ♪」

 

シャクティは頬を赤く染めながらも、ウッソをからかうのが楽しくて仕方ががないといった様子で、さらにぴったりと彼の肩に身体を寄せた。

 

ガラスの向こうで、カティスが『これが見たかったんだよ! 最高のラブコメだな!』と言わんばかりに、大爆笑しながら親指をガッと突き出し、完璧なタイミングでフェーダーを下げるジェスチャーを送る。

 

「……そ、それではリスナーの皆さん、またカサレリアの電波でお会いしましょう。今回紹介したディープで禁断の真実の記録、機動戦士ガンダム ミハルの遺児たちは、閉ざされた部屋で心中を誓う カイ・シデンへの復讐と、透明な禁忌に溶ける僕たちの宇宙世紀

 

https://syosetu.org/novel/409498/

 

へは、カサレリア・ストレージの暗号化パケットからいつでもアクセス可能です。それでは……」

 

「「おやすみなさい!」」

 

マイクの「ON AIR」ランプが消灯し、コンテナ内には、いつもより少し距離の縮まった二人の、静かで愛おしい息遣いと、カサレリアのどこまでも爽やかでキュンキュンする風の音だけが、いつまでも優しく響いていた。

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