通りすがりの美人に地図を貰った。   作:通りすがりの匿名さん

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とある一般大学生の場合

 俺は普通の大学生。地元の大学に進学し、子供の頃から何となく馴染みのあった地元のウミウシ信仰をテーマに研究している。

 研究なんて言っても、図書館で書籍を漁ってみたり子供の頃から知ってる爺さん婆さんのとこに行って話を聞いてみたり、フィールドワークと称して遊び回っているだけだ。

 それでも意外と調べてみると面白くて、ウミウシの絵の特徴が統一されてたり、意外と歴史が古そうだったりして割とこの研究にのめり込んでいた。

 

 ある日、ゼミで研究途中の結果を発表していると、知らない美人がやって来た。

 ロボット工学とかを研究している学者らしい。文系の大学になんでって思ったけど、聞いてみると今日はうちの大学にいる知り合いに会いに来たそうで、そのついでに聞こえてきた俺の研究が気になったらしい。

 彼女はメモ帳に簡易的な地図を書くと俺に渡した。

 

「あなたの研究に役に立つかも。頑張ってね」

 

 

 

 

 そうして美人にホイホイ乗せられた俺は、地図の場所へとやって来ていた。

 地元の山の奥。子供の頃に何度か遊びに来たことのある場所だ。

 地図によると、3つの出っ張りのある岩と、丸い大きな岩の間くらいに横穴がある……らしい。そんなものあったか?

 そう思いながら探索していると、目印となる岩を見つけた。けど、横穴なんて無かった。

無駄足かと、山の斜面に腰を降ろす。

 どうやら、美人にすっかりからかわれたらしい。

 

「……?」

 

 座った斜面の感触に違和感がある。なんか、妙にふかふかな土だった。

 

 まさか。

 

 試しに掘ってみる。

 最初はその辺に落ちていた木で、次に折りたたみのスコップで。

 

 掘ってみる。

 掘ってみる。

 掘ってみる。

 

「……マジか」

 

 横穴が出て来た。

 人ひとりが通れるくらいの穴が、土壁で人為的に塞がれていた。

 

 スマホでライトを付けてゆっくりと中に入る。

 カチャ、と足元から音がした。

 下にスマホのライトを向けて見れば、土器の破片らしき物が落ちていた。

 そこそこ真面目に講義を受けていたから、何となく分かる。土器……それも縄目の模様が付いている褐色の土器。縄文土器の可能性が高い。

 ゆっくりと、慎重に中を進む。

 

「嘘だろ……」

 

 古代日本の祭祀場跡が、そこにはあった。

 

 

 

 スマホで写真を撮りまくる。

 壁も、天井も、床も、全部。

 土の中にあったおかげか、風化がほとんど無い。朽ちた木らしき物も、祭壇のような形にしているのが分かる程度には残っている。

 

「……あれ?」

 

 壁に描かれてる絵……あれって地元のウミウシ信仰を調べてる時に見た絵と同じじゃね?

まさかと思ってスマホの写真フォルダを開いて見比べる。

 まったく同じ……ではない。けど、限りなく近い。と言うか、この壁の絵がルーツかもしれない。直感的にそう思った。

 

「ヤバい。とんでもねぇ大発見だ……!」

 

 興奮を押さえつけながら祭祀場を出る。

 振り返って神社でするみたいに手を出せて祈る。

 

 

 突然お邪魔してすみませんでした。でも、ここに調べさせてください!

 

 

 古代日本と現実の神道じゃ信仰も祈り方も違うだろうけど、祈る気持ちは一緒のはずだ。

 心臓の鼓動がめちゃくちゃ早い。場所を事細かに記録する。

 とにかく、早くこの場所を調べたい。教授にも協力してもらって、あの人にも――

 

 

 あれ?なんであの人、この場所の事を知ってたんだ?

 

 

 

 

 翌日。朝一でゼミの教授に写真を見てもらった。

 

「今すぐ行くぞ。案内を頼む」

 

 写真を見た瞬間、教授は目の色を変えた。

 今日の予定をすべてキャンセルして、講義も休講にして、同じ大学の考古学を教えている教授にも声をかけるや、学生の俺1人、教授3人の即席チームで祭祀場跡を調査する。

 

 大の大人が揃いも揃って目を輝かせ、「嘘だろ!?」「こんなんありか!?」「うわー!」「やばいやばいやばい!」と口々に言いまくる調査は中々面白かった。

 

 教授たちとの簡易調査の結果、この遺跡は縄文時代前期。約8,000〜7,500年前のものと推定された。

 状態の良いものがたくさん発見され、教授たちの働きもあって1ヶ月と経たない内に本格的な発掘調査チームが組まれ、俺もその一員として携わる事になるのだった。

 

 

 

 

 あれよあれよという間に時は経ち、俺は大学院生になっていた。

 卒論さえ書けりゃ良いやと思って手近な地元の土着信仰であるウミウシ信仰について研究していたら、そのルーツが縄文時代にある可能性が高いという結果が出たのだ。適当に遊ぶつもりだった大学生活は、研究一色になっていた。

 あの遺跡を発見したおかげで、地元は大いに盛り上がった。人も増え、一気に活気付いた。町おこしも大成功だ。

 

 あれから、あの美人の先生には会えていない。

 何故あの場所を知っていたのか、聞きたいことは山程あった。だけど、あの人はとても忙しい身で、学生でしかない俺に会う暇なんて無いだろう。

 テレビに目を向ければ、今日もあの美人はニュースのトップを飾っている。半年ぶりのブレイクスルーを起こし、ロボット工学や医療業界に何度目かの革命を起こしていた。

 

「先輩、うちのゼミ宛に手紙が届いてるんすけど、どうしますか?」

「んぉー、俺が見とくわ」

「先輩また大学に泊まったんすか?ちゃんと帰ってます?」

「あー、臭うか」

「先輩、今やうちの大学の顔なんすから、ちゃんとしてくださいよ」

「へいへい。手紙あんがとな」

 

 後輩から受け取った手紙を確認する。

 封筒の差出人は「酒寄彩葉」。

 

「……は?」

 

 中身は、一枚の地図だった。

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