────僕は、ゆっくりと目を閉じた。
金属とは思えない程柔らかい感触、暖かな日差し。
意識が途切れてなお続く感覚に身を委ねる。
「………おやすみ、アイギス」
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「ちょっと、起きなさいよ!こんなとこで寝てたら喰われるわよ!」
聞き馴染みのない声がした。
甲高く、そして煩い声。
今まで感じていた心地よさはなく、ガチガチの石と夜の冷たい風に不快感を覚えた。
堪らず眼を覚ますと、そこには自分の背丈の半分程の小人達が二人、見慣れた景色の中に立っていた。
「……………なにこれ」
辺りを見回してみると、例の棺桶に緑がかかった夜の闇。
「……影時間」
その景色は間違いなく影時間のものだった。
しかし、ニュクスは既に僕が封印したはず…再びそれが起こるなんてことはあり得ない。
そんなことを考えていると、片方の小人が気怠げに口を開く。
「ネル、こいつ寝惚けてるの?」
やたら豪華な服装をした小人は手にしていた杖をこちらに向けて、もう片方のネルと呼ばれたシスター風の服装をした小人に悪態をついた。
いくら余所者相手とはいえあんまりだろう。
最悪のファーストコンタクトだ。
せめてもう片方はまともであることを祈るばかり。
「そう仰らないでください」
「いきなり“0時過ぎの世界“に飛ばされて気が動転しているのでしょう」
「……0時過ぎ…?」
彼女はおそらくまともなのか…?
しかし、彼女が今言ったことはそのままの意味で捉えるとするならば、時計が午後の12時を過ぎた頃に飛ばされる世界といったところだろうか。
疑いは確信へと変わる。
念の為ポケットを探ってみると、S.E.E.S.制式召喚器がきちんと入っていた。
一先ずは安心だ。
シャドウと戦える。
彼女達を守ることができる。
「あなた、よく見るとデカいわね…」
「はっ…!もしかしてあなた、シャドウ!?」
「……え?」
ただ立ち上がっただけでデカいと言われ、理解が追いつかなかった。
一応標準サイズのはずの僕がデカいとすると、この世界ではそれよりも標準が小さいことになるだろう。
それと関係があるのか、ネルがこちらを見て何かを考えている。
「いえ、もしかしたら………」
ガシャーン グォォォォォォォオオオ
そのときだった、仮面を着けた超大型の怪物──ボス級のシャドウだ。
「きゃー!シャドウだ、シャドウが出たわ!」
「ひ、ひとまず逃げるわよ!ネル!」
「そうですね…そこの方も急いでください」
そそくさと逃げていく二人を背に、僕は召喚器を構える。
「……やろうか」
こめかみに当てて、引き金に指をかける。
「何をなさっているのですか!早くお逃げください!」
ネルを無視して引き金を引いた。
「……ペ、ル、ソ、ナ」
小さく呟いた。
そして青い光と共に現れる青い吟遊詩人──〝オルフェウス〟
「あれは…!?」
「なになに?何が起きてるの!」
狼狽える二人をよそに自身のペルソナを操作してシャドウと交戦する。
「アギ!」
炎を飛ばしながら竪琴で殴る、ただそれだけで圧していた。
迫り来るシャドウの攻撃を掻い潜り、一方的に攻撃を加えていく。
「す、すごい…!」
悪態をついていた小人も感心したのか食い入るようにオルフェウスの戦いぶりを見ていた。
そして最後の一撃がシャドウの仮面を打つ。
「……よし」
シャドウは黒く液体の如く溶けて地面に染み込むように消えていった。
手応えを感じないが、あの程度でも昔なら単独での撃破は不可能だっただろう。
「……僕も強くなったのかな」
一人呟く。
感慨に耽っていると、後ろで見ていた二人が駆け寄ってきた。
「あなた、やるわね!シャドウを倒しちゃうなんて!」
悪態をついてこちらをただの面倒事のように見ていた小人が、今度はヒーローを見る子供のような輝く眼でこちらを見つめている。
いや、そんなことはどうでもいい。
それよりもネルだ。
少し離れたところで何やら独り言を呟いているようだが………
「あなた、もしや世界樹に選ばれた教主なのでは?」
「…………は?」