まずは適当なシャドウを…──
「きゃあああああああああああああああああああああ!!!!」
鈍い音と共に甲高い叫び声がフロアに響いた。
そして怯えた様子で僕の背後を見ているエルフィン、まさか…!
慌てて後ろを振り返ると、床にはネルの斧が転がっていた。
その向こうには
「……ッ!」
「第一階層から襲ってくるなんて…!」
僕は素早く召喚器を抜くと頭に翳して引き金を引く。
背後から現れたオルフェウスが敵を炎で包み込んだ。
しかし強敵は怯むどこかそれほど甚大なダメージを受けている様子さえなかった。
「……炎耐性!これで電撃も使えたら最悪だ」
強敵は赤い靄から飛び出してその姿を表す。
それは2本の手のような姿をしていて、奇術師のような素早い動きで手遊びをしている。
こちらを挑発しているのだろうか?
僕は短剣で斬り伏せてやろうと剣を抜いた。
ここへ来る前にネルに頼んで用意させたものだ。
「ネル!ネル!」
目を離した途端、エルフィンが倒れたネルに駆け寄った。
すぐ近くにシャドウが居ることも忘れて。
体を揺すって懸命にネルの意識を戻そうとするエルフィンだったが、そこにシャドウの魔の手が迫る。
「あうっ…」
「……エルフィン!」
片方の手がエルフィンを薙ぎ払い、壁に叩き付けた。
まずいと思ったその瞬間、自分にもシャドウが迫ってきていた。
宙に浮く正拳突きが僕の体を打ち付ける。
幸いにも電撃属性でも闇属性でもない攻撃だったため然程痛くはないが、急所に入ったものでダウンしてしまった。
ペースは完全に向こうに奪われている。
「教主…!」
エルフィンは目に涙を浮かべながらこちらを見る。
そして彼女は何かを覚悟したように立ち上がって腕に装着したホルスターから召喚器を抜いた。
「………………………っ」
(本当は怖い…今すぐにでも2人を見捨てて逃げ出したい…!)
(でも、そしたら2人はどうなるの?)
(もう二度と会えないんじゃないかな……)
彼女は召喚器をこめかみに押し当てる。
奇しくも僕と全く同じ構えだ。
「はぁ…はぁ……やるのよ、私が…!」
(もうこれで終わっても良い…教主は最悪どうなっても良い…!)
(だからネルだけは…私が守る!)
ズドォン パキン
「ペルソナ!!」
エルフィンが引き金を引くと、彼女の背後に白銀の鎧に身を包んだ騎士が現れる。
その手には
「突撃!」
騎士はその剣を振るい、シャドウに強烈な一撃を加える。
体勢を崩したシャドウは手と手がもつれ合うように倒れて動けなくなった。
「……エルフィン、総攻撃をしよう」
ダウンから立ち直った僕はヤツらに追い討ちをかけようと総攻撃を提案した。
そして彼女はただ静かに頷いた。
「これで終わりよ!」
僕の短剣による斬撃とエルフィンが使う杖から放たれる爆風がシャドウを追い詰める。
気が付けばシャドウは断末魔を上げて黒い泥のように溶けて消え去った。
戦闘には勝利したが、ネルは目覚めない。
息はあるものの、幾らこちらが呼びかけようと反応を返さなかった。
「……今日は引き上げよう」
成果としてはエルフィンがペルソナに目覚め、戦力に数えられるようになっただけでも十二分にあった。
とにかく今はネルの回復に専念したい。
そうして僕達は道中のシャドウを薙ぎ倒しながら帰還用のテレポート装置を見つけてロビーに戻った。
エルフィンが覚醒したペルソナは“ペンドラゴン”!
ペンドラゴンというと一部の人はアルトリアと続けたくなるかもしれませんがご安心を、自分もそうです()
健啖家で強い一国の長というイメージからエルフィンのペルソナに選んだのですが実際にアーサー王が健啖家だったという記録は当然ながら確認できなかったんですよね…
それはさておき次回からはコミュを埋めていくフェーズが始まります。
キタローと使徒達の交流を楽しみにしていただけるとありがたいです!