───日付は4月22日。
僕とエルフィンはモナティアムの病院でネルの容態について、医師のヒルデというエルフから話を聞いていた。
どうやら彼女が言うにはネルは打撲と極度の疲労が原因で気絶しているだけらしい。
打撲は間違いなくシャドウからの攻撃、疲労に関しては普段から司祭長として激務に追われている上に通常より消耗の激しい影時間であれだけ気を張っていたのだから無理もない。
一応大事には至らなかったと安堵するその横で、エルフィンはずっと泣き叫び続けていた。
僕とヒルデが何度説明しても彼女は泣き止まないので仕方なく病院の外に連れ出すことにした。
「うえええええええええええええん!」
「やだ!ネルのとこ行くの!止めないでよお!」
号泣するエルフィンを抱き抱えてみると、懐いていない小動物に同じことをしたときのように勢いよく暴れ出すので数歩進むだけでも一苦労だった。
エルフィンと格闘する途中、僕はあることを思い出した。
「……ケーキでも食べに行こう」
「…ケーキ?」
流石は無類のお菓子好きで名の知れるエルフィンといったところか、急に泣き止んで自分の足で病院の外へと歩み始めた。
「さっさと行くわよ!モナティアムの甘いものを食べ尽くすんだから」
そう声高に宣う彼女の後ろ姿は背丈も相まって完全に娘である。
─────……
僕はエルフィンを連れて最寄りのカフェに来た。
内装からは落ち着いた大人の雰囲気というよりは学生達がバカなことをやったりカップルが同じ卓を囲んで物を食べたりする憩いの場といった印象を受ける。
ここならエルフィンを連れきても問題は無さそうだ。
「メニューのここからここまでぜーんぶちょうだい!」
「……!?」
僕の聞き間違いだろうか?
エルフィンが大量のメニューを一気に注文したかのように聞こえた。
金額もそうだが食べる量もとてつもないことになる。
「……ねぇ、そんなに食べられるの?」
「当然でしょ!普段はもっと食べてるのよ」
(偶にそれでネルに怒られるけど…)
「これが終わったら次のお店に行くんだから!」
(こんなのじゃ足りないもの!)
心を読めばわかる、これは恐らく見栄でも冗談でもない。
だからこそ恐ろしかった。
甘味に胸躍らせる彼女を横に、僕は会計に胃を痛めながらお通しの水を一気飲みした。
冷えた美味しい水も今回は僕を助けてはくれなかった。
迫り来る滅びに抗って勝った男でさえ迫り来る暴食とその代償には戦々恐々とせざるを得なかった。
「…ネルはちゃんと戻ってくるのよね?」
「………………」
いきなりだった、本当にいきなりで返す言葉を見つけられない。
彼女はあれだけ幼く、見た目も幼女にしか見えないが数百年は生きていてその側にはいつもネルが居た。
そんなかけがえのない存在を失う恐怖は、自らが滅び朽ちることよりも恐ろしいのだろう。
思えば先程の喜び様もただ気丈に振る舞っていただけなのかもしれない。
「……大丈夫」
「……先生も言ってたでしょ?ただ気絶してるだけ」
「…うん」
辛く重苦しい空気が漂い始める。
月光館での経験からこういう状況には慣れたつもりでいたがやはり空気が耐え難い程に重い。
ただ黙って彼女の頭をそっと、優しく撫でて慰めてやることしかできなかった。
エルフィンは心地良さそうに頭を下げる。
「ありがとう、教主」
終わったあと、エルフィンが笑いかける。
屈託のない笑顔に思わず自分も憑き物が落ちる感覚がした。
気付かないうちに僕もネルの身を不安視していたのかもしれない。
エルフィンとの間に絆の芽生えを感じた───
!?
我は汝…汝は我…
汝、新たなる絆を見出したり…
汝、『魔術師』のペルソナを呼び出せし時、
我ら、更なる力の祝福を与えん…
“魔術師”属性のコミュニティである
“妖精王国の女王”コミュを手に入れた!
食事が終わってすぐに、その日はその店を最後にして半ば強制的にエルフィンを連れて教団に帰った。
今回はエルフィンのコミュでした!
ペルソナでは親友枠や相棒枠が占めるアルカナでしたが、345共通で一番最初に解放されるコミュのアルカナでもあります。
作中においてこのアルカナは『"魔術師"は創造、そして積極性…だが、未熟さを表すカードでもあります』と説明されていますが、エルフィンの幼い部分はそのまま未熟さとして捉えることができます。
創造と積極性、これは陽介やモルガナにあった物語を動かす力でトリッカルのメインストーリーも序盤はエルフィンを起点に話が進んでいました。
(ワガママでトラブルメーカー(暴動起こされたり)のエルフィンはアヤセが一番近いかもしれませんけど)
以上のことから魔術師枠はエルフィンしか居ないと判断した訳でございますです。