寝室から広場へ向かう途中、昨晩ネルに言われたことをふと思い出す。
それはこの世界でも影時間になれば"巨大な塔の姿をしたシャドウの巣"が姿を現すということ。
それはモナティアムという外来種族のエルフが住む都市に現れるらしく、それを受けてか向こうには対シャドウ用の特別組織まで存在しているという。
「……行ってみようかな、モナティアム」
そんなことを考えていると、ネルの声が聞こえてきた。
「あの方には必ず世界樹教団を率いる教主になってもらわねば!」
(その方があの人も私も面倒が少ないですからね)
…今のは幻聴か?彼女の心の声が聞こえた気がする。
「やっほー!キタローちゃん、今の聞こえた?」
「!?」
いきなり背後に現れたブルミに驚いて総攻撃を仕掛けるときのような剣幕で睨んでしまった。
「……なんだ、ブルミだったんだね」
「もう!いきなり睨みつけるなんて酷いわ!」
「折角心を読む力もあげたのに」
「……なんて?」
今、心を読む力って言ったのだろうか?
それをこの小さな存在が僕に与えた?
もしそれが本当だとしたらかなり凄いことだが…
「教主様!丁度良いところに…こちらの書類にサインを!」
「ネルが優しく言ってるうちに言うこと聞いた方が良いわよ?でないと…」
「女王様は少しあっちに居てください」
ネルがキャンディを投げると、それは地面を転がり近くの階段を降りていった。
それに続くように駆け回るエルフィンの姿は動くおもちゃを追う家猫のようだった。
ネルが差し出してきた書類に目を通してみると、そこには世界樹教団の教主として永遠に働かされるという内容が記されていた。
僕はネルに対して怪訝な表情をしてみせる。
「な、なんですか…!」
「本来であれば急務である進軍も、面倒な教団設備の管理業務もしなくて良いのですよ?」
「状況が状況ですから…あなたはシャドウと戦っているだけで良いのです」
(まぁ…デスクワークはやらせるつもりですが)
心を読む力か、このエーリアスにおいてそれなりに役立ちそうだ。
「……僕はシャドウから君たちを守るだけのつもりだったけど」
「……それだけじゃダメなのかな」
「お待ちください!そういう訳では…」
(な、何か教主になるメリットを…!)
どうしても彼女は僕に教主になってほしいらしい。
でも何故?
「……ねぇ、どうして君はそうまでして僕を教主にしたいの?」
「そ、それは…」
「……ちゃんとした理由が欲しい」
ネルの表情を見ればわかる、彼女は本気だ。
本気で僕を教主にしたいと思っている…それは心を読まずともわかった。
デスクワークをやらせたいってだけでここまで真剣な顔なんてできない。
おそらくもっと大きな理由がある筈だ。
「あなたにはこのエーリアスの希望の象徴となって頂きたいのです…」
「……希望の象徴」
「えぇ、あなたは単独でも大型のシャドウを倒せる程お強いのでしょう?」
「それはきっとこのエーリアスに住む全ての者にとって希望たり得ると思うのです」
「影時間という悪夢から覚める唯一の希望に」
なるほど、エーリアスの希望として僕を宣伝することで人々を安心させようということか。
要するにお飾りのトップということにはなるが、そういう事情なら別に悪い気もしない。
「ですから…」
「条件を変えてもらおうかな」
「期限を無期限から影時間の収束までにして、そしたら受ける」
それは事実上、教主になるという宣言だった。
ネルの表情が今にも『ぱあっ』と聞こえてきそうなほど明るくなる。
「わかりました、今後ともよろしくお願い致します!」
(よかった…世界樹もお喜びになられる…!)
こうして僕は世界樹教団の教主をやることになった。
考えてみればその世界で最大級の宗教組織のトップになれるなら交友関係も一気にグッと進めやすくなるだろう。
ペルソナ使いは人との絆が重要になってくるため、そういった点でも悪くない話だ。
あとがきって要りますかね…
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Yes
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No