ピトス
端的に言えば滅んだ世界を再構築する為のもしもボックス。あらゆる可能性が保管されてる為、箱の外の世界が滅びかけると可能性、歴史の質量差が逆転し人理の滅びを加速させる仕様を持つ。
とはいえそんな不備が発生するには最低6000年開けず、尚且つ人理終了直前でもないと発生しない。
……というのが原作のピトス。この世界では紙芝居の影響で封じられた可能性の量がマシマシになり、歴史の質量差による逆転が発生し易くなっている。
具体的には世界総人口が500万以下になると中身が膨張し、箱が壊れて世界が滅ぶ。
開花
「まさか二回目があるとは思わなかったなぁ!?」
人は何故同じ事を繰り返すのか。それは上手く教訓が伝わってないからだろう。
「しかし此処は何処なのか。それだけは誰かに聞きたいもんだな!」
そんな戯言は兎も角。
俺、二回目の召喚である。
しかも今回は真っ暗な場所。動けないし何も感じない。ドゥーラ、俺は怖い。
誰の視線もないから素面で喋り放題だ! 実に開放的だな! 状況以外!
だが俺は知ってるぞ──そう! 藤丸ちゃんがクラスカードを使っていたことを!
「アレだろ? ここはクラスカードの中って事だろう? 俺は何故かメフィの自我消し薬を飲んでもあんまり効かなかったからな。こういう状態になってもおかしくない」
アレだよ、俺はカルデアに召喚されたんだ。クラスカードで。
何故夢幻召喚なのかは不思議に思うが、まぁ沢山世界があればそんなパターンもあるだろう。
紙芝居? はっ! たかがそんなもので世界が変わる訳ないだろ。常識だぜ?
あの時の俺は負の方向に思考が向かいっぱなしだったが、今の俺は超元気!
俺は大事なフラグをスルーすることに定評があるからな! 多分見落としてるものがあるかもだが、全然気にしない事にも定評がある! つまり無敵!
「なんだか無敵になった気分だなぁ。クラスカードの中って座みたいな感じなのかなぁ」
そう言えば俺って座に居た記憶とかないんだよね。そこら辺英霊ならあっても良いはずなんだけど、座の俺って何考えてるんだろ。俺は英霊だから分身な訳だが、あっち本体だよな? もっと他の聖杯戦争とかの記憶を渡しても良くない? いや、ロンドンの記憶ちゃんと引き継いでるか。なら仕事してるわ。
「にしても暇だなぁ! 誰か使わないのかなぁ! いやシャドウサーヴァントになって出れば行けるか? ワンチャンあると思うんだが」
そういえばクラスカードってパンドラの箱から取り出した泥に浸し、自我を消してるから道具として便利に扱えるんだよな。
なら自我の消えてない俺は普通の英霊としてカルデアで出れるんじゃないか?
「名案にごつ。早速試してみようじゃないか」
もしかしたら俺は天才かも知れない。魔術を使えないから絶対無理という欠点を除けば完璧な理論だったからな。
よし、別の案を考えよう──っとと!?
おお! 呼ばれてる! 俺が呼ばれてるぞ!
この声の方に行けば良いんだよな? なんか身体が動くようになったし多分そうだろ。
よし行くぞ! 待ってろよマスター! 今すぐ助けてやるからな!
ヒャッハー! でも最低限キャスターとして成立する力は生えててくれー!
♢♦︎♦︎♦︎
「──また、その本を読んでいるのか」
柔らかなベッドの上で、布団に包まった彼女に言う。
「うん! また読みたくなったから!」
「6千年も読んでるのに飽きないんだな。そんなに面白いのか」
「ううん、とっくの昔に飽きてるよ?」
「飽きたなら別のでいいだろう。たった17枚の紙と数行の文字。内容の何処にそんな価値がある」
「むぅ……また読みたくなるからいいの! もう……
「は? 私は別にイジワルなど…」
彼女──"エリカ・エインズワース"は、最後には頬を膨らませ、全身を布団で包み隠す。
何度か呼びかけても返事はなく、強情に布団を被り続けるものだから、私はそのまま部屋を後にすることにした。
それは何気ない日常であり、穏やかな一幕であり……聖杯戦争の前夜にしては、随分と呆気ない幕開けだった。
「……待っててくれ。次の聖杯戦争で、私はお前を…」
月明かりが窓から差し込む中、私は束ねた「クラスカード」から適当に一枚だけ抜き取った。
引いたのは……情報の置換に失敗した「真っ黒なクラスカード」。
占いをしたい訳では無かったが、何処となく不吉な暗示を連想させた。
「……
廃棄処分も兼ねて魔力が切れるまで飛び続ける使い魔に置換して窓から放ち、月明かりに向かって進む鳥を眺めつつ、明日からの聖杯戦争に思いを寄せる。
エインズワース。
私が興した一族の名前であり、あの子……"エリカ"が属する居場所。
これまで"三度"の聖杯戦争を行い……その全てを失敗している家門。
ピトスを開ける。その為に全てを注ぐのに使う"私の身体の育成所"。
「
"新たな世界の「創造種」となる"。
それが私──千年続く一族、その全ての祖たる私が聖杯に望む願いだった。
♢♦︎♦︎
「──見ろ士郎、あそこが冬木だ」
「……あそこが」
「ああ、"お前を拾った場所"だ」
例えば。
記憶を無くした人は自分の故郷を見て、どう思うだろう。
懐かしさを感じて記憶が少しだけ戻るのか、記憶を無くしたトラウマから苦手意識を持つのか。
「早く行こうよ、
俺は、何も感じなかった。
懐かしくも、嫌な思いも湧かない。大火災のせいで殆どが廃墟だったけど、俺には他の市街地と同じように、ただの景色にしか思えなかった。
「……そうだな。早く「神稚児」を見つけなければ」
そう言って父さんが車に戻ってエンジンを掛ける中、俺はふと視界の端に映る残光に興味を惹かれた。
「なんだ、これ?」
なんとなく草むらを割ってみると、そこには「真っ黒な小鳥」が眠っている。
……全然光るものじゃない。じゃあ何が光ったのかと不思議に思うけど、見渡してもそんな物はない。
じゃあコイツなのかと眠った鳥を抱えてみたけど、やっぱりどんな角度でも光るようには思えなかった。
「こいつ…大人しいな」
「士郎? どうした、早く行くぞ」
「あっとそうだ。今行く!」
慌てて車に手に持った"物"を放り込んで乗り込み、シートベルトをして……遅れて、眠ってた小鳥をそのまま車の中に放り込んだ事に気付いた。
マズい、やらかした。
慌てて小鳥を抱えて……大丈夫、まだ息はしている。怪我もしてない。
安心したけど……触っても投げても眠りから醒めない辺り、かなり図太い奴だ。
「なあ父さん。俺さっき黒い小鳥拾ってさ。うっかり連れて来ちゃったんだけど……コイツ、全然起きないんだよ」
「ん?……本当だ、スゴい真っ黒だな。
うーん……"普通"の鳥か……かなり年老いてるのかもな。
……そうだ。士郎、最後まで見てやりなさい」
「ええ!?」
すごく驚いた。
面倒を見ることになった事じゃなく、父さんが鳥に気を遣うことを言ったのが意外に感じたからだ。驚きの余り、手に居る小鳥もちょっと浮かせたと思う。
「拾った責任だ。人には慣れてるようだし、恐らく廃墟になった何処かの家で飼っていた子だろう。あそこで野垂れ死ぬよりマシだろうし、死ぬまで側にいてやるんだ」
「……分かったよ。面倒見る」
そうして一時の仲間を得た俺たちは神稚児が居るという屋敷に……焼けてボロボロになった屋敷を訪れて、父さんと別れて探して、そこで朔月の神稚児……朔月美遊と出会った。
「……………」
「……お前、一人なのか?」
命があるのに、命なんて持ってないと言ってる眼だった。
伽藍堂、虚、空白。どれでも当て嵌まる気がして、どれもちょっと違う気もする。
ちゃんと言うなら──注がれるのを待ってる器。
なんとなく、そう見えた。
「……一緒に来るか? ずっと一人で居るより、二人の方が絶対楽しいぜ?」
「………」
「遊ぼうぜ! 鬼ごっこにするか? かくれんぼ……いや、お前は女の子だし、おままごとの方がいいかもな!」
「………ぁ」
赤い目と黒い髪。とっても綺麗で、不思議な力を持つ、俺よりも少しだけ小さな子。
大火災で炭化した屋敷の奥、そこだけくっきり別世界になったみたい無事で、ぽつねんと座っていたんだ。
だから俺は彼女に手を差し出して……。
「チュンチュン!」
「おわっ!?……あれ、お前眼が…」
俺の頭に乗せてた小鳥が急に目醒めて元気になって、元気になった小鳥が美遊の頭に乗っかった辺りで、何故か美遊が俺と同じ眼に変わってるのに気がついて。
「……いっしょ」
「……ああ! 一緒だ!」
ちょっぴり変な奴だとは思ったけど、それも父さんが美遊を家族にするのを認めてくれてからは、直ぐに気にならなくなった。
「チュンチュン」
「………ぅ?」
「懐かれたみたいだな。……名前、好きに決めていいぞ。まだ決めてないんだ」
「……くろまめ」
「チュン!?」
「…いいな、くろまめ! かわいくてうまそうだ!」
「チュン〜!?」
そんな出会いを経たのが五年前。
俺と美遊、それから真っ黒な小鳥との出会いだった。
「──兄さん!!」
「美遊!」
「……神稚児は俺が使う。士郎、悪く思うなよ」
……事態が変わったのは、それから五年後の今日。
五回目の聖杯戦争で、美遊が……衛宮美遊が
エインズワース当主となったジュリアンが、五回目の聖杯戦争を始めた日から。
「──君が衛宮士郎だね」
「誰だッ!!」
「こんにちは。私の名前は
この聖杯戦争に"介入"した魔術師で──君と目的を同じとする者だよ」
……俺が、マリスビリーと共に聖杯戦争に参加した日から。
♢♦︎
「──チュン」
[──おや、おや、おや。知ってるけど知らない顔だな、君]
「う…あ…?」
全てが唐突でした。
「ヒャハハハははハハハ!!!! そうだよ! サクラなんかが僕より優秀な筈が無いんだ!
あははハハハ!!!! 立ってみろよ! なぁ! 僕より優秀なんだろ!!? えぇ!?」
ある日突然、アーチャーのクラスカードを渡されて、とっくに死んだはずの兄がアサシンのクラスカードを使って殺しに来て、心臓を抉り取られて……誰に看取られる事もなく、死ぬ。
そんな残酷で冷酷な瀬戸際。
ああつまらない人生だったなって、先輩に会いたいって霞む視界の中で思うだけの終わりの中で、私は、
「チュン」
[そのまま死んだふりして息を潜めなさい。彼が立ち去るまでね。
私は命を繋ぎ止めるのはちょっとだけ得意だが、ガチンコで戦うのはからっきしなんだ]
「ヒャハハハはハハハ────あ、そうだ。衛宮に会いに行こう。何してるかなぁアイツ! まだ妹なんてのに構ってルかもナぁ!?」
兄の亡霊が立ち去って、それでも少しの間は動けなくって。
「チュン」
[もう大丈夫だ]
「ハァ──ッ!? はぁ…はぁ…」
息をするのが苦しくなってきた頃、大丈夫の一声で漸くハッキリと息を吸えるようになって……吐き出して。
……生きてるって実感して漸く、私は助けてくれた相手を見たんです。
「はぁ…はぁ…ありがとう…ございま…えっと、何処に居ますか?」
「チュン」
「…? 先輩の飼ってるくろまめさん…?」
「チュン! チュチュン!」
[その通り! 小鳥だが、その小鳥こそが私が君を助けた英霊さ!
──こんにちは、士郎君の後輩。
真っ黒な小鳥さんは私に与えられた「アーチャーのクラスカード」の上で器用に翼を使ってお辞儀をすると、その嘴でクラスカードを叩いて──ワッと、圧縮された言葉の洪水を浴びせて来たんです。
「チュン!」
[いやぁ! 四回目の聖杯戦争で変な方法でこの身体に受肉してから、こうして何年も過ごす事になったのは想定外だが、空っぽのクラスカードが有って助かったよ! 触れたお陰様で英霊の力を取り戻せたし、君を助けることが出来た! まぁ本来の適性じゃないから弱体化甚だしいけど、そんな事些細な問題だろう? だって君が死ぬ所を助けたからね! その上長い事喋れなかった分まで喋れるんだ、それはもう世紀の大成功と言っても過言ではないんじゃあないかい? 私は]
「ストーーップ!!!」
無限に頭に響く言葉に思わずクラスカードを叩き折る勢いで殴り、手の痛みを対価に私は英霊を黙らせる事に成功しました。
くろまめが慌てたようにパタパタ、クルクルと飛んでますが……私は絶対悪くないと思います。
ええ、一気に話して来た方が悪いんです。
「チュン…チュ」
[ごめん。命の危機を脱したばかりの人にお喋りが過ぎたね。お詫びに君からの質問とかその他諸々を聞こうじゃないか]
「はぁ…クラスカードって喋らないんじゃないんですか? 第四次に使われた英霊みたいですけど、アレは失敗に終わった筈です。受肉なんて出来ないと思います」
「チュ」
[なに、ちょっとした偶然と裏技さ。私の宝具はプラスもマイナスも全て平準化する。自我を消そうと、この宝具がある限り私はどんな状態でも自我を保てるんだよ。だから聖杯に注がれても平気だし、その魔力で受肉したんじゃないかな……多分ね?]
小声で付け足してますけど、普通に聞こえてますよ、くろまめさん。
使い魔との念話を利用して話してるみたいですけど、それで隠し事が出来るとは思わないでくださいね?
普通に、聞こえてますから!
「自分でも分かってないじゃないですか……そんなのでよく
「チュン!」
[ハハハ面目ない! 本来獲得しない筈の霊基なのもそうだけど、そもそも私が英霊の身体に不慣れなのさ!]
「……でも、助けてくれてありがとうございます。
これから先輩を助けに行くので……その力、貸してくださいね?」
この人…人? と話すのは楽しいですが、冷静になってみればそんなことをしてる場合じゃありません。
きっとあの兄はいたぶる為に直ぐに殺しはしないでしょうけど、先輩の傷付く姿は見たくありませんし、直ぐにでも助けに行かないといけないんです。
「チュ…」
[おっとアサシンの言葉を忘れてなかったか。でも気を付けるんだよ? 私は元々使い魔を使うタイプの英霊だ。アーチャーになってどう変化したか分からないけど、絶対に真正面から戦ってはいけないからね]
「分かりました、出来るだけ工夫して戦ってみます──
そして私はアーチャーに変身して、くろまめを肩に乗せて先輩の家に走り出し……。
「全然速くない!? 寧ろ遅くなってる!? 衣装も全然変わってない! 殆ど制服のまま!
本当に英霊なんですかあなた!? 弓なんてこれ、私が弓道部で使ってた奴じゃないですか!!」
「チュン」
[大丈夫大丈夫。周りから見ればそれはもう立派な英霊に見えてるから。ハッタリ一本で頑張って!
……へぇ。こんな風に見えてたんだなぁ私って。そりゃあみんな女の子扱いする訳だ]
「なんの話ですか!!」
変化は微々たるものでした。
服がちょっと赤色になって、髪の内側が赤くなって、靴の踵が上がっただけ。
こんなので戦えるのかと叫びますが、返事は残酷にも「出来ない」を長ったらしくして返ってきます。
ひどいです。あんまりです。他の参加者とは、私の先輩への愛では到底埋めきれない絶望的な戦力差があります。
仕方ないので変身は解いて、まだ家の中だったので自転車を取り出して向かいました。
身体能力は全然変わってないし、何処までも締まらないし、前途多難ですけど…。
この聖杯戦争で私が唯一自我のある英霊を従えてるのは事実で、これが私の英霊でしたから。
なんとかしたいなぁって、出来るかなぁって、そんな風に不安になりながら私は先輩の元に向かったのです。
♢
やぁ、俺だよ。長い事トリ公になってたけど、最近遂にサーヴァントに返り咲いた俺だぁよ!
いやぁ嬉しいね! 士郎君に拾われ、美遊に受肉させて貰い、空っぽのクラスカードが無ければ終わってたぜ! 幸運最高。
マキリの旦那の次が桜なのに因果を感じるが、まぁ弓のクラスカードを渡されるのが桜な時点でこうなる覚悟は付いていた。
出来たら良いなって物だったけど上手く行って良かったぜ。士郎が戦えなくなるけどまぁ良いだろ。その代わり俺と桜が頑張ればいいんだから。
「……あの、アーチャーさん。あれは何ですか?」
[ソロモン王だね。クラスカードじゃないマジのソロモン王だ]
「兄が死んでますけど、これってどんな状況でしょうか」
[聖杯戦争にマリスビリーって魔術師が乱入したって所かな。時計塔の
「やっぱりそうですよね。……先輩、放って置いても大丈夫な気がしてきました」
[奇遇だね、私もそう思う]
「ですが……」
問題は俺と桜が頑張らなくても聖杯戦争は何故か居るマリスビリーが全部解決していくって事だな。
ソロモン王まで居るからマジでなんの問題もないぜ! 協力って単語が聞こえる辺り士郎は安泰だわ。桜は塀に登って見てるけど、バレてるのか気にしてないのかも分からないな!
「……アーチャー、一つ聞きます。マリスビリーは悪い魔術師ですか?」
[人を平然と食い物にする普通の魔術師だね。大方、先輩の中にある聖遺物が欲しいとかその辺りじゃないかな]
これは完全な推測だよ。確証ないよ。
「え、先輩って聖遺物が埋められてるんですか?」
「小鳥の時に彼の父がぼやいてたのを聴いたからね。アヴァロンっていうすごい鞘さ」
これは知識だけじゃなくマジで聴いた話だから確定だよ。この世界線の士郎君にも鞘は埋められてるんだ!
「アーサー王伝説の……! 先輩、それ取り出したら死にますか?」
[私の宝具じゃないんだぞ? やり方によるけど、ソロモン王が居るなら無事に終わるだろう。今回は聖杯のついでに恩を売って、最終的な利益を増やそうって魂胆だと見た]
「……先輩は任せて良さそうですね。油断なりませんが、今の私が居ても隅の落書き程度の役立たずです」
桜が話を終わらせ始めたけど他に言うことあったかな……あ、そうだ。
有ったわ、士郎君が死ぬパターン。
[────ああでも、あの人は"聖杯を使う"つもりだからなぁ。
今回の聖杯戦争は彼の妹、衛宮美遊が杯として利用されている。彼女ってば衛宮家の養子なんだけど、神稚児っていう自分の魂を擦り減らして他人の願いを叶える体質なんだ。
アレの願いは「莫大な富」でしかないけど、国家予算十年単位を引き出すとなると一発で美遊ちゃんは死ぬだろうね]
「もう分かります。先輩絶対止めますよね」
[うん。だから士郎君、
交渉して、アヴァロンを先に取り出せばあの子はただの三流魔術師でしかない。
クラスカードもないんだ。ソロモン王が善良だったとしても、コッソリ殺すなんて訳ない。
力が無い正義は蛮勇だが……うん、それは私達が言えた義理じゃないな!
どうやって助けようか、マスター?]
さぁて、ここが微小特異点なのかどうなのか知らないけど、最終的にマリスビリーがカルデアを創り、その上でパンドラの箱を開けないようにする必要がある。
この時点でアホみたいな高難易度だが、その上衛宮士郎を助けるって事は衛宮美遊を助けるということ。
それはもうヤバいなんて言葉じゃ表せない。
[1、士郎君に暗示を掛けて監禁、妹の記憶を魔術で消す。
これが一番楽だ。マスターの目的も果たされる。ただし、そこに本当の愛があるかと言えば絶対無いし、君が病んで自殺し、諸共おしまいになるかもだ。
2、ソロモン王を説得しマリスビリーから離反させる。
話すまでが難しいが、私はマリスビリーの本性を知っている。それを教え、私の分の願いを譲れば確実に行ける。ただし、ソロモンが聖杯に何を願うかは分からない。もしかしたら美遊ちゃんは死ぬかもね。受肉でさえ彼女が耐えられるかは怪しいものだし。
……だがね、マリスビリーの目的が果たさなければここは確実に特異点になる。細かい説明は省くが、マリスビリーが資金を得なければ結局私達の努力は泡沫の夢となって終わりってことさ。
3、この聖杯戦争を勝利して、その上でマリスビリーが満足するだけの資金を提供する。
聖杯に士郎かマスターが魂を擦り晒さない程度の些細な願いを言って、その上で歴史に矛盾を発生させないようにするんだ。実はマリスビリー達、未来を確定させてから聖杯戦争に挑んでるからね。
言葉だけでも勝てなくはない相手だが、その願いを聖杯の代わりに叶えなければならない。とんでもない無理難題だが、私は魔術師にとっては高尚な者だからね。それが出来ると証明すれば或いは……だ。ま、やれる事片っ端から試していこうぜ?
さぁ、選びたまえマスター。どれを選んでも私は全力で君の歩みを助けよう!]
これはもう
何処ぞのイリヤちゃんはもっと広い範囲で助けてたけど、アレは自分を助けるのを諦めて得た成果だからな。
それをマスターに求めるのは酷というものだ。目先の大事な人でさえ助けられるか分からないんだから。
それで肝心の答えだが。
「…………3。
私は先輩に救われたからここにいるんです。だったら、先輩の
私は──"衛宮士郎の味方"ですから」
……どうやら、俺の
頼もしい限り、実に支え甲斐のある人だ。俺もやる気が出るってものである!
[いいね、最高だ! それじゃあ早速、私がこの5年間で集めた情報を全て与えよう! なぁに、相手もコチラも人間の話。だったらやれない事はないさ、私が付いているからね!]
「………ところでそこで騒いでる君、そろそろ降りてきたらどうかな」
……先ずはマリスビリーの説得だな! どうにか切り抜けて行こうぜ!