紙芝居をしただけなのに   作:何処にでもある

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 カルメン(弓)
 空っぽな弓のクラスカードにカルメンの情報を与えて出来た物。
 半分偶然の産物だが、だからと言って何かスゴいことが出来る訳でもない。
 性能は殆ど生贄適正の無いキャスターカルメン。幻霊になってないのが奇跡。
 力の殆どをマスターの可能性、及び弓のクラス枠に依存している。
 ただし、宝具だけは出力を調整して自由に使えるようになってる。
 宝具を使わなければウェイバーでも死ぬまで使い続けられる低燃費仕様。
 間桐桜であれば、全力で宝具を使い続けても魔力が尽きる事はない。




ポケット入りクッキー

 

 

「他の参加者を全員倒すまでは倒さないよ」

 

 ……あ、そういやこの人こういう人だったな。ペラ回し要らなかったわ。

 

「……?……! さ…最初から結論が出てる…! じゃなくて! ないんですか!?

 覗き見とかの問答とか! 証明の交渉とか!」

 

「桜? なんでここに……なんか、元気になったな…?」

「ですよね! 先輩でもそうなりますよね! なんなんですかこの人!?」

「どうしたんだ桜……なんか変だぞ、お前」

 

 士郎君が困惑し、ソロモンは沈黙を貫き、マリスビリーは変わらずニコニコしてるな。

 うーん、混沌!

 

「……?」

 

「あ、なんかむかついてきました。今すっごくこの人をギャフンって言わせたいです」

 

 マスター、そろそろ桜というよりBBやカーマみたいになってるぞ?

 大丈夫か? 俺のクラスカード使ってるのが悪さしてないか? あれか、五年前にマキリの旦那とかシンジとかその辺り全員死んでメンタルがそんなにしんどくないからか?

 取り敢えず、どうかその矛は収めて欲しいかな!

 

[マスター、この人は見ただけで相手の全てが分かるレベルの人間観察眼の持ち主だ。その上かなりの結果良ければ全てヨシな結果主義。彼にとって聖杯戦争は手段の一つで、私達が代わりを務めれば問題ない物。そういう人としてここは受け止めて欲しいかな]

 

「……分かりました。今はそれで納得します。

 すみません、マリスビリーさん。お騒がせしました」

 

「他の参加者はどうする?」

「3日だ」

「そうだね、それでいこう」

 

 うわ、マリスビリーとソロモン王の脳内で自己完結した反応が出てきた。

 賢すぎてコミュ障に片足突っ込んでるね。

 

 一緒に他の参加者を倒しに行く?→それでは証明する時間もない。3日は時間を与えよう→私はそれでも構わない。……って流れだと思うけど、余りにもカルナ仕草が過ぎる。もう少し君ら話すの上手かった気がするんだけどな…?

 

「は…はぁ?」

 

 ほら、マスターも困惑してるじゃないか。

 いや、ありがたい話ではあるけどな? すぐに動かれると全部倒されるのを眺めるだけになるし、準備する時間をくれるなら断る理由はない。

 

[マスター、ここはありがたく話を受け入れよう。証明するまでの時間を待ってくれるならそれ以上のことはないさ]

「……なら、そうしますよ? いいんですね?」

[構わない。今は何を言っても無駄になりそうだ。あ、でも連絡先だけは貰っておいてね。いざって時に頼れそうなら頼りたいから]

 

 

 

 そんな訳でマリスビリー達は衛宮家から退散した。

 余りにもアッサリとし過ぎてるが、中身なんて不要とか言う相手だからな、過程が要らないんだからこうもなるか。

 やっと一息つけそうだと桜は士郎君に向き直ると、恋した女の子らしい仕草で士郎君の手を握った。

 

「先輩、お怪我はありませんか?」

「ああ…通りすがりのマリスビリーさんが助けてくれてな。桜は…そのカードは」

「これは昨日、ジュリアンさんから渡されて……あれ? そういえばギルガメッシュのクラスカードじゃない?」

[落ち着いて聞いてくれ、魔術師の儀式が出来レースじゃない訳無いんだ、マスター。出会った時に言っただろう? コレは空のクラスカードだって。そのまま使ってたら自爆して終わりだったんだよ、マスターは]

「えっ」

 

 まぁその前にエインズワースが作った出来レース用の参加者人形……置換魔術で死者の人格を入れて作ったシンジのドールに殺されそうだったが。

 全く、変な所でうっかりと道化仕草しよってからに。俺が原作知識を使う転生者ムーブをしなければ死んでたぞ? 漸くやりたいムーブが出来て感無量ではあるが、代わりに士郎君が覚醒できなくなったかんじだよな。どうしようかなこれから。

 

「桜、口が栗みたいな三角になってるぞ」

「……はっ! なんでもないです。今更死に掛けてた事実に冷や汗かいてただけで……そんなことより! 今はお互いの事情を話し合いましょう。……美遊ちゃんに、何か有ったんですよね?」

「……ああ」

 

 さっきから重苦しいなぁ、空気がさ。可笑しいな、冬の日本だし空気は乾燥してるんだが。

 なんだかロンドンの霧よりもじめっとしてるぞ? 二人もお互いの事情を話し合うに連れて眼が死んでいくし、冬木ってこんなに気まずい所だったかなぁ?

 

「……つまり桜は没落した魔術師の娘で、聖杯戦争に望む願いも特に無い巻き込まれってことか」

「そして先輩は妹の美遊ちゃんが聖杯の器として拐われた兄……もしかしたらマリスビリーさんよりも聖杯戦争には無知かもしれませんね、私達って」

 

[気のせいじゃなく、事実だね。

 どうする? 士郎君。今なら言峰神父に保護を頼めるけど]

 

 なお、俺の発言は桜が間に入ってくれてるぞ! 助かるねぇホント。

 

「行かない。美遊は俺の妹だ。助けに行かないと」

「……ふふ、先輩らしいですね」

 

 うーん、士郎君らしい答えだ。5年間見守ってたがその辺りは昔から変わらないな。

 

「だけどくろまめ、お前が実は英霊だったのは驚いたけど、今は都合がいい。

 どういう英霊なんだ? 真名とか、出来ることを教えてくれ」

 

[頼りにしてる所悪いけど、私は英霊としては三流以下さ。弓のクラスカードに収まるのだって、本来の霊基からしてみればかなりの無茶を通してる。私を頼るなら……よいしょ。この、マリスビリーが回収しなかった「アサシンのカード」を使う方がマシってものさ]

 

 いやぁ……ソロモン王なんてものが付いてれば要らないって判断は妥当だけど、まさかクラスカードを回収しないとはね。もしかしたら俺達に必要だと考えてそうしたのかも知れないけど、おかげでワンチャン通せるだけの戦力を得られた。

 

「慎二の使ってた奴か……」

「心臓を抉り取る宝具を持ったアサシンですよね。私も抉られたのでよく分かります」

「抉られたのか…!?」

[今は私の宝具で延命してるから大丈夫だよ。ま、私が死ねばそのままマスターも死ぬ状態だけどね! 今の私は唯一の取り柄である宝具も使えないハリボテさ! 囮にしか使えないぜ?]

「それは……なら、しょうがないな」

 

 なので聖杯戦争の方はアサシンのカードからどんどん新しいのを集める流れで行くのが普通なんだが……普通にやって3日でマリスビリーとソロモンの願いを叶える証明はできないよな。

 

 よし、いっちょやってみるか。

 

[‭─‬‭─‭─‬‭─だが、それはマスターがアサシンのカードを使えば、そこは私の宝具の影響下である事を意味する。戦力に困ってるならそれ相応の小細工をやっちまえばいいのさ]

 

「……それってアーチャーとアサシンを同時に使う事になりませんか?」

 

[おいおいマスター、私が宝具を使ってる間散々変身したり解除したりしたじゃないか。こっちは誰かに使われなくても宝具を使えちゃう英霊だぜ? 例え宝具の範囲(レンジ)が単体に絞られてようと、やりようはあるのさ]

 

 俺ってさぁ、どういう理屈かは知らんけど、俺が居るとナーサリー・ライムがどっかに湧いてくる(ポップする)みたいなんだよね。

 この5年間散々飛んで探して見つからなかったけど、だったら俺の霊基の中に……クラスカードの中に収まってるんじゃねぇかと考えてみたんだよ。

 ナーサリー・ライム、俺の力の一部として現界してるとかなんとか言ってたからな。

 

[聖杯、クラス霊基、依代、それからほんのちょっぴりの勇気……悪くない。寧ろ良い。

 だから‭─‬‭─‭─‬やろうぜ、"英霊召喚"。マリスビリーを見習おうじゃないか]

 

 その名も!

 「俺とクラスカードを触媒に強い部分(ナーサリー・ライム)抽出しようぜ大・作・戦」!!

 

 魔力や大聖杯がない? まぁ魔法陣と詠唱さえ揃ってれば行けるだろ。

 感覚的に俺の宝具はなんでも平凡にするように見えるが、それはあくまでも"副産物"。

 俺の本質への理解が正しければ、これは平凡に均して余った資源(リソース)負債(デッドオーバー)の処理を「後回し」にする事こそ正しい使い道だと睨んでる。

 

[なんだが……この中に英霊召喚の魔法陣と詠唱が分かる人、手を挙げて]

「「…………」」

[よし、マリスビリーに頼もうか。冬木に居る間は暇だろうし、遠慮なく頼ろう]

 

 まぁ、正しいかはやってみれば分かるか。使えそうなのは箸でも梃子でも使えってね。

 

「‭─‬‭─‭─‬‭─"満たせ、満たせ、満たせ……"」

 

 そんな訳で桜にアサシンのカードを持たせてやらせる事にした。

 上手くできたら良いなって行いだが、単にアサシンに変身するよりは固有結界の方が良いだろう。やっぱり正面戦闘出来ると嬉しいからな。

 

 

「‭─‬‭─‭─‬‭─"来たれ! 天秤の守り手よ!"

 

 

 ‭─‬‭─途端、煙が魔法陣から広がり衛宮家の離れの物置小屋を煙で満たしていく。

 どうやら何かしら呼べたみたいだ。ソロモン王が居るし今更七騎の制約とか細かい事は無しだろうと考えていたが、上手く行ったのは僥倖。

 

「……ケホッケホッ! なんですかこれ! 幾らなんでもこんな乱暴な呼び出し方はないんじゃないんですか!?」

 

 それで肝心の誰が来たかであるが……うん、桜の声が聴こえるぞ?

 ナーサリー・ライムじゃないのは確定だけど、アサシンで桜の声で、俺から取れそうな英霊ってなんだ? 何処となく気怠い感じの声なんだが、まさかカーマってことはないよな。流石に俺と縁がなさ過ぎるもんな。

 

 お、段々煙が晴れて……そこには桜も英霊の姿はなく、銀の髪に変な服……布ぉと金属ぅ…かな?

 つまり、桜が神様っぽい格好になっていた。うん、カーマだ。背丈は変わってないからちょいロリカーマだ。

 

「はぁ……サーヴァント、アサシン。ほんっっとうに来る気はありませんでしたが、呼ばれたからには最低限働いてあげます……必要になったら適当に呼んでくださいね。この変な心臓の身体、人になったみたいですごくしんどいんで……あれ、戻れないんですけど」

 

[詳しくはそこのソロモン王とそのマスターに聞くといい]

 

「……はぁ。はいはい、分かりましたよ。

 お二人さん、私ってどういう状態なんですか?」

 

 カーマがクラスカードに戻ろうとして失敗してるな。

 (マスター)の意識がどうなったか気になるけど、そこはマリスビリーかソロモン王が解説してくれると助かるなぁ。俺の助言には従ってくれるのは助かるなぁ。

 

「これは推測になるけど……デミ・サーヴァントに限りなく近い別の何かかな。「何が起きても普通になる肉体」に、アサシンのクラスカードと英霊の自我が入りこんだ。

 普通なら色んなものが弾け飛ぶんだけど、「普通の人」って結果だけが確定してるから「自認が神様の普通の女の子」って結果になったんだと思う。宝具を止めたらどうなるか気になる所ではあるね」

 

 へーぇ。さすがマリスビリーだ。一発で中身を大体理解した。

 

「は? つまり今の私って自認カーマの厨二患者って事ですか?」

[マスターがマスターのままで安心したよ]

「煩い! 私だってそうだと分かっていれば振る舞いも……!」

「……でも、これで戦力を増やすのは失敗か」

 

 それなら安心だと若干恥ずかしがり始めたマスターの頭で羽休めする。

 そして士郎君の疑問に答えようと、ソロモン王が解説を付け足した。

 

「今はな。だがその"偽典・人理版図(テクスチャモドキ)"を剥がせば、そこにあるのは「人の身でありながら、座に劣化して登録されたものとはいえ、神の霊基に適合し御した人間」に変わるだろう。その力がどうあれ、「降ろされても人の身を保った」のは事実な訳だからな。逆説的存在補強だ。

 伝承保菌者(ゴッズホルダー)どころか現人神、その上その宝具の影響で人理に排除されない性質も死ぬまで残り続ける。

 

 神稚児と言ったか。神格が愛の神故に叶え方は限定されるが、間違いなくアレの上位互換だろう。

 ……零落してもこの世界の創造種と言う訳だ。証明に3日も要らなかったな」

 

 

 ……うん、どうしようか。なんか大体の問題を解決出来そうな錬成術を成し遂げちゃったぞ?

 もしかして俺の宝具はすごいのでは? 単体じゃショボいけど魔術の一工程に使うと滅茶苦茶使えるのでは? あ、だから魔術師があんなに俺を持ち上げてるのか!!! 納得!!!

 

 

「……つまり! アーチャーの宝具が解除された私はスゴいって事ですね!

 そうと判れば話は早いです。先輩の為にも、チャチャっとぜぇーんぶ解決しちゃいましょう!」

 

[ところで精神面はどうなる? 今でも自認が神寄りなら、解除すれば本物の神のそれになるんじゃないのかい?]

「……らしいですが、その辺りどうなんです? マリスビリーさん、ソロモン王」

 

 腕を組み、話してる最中に士郎君が肩にかけたコートをパタパタしながら桜は尋ねた。

 

「どうでも良くない?」

 

 うん、マリスビリーはまぁそう答えるよね。

 

「間違いなく"すり潰される"だろう。今は矮小化されているが、一度ベールを剥がせば現人神だ。

 その負荷はかなりの物。伝わらない言い方になるが、"(ソロモン)のようになる"。神の視座に人が耐えられる道理はない。

 そこに在るのは、「これまでの君の様に振る舞うだけの空っぽの神霊」だ。人の思考や自我はない」

 

「えっ。さっき耐えた事実が逆説的に〜とか言ってたじゃないですか」

 

「その宝具がある限り中身は保証されるが、解除すれば保証されるのは「ガワ」だけだ。中身がどうなろうと、"振る舞いさえ同じなら、それは側から見て御したと言える"からね」

 

「……そんな」

 

 場が凍りつくとは、正に今の様な状況を言うのだろう。

 桜はさっきの浮かれた様子とは裏腹に黙りだし、士郎君も思い詰めたような顔になった。

 マリスビリーは相変わらず薄らと笑っている。まぁお前の理想だものな。

 ソロモンは……何も感じてないな。一般的に考えてオススメはしないと言うべきと考えている顔だ。

 

 よし、それなら俺が話を進めるか。

 

[マスター、証明も出来た事だしマリスビリーと同盟を結ぼう。なぁに、一度は出来た訳だし、案外アッサリと別のやり方も見つかるさ。マリスビリー達の願いはそれで叶えればいい。先ずは目の前の事から解決しないとね。誓約書(ギアススクロール)も用意して抜かりなくやろう]

 

「……そうですね、アーチャー。

 マリスビリーさん、ソロモン王さん。証明はできました。私達と同盟を組みましょう」

 

「勿論だ、現人神の卵と語り部のアーチャー。これから宜しくね」

「よろしく頼む」

 

 こうして俺達アーチャー陣営とキャスター陣営は手を組んだ。

 契約期間は衛宮美遊を助けた上で、どちらかのマスターが死ぬまで。

 両者の陣営はお互いの願いを叶える為に尽力し、聖杯戦争の間は戦力的な協力関係も行う。

 

 契約の内容は大体こんな感じ。

 聖杯戦争には負けなくなった物の、俺達は依然として追い詰められたこの状況の打開策を求められる事になる。

 

 

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