紙芝居をしただけなのに   作:何処にでもある

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 プロフィール5
 実の所、彼女はルーラーで召喚されても大した力は発揮しない。
 キャスターは実力がなく、対してルーラーの方も行動自体に制限がある為だ。
 令呪を使おうと決して使わない力を持っていても、それは無いも同然。翼があろうと飛び方の知恵がなければどんな鳥も飛べないように、彼女はどんな霊基でも必要最低限以下の知識しか与えられない。
 常に人に与える側だったが故に、彼女はあらゆる祝福も加護も、呪いも何もかもを授かる事はない。英霊という不完全な再現体で漸く最低限以下。存在自体が一種の拒絶の概念を纏っているのが彼女である。



 -=- ‭─‬ -=-=- _(ザッ ザザッ)
                  =-=-_ ‭─‬‭─=-(ザザッ ザッ)



 本来の彼女は人の身でありながらも、人類という概念を、人という存在が誕生する種を創り上げた創造主……もとい、創造種だ。
 それは根源の一側面も同義であり、英霊の彼女が振るう力はその立場……人類が彼女こそ根源であると後付けで押しつけた物にすぎない。
 人類が勝手に見出したものを人類が勝手に使っているのだ。そこに生前の彼女の存在は介在せず、故に本当は存在しない者だったとしても、同じ証拠さえあれば彼女の遺産から始まる全ての偉業は再現される。



 -=- ‭─‬ -=-=- _(ザッ ザザッ)
                  =-=-_ ‭─‬‭─=-(ザザッ ザッ)



 結論(かいせき)は出た。
 人類が彼女に求める物で必要なのは外側だけで、仮に中身が無い殻だけだろうと、既にこの英霊は存在が成り立つ領域にある。
 結果さえ示せば過程と始まりは後からついて来る。

 証明(かいせき)は完了した。
 彼女の奥底に触れようとするならば心得よ。それは喜劇を謳う悲劇の始まり。自らの為に人類の始まりを創り上げた人類愛など偽りの諸行。人が求める本質を殻/空にすげ替える為の虚構(えんざん)実話(さくご)

 噺話、童話、逸話、寓話、神話。

 語られる者である限り。
 起源(はじまり)終焉(おわり)に囚われる限り。
 語り部との因縁は決して断ち切れない。
 語り部が偽りならば、語られるもの全てが偽り。
 破綻してから(人類が私勝って)始めて本領を発揮する、目覚めを望まれぬ者。



 ‭─‬‭─‭─‬‭─あなた()偽りの花(証明)が全て散る(さま)が無い様に、どうか私の証明が成されますように。

 



 七番目の、最後にして最古の‭─‬‭─‭─‬‭─……。
 

 -=- ‭─‬ -=-=- _(ザッ ザザッ)
                  =-=-_ ‭─‬‭─=-(ザザッ ザッ)




‬- - ─‬‭─‬‭(プツン)─‬‭─ - -‭





七分咲き

 

 

 問題!

 桜が特異点を作りそうだから美遊を逃して隠そうとした俺は今、どこで何をしているでしょうか!

 答えは意外な場所になるぞ! 何せ全く脈略がないからね!

 

「まぁ焦らす必要もなく答えは"カルデアに浮かぶ真っ白な地球の上"なのだが……ここを語るには全てが早くないかい? 召喚前とはいえ、まだ"燃えてる最中だった筈"だろうに」

 

 何が悪かったかといえばまたもや余計な事をしたっぽい俺が悪い訳であるが、一つ弁明するなら俺は全くそんなつもりが無かったという事だけはご了承して頂きたい。

 

「そんな過去はさて置き、どうして"俺"は超絶寒いカルデアに居るのだろうな? 一番簡単な答えはイリヤワールドを展開された時にそのまま死んで、カルデアのマスターがゲーティアに勝った未来に召喚された……なのだが、相手はあの暴走した美遊(神稚児)だ。

 そも、イリヤズムは上辺こそバカバカしいが、全ての人が分かり合えもする意思の統合、古い例え方になるが、ヒ素星人の同化や人類補完計画みたいなものだろう? 全て美遊の思い通りにいったと思いたくないが、カルデアの動き次第では別方向にカッ飛んでもおかしくないのが厄介だ」

 

 生前を含め通算四度目となる謎の転移or召喚である。

 流石にもう慣れてきたが、"真っ白で大きな地球儀"の上に座っての召喚は始めてだな。

 カルデアスって座れるものなのかって所も、カルデアスに人気(ひとけ)がなく、氷河期かってくらいにあちこちが凍えてる所も、座った姿勢で召喚されたのも始めてである。

 

 どう見ても襲撃後じゃん。そしてとんでもない所に座らされたもんだな。

 

 ズッ‭─‬‭─。

 

「うおっ!? お〜っとととと!?……セーフ、急に落ちて転がるなんて危ないなぁ!」

 

 これからどうしようかと悩んでいると、地球儀が突然浮遊感を失って落下し、その上に座っていた俺が転げ落ちる事態になった。

 取り敢えず怪我をせずに済んだのは良いが……これ、俺が触れ続けたからこうなったか?

 

「なんだいなんだい、"俺に触れたから神秘を奪われた"みたいに転がるなんて。人をセファール扱いは酷い話だよ。俺にそんな収奪機構は無いっての……まぁ生前が古い時代にしてはとことん神秘と無縁ではあったけど。でも、流石に俺がその基点みたいに振る舞うのはやめて欲しいな」

 

 全く…英霊なら兎も角、生前は普通の大学生だってのに。

 マジな話をすると、宝具が暴走してるのかな。あり得る話ではあるが……。

 

「ダメだな、こうも立て続けに色々起きると因果関係を上手く結べなくなる。何が原因でどうなったか分からないんじゃ困る事しか出来ない訳だが……いや本当に寒い……寒い? あれ、そういえば……俺、生きてるな?」

 

 そういえば俺はあの特異点で受肉してたよな、鳥の姿だけど。

 でも今は人の身体。死んで英霊に戻った……にしては霊体にない、肉体特有の重みがある。

 空腹感とか、喉の渇きとか、溜まった尿の小さな主張とか、鳥肌や身体の倦怠感とか……。

 

 もしや受肉したまま人に戻り、そのままここに転移した?

 鳥になったのはエインズワースにクラスカードを直接鳥の形にされたからだよな。

 それが受肉したってことは、形は違えどクラスカードがカードのまま受肉したってこと。

 黒化英雄みたいに中身が出て来る事態になれば、そのカードからは受肉した人間が出て来る事になる……?

 

 うん、出鱈目な考えだ。多分間違ってるだろうな。

 兎に角、誰がなぜそうしたかわからないが、今の俺は生前の俺であるらしい。

 つまり英霊の時に出来なかった事が全部出来る訳だ。

 

「うん、それが分かった途端みるみる何とか出来る気がしてきた。何も知らなくてアウェーな場所に居る。うんうん、まるで最初の頃みたいじゃないか」

 

 だとしたらこれほど楽な召喚も早々にないな。

 カルデア基地は南極にあるからかめっちゃ寒いけど、逆を言えば寒いだけで屋根も壁も現代的な施設もある。

 それなら仕組みを理解して学ぶだけだ。猿を人に育てる必要も、外敵に怯える必要もない。

 猿の言葉を理解しなくてもいいし、扱える金属を鉄まで持って行く為に幾つもの山を禿げさせるまで木々を切り倒し、植林する必要もない。肉体労働しなくていいなんて楽過ぎて涙が出て来るよ。

 

 精々発電施設を復旧させて、壊れた壁や窓を塞いで保温性上げて、各施設の仕組みを理解して直して、なんか消えてるカルデアスを新調するだけでいいんだから。

 知識によれば現代最新の魔術と科学の結晶とかなんとか言ってるけど、多少劣化しても俺が1〜2回使う時に同じ事が出来れば何も問題ないからな。それならやりようは幾らでもある。

 

「ふむ……つまりここがこうで…ここら辺は本来魔術でやってた箇所か? メインのカルデアアスも何処かに消えてるし…というか、もしやしなくてもあそこで転がってる地球儀だよなぁ…あー他にも幾つか機能が穴抜けだなぁ……仕方ない、いつも通り"有り合わせで補完しようかね"」

 

 そうやって解析していると魔術で補ってたと思う部分がオシャカになってたので、カルデアの倉庫から適当に拝借して補完した。純科学製品になったし見た目も近未来感マシマシのスマートさが消えたけど、これで10回だけレイシフト出来るくらいは持つだろう。耐久年数は環境も合わせて三年持てば良い方か。

 ふぅ…猿の言葉を理解するよりは簡単で良かったぜ。あっちはマジで数年単位で解析したからね。難しいだけならなんとかなるものさ、全ての技術と知識を思い出して、その繋がりを始まりから辿れば到達するだけだからな。

 真実を見出す推理は苦手だけど、ガラクタの山(見えてる可能性)から欲しい知識(こたえ)を見つけてくるのは得意なのさ。

 ふふふ…ま、何故か英霊の身体だと出来ないんだけどね! 何でだろうねぇ本当。ま、別にどうでもいいからいいか。

 

「ヨシ、完成! やっぱり現代は何もかもラクで良いね。素材から設計図まで全部揃ってる。秘匿とかされてたけど、そんなのセキュリティやブラックボックスを読み解けばいいだけだからな。やっぱ現代の技術レベル最高。俺が最高にやり易い世の中だわ」

 

 これに比べたら古代はカスだよ。俺が得意な分野(ジャンル)全部無いもん。

 まだここにある物で美味しい料理を作る方が難しいくらいだ。凍ってるとはいえ、丁重な管理は全くな訳だからな。

 

「あ"ー…美味い……科学調味料の味がする……塩胡椒もいつぶりかなぁ。玉ねぎをコトコト煮込んだオニオンスープモドキ。蛮族と一緒に食べた全てに勝ってるわ。やっぱり肉はコレだよねぇ」

 

 さて、夜食も摂った事だしレイシフト適正を調べようか。俺は何処にでもいる一般人だし余裕で90は超えるだろ。そしたらカルデアのマスターが負けて無いかだけ調べて、もし特異点攻略中に死んでたら助けに行こう。顔見知りが死んでたら気分も悪くなるしな。

 冷静に考えればまだ凍ったカルデアが、アナスタシアの襲撃じゃなくて崩壊して自然消滅してる最中の線もあるからね。

 

「チェックは〜…お、100を超えて200%だ。やっぱり俺は何処にでもいる一般人なんだな。同じ時代に同時に二人も存在出来る程のモブだなんて照れるぜ。さて、再点検するか」

 

 その後数回行ってもソフトもハードも異常は無いまま200%を出すので、俺が数値設定の桁を間違えたか、俺が二人同時に存在できるレベルのスゴイ・モブのどちらかだろう。まぁ20%を間違えたってとこかな。他に検体がないから分かんないけど。

 

「結論、このくらいならなんとかなるさ。

 20%は1%の20倍。つまり五回に一回は成功する。

 だったら出来るよね‭─‬‭─‭─レイシフト‬」

 

 ふふふ、俺はこう見えて他人を見捨てない事に定評があってね。

 猿を猿と見切りを付けずに蛮族にするくらいは他人ってものを拾っているのさ。

 あ、これ教育力(欺瞞)の自慢な。知ってるやり方をなぞっただけだから忘れていいぞ。

 

「っとと、その前に記録を確認しないと……なになに、西暦2015年、三年前に発生した微小特異点にレイシフト。特異点の修理のついでに、エインズワースにあるクラスカードを回収し召喚システムの新規制作の足掛かりとして……で、イリヤになり特異点を攻略出来なくなって……かぁ」

 

 色々書いてあったが、敗因はマスターがイリヤポイントの不足で道半ばで脱落しイリヤ化。

 そこからなんとかこの微小特異点は解決し、カードも回収したものの、イリヤになったせいで100%のレイシフト適正を喪失。

 しかしそこで諦めず、辛うじて第五特異点に転移適正のある職員をマスター候補とし、クラスカードの行使訓練を開始。

 

「結果、適正のある単体(ソロ)夢幻召喚(インストール)は問題無かったものの、複重の召喚に耐え切れず、行使者の死亡に引っ張られて召喚システムも暴走。

 "コフィンで生命活動を停止していたマスター達に英霊の力が宿り、破壊活動を開始"」

 

 へぇ、ここのカルデア式の夢幻召喚ってマスターが死ぬとそのままカルデアも滅ぶんだ。

 しかもコフィンに入ってる連中全員が英霊の力を手に暴れる形で。

 それにこれを記録した人も勇気あるなぁ。よくこんな終わり際まで記録付けてたよね。マジ助かった。ありがてぇや。

 

「……ある意味、襲撃されたって推測は間違って無かったね。行くべき日時も明白だ」

 

 カルデアを探し回って理解したが……うん、俺の宝具が暴走しているのかは知らないが、どうも事実として今の俺の周りだと神秘が全部消えるっぽいからな。

 

「他の英霊は……無理か。呼んでも消えるか、そもそも呼べないかな」

 

 他の英霊を呼ぶなら生身かつその状態で強いで呼ぶ必要がある訳だが、今の俺はシステムを直せても俺の近くじゃ動かせないんだわ。

 レイシフトも同じ問題がありそうに見えるだろうが、こっちは科学のみで出来る範疇だったので問題ない。

 過去に飛ぶより魂を呼ぶ方が難しい訳だ。バイオ技術があれば話は別だったけどね。魂のない機械的な人間を作るくらいなら、倫理を無視すればやりようがある。

 

「あ、それならホムンクルス……いやあれは魔術か。じゃあ無理だ。

 ……無理だが、たった今大事なことを思い付いた」

 

 あ、でもホムンクルスと言えば……そうだな、この崩壊理由なら居るだろうな、あの子も。

 それなら死なないうちに助けないとだよなぁ、俺の宝具の効果的にも。

 

「という訳で……さぁ起きて、グラン・カヴァッロ。

 と言っても、酸欠でもがいてる辺り2分前には目覚めてたみたいだが!」

 

「〜〜〜〜っ!!」

 

 ダヴィンチの魔術的側面を持つ作品。俺のせいで大半がガラクタと化したそれは、同時に魔術的に生かされていた存在の生命線が壊れた事も意味する。

 端的に言うとダヴィンチが制作した自身のホムンクルス…ロリのダヴィンチちゃんが死ぬかも知れないという事に今更ながら思い至ったのだ。

 

「ぷはぁ!?‭─‬‭─はぁ…はぁ…何がっ…何があったの!?

 なんで‭─‬‭─大人の私(ダヴィンチ)が…!?」

 

 ほーん、それ継続なんだ。でもってカルデアが壊れた理由は知らないと。

 ダヴィンチちゃんが記憶の同期とかの処理をしばらくサボってたか、はたまた何か有ったのかなぁ。まぁいいか、知らない話なんだし。

 

「記憶の引き継ぎに問題有りかぁ。ごめんねぇ、うっかりカルデアが崩壊しちゃってさぁ。幸い私は生き残ったんだけど、生憎私だけでねぇ。マスターちゃんもマシュも死んじゃったし、人手不足だからちょーっと手を貸して頂戴? なーに、カルデア崩壊の過去を改変するだけだからさ☆」

 

 いやぁ、暴走したマスター達に壊されてなくて良かったね。果たして俺が近付いて魔術の効果が切れたのか、効果が届く前に間に合ったのかは知らないけど、シュレディンガーよりは確実に生きてる道の方が良いよな?

 ついでに便利な助手も手に入るし良い事尽くめ! いいね、蛮族の子供達より役に立つ!

 とはいえ、いい感じのシーンで花びらパイプを吹いて紙芝居を盛り上げるのは流石に子供達かな。そこは人手の多さが勝る。それから、一度に沢山の花冠を作ることもか。

 

「……3点、指摘と質問をするよ?

 1つ、レイシフトで過去の改変は出来ない。やってもそれは改変された並行世界が出来るだけ。この世界はそのままだ。

 2つ、そして英霊は、マスターが同伴しなければならない。生身の私ならマスターになれるけど、肝心のレイシフト適正がない。そういう風に作られてないんだ。

 3つ‭─‬‭─‭─‬‭─私は、大人の私が死ぬ最後まで……カルデアが崩壊した時までの記憶を引き継いでいる。その上で私が目覚めても意味がないから起動しなかったんだけど……"君は、誰だい"?」

 

 お、記憶ちゃんと引き継いでたんだ。なら話は早い、ありがたくやるべき事をやって貰おう。

 でも自分と同じ姿が見えるのか、ナルシストかな? いや、自分をそういう作品に仕立てただけって話か。

 ダヴィンチは男だけど、後から理想的な女性(モナリザ)の姿に自分を改造してるもんな。

 

 そして、この呪いは相手が思う理想の女性に見せるのか。その上で俺が語った話に限定する……つまり、大体は型月の女性なら大体カバー範囲内な訳だ。紙芝居のパクリ先の大元の一つな訳だし。

 

「‭─‬‭─あーあ。そういえば今の君の姿は、君が思う一番理想的な女性なんだっけ。だったら、私の姿がそう見えて当然だし、そういう状況で有って欲しいとか関係ないか。頑固な芸術家らしいもんねぇ」

 

 警戒心を露わにしてるけど、今のダヴィンチちゃんは培養液から出たばかりのホムンクルス。

 俺の宝具の範囲内に居るならあまり強いことは出来ないだろう。だから強気に出るって訳じゃないが、落ち着かせる手間が楽になるのは助かるな。

 

「君は…」

 

「さっきの答えだけど。

 1、そもそもみんな死んじゃってるし、実質この結末(未来)が変わったような物でしょ? ま、君が助かった側の世界に移れれば更に良いのかな? その場合向こうの眠ってる君が何処かに消えちゃうだろうけど。

 2、私はダヴィンチじゃない生身の人間だ。受肉した英霊でもあるね。だからレイシフトは私が行く。それで解決する。

 3、ただの詐欺師だよ。死ぬよりも(技術)硝子(可能性)に触れ合えない事の方がよっぽど恐ろしいだけの、詐欺師の端くれさ。ま、今じゃ副業の紙芝居辺りでよく頼られてるんだけどね」

 

 何者かと問われたら……まぁ詐欺師だよな。生前より前の、現代の最後の頃の話だけど。

 海外に拉致られて"かけこ"して、その内捨てられて野垂れ死ぬ結末が見えてただけの一般人。

 お陰で営業も他人の振りも得意だぜ? だってそれで一ヶ月食べてたからね!

 バカだよなぁ、あのマフィア(マスター)。俺を使うなら機械に触れさせてればもっと利益を得られたろうに。ま、知らない話だけどな。もう過ぎたことだ。

 

「誤魔化しかい?」

 

「本当のことさ。技術屋なのに、語り部の英霊として登録されただけの一般英霊(サーヴァント)。だから英霊の身体じゃどんなに頑張っても本領は発揮しない。知る力を丸ごと抜かれてる訳だからね」

 

「……思い当たった。そういえば最後の特異点にはついぞ君を見かけなかったな。姿も知る力とやらも……うん、私の仮定が正しいなら理解の範疇だ。私の理想はモナリザに他ならないのだから」

 

 知る力。根源接続者とか、その辺りを想像したのかね。

 どっちかと問われたらデイビッドに近いんだが……ま、問われなかったから俺には知らない話だ。

 参照する先が外宇宙か根源か、はたまたは別のものか。側から見たらどっちも同じなんだからな。

 

「それも今だけだと思うけどね、だってほら、結局それは親の真似事だし……と、そんな事はどうでも良いか。消える未来を語るほど無為な行いもない。手伝ってよ、一人より二人の方が楽な仕事があるんだ」

 

「分かった、他にやる事も無さそうだし……その行動に疑うべきものはない。人理に尽くすというのなら、私は喜んでこの微力を貸そう」

 

「ありがとー! 助かるー! コーヒーを淹れながらカルデアスの新調をするのは面倒だったんだ」

 

 という訳で5日でカルデアス含め、レイシフトに必要な物を取り揃えた。

 細かい準備を含めると結構な時間が掛かったが、流石はロリンチちゃん。俺に欠けていた推理力を存分に発揮して適切なスケジュールやレイシフト後の対策を練ってみせた。そこら辺俺は雑だからな。実に大助かりだ。

 毎食の料理や材料の工面も助かった。2日目辺りで我慢できないと俺を風呂作りに行かせたのは不満だが、我儘もそのくらいだし実に良い短縮だったよ。

 

「それじゃあレイシフトを始めるよ。帰りは考えない片道切符さ」

「証明は宜しくね。それからサポートも。私の事はちゃんと補佐しないと簡単に死ぬと思ってくれたまえ」

「それは勿論。君は余りにも雑に物事を進めるからね。そうならないようにちゃーんと見張っておくさ」

「OK、他に言い忘れた事は?」

 

 ダヴィンチちゃんはそう言うと、少しだけ眉をひそめて残念そうな顔になった。

 まぁ、なんだかんだ5日間ずっと一緒だからな。多少情が湧いてもおかしくないか。知らない話だが。

 

「君の事はもっと調べたかったから、時間切れで終わりなのが心残りかな」

 

 うん、全然そんな事無さそうだな。ヨシ!

 

「最後の最後に言うことが好奇心か! ははは、ある意味私達らしいね。うん、そのくらいの距離感の方がやり易い。やり易いから、私の方からも一つ約束するよ」

「えー? 今更約束することなんてあったかなー?」

「私の隣に君が居た事さ。この偉業は二人で成し遂げた。そう語る事を約束しよう。良いだろ? 君だけの逸話だぜ?」

 

 そう言うとロリンチは一瞬呆気に取られた顔をした。驚いたとも言う。

 それから笑顔になった。良い感じに送り出す為の行いだな。

 

「それは……嬉しいな、君が語ってくれるなんて。

 ‭─‬‭─‭─‬‭─約束。絶対言うんだよ?」

 

「勿論、死ぬまでね。死んでも、歩き続ける限り言い続けてあげよう」

 

 まぁ、仮に言わなくても問題ないだろうけどね。約束した時点で結果も約束されるから。

 ここだけの異聞(知らない話)だぜ? みんなにはどうでもいい(知らない話)だろうがね。

 

 

 

 ♢

 

 

 

「‭─‬‭─一応は私の舞台である場所を、よくよく踏み荒らしてくれましたね、皆々様。

 全くもって裏技も良いところですが、ご要望にお応えして生前より中身のみでの来訪です」

 

 ……それは、イリヤ特異点に来てから3日目の話だった。

 初日から各地を訪問し、英霊を倒し、少しずつ、確かに減っていく参加者を見つけては情報を集め、途中からエインズワースの屋敷を探しても無為に終わり……もうダメかと考えていた時。

 

 橙色の髪、サイドテール、暖色の眼、利発で冷静沈着そうな……総じて私と同じ。されど僕よりも成長した姿の私。

 まるで理想。故にどんな英霊かは一眼で理解出来る。

 

「……カルメン」

「はい、カルメンだよ。久しぶりだね、小さなマスター」

 

 僕が再び学校を再調査している最中に、姿は違えどカルメンが目の前に現れた。

 

「今まで何処にいたの?」

「普通に死んでたよ? 小鳥だからね、イリヤワールドへの変化に耐え切れず死んでしまったのさ!」

「そんなあっさり言うこと?」

「むしろ気付かなかったのかい? この特異点を見渡せば虫の一匹だっていやしなかっただろう。海に魚はおらず、空に鳥の影もない。全てがイリヤとして混ざる都合、そういう種族からして論外なのは最初に弾かれて然るべきさ。当然、小鳥として生きていた私もその時死んでいた」

 

 気付かなかったのか。

 そう言われると心臓がキュッと縮む気持ちになる。

 見落としがあったと指摘されるのは、すごく胸が苦しい物だった。

 でも、反論もあった。

 

「でも、コカトリスは居たよ? ゾンビだって……」

「人並み以上の霊基があるのを反例にするは関心しないな。君が汲み取るべきは私が死んで何処に行ったのかという疑問。その辺りは特異点の攻略において重要じゃない」

「うっ……ごめんなさい」

「謝るなよ、私が悪いみたいじゃないか」

 

 失敗した事に謝罪すると、カルメンは首を傾げて尋ねてきた。

 

「君、そんなに弱かったっけ? あ、そういえば君、一人じゃないか。他は出払ってる? 不用心だなぁ」

「カーマと燕青は昨日ボーナスを没収されて……マシュとペーパーはこことは別の場所を探させに行かせたんだ」

「ほぅ〜…ま、何でも良いさ。大事なのはこの時までに私と君がこの特異点で出会ったこと。それさえ果たせば後はどうとでもなる」

 

 何故良くなるのか。

 その疑問を答える前に、自分の手の甲を見て気付いた。

 "イリヤポイントが書かれてない"。

 

「これは…!」

「済まないね、イリヤ試験は中止になる。そんな事をせずとも、要は聖杯の器を正気に戻せば良いんだからね。精神を戻すくらい、平準化の前では余りに容易い」

「そっか、カルメンの宝具…!」

「だからその真っ白な汚れは落としてきな。自ら泥/イリヤ(この世全ての悪)になろうとするなんて、アンリマユと化した村人一人で十分なのさ。全く、酷い定義変えもあるものだね」

 

 理解が追い付く。

 そうだ、あの普通空間さえあればイリヤ度なんて関係ない。

 彼女が近くに居る限り、僕は脱落する恐れも無いんだ。

 顔を洗いつつ、彼女の話に耳を傾ける。

 

「所で、ペーパーと言ったか。ああ、色を落としながらでいい……ソイツはナーサリーライムじゃあ無いだろうな。わ、驚いてこっちを見るなよ。化粧が半端に落ちてて化け物になってるぜ?

 ……まぁ、定義の問題だ。イリヤ度だの試験だの言ってるが、そもそもこれは生贄の儀式だ。人の生き残ろうとする醜悪さを何処までも高めて、自己を捨てさせる因習村みたいな儀式。脱落すれば泥に堕ち、生き残れば全ての(願い)を代わりに背負わされる。本来の手順より大規模で無駄が多いが、そこは現代。人数のゴリ押しでなんとか出来た」

 

「……カルメン、なんの話をしてるの?」

 

「拗ねた聖杯の器は怖いって話。記録された最期から解析した事実を述べてるだけだとも。

 ま、要するにね。これはどこまで行っても聖杯戦争なんだ。聖杯を求めるんじゃなく、聖杯が人の生を求めたが為に起きた戦争。自分の代わりに聖杯の器になる者を造る為の儀式」

 

「美遊が…人の生を?」

 

「いやぁ、異聞(あり得ない話)を話したのは全く持って失敗だったよ! 時期も悪かったが、悪しき希望に魅入らせてしまった。お陰でこんなに遠回りしなくてはならなくなった」

 

 段々言ってる事が理解出来る範疇に収まる感覚を覚えた。

 薄らと、特異点が終局に向かっている感覚だった。

 

「で、話の始発点はなんだったか……そうそう、ペーパーの話か。

 結論、"アイツはアンリマユ"だ。イリヤと泥を同意義にした場合、ただ一人だけ"本物"として扱える存在。反英霊アンリマユ。結局出来レースの再演だった訳だ。実に魔術使いの義父を持つ彼女らしい、必要条件だけ満たした粗悪な儀式だろう? もう終わった話だがね」

 

 話に区切りを付けて、そろそろだと彼女は言った。

 途端重く長い地震が始まる。揺れに耐え切れず横たわると、彼女は僕を教室の机の下に運んでくれた。

 机の下にいる僕と膝を付いて屈んだ彼女の、お互いの眼が合わさる。

 

「だが、私が居れば話は別だ。なにせ存在するだけであらゆる魔術が、儀式が破綻する。

 だから終わりなのさ。全て真っ新な場所でしか活躍出来ない奴が積み重なったところに居ても全て破壊するだけ。それでこの話は終わり。私も特異点も全部壊れてめでたしめでたし。

 おめでとうマスター、君は助かった。それだけは確かなのさ」

 

 特異点が崩壊し、カルデアからレイシフトする旨が伝えられた。

 意識が遠くなる中、彼女は13枚のカードを僕に手渡した。

 

壊れたカルデア(がらくたの山)から創り上げた「十三席目の騎士」、そのクラスカードを改造した凡ゆる英霊と繋がる召喚触媒だ。いつ神秘を取り戻すかはわからないが、いつかは英霊召喚の核として使えるようになるだろう。私はここで死んでおくから、もしそれで使えるようになったなら使いなさい。異聞(新たなカルデア)の旅を、ここから始めるんだ」

 

 

 とある星見の旅の、紙芝居を始めよう。

 

 

 最後にそんな声を聞いて、僕の意識は完全にブラックアウトした。

 何も出来ないまま、何もかも解決される。

 正に不条理と理不尽其の物。

 

 だけど……それが善良であるのは、確かであるようだった。

 

 

 

 

 

 A.D.2015 星見崩壊示唆 冬木/カルデア

 人理定基 C

 

 特異点 破綻

 

 






 ・イベントクリアに伴い英霊召喚他複数の要素が解放されました。

 ・期間限定、通常、フレンドの3種類。天井は300連となります。
 ・星晶石1個で1連、10個使う事で11連、100個で星4英霊or星5礼装確定の110連です。
 ・それに伴いクラスカード生成も星晶石1回5個が1個こ同レートに変更されました。
 ・更にクラスカードとは別に英霊の編成、出撃が可能となりました。
 ・クラスカードと英霊の状態を自由に変更出来るようになりました。
 ・夢幻召喚でアインス、ツヴァイ、フィーア、フンフ、ゼクスでの編成が可能になりました。
 ・クラスカードの編成コスト上限が五倍(32→160)になりました。
 ・これらに伴いマスターの運用が見直されコスト上限を突破してる場合出撃不可になりました。
 ・新規礼装が300種追加されました。
 ・新規英霊が16名参戦するようになりました。
 ・アペンドスキル、クラスコアが解放されました。
 ・カルメンに語られる事によりコンテニューが実装されました。それに伴いストーリー分岐(敗北√)が発生しなくなります。
 ・運命は固定されました。

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総合評価:2970/評価:8.65/連載:5話/更新日時:2026年06月02日(火) 03:02 小説情報

Re:TS白黒ストライプバニー老害によるナツキ・スバルの悲喜劇観賞会(作者:F・M・T (フランチェスカ、マジ年増))(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

「アハハハハッ!始まり、始まりぃー♪パンフレット買った?ポップコーン持った?早くしないと世紀の戦いを見逃しちゃうよ?」▼ Fakeのあのキャラに転生したオリ主が、スバル君の奮闘を眺めてケラケラ笑いながら観賞をする話。▼「……あれれー?もしかして、このスバル君。放っておいたら正史から簡単に外れちゃうぅ?」


総合評価:5384/評価:8.79/連載:3話/更新日時:2026年05月07日(木) 18:00 小説情報

ウルク産地のアルトリア顔の女神様(作者:へっぽこ女神)(原作:Fate/)

アルトリア顔の女神になった。全部終わらせて消滅するまで待ってたら謎丸のいるカルデアへ召喚された。▼そんなカルデアでのドタバタ女神生活。ただし周りは女神の勘違いで曇らせたり、やらかしたり、ポンコツなことしたり。▼なお、ギルガメッシュは愉悦してる。


総合評価:7269/評価:7.9/連載:25話/更新日時:2026年02月01日(日) 05:22 小説情報

パ リ ピ 時 臣(作者:融合好き)(原作:Fate/)

信じて送り出した夫がキラキラなギャルにどハマりして夜な夜な怪しげな場所で遊び呆けているなんて…


総合評価:5484/評価:8.52/完結:8話/更新日時:2026年06月03日(水) 06:28 小説情報

憑依者しかいないゲマトリアがキヴォトスの破滅を回避しようとする話(作者:シャンタン)(原作:ブルーアーカイブ)

人の心を理解するがために、咄嗟に出る提案が原作より悪辣な黒服▼生徒を護りたい意志が強いが、製作できるのは怪物関連なマエストロ▼生徒を護るために崇高に至ろうとする、生徒第一なベアトリーチェ▼テクストが解釈ができず、原作兵器が作成できないゴルコンダ▼何事にもいち早く気付くが、そういうこった!!なデカルコマニー▼事態を把握しているが、ゴルコンダがいるため、表舞台に…


総合評価:5275/評価:8.66/連載:19話/更新日時:2026年06月08日(月) 17:31 小説情報


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