紙芝居をしただけなのに   作:何処にでもある

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 プロフィール6
 「カルデア☆カレイドサマー/ウィンターウッド」、微小特異点修復で解放。

 破綻の為解放不可。




枯れ木の満開

 

 

「最初に、何が起きたかを振り返ってみよう」

 

「はい、ドクター」

「お願いします、Dr.ロマニ」

 

 カルデアに帰還した僕達は、ロマニ博士や他の職員と集まって会議を始めていた。

 カルメンが殆ど解決した微小特異点。僕達は結局、微小特異点特有の人理の自浄作用による自然と解決される流れより先に修復する事ができなかった。

 

「先ず、我々は西暦2015年の冬木から微小特異点を感知し、エインズワースのクラスカードを目的としてマシュと藤丸をレイシフトさせた」

 

「はい」

「そうですね」

 

 それ自体はこれまでも良くある事ではあったが、今回は持ち帰れた物がある。

 それがカルメンが僕に渡してきた13枚のクラスカードだ。

 白金色に透かしにセイバーやアーチャーといった象徴が入ったこのカードは、その全てを組み合わせる事で、魔力と電力さえ足りれば凡ゆる英霊を召喚可能にするという品物だった。

 勿論向こうの承諾……カルデアに来ようとする意思も必要だが、これまでと比べれば実質全ての英霊と言っても過言では無いだろう。

 

「そして特異点で過ごして3日目、マシュと藤丸が別れて再調査をしていた所に受肉したカルメンが転移。その力に耐えられず特異点が崩壊。藤丸はこの13枚のカードを渡された…と」

 

「はい」

「そうですね」

 

「うん、訳が分からないな! あはは、そこに居るだけで特異点が崩壊するってなんだい? そんな存在がいるなら人理が彼女を投げ付ければ全部解決するじゃないか!

 その上このカードはなんだい!? マシュの盾と併せれば英霊召喚の基盤になる出鱈目な聖遺物だ! 僕達の為に用意された未典寓話(グリム・レリック)なんて、幾ら金を積んでも手に入らない品物だぞ!? これをマシュの盾に組み込めば、それだけで詠唱も霊脈も要らない! 大量のバッテリーさえあれば魔力なんて使わなくても英霊を召喚出来るだなんて、神秘の塊が過ぎる!」

 

「ロマニ〜落ち着いて〜。本当に色々な事に使えそうで、狂喜乱舞したいのは私もだから〜…うん、いっそ二人仲良く踊るかい? 今なら最高のロンドを披露出来そうだ」

 

 うふふふふ、あはははは。

 そんな風にロマニとダヴィンチちゃんが狂化(E)を獲得しつつ喋っているが、そんな様子を見ても僕は未だに上の空だった。

 これまでの特異点で出会った英霊がカルデアに来れるようになったのだ。今までマシュと二人で特異点に突入してきた事を思えば、それがどれだけ革新的か解るというもの。

 というか早く召喚してみたい。ダヴィンチちゃん曰くクラスカードを英霊に戻せそうな気配もするらしいし、兎に角楽しみがいっぱいでワクワクが止まらなかった。

 

「ロマニ、ダヴィンチちゃん。それより早く召喚してみたい」

「私も賛成です! これまでの旅で出会った方々は誰しも勇敢で頼もしい方ばかりでした。彼らが来るというのなら、早く会いたいです!」

 

 そう急かすとダヴィンチちゃんは待ってましたとばかりにニヤリと笑い、会議室の奥の扉へ行くように言う。

 

「もしかしてもう準備し終わったの?」

「私もこれには好奇心が抑えられないからね。かの童話魔術の原点が私達の為に自ら手掛けた作品のお披露目だ。この会議で集めた人員はね、記念すべき初稼働に向けた観客でもあるのさ」

「流石はダヴィンチちゃんですね! 仕事が早いです」

 

 その先がどこに繋がっているか知らない筈がない。そこはかつてレフ爆弾で破壊された召喚設備。

 マシュの盾を利用しても機能しないレベルに倒壊した場所だった。

 真っ黒で、照明一つだって灯らない瓦礫の山。

 

「わぁ…全部直ってる!」

「あれから地道に直してたのもあるが、決定的なのはこの札だ。翳すだけで全てが直る様は、いやぁ実に幻想的で美しかったなぁ。私一人で新たな召喚式を作れなかったのはちょっと悔しくもあるが、代わりに良い物が見れたよ」

 

 それがどうしたことか、全て直ってるではないか。

 星空のように壁際に浮かぶ英霊の座、マシュの盾が投影された召喚陣、魔術を使う時特有の直線があちこちにあって、複雑で美しい模様を描いている。

 

「きれい…」

 

 思わず、安直な感想が漏れ出る。

 ダヴィンチちゃんやカルデアの職員さんが少しずつ進めていたのは見ていたが、それでもここまで完璧に直っていることは無かった。

 これが最古の語り部であるカルメンの力だとでもいうのだろうか。素人目でもすごい物と解るのだ。専門家が観ればきっともっと深い所で感心を寄せられるだろうに。今だけは自分に魔術の知識がない事を悔やみたくなった。

 

「使い方だが、これまで通り星晶石を使えば問題はない。ただし消費リソースは大いに改善されているから、感覚としてはこれまでの1/5を置きたまえ」

「え!? 一つ召喚するのに石一個でいいの!?」

「良いんだ。魔法使いの称号を持った存在の作品ならこのくらいは許される」

 

 ……と言うので、早速僕はそーっと試しに石を一つ陣の中心に置いて、パッと走って離れる。

 そしてこれまで通り盾を構えていたマシュの後ろに待機する。怖気ついた訳じゃない。これまでは偶に爆発する事があるから、その習慣による物だった。

 

「おお…点滅もブレもなくスッと起動した!」

「……正常動作を確認。マスター、これからは失敗する事は無さそうですね」

「それだけでもすごくありがたいよね」

 

「ははは……これまでが酷過ぎて藤丸達の反応に心が痛むなぁ」

「言うなよロマニ、今日はカルデア最大の転換点だぜ? 辛い過去は今だけ忘れようじゃないか」

 

 それから職員さん達の其々驚く声の中、新たな召喚システムで呼び出された記念すべき英霊の姿が煙の中から現れた。

 一体誰だろう、キャスターのカードなのは見えたからなぁ…! ワクワク…!

 

 少しずつ姿が露わになる。空色のローブ、青い髪、色白の肌、民族衣装に寄っていて、ドルイドの杖持った……わ、すっごく懐かしい顔だー!

 

「‭─‬‭─キャスター、クーフーリン。随分と遅れちまったが、こうして馳せ参じた。久しぶりだな、臆病な…いや、こうだな。ヨロシクな、マスター!」

 

 クーフーリン! シャドウのアーチャーと相打ちしたクーフーリンじゃないか!

 

「クーフーリンさん!! わぁ、夢じゃない!? 本当に来てる!? ぺちぺち…本物だ、本物だよマシュ! 本当にクーフーリンさんが来てる!」

 

 駆け寄って手を握り、お腹を叩き、服に顔を(うず)めて古い森の匂いを嗅ぎ取り……そうして私は興奮のままにマシュに夢でないことの同意を求めた。

 多分、今まで顔に縫っていたマスターの仮面が剥がれているんだろうけど、そんな事を気にしてられない現実が目の前にあった。

 

「落ち着けマスター…俺なんかにそんな興奮してるようじゃ、これから身体持たねぇぞ。呼び出し待ちが待機列作って待ってるんだからな」

「でもぉ……あの時の自らを生贄にした連続ウィッカーマンはすごくカッコよかったんだもん……私に勇気を教えた死に様だったもん!」

「へいへい……ったく随分ご大層な旅をしておいて、その臆病な性根はあん時と変わってないみてぇだな。とりま次の石を置いとけ。後5〜6人は来るだろうからよ。この調子じゃ日が暮れるぞ」

 

 クーフーリンは抱き付く私を抱えてマシュに引き渡して壁際に寄りかかった。

 

「あー…」

「……先輩、よかったですね」

「うん! マシュ、あのね、今とっても…すごくすごくね、嬉しいの!! 胸がぽかぽかってしてるんだー!」

「はい。先輩が嬉しいなら、私も嬉しいです」

 

 今の所完全に僕のマスターの仮面が剥がれてるが、そんな事は些事だ。

 クーフーリンがクールでカッコいい対応をしてるんだぞ? これで喜ばないとか()()()ない事は私には出来ない。

 躍動する心‭─‬‭─‭─‬‭─私は抑えられない。

 

「そうだ、そんなに待ってるなら一気に5個置こうよ! 遊園地とかで列を作って待つの、疲れるもんね!」

 

 我ながら実に名案だったのでそうする事にした。するとマシュがスッと4つ取り除いた。

 召喚陣が動き出す。何故かマシュが4つ取ったから次も一人だ。

 

「ねぇマシュ、なんで同時に呼ぶの止めたの?」

「……後半の特異点で会った英霊の方は今のマスターを見たら困惑しそうなので、冷静になる時間を作れたらなと」

「たしかにー」

 

 かにー。

 

「見なよダヴィンチ、あれが僕達が奪った藤丸ちゃんの姿だよ」

「ロマニ、君は一度カウンセリングを受けた方がいいね」

「だって普段のマスターとしての振る舞いの参考元、僕だし……ほんと、何が悪かったんだろうね」

「レフ爆弾」

 

 お、バーサーカーだ。白い角、沢庵みたいな色の眼、薄緑の髪、それから和服。

 清姫だ! ゆーあー、まい、ふれんど! ひっさしっぶりー!

 

「バーサーカー、清姫。安珍様……じゃなくて、私の"友達"の元へ参りました。久しぶりですね、立香ちゃん(ますたぁ)

「きよひー! 大体三ヶ月振りかなぁ…! 会えて嬉しいなぁ!」

 

 クーフーリン同様清姫に駆け寄り、清姫が私に合わせて屈んで視線を合わせる。

 清姫とは同い年の筈なのにこの身長差には納得が行かない事以外は大事な友達だ。

 エリザベートと同様、オルレアンで出会った掛け値無しで親友とすら呼んでもいい相手である。

 

「ええ、ええ、私も同じ気持ちです。一日千秋の想いで安珍様……じゃなくて、立香ちゃん(ますたぁ)の事を心配しておりました」

「きよひー……来てくれてありがとう! そうだ、後で約束してた女子会やろ! きっと他にも沢山来るだろうし、楽しみにしててね!」

「……ええ。楽しみに、しております。あ、私はそろそろ脇に退いてますね。他にもお待ちしてる方々が居ますから」

 

 清姫は震える手で壊れ物を持つように私を抱き、マシュに優しく手渡してからクーフーリンの横に立った。残念、もっと話したかったのに。

 

「わー」

「……先輩、清姫さんをあんまりイジメるのは良く無いと思います」

「え、なんで? きよひーはすごく喜んでたよ?」

「マスター……喜んでても、それは辛いと思わない理由にはならないそうです」

「?」

「……マシュは恋愛に疎いマスターが心配です」

 

 よく分からないが、どうもそうらしい。

 そんな事より次の英霊と再会したかったので、私は新たな星晶石を陣に置いた。

 今度の英霊は赤い髪、青い目、腹出しの剣と盾を持つ英霊……ブーディカであった。

 マズい…子供にされる…!

 

「………ブーディカ!」

 

「ライダー、ブーディカ。勝利の女王の名の下に、あなたに勝利を捧げよう‭─‬‭─なぁんてね!

 やっと会えたね、マスター。ちょっとだけ背が伸びた?」

 

「……あれから5ミリ伸びました!」

 

「やっぱりそうかー。子供の成長は早いなぁホント!……うん、思ったより息災みたいで安心したかな。幼き君に一切の傷なく健やかに過ごせるよう、来たからには全力でやるからね! ヨロシクね、マスター!」

 

 ブーディカの抱き付き‭─‬‭─‭─‬私は避けられない。

 私はその抱擁のまま顔を胸に埋める事になった。

 息が…辛いよぉ……。

 

「もごぉ……」

「にしてもかわいいなぁもう! ねぇねぇ、髪色も近くて何処となく似てるし、実は私の子孫だったりしない? なんだか他人の気がしないんだよねー!」

「ひはぁう……」

 

「ブーディカさん、その辺りで。先輩も困ってますから」

 

 そして私はマシュに助けられた。流石は私の後輩だ、頼りになる。

 ブーディカは残念そうにしていたが、今は引き下がるかという感じで清姫の隣に行った。

 なに、その壁際で待つのって流行ってるの?

 

「ありがとうマシュー…」

「落ち着きましたか、先輩」

「うん……マスターとして恥ずべき姿だった」

「では続けていきましょう」

 

 そんな訳で次はダビデが出てきた。各特異点から一人ずつ来てるので順当だけど、ある意味意外な人が来たと思う。

 

「意外、ダビデさんカルデアに来るタイプだったんだ」

「心外だなぁ、幾ら羊飼いの僕でも困ってる子供を助けに行くくらいはするよ」

「ホントに〜? 世界各国各時代の美人が集まるかもって打算が無いって言い切れる〜?」

 

「勿論あるさ! それを否定しちゃ男じゃないからね!」

 

「へへ、男の子らしいなぁ、ダビデさんは。それでどんな子が好みなの?」

「もちろんボッ!キュッ!ボンッ!に決まってる! その点、君は実に可能性を感じるよ。もっと大人になったらナンパさせて貰おうかな」

「……えへへ、ダビデさんに言われると照れちゃうなぁ」

 

「そろそろ次の召喚に移ろうか! マシュ、藤丸ちゃんの受け取りを!」

 

 ロマニが苦々しい顔をして叫び、それに仕方ないという顔でダビデは雑に絡む私の手を引いてマシュに引き渡した。

 

「なんだか毎回マシュに引き渡されてる気がする」

「事実ですよ、先輩」

「えー…でもさマシュ、ずっと仲間になるのはやっぱり嬉しいしさぁ」

「ですが、流石にダビデさんのセクハラ紛いのあしらいに絆されるのは気を許し過ぎだと思います、先輩」

 

 でもさマシュ、ダビデってイケメンなんだよ?

 例え子供をあしらう言葉だとしても、あー言われたら照れないと損じゃない?

 特異点の時はこんな話出来なかったし、折角なら楽しんだらいいと思うんだ。

 

「って思うんだけど、マシュはどう?」

「うーん……なるほど、そういう考えもあるのですね。勉強になります、先輩」

「これは合わないかぁ」

「いえ、そういう訳では。ただ思いもしなかった考えだな…と」

 

 それを合わないと言うのでは?

 と言いたくなったが、今はその辺りを深掘りする時間ではない。

 私は早速次の……この流れならロンドンの英霊が来ると予想しつつ召喚する。

 ロンドンか……今となっては一番精神が追い詰められていた時期の特異点。誰が来るのか一切想像が付かず、或いはカルメンやナーサリー・ライムが来るかと思いながら召喚される様子を眺めた。

 

 煙が晴れる。

 

「‭─‬‭─‭─‬サーヴァント、キャスター」

 

 キャスター!……だが、この声は…?

 

「どうも‭─‬‭─‭─‬メフィストフェレスでぇーす! ジキルから席を取って参りましっった!!

 どうもどうも、マジのガチの初対面、これから絆を深めて参りまっっしょう!!!

 ひはははははは!!!」

 

「うん。よろしく……?」

 

 真っ黒なカルメンの横でなにやら騒いでて、途中から居なくなった英霊だっけ…?

 本当ならジキルさんが来る予定だったみたいだが、そっちもそっちであんまり関わりを持ててない相手だ。

 どっちにしろ来る事に首を傾げる事態である。

 

「んっん〜? なぁんであなたのメフィが来たかって顔をしておりますねぇ、マイマスターァ?」

「それは……君に来たいと思わせる事をしてないから……」

「あ、それはもうあのKの奴が悪いだけです。アレに関わるとあらゆる繋がりが短縮されちゃいますからね〜ぇ」

 

 メフィストフェレス……メフィは気になる言葉を混ぜてきた。

 気になったので質問を重ねてみる。

 

「それはどういう……?」

 

碌でもない(超絶つまらん奴)って事です。聖杯戦争で神霊を召喚するように、アレはセイヴァーみたいに存在するだけで全てが解決しちゃうか、存在するだけで全て壊す枠ですからねぇ。悪役的には‭─‬‭─‭─まっっったく面白くなぁい!!」

 

 道化師みたいにおどけて、ちゃらんぽらんに振る舞いながら叫ぶ。

 召喚システムの基礎を渡してくれた恩のある人の悪口ではあったけど、だからといって言われた事が間違ってるとも思えなかった。

 事実、微小特異点は全て何とかなって、ロンドンでは全て破綻する直前だったから。

 微小特異点に至っては、問題の根幹をネタバレみたいな言い方で説明してきた実績もある。

 

「へぇ、コイントスみたいな感じなんだね」

 

「それ以下ですよぉ、ここだけの(悪口)ですケド。ワタクシがあの手この手で2015年の特異点に接続したピトスの中身直通ポーシャンを呑ませてなきゃ、今頃両方の特異点破綻してましたからね? 悪役に尻拭いさせるとか、ホント舞台装置としても三流、いや五流以下! 十中八九滅ぶ10面ダイスとかホント酷いったら!」

 

 そういえばメフィってファウストと契約したなんでも知ってる悪魔なんだっけ? 超常的な視界を持ってるって事かな。

 そして、そんなメフィからするとカルメンは10面ダイスで1〜2面しか成功が書かれてない最悪な賽であるらしい。

 

「……代わりに唯一の成功による利益は凄まじかったり?」

 

「フヒヒヒヒ!!! 分かる口ですかぁ? そうそう、その恩恵は今受けてるでしょ? 強いだけのバカ強さ抜きが強さを取り戻して、あらゆる因果(フラグ)を無視して渡した品物ですからねぇ。語り部が物語(流れ)の美しさとか考慮せずにやったんですから、そりゃあもう便利といったら!」

 

 道化師の大笑が召喚の間に響き渡る。

 ……そういえば他の人が話に入って来ない。呆気に取られてるのだろうか。

 そう思い振り返ろうとしたけど、メフィは僕の頬を抑えてそれを阻止した。

 

「道化師から目を逸らそうとしない! それとも、夢中になれる香りが足りないようで? 手首にニンニクでも擦りましょうか? きっと串刺し公も夢中になれると確信しております! キヒヒヒヒ!!!」

 

 流石に不自然さが許容を超えた。これでマシュが間に入らない訳がない。

 ……そうだ、聞いた事がある。時よ止まれ……うんたらかんたらだったか。

 メフィが時間を止める力があるとは思えないが、似たような事なら出来そうだと何となく思った。

 

「メフィ、何を伝えたいの? 私だけに教えたいことってなにさ」

 

「あらあらあらなぁんて聡いお子ちゃま! 直球勝負しか受けないなんて野球でもやらない! 

 まるで火の輪を潜るライオン! そのまま燃えて死ね! でも迂回するような臆病よりは面白いですよぉ! だって楽しませる芸に挑戦してるんだから! あそぉれ、がんばれがんばれ! 燃えてる靴で踊り狂え♡」

 

 ……段々、メフィの狂気が酷くなってきた。

 そろそろ本題を話してくれないと、僕が意図を汲み取れなくなりそうだ。

 それとも……もう言いたいことは言っているのかな。ちゃんと考えた方がいいのかも。

 

「……召喚に頼り切りじゃダメって言いたいの?」

 

「大・外・れ!! そんな事したら自分が死ぬって分かってます? 博士の説明とかちゃんと聞いてらっしゃらない?」

 

「う〜……もしかして、今の僕達は成功のパターンじゃない……とか?」

 

 

 例えば……そう、一見大丈夫そうでも、後から取り返しの付かない事態になるとか。

 そもそもメフィは成功による恩恵を引き寄せただけで、失敗した事実を消した訳じゃない……ならどうだろう。

 

 

 

「…………うわ、つまんね。滑稽な踊り方も知らないガキかよ」

 

 

 

 真顔、外れた時とは別の反応。つまり……当たり。

 

「‭─‬‭─先輩? ボーッとされてどうされたんですか?」

「ええと……僕が何か間違えてしまったのだろうか……」

 

 気付けばメフィは何処にも居なかった。

 目の前にはジキルが居て、背後からはマシュが声を掛けている。

 

 泡沫の夢。

 はたまた、悪魔祓い。

 

「……なんでもない。頭から水を掛けられて、足元が冷えただけだよ」

 

 ただ、会話して得た主観だけど……メフィは英霊としてやるべきをやっていたと思う。

 特異点を行き来し、負けから上っ面の勝ちまで待って行った。

 それが事実だとすれば、きっと何処かに落とし穴があるに違いない。

 

 何処に落とし穴があるのか。それはきっと僕が探すべきものだ。

 誰かに頼るのは……マズい気がする。メフィが召喚した事実すら隠した時点で落とし穴はカルデアの何処かだ。敵……みたいなのが居るのだろう。

 

「今日はここまでにしよう。一度に英霊を迎えるには、余りにもカルデアは手狭だから」

 

 であれば、一度初心に立ち返って不自然な所を探すのも手か。

 英霊が居る以上カルデアの負けは消えた。上っ面でも勝ちが約束されたなら、お言葉に甘えて他の部分に眼を向けるべきだ。

 

 それなら先を見据える為、過去に手を伸ばしてもいいかも知れない。

 そう考えた僕は、カルデアの記録室に足を運ぶ事にしたのだった。

 

 






 攻略失敗につきイベント終了。
 次は藤丸の冬木からオケアノスまでの旅路の話です。アメリカからゲーティア討伐までは英霊が居る都合上、概ね原作と同じなのでカットします。
 そしてここから長い時間カルメンの気配が消えます。ご了承ください。

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