紙芝居をしただけなのに   作:何処にでもある

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 マシュ・キリエライト
 カルデアが製作した英霊を憑依させるのに特化したホムンクルス。片目隠れの薄紫の髪と眼の娘。
 誰に対しても丁寧な対応を行い、自分より人生というものを体現してる相手には先輩と敬う。
 元々は感情が希釈な無垢な娘だったが、藤丸立香との出会いで人らしさを得た。熱血、脳筋、純朴という感じに。
 最近の悩みは幼い藤丸の心労を上手く取り除けないこと。友達より少し遠い今の距離間を近付けたいと思っている。




悪い人と悪い竜

 

 

 それから私がどうなったかと言えば、ジルによる特訓と各地への巡礼で大変忙しかった。

 

「特訓させてくれるんですね」

「勿論ですとも、ジャンヌ。万が一死んでは元も子もありませんから」

「初めから強かったら良かったのにとか思ってませんか? 竜を召喚したりとか」

ジャンヌの強さとは即ち清らかさ!! 竜を召喚するなどある筈がないィィィ!!!

 

「どっちかと言えば神の加護と啓示から来る自信だと思いますけど……」

 

 理性(ジト目)狂気(ギョロ眼)を行き来するジルは初日で慣れた。

 なにを言っても勝手に脳内で修正されるから言葉に遠慮する必要もないし、私に足りない体力部分を育ててくれるなら文句も無い。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…!」

「まだまだ行きますよ、ジャンヌ! さぁ、"王宮魔術師"の私より力強く!! あそこの丘まで全速力で!!」

「変なフード着てる癖にすごく体力ある……! 流石ジャンヌの騎士だった人だ…!」

 

 私はコレ幸いとばかりに救援が来るまでジルの騎士団式ブートキャンプを行う事にした。

 元凶かつ無闇に人を傷付けるとはいえ、体力の基礎を鍛えてくれたのは事実。今でもあんまり憎めない相手だと私が勝手に思ってるのがジルという騎士であった。

 というか、彼はこの時間をどういう気持ちで過ごしていたのだろう。彼の狂気は後天的なもの。自分の意思で狂ってるタイプだ。ちょっと誤魔化すのに無理がある対応をしたつもりだったのだが。

 

「ジャンヌ、よく見る事です。あれが市民の醜悪さですよ」

「私はジャンヌじゃないです。それとアレを見てもジャンヌは見捨てないと思います」

「ジャンヌ……あなたは間違いなくジャンヌなのです。例え覚えておらずとも、その心は間違いなくジャンヌだ」

「……別人って理解しつつジャンヌと思い込むのって両立するものなんですね。疲れませんか、それ?」

 

 こんなに遠慮なく言っていたのだし、私の言葉で誤解が解けてもいいものなのに……自ら誤解するように専念していると、ここまで人は思い込めるものらしい。実に、硬い意志がダメな方に働く恐ろしさを体現していた。

 

「うーん……今なら聖杯を回収出来るんじゃないか?」

 

 拐われてから2日目。

 私は全然来ないマシュ達にじれったさを覚え、どうにかジルから聖杯を奪えないかと考え始めていた。振る舞いのセーフラインは調べてなんの心配もないと分かったし、私の方で残ってる心配といえば実戦くらい。

 未だ三枚のクラスカードが集まってない中、ジャンヌみたいな腕力で解決する事を求められたら辛い事になる。なのでそれまでにジルの元からは離れたい。

 

「ジルはこの時代の騎士なんだよね。魔術師としての能力はあの魔導書が10割で、寝てる間に盗めば全部解決しそう。しそうだよね、よしやろう」

 

 なので夜。

 誰もが寝静まる中、私はジルの魔導書に宿ってる聖杯を、魔導書も丸ごと盗んで逃げ出す事にした。

 カルデアとの通信は切れた訳じゃ無いので向こうがコチラに来ているのは分かってるものの、竜に乗ってるにしては歩みが遅い。万全の用意の為にジークフリートやゲオルギウスという英霊を仲間にしたのは聞いてるが、ジルと2日共にした感想としてはそこまでの戦力は要らないように感じた。

 

「で、盗んだワケなんだけどさ」

 

 なのでスッた。寝てる時も魔導書を抱き枕して、眼をガン開きにして寝ているのを乗り越えて盗んだ。魔術礼装の幻術や合気、パルクールは偉大であった。ダヴィンチちゃんが作った礼装の(まぼろし)はレジストされずに通ったし、相手が起きた後も私が機敏に動く助けになった。

 無事に盗めて良かったと心底思う。失敗すればそれはもう恐ろしい折檻が待ち受けていただろうから。

 

「ここはー…どこですか?」

 

 問題は逃げる時に開いた魔導書からなにかしらの魔術が発動し、オルレアンとは別の微小特異点になっていたエリザベート・バートリーの屋敷にレイシフトした事。

 

「…………寧ろ、(アタシ)はあなたが誰か聞きたいわね」

 

 目の前に居る屋敷の若き女主人、生前のエリザベート・バートリー本人の目の前にレイシフトしたという末恐ろしい話であった。レイシフト適性100%の悪い所が出た話である。条件さえ揃えば何かの拍子で別の時代に行くとは恐ろしい体質だ。

 

 

 ……だが、ここの詳細はオルレアンの攻略に関係ない事。

 この後2日掛けて私は微小特異点を形成しようとしていた聖杯を片手にオルレアンに帰還したという結果のみ伝え、残りは割愛しよう。英霊もカルデアのバックアップが無くても、無限魔力炉になる魔導書とエリちゃんがあれば解決出来る範疇だった。

 

「バイバーイ、仔鹿! また遊びに来なさいよねー!」

「ばいばい、エリちゃん! また縁が有ったら遊びに来るよー!」

 

 エリちゃんは聖杯でハロウィンな特異点を作ろうとしていたが、そこはそれまでに仲良くなった分で説得したので問題にはならなかった。

 

 

 閑話休題("時間旅行"の魔術が原因だった)

 

 

 エリちゃんの元で2日過ごしても、オルレアンでは6時間しか経っていなかった。

 特異点にも時間差があるのだなぁと思いながら再び逃走を再開する。

 既に撒いた以上再び遭遇する事にだけ気を付ければいいだけなのだが、相手もこの魔導書を持っていたのも事実。

 暴走した"時間旅行"で何処かに飛んだと予想が付いているなら……例えそうでなくても近くで待ち伏せするのは安牌な作戦だ。

 気になることはあれ、この時は朝が訪れるまで大人しく街の裏路地に潜み続けていた。

 

「……よし、そろそろ通信を……ロマニ博士、聞こえますか。こちらマスターです。ジルの元から逃げ出してきました」

 

[‭─‬‭─えっ藤丸ちゃん!? 生きてたのかい!!?]

 

「6時間程魔導書の暴走で別の特異点に飛んでましたが、幸い微小特異点の成り掛けだったので解決して戻ってきました」

 

 それから事情の説明に小一時間使い、私は気になる事を質問した。

 

「そんな事より質問なんですけど、カルデアが聖杯が融合してる可能性が高いと指摘した魔導書が特異点から消えても、ここは崩壊しなかったんですね?」

 

[あ…あぁ、そうだね。だけど不思議な話じゃないよ。特異点は原因を解決しても数日はそのまま。ある日突然パタリと消えると予測(シミュレーション)されている。6時間程度なら消えても問題はないと思うよ。"特異点の観測も安定してた"しね]

 

「今は繋がりとかどうですか? 一度別の時代に行ったならこの聖杯とこの特異点の繋がりも消えそうに思いますけど」

 

[ちょっと待ってね、今から調べてみるから。数時間は必要だと思うから、その間藤丸ちゃんはマシュ達と合流してくれ。幸いまだ藤丸ちゃんが死んだとは伝えてないから、話は拗れてないよ。

 ……あ、そうそう。繋がりと言えば、特異点の各地にある海魔と魚の方の反応は消えてるから、そっちは別の時代に行った拍子に繋がりが切れてるみたい。じゃあまた後でね]

 

[カルデアスがまだ生きてるって予測してたからね〜。ロマニと何人かの職員は信じてなかったけど、伝えるのは保留にしてて正解だったよ!]

 

「ありがとうございます……あ、そうだ。合流地点は何処ですか?」

 

 それから程なくして私達は合流する事が出来た。

 

「マスター!」

「マシュ、みんな! 不安にさせてごめんね!」

 

 聖杯の核は回収され、ジルは無力化した。なんならオマケに未使用の聖杯が一つある。

 このまま帰還すれば終わりだとぼちぼち気を緩ませていた‭─‬‭─その時だった。

 

「ジャァァァンヌゥ……」

 

 ジル・ド・レェが姿を現した。

 ずっと私を探し回っていたのか髪も服も乱れ、死んだ魚の様な眼をギョロつかせ、口から涎を垂らし、見ていて不安になる揺れ方で私に近付いていた。

 執念、妄執、狂気。そんな言葉を人の形に押し込めたような有様で、何処か哀れさすら感じさせる姿だ。

 

「ジル……」

 

「ジャンヌ…おお、ジャンヌ……何故、何故逃げたのですか、ジャンヌ……」

 

 眼を瞑り、ジャンヌが考えを巡らせる。

 ジルは未来の自分の関係者で、今のジャンヌにとっては最早他人も同然だ。

 しかしただ敵として、悪として斬るほど……お互いの関係は薄いものではない。

 

「……ジル、あなたの悪行もここまでです。その本心は決して悪とは思いません。ですが、あなたは余りにも無辜の民を傷付けた。その罪は、償う必要があるのです」

 

 結局、ジャンヌは聖女としての正しさを選んだ。

 実質的な産みの親だとしても、これで二回顔を合わせたに過ぎない相手。

 斬らない情を持つには、余りにもお互いの出会いが良くなかった。

 

「‭─‬‭─いいえ、いいえジャンヌ。償いなど無いのです。これは悪行ではなく裁き。悪である愚民に己の愚かさを気付かせる慈悲なのですから」

 

「……自ら悪である事を望みますか。

 ならば、言葉は不要ですね」

 

 平行線。分かり合えない。

 自然とお互いが決着をつけようと剣を抜く。

 ジャンヌは手出しは不要と、私達に目配せして走り出す。

 

 

 

 ……決着はジャンヌの勝利に終わった。ジルは冷たく動けない死体になり、ジャンヌは幼い身でありながら大衆の為に人を殺した。

 

「……どうかその死に、犠牲者達共々神の慈悲が有らんことを」

 

 祈りを一つ。自然と私達も黙祷を捧げる。例え悪行を成す魔術師だとしても命には変わりない。

 

「ジャンヌさん……」

「ジル、最期は笑ってたね」

 

 ……果たして、ジャンヌはジルに対して親に対するような親近感があったのだろうか。ついぞ聞くことは無かったが……ただの敵と思っているなら、この時に悲痛な顔をしてはいなかっただろう。もう少し、その死に救いを求める聖女の顔をしていた筈だ。

 

「しかし、これで特異点は攻略完了ですね。その魔導書からも聖杯が……?」

 

 マシュが私が持っていた魔導書を見る。ジルが聖杯を納める器として選んだ魔導書だが、持ち主が死んだ以上込められた魔力も自然と聖杯になる筈だ。

 しかしどうした事だろう。聖杯は未だ現れず、魔導書は相変わらず不気味なままだ。

 

「……変化、有りませんね?」

「こういうのってすぐに出て来るものなの?」

「すみません、私も初めてなもので……」

「うーん…?」

 

 

「‭─‬‭─ジャァァァァンヌ!」

 

 その時である‭─‬‭─閉じていた魔導書が自ら開き、死んだ筈のジルの両手が伸びて私の頭を掴んだのは。

 あれは本当に、心底、本当の本当に、言葉にし難いくらい………驚いた。

 

「 」

「おおっ! カルデアのマスターよ! CoooooLに!!! ジャンヌの偉業を共に歩みましょう!!! この!! 人理の旅をぉぉぉお!!!!」

 

 本当に怖かった。言っている内容が私達の味方っぽいのも含めて、意味が分からないくらい怖いジルだった。恐怖に鮮度ってあるんだなって。あれは、青髭の本領がなんたるかを知る一番怖い体験だった。

 

「ォォオオオオオオオ!!!!」

「!!?!?!!?!?」

「マ、マスタァー!!?」

 

 それから何が大変だったかと言えば、そのまま英霊?のジルに憑依されたことだ。

 確かに英霊も幽霊ではあるが……クラスカードで自身に憑依させているが…!

 英霊から憑依されるというのは、初めての体験だった。

 

「なになになになに!!?」

『‭─‬‭─心配せずとも宜しいですよ、マスター。この魔導書の本領を発揮させる為の、このジル・ド・レェの契約名義を貸す為に憑依したに過ぎませんので』

頭からジルの声が聞こえる!!?

『怖がらなくていいのですよ、マスター。共にジャンヌの事を語り合った仲ではないですか。身体を乗っ取る真似はしませんとも』

あの時の私の言葉、反応無かったけど好感触だったんだね!?

 

 原理としては魂の契約を行った魔導書(プレラーティーズ・スペルブック)の魔力を利用し、英霊として記録された自我と契約情報のみ現界。英霊より何段階か下の幽霊として出現を果たす。

 動機としては生きてジャンヌの勇姿を見ることは叶わなかったので、生前最後に気の合ったカルデアのマスターに力を貸しながら見守ろうという魂胆である。

 

「……死んでロックに…いや、クールに化けた…ねぇ? ジルさん、この特異点の元凶じゃないの?」

 

『違いますよ? なにせ私、聖杯など拾っておりません!! まあ出逢いに恵まれたお陰で、この魔導書の力でジャンヌの魂を座から引き摺り出し子供の身体に入れようとアレコレしましたが』

 

「……ええ、私の勘違いぃ?……じゃあこのジャンヌは誰ぇ!?」

 

『さぁ? ただ間違いなく私の実験は関係ないかと。マスターを見て成功例だと勘違いしましたが、この様子だと私の実験は最後まで上手く行かなかったようですねぇ』

 

 ……意外と、ジルは自由人で無実だった。

 じゃあ犯人誰だよと。ジルに憑依されているという、絶対色々なものに良くない状況から脱する為に尋ねると。

 

「なんか言葉が通じる今のうちに犯人誰か教えてください」

 

『おや、憑依して私の精神汚染と同期しましたかね? 代わりに周りと会話が通じなくなってそうですね。話が終わったら魔導書に戻っておきます。

 あぁ、聖杯の持ち主は"マリー・アントワネット"です。フランスへの復讐とかなんとか言ってましたよ。魔術師として私を雇い、そこら辺で暴れろと命令されてました』

 

「そっ…かぁ…300年は先の人が原因かぁ……えっ何処に居るのそれ」

 

 なんだか裏技で全ての情報を集めたのかってくらいに全て判明し、その上で私は途方に暮れる事となった。

 

『自分で言ったではないですか。"300年は先"と。西暦1792年、この特異点(西暦1431年)より361年先のオルレアン‭─‬‭─聖杯を拾った今を生きる彼女が、「もしもこの革命が過去の内に終わってくれていたら」と過去の改変を望んだが故に起きた特異点‭─‬‭─それが、このオルレアンです』

 

「そこにレイシフトは出来ない?」

 

『結局別の革命が起きて死んでたので無理でしょう。歴史が変わってませんから。なにせ抑止力により騎士の私が召喚され歴史が変わるのを防いでしまい……隠された聖杯を見つけられないまま退却したものでして。

 魔術師のフリをして潜入し内部で兵士達に叛旗を掲げさせた失敗でしたね、ええ』

 

 ……つまりはこうだ。

 特異点の核はこのオルレアンから361年先の未来にある。

 なので此処で何をどうやっても特異点の解決は出来ない。

 しかし肝心の聖杯がある時代にレイシフトするには、その時代に特異点が形成されてない……。

 

「えっ詰んでる? もしかして」

 

『何故かジャンヌが居るのでそれ次第でしょう。それに素人考えですが、この特異点を361年継続させるなり、もしくはこの魔導書で未来にワープするとか……なんであれ、力を貸して欲しい時は言って下さい。これで私のやらかしと抱え落ちした情報は全て渡しましたので、魔導書で眠っております』

 

「ありがとね、ジル。おやすみ」

 

 

 ‭─‬‭─と、いう訳で。

 

 

「えー、これから第一回オルレアン会議を始めます。

 どうにか300年余り先の未来にある聖杯に出逢う必要があるので、全員で知恵出ししましょう。初対面のジークフリードさんとゲオルギウスさんも遠慮なく意見を述べて下さい。時間はたっぷりあるみたいなので」

 

 色々ジルには文句を言ってやりたいが、やってもしょうがないのでみんなで話し合う事にした。

 

「ああ、よろしく頼む。早速ですまないが、ラインの黄金が丁度手元にある。これをその時代に送る手段はあれば特異点は作れそうだと思うのだが……どうだろうか」

 

「宜しくお願いします、カルデアのマスター。私からはラインの黄金を竜に認定する事しか思い付きませんね。上手くやればジークフリードの宿敵、ファフニールを呼び出せそうではありますが……」

 

「あ、はい! 竜の召喚と制御が出来ます! 上手く行けばそのファフニールという竜も制御出来ると思います! ああでも、私だけだと不安もやっぱり……」

 

「……少しいいですか? 私の宝具は竜に変化するもの。なにもファフニール本竜を呼び出す必要などありません。私の宝具にそれらを上乗せする形であればより容易く行えるかと」

 

 ふむ……もしかして抑止力は全て考えて英霊を呼んだのではないだろうか。

 ここまで上手く繋がりそうな要素が揃ってるしあり得そうだ。

 

「問題はどう上乗せするかですが……マスター」

「んー……丁度未使用の聖杯とジルの魔導書があるなぁ。そもそも聖杯をカルデアのシステムで送り出せない?」

 

[正直言って難しいね。施設の復旧が完全に終わってないから、やるなら西暦1431年を起点に順次観測できた未来にちょっとずつレイシフトする感じになると思う。10年先、4年先、16年先……みたいな方法で飛び続けて調整するんだ。本当に細やかなその時代の異常を縫って突っ込むから、出来る事ならそれに耐えられる霊基が欲しい]

 

「つまり、すごい竜になって身を削りながら未来に飛ぶと。竜という存在をレイシフトに耐える為の防壁にするんですね」

 

[藤丸ちゃんはその魔導書もあるし大丈夫だろうけど、他はマシュともう一人が限界かな。その聖杯のお陰で魔力切れの心配はないし、幾ら身を削ろうと竜は竜。到着すればマリー・アントワネットが隠した聖杯も相まって特異点になるだろうね]

 

 こうしてジルと私、マシュとジャンヌの組み分けで未来に飛ぶ事にした。

 選んだ基準は生身であるかどうか。霊体より自己の保存が利くという理由での選択である。

 

「じゃあね、みんな! 貴族の騎士団として頑張ってね!」

 

「じゃあな、臨時団長!」

「頑張れよー!」

「助けてくれた事、決して忘れません!」

「我が家の伝説として、其方の事を子々孫々伝えようぞ!」

 

「彼らを安全な土地に送り届けるのは、この時代に残る私達二人が行います。マスター達は心配せず、目の前の事に集中してください」

「大した活躍が出来ずすまない……その分、任された彼らの未来は必ず明るいものにしてみせよう。退去するその日まで、一端の戦士として鍛えておく」

 

 マシュ達が見つけてきた二人は此処でお別れとなった。

 清姫は竜に代わり防壁係として同行するが、最後まで自我が残っているかは怪しいもの。

 

「大丈夫です。それがますたぁを護る事に繋がるなら、私の命など惜しみません」

「……ありがとう、清姫……いや、きよひー。辛いと思うけど、頑張ってね。ずっと応援してるからね!」

 

 そんな辛い事に自ら志願してくれてありがたい限りだ。感謝してもしきれない。

 彼女の献身のお陰でなんとかなった面もあるのだから、今でも感謝してるくらいだ。

 

[いいかい? 転移したら人前で軽く一戦交えておくんだ。そうすれば次の時代を観測するまでの時間を稼げる。そして竜の噂が歴史に残れば、よりレイシフトは容易になるだろう。ただ、やり過ぎて歴史を変えるのは厳禁だ。その辺りの調整は上手くやって欲しい。時間稼ぎと歴史の変化、その天秤を上手く見極めてくれ]

 

 結果を述べると、その先の演技はジルの魔導書を持つ私が悪役になった。

 悪い海の怪物と、突然現れてはそれを祓う、燃える竜を従えた黒い乙女。

 100年経っても戦い続ける二人だけの戦争。

 

 歴史の変化はフランスの民話に「竜の魔女」という話が追加されるだけに留まり、私達は無事に件の時代に辿り着く事が出来た。

 

「‭─‬‭─やっと着いた! ここがフランス革命の一年前。西暦1792年のオルレアン…!」

 

「準備は万全です、マスター! 早速向かいましょう!」

「清姫さんのお陰で私も弱体化はありません! 行けます!」

「……アンチン…マスタァ……サマ…」

 

「……きよひー、ありがとう。最後まで一緒だよ‭─‬‭─さぁ行こう! みんな!」

 

 改めて、第一特異点「オルレアン」。

 四人で革命で騒がしい貴族の屋敷に向かい、本格的に攻略開始となる。

 

 






 清姫
 安珍伝説に登場する竜に変わる乙女。三枚のお札に連なるタイプの話であり、当時満12歳の清姫が僧侶の安珍に夜這いを仕掛け、案の定逃げ出されたので追いかけ、自分諸共燃やし殺すセルフキャンプファイヤー。
 精神力だけで竜になった節があり、生前は変化の他に自己暗示Aも持ってそうな娘。でなければ彼女の先祖に竜が居たのだろう。
 オルレアンでは他の英霊の協力も相待って宝具が刹那の究極(EX→ A++)に至った。レイシフトにより力と自我は削がれたが、それでもHPゲージを二つ持ってる程度には強い。

 心臓に悪い誘拐や聖杯への旅で幾度も敵役として相対した影響で、藤丸立香に対する感情は複雑怪奇なものになっている。

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