セプテム
暴君ネロがローマ皇帝をしていた時期の特異点。
歴代のローマ皇帝が敵として現れローマを攻める。
最後は軍神アルテラがレフをレ|フにして終了。
セプテムでは序盤中盤終盤をネロと共に過去のローマ皇帝を薙ぎ倒した訳だが、特に目立った窮地もなく進めたのでこの辺りは飛ばしておこう。正直軍勢同士の話は、私には難しい。
「うむ、流石に幼子に対して無茶だったか」
「ごめん……指揮は三十人が限界っぽい……脳がパンクする……」
「構わん構わん、その30人を英霊に並ぶ戦力にできるなら、それはそれで異才だ。十分有用であるぞ!」
その分、当代ローマ皇帝ネロ・クラウディウスがとっても頑張ってくれた。
なのでカエサルやイスカンダルや孔明やアタランテなどの目の前の敵を倒し続けるだけだった部分は飛ばすとして、すると語れる場面は自ずと一つだけになる。
「勝利が約束された者に勝つにはどうするかなど、決まってるだろう?」
この特異点で一番重要なのは最後の最後。
ネロと共にレフと相対した最終盤だ。
「さぁ浅ましき暴君よ──堕ちろ!」
それはレフがネロに聖杯をぶち込み、成り立てのビーストを敵として出してきた時のこと。
「喝采せよ 宴の始まりだ」
「ッ! ビースト、反応が消えました! 別の時代に降り立ったものと思われます!」
「ビースト……人を滅ぼす獣……兎に角追いかけないと!」
「ですがどうやって……!」
「──色んな特異点に片っ端からレイシフトして見つけてくる。ここは任せて、マシュ」
別の時代に向かったビーストを倒す為、私に残っている夢幻召喚の副作用を利用し、古今東西の特異点にレイシフトし続けることを決めた時から始めよう。
「"
「セイバー
「──此処かぁ!」
全生命体不老不死の特異点、新宿とロシアの隕石がヤバい特異点、大奥、ネロ祭、インドの神が唯一になった特異点、極寒のヤガ帝国。
7つの大小様々な特異点を同時攻略して、その末に私はセプテムに降り立つ際に間違って訪れた特異点に再び訪れた。うん、不死性がなければこの時点で終わってた。
触れた物も一緒にレイシフトするのを利用して別の特異点の隕石をヤガの皇帝にぶつけては殺し。
偶然出会った、ドラコーとは別のロシアの獣を新宿の隕石にぶつけては殺し。
大奥の奥にあった宇宙を原初の女神とぶつけて共倒れさせ。
ユガを高速フリー回転させてた唯一神をネロ祭に連れ出しては参加者と共に撃破し。
「ふぅ──そこに並び立つ他のカルデアの皆さん! 私も助太刀します!」
随分と卑怯な真似をしたが、なんであれ私は全て解決した。
可能ならやりたくないことではあったが仕方ない。それ以外でなんとかできるやり方が思いつかなかった。
「──いや誰だ、お前は?」
「……あ、もしや私の目の前でレフにビーストにされたネロさんではない?」
偶然迷い込んだ時より状況が進んだビーストⅥの特異点で、なんか居る他の世界のカルデアのマスター達が指示する英霊の隙間を縫ってドラコーに剣を振るい──剣を受け止められ、話して、私は知った。
「
「……だとしても!」
ドラコー違いが、起きているということを。
そう、私が自力で転移しても自分の世界に転移する訳ではないのだ。仮にこれで特異点を攻略したとしても、それは別のカルデアがやるべき仕事を勝手にやっただけ。聖杯や手に持てるだけの素材の回収は出来ても、それは自分の世界を救ったことにはならない。
「目の前にビーストが居るなら、倒さない選択はない!」
「この……傍迷惑な!」
なら、自分の世界のドラコーを倒すまでやればいい。脳筋の戦法だが、決してやれない事はない作戦だった。
「先ずはその
「なんだその冒涜的な剣は!」
「ふぅ…! 次にドラコーを────」
こうして私は、凡ゆる世界線を股にかけてドラコー狩りを行った……らしい。
レイドと言い換えてもいいかも知れない。数百は倒した気はするけど……実はその間の記憶がなく、いつの間にかカルデアに送られてた大量の素材だけが私の討伐履歴を語る状況に陥っていた。
気付いたらアルトリアとイリヤとジルのカードが限界まで強化されてたし……多分、一緒に戦った別のカルデアが私を強化したのだろう。多分。
「──ッハ! 意識飛んで……あれ、強くなってる!?」
恐らく、記憶のない私は強化出来るギミックみたいになってたんだと思う。
[正気に戻ったかい? 暫く応答が無いから心配したよ]
「……ダヴィンチちゃん、私はどれだけ意識を失ってたの?」
[1時間だ。いやぁ、急にカルデアに色んな素材が出てくるものだから驚いたよ。一体そっちでは何時間経ったんだい? その間何をしていた?]
「……なにも、分かりません。気付いたら強くなって、誰も居ないドラコーの特異点に立ってました」
……こうして振り返ると、自分がどれだけこの辺りの記憶があやふやなのかよく分かる。思ったより語れない。頼りなくて申し訳ないと思う。
「確かなのは……身体がすごく痛いです。けど、まだ動けます」
なので此処からは私を外から見ていた人……ロマニ博士とダヴィンチちゃんの言葉に耳を傾けるとしよう。ここまで彼らとの会話は殆ど飛ばしていたが、そろそろ今後に続く大事なことを言う頃合いだ。
[……周囲を調べたけど誰も居ないね。少なくともこの空間に居る生き物は全員倒したか立ち去ったらしい。意識が飛んだのは……どうも変身しっぱなしなのがイケないみたいだ。藤丸ちゃん、一回変身を解除して元の特異点に戻ろう。医者として限界まで頑張った君を休ませないといけない。藤丸ちゃん、言う通りにして欲しい]
「でもビーストが……」
[もう既に倒してるじゃないか! 例え僕達の世界から産まれたビーストⅥで無くとも、君はもう十分働いた。一度休まないと本当に死んじゃうよ?]
「……分かりました。帰還します」
話は第一特異点セプテムでマシュを回収して、カルデアの医務室へ。
包帯でぐるぐる巻きにベッドに拘束され、私は強制休養の姿勢にさせられた。
「いいかい藤丸ちゃん。君を検査して分かった事なんだけど……落ち着いて聞いて欲しい。
診断の結果君の筋肉は殆ど切れ、骨は7箇所折れて73箇所砕けて、特に背骨が酷く、そして脳は半分溶け、手に至っては骨が見えるまで溶け、視界も殆ど喪失し……なんで生きてるか分からない状態
「なるほどー。だから繭みたいになってるんだ、私」
「……けど、もうそんな物はない。今言ったのは変身を解除した瞬間だけ観測された物だ。
今の君は至って健康だし、悪い所もない。恐らく夢幻召喚の仕様だろうね。これはオルレアンで解除した時も生命反応が一瞬途切れる挙動をしていた。その時は機械の誤作動かと思ったんだけど……事実として君は怪我をしていた」
「つまり……どういうこと?」
「……今から話すのは、"君は既に何回も死んでいる"って話だよ」
ロマニ博士は少し言うのを躊躇った後、意を決して私にそう告げた。
この時、心做しか悲痛そうな眼をしていたのを覚えている。
私は……特に何も感じなかった。とっくに不死性と身体が元に戻る挙動は把握していたから。
ああ、やっぱりそうなんだって、なら包帯を解いてもよくない? と、この時は考えていたと思う。
「或いは「正常な君に置換した」と言い換えてもいい。
「何処が問題なの? 怪我が治るならいい事だと思うけど……」
「そうじゃない。そうじゃないんだ。いいかい? この魔術は無から何かを創る物じゃない。剣を創るなら鉄と設計図が必要だし、物を直すなら同じ物を二つ使って一つ直すくらいの対価を必要とするんだ。……これを君自身に置き換えたらどうなるか、考えてみて」
別に断る理由もないので、試しに言われた通りにしてみた。
夢幻召喚の三重は自分を3つに増やして重ねる。その内二人が同時に倒れれば取り返しが付かないのは感覚で分かっている。
「ええと……仮に今の私が死んで、未来と過去で……命じゃなくてその二つを設計図にしてる感じだとしたら……」
これを置き換える。仮に自分が一人倒れ、残りの二つが対価になる……それで残り二つの命が尽きると意味がないから、魔力を材料に残り二つを設計図にしてると仮定を変える。
「うーんと……戻ってもそれは前の自分より劣化してるってこと?」
「そういうことになるよね。厳密には本当に過去や未来の自分を持ってきてる訳じゃ無くて、カルデアの演算で仮想の藤丸を重ねた見立ての類いなんだろうけど……大事なのは、「この不死性には対価がある」ってことだ。
過去が死ねば記憶が、未来が死ねば寿命が劣化する……藤丸ちゃん、心臓が時々痛くなったりするかい?」
うっ…となる。言葉に詰まり、自分でも自覚していなかった図星を突かれた感覚がした。
報告していなかったが、ロマニ博士が指摘した心臓の件は確かに覚えがある。記憶も……ドラコーを倒した記憶が無いのがそうなのだろう。
「……両方ある。ドラコーを倒した記憶が無くて、心臓は偶に痛くなる時が」
「そうだね……他に自覚してる異常は?」
それは問いかけというより確認だった。
思った通り言っていいのか分からない。少し悩んで、正直に告白した。
「……"性格が変わった気がします"」
「──そっか……そっか。
なら改めて"初めまして"だね。"藤丸立香"」
過去の私が死ねば記憶が消える。
未来の私が死ねば寿命が削れる。
それなら今の私が死ねば?
「……劣化するのは人格ですか」
「うん、つまりは"魂"。何回も死んで、何回も作り直されて……ごめんね、僕達が気付いた時には、全て手遅れだった」
その話を聞いて、私は大した事ないなと思った。
……自分を大事にする考えも当事者意識も心には芽生えず、確かに劣化してると痛感させられた。
「大丈夫です。カルデアの主命を果たすには問題ありませんから」
そんな、いつかは人間失格になる私に出来る事といえば、せめてかつての私を少しでも覚えておくことくらい。
そう考えて言われた事を受け止めた。現実感に欠けていた。
どこかの肉が鉄に変わってるみたいに、自分への執着が消えていた。
「包帯を取ってください。今からドラコーの再捜索に行きます」
「ダメだ! このまま夢幻召喚を使って死に続けるのは、君が
正しい答えが分からずにいると、自然と私は眼を閉じていた。
音が水の中に潜ったみたいに陰り、降り立つ可能性が視野に入る。
0と1の視界。いつの間にか身につけていた世界の見方。
過去の私がドラコーを倒す過程で得たのだろうか。記憶はなく、経験だけが積み重なっていた。
戦う力だけが、積み重なっている。
誰かがそうなることを望んでるみたいに。
……どうすれば説得出来るか観測し、その通りに動く。
「……覚悟は、決めたんだね」
正しい方法は無邪気で、怖がりで、普通な女の子を少しでも綺麗に真似ておくことだけだった。
今の私として振る舞うのは全てダメ。この先に繋がる一つ学びを得られたと思う。
それから……今みたいに正解をずっと見続けるのはやめておく事にした。それをしたら今度こそ人間で無くなる気がしたから。
あとは……この辺りからロマニ博士を真似た振る舞いもするようになった。
これから先、私というボロを出さない為に、今の自分を「僕」という仮面に押し固め、みんなの理想こそ本物であるとかつての自分らしさを心に流し込む。
こんな子供騙しが上手くいくなんてこれっぽっちも思って無かったが、清姫が殺しに来なかった辺り上手く出来ていたのだろう。……或いは心の成長として受け止められたのかも知れない。過程は兎も角、結果は似たような物だから。
♦︎
「先輩? 何を見てるんですか?」
「……ん、ああマシュ。昔の記録をちょっとね。なんだか違和感を感じたからさ」
「違和感…ですか」
「そう。色々あって僕がこうなっても、ずっと"レイシフト適性100%"なのが変に感じてさ」
「それは先輩がスゴいからじゃないですかね」
「うーん…みんなの方がすごいと思うけど、見返して私が一番に感じたのは──」
……オルレアンはまだ見返してないが、マシュも来た事だしまとめに入るとしよう。何となく察する事は出来た。
あらゆる前提に黒幕的存在が居ると仮定した上で。
既に決まった道筋があるような不自然なジャンヌの存在。
決定事項をなぞることだけを目的としたような短期間の特異点攻略。
ドラコーの時に経験したのだろう、知らないのに見たことがあると感じる既知感。
陰謀論みたいな結論だが、取り敢えず言うだけ言ってみよう。何か変わるかも知れない。
メフィストフェレス、知識を与える悪魔が示唆する私達の見落としは──。
「"ここって◼︎◼︎なんじゃないの? 何というか、ドラコーと似たような非なる手口に
破綻確率、0.0000000001%上昇につき演算を単純化。
時系列確定済みにより進行度を2-8-5-eに進行。
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