ビーストⅦ
解析の理を持つ獣。
解析の名を持つが、理解せずともなんでも出来る為に、何もかも知っているという訳ではない。
根源の複製が自我を得たもの。
最近
亀田
根源で原型保って死んでた変な奴。太古のFGO世界に転移してきた一般的な
「周りを自分の世界の
別に紙芝居だけ歴史に刻まれるなんてことも無く、存在した証は何一つ残る事なく死んだ。その為英霊になる余地はない。
それこそ誰かが彼の痕跡を歴史のあちこちに放り投げでもしない限りは。
「かゆ……ん? 私がかゆい?……この辺り、何か埋まってますね」
始めは単なる痒みでした。
根源の現し身である私が持つ筈のない生理的現象。
マリス・カルデアスにとってあり得ない感覚に興味を向け、ポケットの中を探るように自分の中から"何か"を取り出し、人間の死体を発見するという珍事が起きた時のこと。
腐敗せず、傷もなく、周囲に自分のテクスチャを貼り続ける死体……の、複製。
私/根源の複製から取り出されたそれは、何処にでも居そうな顔つきの、年老いた日系人種の死体でした。
「根源を目指した魔術師の死体……というには変な体質を持っている。
ああ、移動特異点ですか。根源がすぐ近くにある神代に転移するとは運のない……いや、体質を考慮すればこれ以上なく運がいい。何があったかまでは
気まぐれ。
カルデアがアリのように細やかな歩みを進んでいる傍ら、私は自身のほんの……本当に端の端。
全体で見れば1ビッド程の、頭の出来が良い人間程度の演算領域を……この者に関心を向けた部分のみで、この偶然見つけた移動特異点を解析する事にしました。
果たして自身がこの男を憐れんだのか、それとも関心を抱いたか、はたまたマリスビリーから与えられた業務をこなす気分転換の為か。
本体から調べるように言いつけられ切り分けられた私には知る由もありません。本体も、彼に関する興味を抱いた自分を切り離したのでもう関わってくることもありません。
今となっては誰も知る由もない、知る価値もない
「──
そんな事が起きたのが
カルデアの最後のマスターが冬木の特異点から脱した後──オルガマリーがカルデアスに沈む少し前──そこから、
「……いえ、よくある都合の良い建国神話みたいな道行だった彼の人生ではなく、彼を解析が終わって周囲を探ってみれば──分離されていた私がマリス・カルデアスが蘇る最後の希望になっている、この状況が」
本体の演算領域から分離して彼を解析していた私は、その連絡をしようと本体に
「カルデアは自身の旅を否定しなかった。
実に───都合が良い。その刹那が延長されたおかげで、私は自身に与えられた
失敗した本体……否、今となっては私こそが本体でありアチラは失敗作ですが、あの時の気まぐれが幸に転じたのです。
なんと……なんという奇貨! 例え1ビッドの演算領域であろうと根源の複製は根源の複製! 本物の根源に接続する鍵を自身から創り出すなど他愛もないこと!
そして根源接続者の領域まで落ちぶれたとしても、私であれば元通りにするなど余りに容易!
「私が居る。有用な死体もある。本体が成さなかった
やり遂げるべき
しかし肝心の方法、どの様にしてこのちゃぶ台を戻すかは重要でしょう。
特異点は攻略される。異聞帯は伐採された。普通にやっても二の舞になるでしょう。失敗したからには改善しなければ意味がありません。
本体のように万能なら兎も角、今の私は出来ない事の方が多く、油断が大敵となる程の小さな存在です。
「であれば───大胆不敵な一手を」
移動特異点と私が揃っているお陰でいつの時代、どんな場所でも何を持っていくかは自由自在です。この死体を加工した礼装を使えば各時代を渡り歩き、かつての
「要はカルデアのマスターが私を前に決断したあの瞬間、あの時の選択が一択であればいい。そういう世界に変えてしまいましょう。始まりから終わりまで、全ての時間を再演し──新たな過去と古い現在を入れ替えて」
もちろん制約はあります。
タイムパラドックスが発生する都合上、私の影は歴史に残してはならならず。
同一人物が同じ時代に居ると弱い方が弾かれる都合上、マリス・カルデアスが製造されてから現時点まではレイシフト出来ません。
しかしそれだけです。
私の手に掛かればそれ以外の全てを都合よく書き換え、その上で現時点に繋がるように調整するなんて余りにも容易い。
それに──都合の良い
「───"告げる"」
何かもがない虚空の片隅で。
誰も知らない、誰も見てない空間で、小さな星の光が新たに産声があげました。
────これが、私だけが知る全ての原点。
カルデアが
人理を保障する為の
♦︎
「──────」
「………」
「──────────────、────────────?」
「…──」
故に、この「巡行舞台」のプランに失敗はあり得ません。
そもそも失敗してもまた別に分岐させた世界で試行を重ねるだけでいいのですから、いつかは必ず成し遂げられる計画なのです。
「────」
「…─?」
「────────。────」
その上、私がやろうとしていることはこれまでは不可能である「世界線の統合」。知識があるもの程答えに辿り着けない手段。
それも7つの矛盾点が解消されてさえしまえば達成できる事象に落とし込み、後は試行回数を重ねればなんとか出来るものになりました。
ここまでに413,892回も失敗しましたが……こうなれば終わりは近いでしょう。
「───」
なにせ、最大の難関は解決されたのですから。
私は安全な場所から繰り返しているだけでいい。
「──"ここがあなたの
「────な」
♢
……ある世界の話をしよう。
そこは古い時代から正しい道から外れた世界線。
無数の修正が行われ、西暦2018年に到達した余分な枝葉。
上辺は他と同じなのに、中身はまるで違ってる、周りのどんな世界よりもドン詰まり。
そんなの、すぐに切られてしまうよね。
だからある子供は考えました。
そうだ、別の詰みそうな世界を利用しよう。
詰みを紡いで繋いで可能性を蓄えて、切り捨てるには惜しく、けれど絶対に詰む世界にしよう。
選択肢が無い世界が剪定されるなら、無数のバッドエンドで数を稼げばいい。
こうして一つの
誰よりも選択肢があるのに、どれを選んでも間違いになる世界。
間違っても、また別の間違いで相殺される乱暴な世界。
魔術師が衰退しない魔術刻印と思想盤の合いの子には童話のお面を被らせて。
世界が早回しされて何もかも足りない所には極端に成功した世界を重ねて。
あらゆる理不尽を、あらゆる不条理で押し返す。
それは小さな舞台を股に掛けた大立ち回り。
痕跡は残らず。されど積み重なった感謝と慟哭の念は遂に一人の英霊として現れた。
それは人が人の力だけでは理不尽に勝てないという証明。
上辺だけの救いだけでここまで辿り着いた証左。
たった一人の凡人に勝つためだけに築かれた、中身が伴ってない汎人類史。
「────だからどうしたと、彼女は叫びます」
……そうして作られた世界だとして、この世界がどこかの世界を滅ぼす為に運営されたとして。
そこに生きる者がその製造目的を受け入れるかと問われれば、絶対にないだろう。
「壊れた心に燻る火を燃やして、片手を突き出し、最後の召喚を紡ぎます」
この計画は高尚な技術が使われている割に、人の心の移ろいを何処までも無視している。
これでは何度繰り返そうと、余程の勘違いが重ならない限り人は
不要だと判断したあらゆる時間を短縮し飛ばしてしまう
故に、この計画は始めから破綻している。
「満たせ、満たせ、満たせ、満たせ、満たせ──既に令呪を使ったが為に、その魂を燃やして呼び出すのです」
マキリの旦那から飛び立ち桜の下で羽を休め。
桜から飛び立ち、失敗した世界から必要なものを取り寄せ、そして自殺した。
その末に俺はここに不時着した。
全ての知識が蓄えられた全ての始まり。
「
「呼び出されるのは──誰よりもこの難敵を穿つのに相応しい大英霊。カルデアのマスターに憑依して、ここに居ない
おかげさまでこれまで口約束した全てにケリが付けた。
ロンドンのとある宿は繁盛したし、7名の英霊が汎人類史に組み込まれて、カルデアのマスターに勝利を約束出来て……。
全くもって嘘みたいな話だ。
勝利を約束したら詰みになる世界だとカルデアのマスターが気付かなければ、そのまま私はマリス・カルデアスを倒させて終わらせていたんだから。
全くもって度し難いものだ。英霊の力を手にした俺なんかの言葉一つで
こんな事なら、もっとしっかり自分の死体を処分して……いや、気まぐれでも未来の話を他人に語るべきじゃなかったか。
「こうして、世界は救われたとさ」
こんな話は誰かに見せる価値もない。
偽りのマスターはその身を犠牲にこの世界を終わらせた。
世界を覆す陰謀は果たされず、儚く散る。
そも、英雄になる気がなかった俺に語り部としての矜持なんて物はない。だからこんな物語としてつまらない道を躊躇なく歩める。
ま、もしかしたらこの行動もビーストⅦにとっては想定内で、もう対策しているかも知れないが……そんなの、気にしてたらキリがないだろう?
だからこの話はここでおしまい。うまく行ったかは読み手次第ということで。
「────おしまい」
♢
拝読お疲れ様でした。唐突と思いますが完結です。はい、実質打ち切りです。
原因は「死亡時に無作為に転移」する存在が的確に力を取り戻せて話を畳められる場所に行った為です。出来るだけ面白くなりそうな√を検討しましたが……出来る事、知ってる事が余りにも多いのでどうしようもありませんでした。
やはり偽・根源接続者(神代の語り部)の適切な扱いは難しいですね。プロトアーサーの気持ちが少しだけ分かった気がします。
以上、
では、気になる事がありましたらご感想の方に。
私は今夜からVRゲーのデータ
それではまたいつか。